興味深い試みを提案されたのでさっそく実行に移すことにする。
このカルデアに滞留している数多のサーヴァントたち。彼らをクラス名で呼んだなら、いったい誰が私のもとへ一番に来てくれるのか、というちょっとした戯れである。
サーヴァントたちを試すような感じになってしまうけれど、まあ、どうか勘弁してほしい。
だって、ほら、気になるしね?
「んっ、んんっ……」
喉の調子を整えて、では、四クラス目である。
「ライダー!」
はてさて、いったい誰が来てくれるのやら。
ていうか、いくらサーヴァントとはいえ、ただ呼んだだけで来てくれるものだろうか。
*
「お呼びでしょうか、マスター」
マイルームへやって来てくれたのは、紫色をまとった美女メドゥーサであった。
魔眼殺しの眼鏡をかけて、ゆったりとした私服に身を包む彼女は、同性である私からしても魅力的に過ぎる人である。
具体的には彼女と目を合わせると、なんかこう、びびっと体に電流が走ったような感じがする。
「……マスターも、ずいぶんと抵抗しますね」
「え、なに?」
メドゥーサの視線に身震いをしていると、その本人から少し意図を図りかねる言葉が投げられた。
首を傾げると、彼女は私が腰掛けるベッドへと座って、そのまま私の顔へ手を伸ばした。
頬を包み込むようにする彼女が、顔を近づけてくる。
「いえ。ほら、私、両方イけるクチじゃないですか?」
「えっ!? 初耳だよっ」
「そうでしたか。まあ、それで、普段からマスターにもアピールしていたのですが」
「えぇっ!?」
それか。あの電流の正体は。
あれか、私の体、あの視線に反応してたのか。やべぇ。よくやった、マイボデー。よく耐えた。
「正直言って、今もあなたに性的興奮を覚えています」
「いやぁぁ!? 私の貞操がぁぁぁ!?」
「冗談です」
悪びれもせず、真顔で小首を傾げるメドゥーサに、私は全力で安堵した。
「あ、でも、あなたに発情するのは本当ですよ?」
「……あっ、はい」
二の句が継げなかった。わりとガチで。
「……それで、あなたはいったいどんな用で私を呼んだのです?」
「いえ、あの。そのですね……」
急激な会話の上がり下がりに、困惑しっきりだけれど、私はなんとか事のあらましを話した。
「はあ、なるほど。そういうことでしたか。では、特にこれといった用があるわけではないのですね」
「まあ、うん」
「わかりました。では、私はこれで自由にさせてもらいますね」
そう言ってにこやかに微笑んだメドゥーサは、私の頬を最後に一撫ですると、立ち上がり、部屋に備え付けてある本棚へと歩み寄った。
どうやら、ここで読書をするつもりのようだった。
読書は彼女の趣味だ。それに合わせて、私も読書を嗜むようになって、部屋に本を置くのが常となった。
読書の趣味が互いに違うので、彼女はたまに私の部屋へ新しいジャンルを開拓しにくるようになったという経緯があったりなかったり。
「……マスター。なにやら、子供向けの本が増えていますね」
本棚に並ぶ背表紙を撫でながら、メドゥーサが声を発した。
「うん。ジャックやナーサリーたちと一緒に読むことが増えたからね。児童文学書を入荷しました」
ハリー・○ッターとか。マジ偉大。
「そうですか。では、私は……」
メドゥーサはその中から数冊を選ぶと、ベッドへ運んできて、横座りをしている私の足を枕に横になって、それを読み始めた。
互いに言葉はなく。
けれど、その静謐が二人は嫌いではなく。
私とメドゥーサの二人の時間は、いつもこんな感じで過ぎていくのだった。