IS×艦これ ~空を駆ける騎士と海原の戦乙女たち~ 作:オーダー・カオス
艦これ世界の描写が長く続きそうです。
IS世界に帰るのがかなりの先になります。
一夏と艦娘たちとの話と艦娘たちを書きたくなってしまいました。
……これ、原作タグを艦これの方にした方がいいでしょうか?
「ふ~、よし!今日も頑張るわよ!」
雲龍型三番艦葛城は最近完成したばかりの艤装を纏い気合を入れた。
「そして、何時かは憧れの瑞鶴先輩のように……!」
葛城には憧れの存在がいた。
かつての軍艦や船舶の誇りと記憶が具現化したとされる艦娘にはそれぞれ前世から受け継がれたものがあった。
その中で葛城が強く抱くのは翔鶴型二番艦である瑞鶴への憧憬だった。
空母としての葛城は一度も航空戦を経験したことがなく、大戦末期の敗色濃厚の際にはようやく竣工を終えた正規空母であった。
乗せられる艦載機が存在せず、水上砲台として本来の空母とは異なる扱いをされた。
その葛城が唯一、目にした戦えた正規空母こそが瑞鶴なのである。
それ故に葛城の魂には瑞鶴の雄姿は強く刻まれているのだ。
その後、彼女にも瑞鶴、いや、全ての機動部隊と比べても謙遜のない戦いとは異なる大切な役割が与えられることになったのだが、それでも空母として生まれたが故の
「あの時と違って、私も航空戦が出来る……!!
今度こそ、誰かを守れるのよ!!」
現在、彼女のいる世界は東西冷戦の最中にも存在していた人類存亡の危機以上の滅びへの時間が刻一刻と迫っていた。
それは東西冷戦以降に存在していた対話・圧力・工作と言った人類が辛うじてその命脈を保つことの出来た手段が一切通用しない脅威の侵攻であった。
それらを食い止める唯一の手段は「闘争」であった。
原初の掟とも言える「弱肉強食」。
それがかつて自然から独立した超越者と考えていた人類が直面している直視しなくてはならない現実であった。
どれだけ、平和や共存を愛そうとも叫ぼうとも訴えようともそれらには届くことはなかった。
兵士であろうとも、一般人であろうとも、男であろうとも、女であろうとも、子供であろうとも、成人であろうとも、老人であろうとも、富める者であろうとも、貧しい者であろうとも、病人であろうとも、健康な者であろうとも、腹の中に新たな生命を宿している者であろうとも、社会に貢献している者であろうとも、働かない者であろうとも、悲惨な生涯を送っている者であろうとも、幸福な人生を歩んでいる者であろうとも、平穏な日々を過ごす者であろうとも、悪人であろうとも、善人であろうとも、悪人でも善人でもなくとも、祈りを捧げる者であろうとも、子がいる者であろうとも、親がいる者であろうとも、養うべき者がいる者であろうとも、生きたいと思う者であろうとも、死にたいと思う者であろうとも、それらには関係がなかった。
人間の心の中にある憐憫や罪悪感を誘う要素、社会的秩序によって渋々放っておけない要素の有無に関わらず、それらはただ命を狩り獲っていく。
まるで、『死だけは平等である』と言わんばかりに。
その恐怖の名は「深海棲艦」。
突如として、50年近く人類そのものの存亡が危ぶまれることがなかった戦後史の中で現れた深海から現れし悪夢であった。
当然、大戦後、東西冷戦後と言う戦後史と言う歴史の区分の過去・現在・未来の中でも多くの争いは存在していた。
しかし、それでも本気で人類を滅ぼそうとする狂人は存在せず、人類は現在まで営みを継続し続けていた。
自分たちも滅びると言うのにそれでも争おうとする蛮勇、いや、凶暴さを人類は抑えることが出来ていたのだ。
それが知性による尊厳なのか、本能による生存欲求なのかは分からないだろう。
ただ前者ならば人は理性を誇り、後者ならば人は善性を誇るだろう。
しかし、そのような哲学は海の底より現れし破壊の使徒たちには関係がなかった。
ただ滅ぼし、奪い、壊す。
それだけが目的のように人類はほぼすべての海を失い、空を失い、陸すらも失おうとしている。
徐々に生きる場所と糧を失い、人々からは尊厳すらも失われようとしていた。
天も地も、そして、人すらも人は失おうとしていたのだ。
限られた土地と資源を巡り人々は心をも失おうとしていたのだ。
それはまるで、今まで人々が信じていた理性と善性がただの「幻想」であり、原罪と悪性こそが人間にとっての本質であると言わんばかりのことであった。
あらゆる宗教や神話に伝えられる終末論。
その前日談、いや、序章とも言える荒野が具現化し、人々の心は荒んでいった。
世界は絶望に包まれた。
しかし、かつてあったとされる希望に満ち溢れた未来が絶対ではなかったように、今、絶望で閉ざされた未来もまた絶対ではなかった。
人類はかつて互いに争い合い、憎み合い、殺し合った戦いを経験した。
だが、それすらも乗り越えたと言うべきか、いや、乗り越えようとする人々の想いが奇跡を呼んだのか、希望もまた顕現した。
それらはかつて、勝者と呼ばれ、敗者と呼ばれ、善と呼ばれ、悪と呼ばれ、正義と呼ばれ、罪人と呼ばれ、英雄と呼ばれ、勇者と呼ばれた存在が復活した存在だった。
彼女らはかつての敵味方の垣根を超えてただ過去より蘇り、今、手を取り合い未来を守り抜かんとしたのだ。
それこそが海原の戦乙女。
すなわち「艦娘」である。
彼女たちは人類史上、最も多くの生命が失われたあの戦いに関わった艦の魂が形を得た存在である。
そして、この葛城もまた人類の希望の一つであった。
何よりも彼女もまた、葛城として戦うことへの意欲を燃やしていた。
その根源は
今度こそは私も空を守ってみせる……!
