興味深い試みを提案されたのでさっそく実行に移すことにする。
このカルデアに滞留している数多のサーヴァントたち。彼らをクラス名で呼んだなら、いったい誰が私のもとへ一番に来てくれるのか、というちょっとした戯れである。
サーヴァントたちを試すような感じになってしまうけれど、まあ、どうか勘弁してほしい。
だって、ほら、気になるしね?
「んっ、んんっ……」
喉の調子を整えて、では、二クラス目である。
「アーチャー!」
はてさて、いったい誰が来てくれるのやら。
ていうか、いくらサーヴァントとはいえ、ただ呼んだだけで来てくれるものだろうか。
*
「呼んだか? マスター」
扉を開けて颯爽と部屋に入ってきたのは、ウチでもかなり付き合いの長いサーヴァントの一人であるアタランテであった。
「やっ、アタランテ」
「うん、おはよう、マスター」
笑みを浮かべて手を上げれば、ややはにかみながらも同じようにして応えてくれる。かわいい。
「それで、なにか用か?」
猛禽のような目を細めて、問いかけてくる。
べつにそんな剣呑なことはない。私はアタランテに事情を話した。
会話の場は前回同様、ベッドの上だ。
そろそろ、この部屋にもテーブルと椅子を置こうと思う。不便だ。いろいろと。
「そうか。それはまた、妙なことを」
「妙、かなぁ」
「うん。そんな試すようなことをしなくても、私にはいつも汝の声が届いている」
ストレートに過ぎるその言葉に、思わず、一瞬で頭が茹った。
きっと、顔も真っ赤になっている。
「……アタランテは、たまにズルいよね」
「ずるい? 私がか? それを言うなら汝だろう」
「そんなことないよ」
否定すると、アタランテは目を細めて、少し意地の悪い表情を浮かべた。
口元は少し笑っている。
「いいや、その手練手管で古今東西の英雄たちを飼い慣らしておいてよく言う」
「もう、私、そんなつもりないよっ」
「ふふっ。冗談だ。わかっている。私だって、汝の手管にではなく、汝の人柄に好意を持っているに過ぎない」
「……あぅ。やっぱり、あなたはズルいよ、アタランテ」
そんな言葉を聞かされる身にもなってほしい。
しかも言うのはあのアタランテだ。洒落にならない。本当に。
「そうかな。そんなつもりはないんだが……」
困ったように笑う彼女に、頬を膨らませてみる。
怒ってますアピールである。
「む。マスター、怒ったか?」
「知らなーい」
意地の悪い子にはちょっとお仕置きしなきゃなのだ。
「マ、マスター。その、怒りを鎮めてはくれまいか?」
「つーん」
顔を背け続ける私と、目を合わせようと正面に回りこみ続けるアタランテ。
しばらく二人、ベッドの上でぐるぐると回っていると、次第にアタランテの耳がへこたれ始めた。
「マスター……。その、汝が怒っていると、私はどうしていいかわからなくなってしまう」
聞こえてくる声もずいぶんとしょぼくれている。
自分でやっておいてなんだけど、こうも悲しそうにされると、罪悪感が一入だ。
「どうか機嫌を治してくれ、マスター……」
止めにこれである。
私は、怒っていたフリも忘れて、アタランテの胸へ飛び込んだ。
「ふふっ。怒ってないよ。冗談。ごめんね、アタランテ」
私ごと後ろへ倒れこんだ彼女は、悪戯っぽい私の声に、ほうと安堵の息を吐いた。
「……ああ、もう。汝もまた、人が悪いな」
「そんなことないよ」
「いいや、あるさ。このアタランテの心をああまで掻き回すのは、汝くらいのものだ」
至近距離。
息遣いが聞こえる。
唇が触れ合いそうな近さで、私たちは互いに微笑んだ。