興味深い試みを提案されたのでさっそく実行に移すことにする。
このカルデアに滞留している数多のサーヴァントたち。彼らをクラス名で呼んだなら、いったい誰が私のもとへ一番に来てくれるのか、というちょっとした戯れである。
サーヴァントたちを試すような感じになってしまうけれど、まあ、どうか勘弁してほしい。
だって、ほら、気になるしね?
「んっ、んんっ……」
喉の調子を整えて、では、五クラス目である。
「キャスター!」
はてさて、いったい誰が来てくれるのやら。
ていうか、いくらサーヴァントとはいえ、ただ呼んだだけで来てくれるものだろうか。
*
「マスター、邪魔するわよ」
やや横柄な声音で部屋へ入ってきたのは、神代の魔術師メディアその人であった。
「おおう、メディアさん」
「……なにかしら? 自分から呼び立てておいて、その態度は」
眉間に皺を寄せて、さも迷惑そうにする彼女に、私はごめんごめんと手刀を切って、椅子を勧めた。
「それで、いったいなんの用かしら、マスター」
「ああ、いや。それがね、」
ざっと、事のあらましを説明すると、今度こそメディアは額に手をやって、深くため息を吐いた。
そして、そのままの姿勢で黙り込む彼女に、私はなにか嫌な予感を覚えた。
後に思う。このとき、一も二もなく逃げ出しておけばよかった、と。
「あのー、メディアさん?」
「……まったく。まったく、足りないわ、マスター。気苦労の絶えないカルデアでの日々に加えて、能天気に過ごすあなたの顔を見ていることによって私のSAN値がもうマッハ! ……マスター!!」
「はひっ!?」
勢いよく立ち上がって、なにやら叫び始めたメディアに気圧されて、尻ごむ。
「癒しが足りないのよ、マスター!」
「ひゃい!?」
「あなた! その体、少し私に貸しなさい!」
「ほぇっ!?」
その後の記憶は、あんまりない。
気づけば私はマイルームから連れ出されて、メディアの部屋へ連れ込まれており、恐らくは彼女謹製であろう少女趣味の衣装を着せられ、部屋の一部に作られた撮影セットの中へ放り込まれていた。
「メ、メディア! これ、なに!?」
「なにって、撮影よ?」
「それはわかるけど!」
「じゃあ、いいじゃない。私のストレス発散に付き合いなさいな、マスター」
コケティッシュ。
ラブリー。
エキゾチック。
キュート。
クール。
パッション。
エレガント。
クラッシー。
様々な雰囲気の衣装をとっかえひっかえ着せ替えられて、延々とカメラの前でポーズを要求される時間が続く。
「……メディア、メディア」
「……なにかしら、マスター。あ、もうちょっと科を作ってもらえるかしら?」
「こう……?」
「ええ、そう。そのまま」
「……それで、メディア。これ、いつまでやるの?」
私の気力涸れきる声音に、さすがにメディアも跋が悪そうに、最後に一枚シャッターを切って、もういいわ、の一言をくれた。
「ええ、もう。これであと何年かは戦えると思うから」
デジカメの画像を確認しながら、にへらと頬を緩める彼女に、私も疲れきった笑顔を返す。
私服っぽい意匠の服ならまだしも、ナースとかメイドとかのコスプレ染みたやつは結構恥ずかしかった。
メディアが煽るような構図で撮ろうとするものだから、なおさらだ。
「さ、マスター。今日はもういいわ。お帰りなさい」
お前は用済みだとばかりに、そう言いきったメディアに私は口をへの字にした。
さすがに扱いが雑すぎやしないかと、マスターちゃんは思います。
「なにかしら、その顔は」
「なんでもないですよー。へっへっへー」
「気色の悪い声を上げないでちょうだい」
「メーディアちゃーん!」
手をワキワキさせながら、デジカメで手が塞がっているメディアへ飛びつく。
「きゃっ!? ちょ、マスター!?」
「よいではないか、よいではないかー」
私もオカズを提供したのだから、彼女もメディアニウムを私に摂取させる義務があると思うのです。
「ひゃっ、や、やめなさいっ、マスター!」
「ここかー、ここがええんかー」
「んっ……。ちょっと、やぁっ……!」
撮影の間にすっかり落ちきっていた日が昇るのは、日を跨いでまだまだ先のことである――――。