彼女が辿った過去に在った。
葛城が進水した時、既に彼女には載せられる艦載機も搭乗員も残っておらず、彼女が戦える、いや、誰かを守れる術は対空砲火しかなかった。
それは正規空母として生まれた葛城にとっては悔しさを滲ませることであった。
だからこそ、彼女はかつての憧れを胸にと悔しさを戦意へと昇華させているのだ。
そして、同時に彼女にはもう一つ戦う理由が存在した。
それは
あの人たちの子供たちやそのまたの子どもたちの生きる世界……絶対に守ってみせるんだから……!
彼女が最も誇るべきである果たした役目に在った。
彼女には送り届けた多くの生命が在った。
そして、生命の命脈は現在にも脈々と続いている。
それ故にその生命を守ることに、いや、守れることは葛城にとっては何よりも嬉しいことであった。
「よし!先ずは水上移動から!」
葛城は意気揚々と海面へと足を置く。
そもそも、艦娘と言えども艤装の稼働には燃料を消費するのであまり単艦の訓練は推奨されていない。
しかし、葛城はようやく竣工される僚艦となるとある艦娘よりも先に竣工されてしまったことや、葛城の同世代となる他の最新鋭の艦娘と共に運用するためのデータと即戦力を早く欲する中央司令部からの要請で特別に認められていた。
現在、日本が運営している艦娘がいる鎮守府は四つである。
その為、葛城を始めとした同世代の艦娘たちをどのように配属させるのかが日本、さしては人類の未来の明暗を分けると言っても過言ではなかった。
そんな毎日の如くの訓練が始まろうとした時だった。
「……あれ?」
葛城は水平線の彼方を目にして一つの違和感を感じた。
「……何かしら?」
葛城は殆ど海面しか見えない海原に一つだけポツンと文字通り点在する一つの物を見つけたのだ。
「ウミガメ……?いや、でもこの反応は……」
葛城は警戒しながらもそれを深海棲艦とは判断しなかった。
その理由は彼女の持つ電探に金属の反応が少なかったからだ。
深海棲艦の身体は艤装を纏っていたり、同化しているため、金属の反応が動物よりも大きいのだ。
しかし、それでも葛城は気になった。
仮に、深海棲艦ではなくとも動物にしては金属の反応が大きいのだ。
「まさか……」
葛城は胸騒ぎがして、その浮遊物らしき物目掛けて航行した。
葛城が懸念したこと、それは
「あっ……!」
浮遊しているものが動物でもなく、深海棲艦でもないこと。
つまり
「ちょっと!?
大丈夫!?」
それが人間であることだ。
それが人間であることを理解した葛城はその漂流者へと駆け寄った。
「良かった……息はある……」
葛城が見つけた漂流者は外見の年齢は葛城よりも少し下の少年だった。
変わった服装をしており、どうやらダイバースーツのようなものらしい。
「……このご時世にダイビング……?
素潜り漁をしている訳じゃないし……」
深海棲艦が海を支配しているこの世界の海でスキューバダイビングを始めとしたマリンスポーツは引き気味である。
また、素潜り漁をすることなどもあり得ないはずだ。
その為、少年の格好には違和感が存在したのだ。
そして、もう一つその少年には違和感があったのだ。
「……何かしら、この籠手は?」
それは少年が右手にしている籠手のようなものだった。
「アクセサリーにしてはおかしいし……
何かの装置かしら?」
その籠手は機械のようであった。
その見慣れない物を目にして葛城は困惑するが
「いや、そんな事よりも……!」
葛城は少年に肩を貸して母港へと急いだ。
今、ここに空から落ちた騎士と海の戦乙女は出会った。
太陽の象徴である三脚の烏と太陽に焦がれ墜落した蝋翼の少年は出会った。
空に焦がれる者同士が出会ったのだ。
さあ、始めよう。
彼と彼女の絆の物語を。
深海棲艦の忘れられがちな脅威。
深海棲艦は陸地にも上れること。