IS×艦これ ~空を駆ける騎士と海原の戦乙女たち~ 作:オーダー・カオス
ちなみに艦これ側のキャラですが、以前活動報告で出した設定から使おうと思っています。戦艦は大和を加えて。
前篇 墜落せし翼
……クソ……ここまでかよ……
少年から青年へと移り変わろうとしていた少年は蒼穹から異なる青を湛える海原へと落ちていく。
そんな少年の目に入ったのは遥かに広がり、とても球体の弧には思えない地球の青とそこに点在する小さき点である自らを撃ち落とした白銀の鎧とそれに相対する六つの点であった。
しかし、それらは十秒も経たない前にそこに存在していた少年が墜落していくのにも拘わらず、気にも留めず尚も戦い続ける。
ははは……俺って本当に邪魔だったんだな……
少年は墜落していく中でそれを見て乾いた笑顔を浮かべた。
それは自嘲であり安堵によるものであった。
思えば、少年はこの数か月の中で苦しみ続けた。
最初はただ少年の方も、己を渦巻く環境に無自覚であった事による気楽さが招いたのかもしれない。
しかし、その後に待ち受けていた辛苦は最早理不尽と言っても過言ではないものであった。
そう考えるのならば、少年にとっては今、迎えようとしている「死」はその苦しみから逃れる術であり、少年がどこか安堵を覚えるのも無理はないのかもしれない。
千冬姉……ごめん……
そんなあらゆる苦しみから解放される「死」と言う救済を目前にして、少年は唯一の肉親であり味方で在り続けた実姉に詫びた。
少年の姉は世界でも最も強い存在だった。
しかし、そんなことを抜きにしても少年にとっては幼い頃から両親のいない環境の中で少年を見捨てることなく養い続けたただの「姉」でしかなかった。
たまに弟相手に暴力で黙らせたり、弟がだらしないと叱責したり、異論を断固として認めようとしなかったり、周囲よりも弟のことを比較的に厳しく扱う等横暴にも思える一面もあるが、それはある意味では「姉弟」としては当たり前の光景なのかもしれない。
そんなただの「姉弟」として、少年は姉を愛し尊敬していた。
何よりも周囲が少年に対して冷たくなろうとも姉だけは決して少年を見捨てたりはしなかった。
この出撃の前夜にも
『一夏、今回の件は……
無理をしなくていい』
普段ならば決して出さない出撃を止めることを促す言葉を出したのだ。
それを少年は
『大丈夫だよ。
千冬姉。今度こそは頑張るさ』
と気丈にも返した。
姉に心配をかけさせないためと『口ばかりの弟』と言う姉への侮辱にもなりかねない周囲からの評価を覆すためにも少年はこの作戦で汚名を返上しようと心を奮い立たせた。
しかし、その結果少年は今にも死を迎えようとしている。
姉の名誉を守るどころか、「死」と言う虚無へと少年は足を踏み入れてしまった。
悔しいな……
既に初恋も。誇りも。そして、理想すらも奪われていた少年はこれ以上何も後悔することはないと思っていたがそれは違っていた。
奪われて初めて理解した幼馴染への想い。
実力も才能もその間に存在する圧倒的な差を見せつけられてズタボロにされた男の矜持。
そして、
『弱いくせに
『口先ばかりの男ですのね』
『弱いくせに出しゃばるなんてダサくないの?』
『恥ずかしいと思わないの?』
『フン、教官も貴様のような弟を持って不幸だな』
『男として恥ずかしくないのか?』
守られ続けていたことでその背中に憧れ今度は己が守る側になって見せると言う意思。
それら全てを嘲笑うかのように奪われながらも少年は辛うじて生き続けた。
尊厳を奪われながらも少年は美しかった。
だが、運命はそんな少年の僅かな足掻きすらも無慈悲に刈り取っていった。
既に命しか残されていないと言うのにそれを対価や代償と言わんばかりに。
……『守りたい』と言う願いを持つこと自体が罪だったのか……?
少年は理想と言う名の「太陽」を目指した。
少年は蝋の翼で飛翔したイカロスなのだろうか。
ならば、今、少年が海原へと呑み込まれようとしているのは「太陽」に焦がれると言う分不相応な夢を求め続けたことへの罰なのだろうか。
……誰か、教えてくれ……
姉すらも悲しませたと言う自責の念を抱きながら墜落した。
空の騎士はかくして、海原へ、奈落へと身を任せるのである。
最近、再び「うみねこのなく頃に」に嵌まってしまいました。
と言うか、実はあの作品が私が創作活動に大きな影響を与えています。