元地方公務員は無難を選択しました。【ひっそりのっそり更新】 作:airel
課題について 四
目が覚める。見慣れた天井。
寝台から降りて、身体に異常がないか全身を解しながら確認する。肩、腰、脚、各関節等に違和感はない、よし問題はないようだ。
…あれだけ宋太傅からボコボコにされたのに眠ればケロッと全快してるこの身体って、これまでこんな身体にしてくれた皆に心の中でいっぱい感謝すると共に、何だか変な肉体改造をされているのではないかと一抹の不安を覚える。
でも、疲れない、疲れが残らない身体って言うのは本当に非常に有難い。
前世の公務員時代の自分だったら、今頃まだ寝台の中でくたばっているだろう。つか死んでるんじゃない?…あははは、笑えないなぁ。
そして深呼吸1つ、気が付く。
…オレはいつ家に帰ってきたんだっけと。
寝間着のまま自室から出て廊下を歩く。
まだ日が昇っておらず外は薄暗い庭に降り、春先の少しまだ冷たさを残した風に頬を撫でられ、寒気を感じながら手入れが良く行き届いた庭園を眺め人心地付いていると、そっと肩に羽織を掛けられる。
「若様、まだ寒うございます」
後ろを振り向くと、いつの間にか羽織を持った貂茜が居た。…この人も改めて思うとこの家の侍女として育ったんだよね、全然気付かなかった。
「…ごめん、ちょっとぼーっとしてたよ」
ありがとう、と感謝し羽織を受け取り彼女みたいな美人に心配して貰えている今世の自分は恵まれているよな、と実感する。
ただ、そして少し惨めな気持ちも滲み出てくる。
母や父、祖母も祖父も、孟熙も興芭も、姉達や妹だってこの家に関わる皆が皆才覚がある。でも自分は?
気付いたら前世の記憶を持って赤ん坊に転生して、もう18年になる。普通、ていうかこう言うモノって皆色々アドバンテージを取って彼是成果を出す、みたいなのか
がテンプレというか…。
何が言いたいかって?卑屈になってるんです、察して下さい。
これでも元地方自治体とはいえ公務員として現代日本で職務に励んでいた働く大人だった訳で、それなのに何も出来なくて…。
あー、しっかり寝て頭がスッキリした所為で今まで考えないようにしていた事がぐるぐると駈け回る、鬱になりそう…なんて気が滅入って俯いていたら、何かに手を触られた。
驚いて目を向けたら、㹦茜が白く柔らかな両手でオレの手を優しく包んでくれていたのだ。居たのは分かってたけど近付いて来た気配がないから驚いてしまった。
「………どうしたの?」
包み込んでくれた彼女の手に、そっと手を置いて振り返って問い掛ける。本当は今までの人生で初めてこんな美人とのやりとりに、めちゃくちゃドギマギしてるけど、必死にそんな内心を隠して何でもないかのように振る舞う。
2週目なめんな、と純朴青少年を装って接したのだが、彼女の顔を見たとき一瞬でその仮面がぶっ壊れ掛けた。