興味深い試みを提案されたのでさっそく実行に移すことにする。
このカルデアに滞留している数多のサーヴァントたち。彼らをクラス名で呼んだなら、いったい誰が私のもとへ一番に来てくれるのか、というちょっとした戯れである。
サーヴァントたちを試すような感じになってしまうけれど、まあ、どうか勘弁してほしい。
だって、ほら、気になるしね?
「んっ、んんっ……」
喉の調子を整えて、では、三クラス目である。
「ランサー!」
はてさて、いったい誰が来てくれるのやら。
ていうか、いくらサーヴァントとはいえ、ただ呼んだだけで来てくれるものだろうか。
*
まず、コンコン、とノックの音がした。
次いで、扉を隔てた通路から部屋の中の私へ向けて声が投げられた。
「マスター。俺だ。入るぞ」
落ち着きのある男の声。聞き覚えのあるこれは、カルナのものだ。
「うん、どうぞー」
律儀に私の返事を待ってから扉が開いた。
そこに立っていたのは、やはり、金色の鎧を身にまとう槍の英霊、カルナである。
「いらっしゃい」
「ああ」
「どうぞ、座って」
「すまない」
これまでの反省を活かして、テーブルと椅子をついに設置した。
カルナにはそこに座ってもらって、私もその対面に腰掛ける。
「…………」
「…………」
しばらく、二人して見つめあったまま時間が過ぎた。
私は両の肘を立てて顎を支えた姿勢で、カルナはどんな姿勢をとるでもなくただ座った状態で、ただ無言が続く。
カルナはさすが半人半神だけあって、絶世の美男子といった出で立ちをしているし、彼の鋭い瞳も場数を踏んだ私からすれば美しさの一要素でしかない。彼とこうして相対しているだけでも役得というものだ、うん。
「……それで、マスター」
「へっ? あ、うん、なに?」
「いや、用があって、俺を呼んだのだろう?」
首を傾げて、尋ねてくるカルナに、ようやっと私は用件を思い起こした。
そういえば、そうだった。
「うんうん。あるよ、用。あるんだよ、カルナっち」
「カルナっちとは、俺のことか?」
「イエス。それでね、カルナくん」
「ああ」
事のあらましを伝える。
カルナが一番に来てくれたことも。
すると、彼はなぜだか嬉しそうに、少し微笑んだ。
「そうか。ならば、俺はお前の期待に応えられたのだな」
「っ……!? っっっ……!?」
それは……。
カルナ。それは、反則だと思う。
「マスター。どうした?」
訝しげにするカルナを背に、ベッドに飛び込んで悶える。
だって、あのカルナがちょっとだけ微笑んで、私の声に応えられたことを喜んでくれたのだ。
これはあれだ。控えめに言って、死ねる。尊い。無理みが強い。
「ふぉぉぉぉっ……!」
「マスター、なにかあったのか? 俺で解消できる程度のストレスならそれに越したことはないが……。さて、しかし俺などに解消できる悩みなどあるのだろうか……」
「ぉぉぉぉっ……! んっ、んんっ。いや、うん、大丈夫。問題ないよ」
平静を取り戻す。
「一過性のものだし、うん」
「つまり、またあの状態になるのか?」
「まあ、場合によるかな」
「そうか。大変だな」
きっと、その最たる原因はあなただろうけどね、カルナ。
「では、俺は自室に戻る」
それだけ言い残して席を立とうとする彼を慌てて止める。
「ちょ、ちょっと待って」
「どうした。まだ、なにかあるのか?」
振り返って尋ねるカルナに、私は少しだけ、言いあぐねた。
この心中を告げたら、彼はどう思うのか、なんてそんなことを考えてしまったのだ。
「えっとね、」
頭を振る。
カルナに限って、悪いようにはならないよね。
「もう少し、あなたと話してたいんだ」
彼は、また微笑んでくれた。
「……ああ、わかった。では、そうしていよう、マスター」