いきなりですが、この作品は私のオリジナルキャラが幻想郷に行くお話となっております。
また、下記の要素が含まれるため、苦手な方はご注意ください。
*弾幕ごっこが少ない
*多数の視点
*二次創作キャラ
*一部キャラの優遇
と言うか苦手だとしてもとりあえず読んでほしいです!
※この第一話は、9話投稿後に書き直しを行なったものです。
第一話〜新たな来訪者〜
妄想録1話—新たなる来訪者—
授業終了のベルが鳴り、講師の掛け声を合図に教室の生徒達は一斉に「疲れた」などの声を上げながら席を立ち始めた。
本日の
何となくのんびりして居たい気分なのだが、これからこの教室は夜間部の生徒が使うので教室に残ることはできない。食堂に行っても良いかもしれないけど、あそこは課外になると生徒達でごった返すからあまり好きじゃない。
うん。大人しく帰るとしよう。
そう決めた俺は冷蔵庫の中身を思い出しながら帰りに買うものを考えてノートに手を伸ばすものの、横合いから伸びた手によってノートは取られ、手は空をつかんだ。
「また落書きしてたのか、何だっけこいつ」
「……
「ふーん」
質問した癖に興味のなさそうな返事をする友人に口を尖らせつつノートを奪い取って鞄に詰める。
ちょくちょく書いているから少しは上手くなったかも知れないけれど、やっぱり人に見せるにはまだ恥ずかしさが残るレベルで出来ればリアルの友人には見られたくない。
「で、何の用だ?」
「何の用って、俺が来た時点で分かるだろ。飲み行こうぜ!」
大体察しはついていたが、やはり飲みの誘いか。
「パスだ。おととい付き合ったばかりだろ」
「ちぇー、ツレない奴だなー」
「……今日は何曜日だ?」
「木曜日だな」
「俺は明日も一限から授業あるんだよ。つかお前もだろ」
「そんなの関係ないだろー」
こいつの酒好きにも困ったものだ。ほぼ毎日の様に飲み行ってるみたいだけれど、そんな金を一体どうやって賄っているのやら。
「とにかく、俺はパス」
「へいへい、しゃーねー。他をあたってみるわ。んじゃなー!」
無理に誘っても無駄なのは解っているのか友人はすんなりと諦めて疾風のように教室から出て行く。
さてと、俺も帰るとするか。
軽く欠伸と背伸びをしてから鞄を担いで歩き出す。校内にはまだまだ人が残っていて所々で
別に友人がいないわけではないが、ああして騒ぐのは好まないんだ。飲みに誘って来た友人だってたまたま出身校が同じだから俺に絡んできているようなものだしな。
帰りがけに小腹が空いたので駅のコンビニでおにぎりとお茶を買った所で電車到着のベルが聞こえ慌てて階段を駆け上がり電車に飛び乗る。
ふぅーっと長く息を吐いて手近な席へと腰掛けるが、俺は強烈な違和感に襲われ座ったそばから立ち上がった。
もし傍目から見てる人が居たら俺が座ろうとした椅子がトランポリンか何かに見えた事だろう。だが俺の姿を見る者は
普段のこの時間は俗に言う帰宅ラッシュと被っており飛び乗りで座れる席なんてものはあるはずが無い。そもそも誰も乗っていないなんて事があるはずないのだ。
眉根を寄せながら考える。もしかして俺は回送電車に乗ってしまったのでは無いか、と。
普通に考えれば回送電車がこんな途中駅で止まるはずが無いし、よしんば停まったとしても間違い乗車が無いように案内を出したり駅員が見ているはずだ。だが考えたところで人影のない車内は一人で居るだけで不安感を煽り、忙しなく首を回して少しでも安心材料を得ようと体を動かす。
半ば諦めのような気持ちを持ちながら座席に体を投げた俺はポケットに入れた携帯の存在を思い出し、慌てながらも乗った駅への問い合わせダイヤルを検索するが携帯が出した答えは無慈悲な物だった。
「うっそだろ!?都心で圏外とかあり得ないだろ!」
信じられずに窓の外を見やるが日の射し込む電車は当然のように街中を走っており電波を遮りそうなものなんて無い。
ため息をつきながら落胆したその時だった。
『——…スター、申し訳あ……ん………のあ達は……』
「!」
『この……は、マス……と』
「な、なんだ?」
女性とも男性とも取れるような声が途切れ途切れに響いた。
その声は車内放送にしては耳に残り、まるで直接頭に語りかけられているかのような感覚た
『——同じ時を、生きたくなってしまいました』
ずっと途切れ途切れだった声は最後の一言だけハッキリと聞こえ、まるでそれが合図だったかのように強烈な眠気を覚えた俺は争う間も間も無く眠りの深淵へ落ちていった。
こうして俺は望まずして幻想の世界へと旅立ったのだった。
***
ふわりと風を纏いながら僕は山の中腹部に降り立った。
まさか顕現先が空中だなんて思いもしなかったが、他のみんなは無事だろうか?
本当ならば全員揃って結界綻びのある盆地に降り立つはずだったのだが、どうやら何者かに邪魔をされたらしい。
降り立つ際に何者かの視線を感じたので注意して山を降りよう。そう思いながら後ろを振り返ると、そこには一見すると修行僧に見えなくも無い白い服に紅葉があしらわれた黒いスカートを履いた白髪の少女が立っていた。
およそ重いものを持つのには向いていなさそうな細腕には大きな片刃の刀と、スカートと同じく紅葉のマークがついた大きめの盾を持ち、その刀の切っ先は僕に向けられている。
「端的に問う、貴様は何者だ」
可愛らしい顔立ちとは程遠いドスの効いた重く響く声で少女が問う。この程度ならまだ臆する程ではないので、相手を刺激しないように努めて冷静に体を向き直してから質問に答える。
「……僕は
「どこから来た」
「あー…えっと……」
どこから、と問われた僕は反射的に言い淀んでしまう。仕方がないだろう。なんと言っても僕はどこからも来ていない。もし答える言葉があるとすればそれは今居る場所の上空になる。
「もう一度問う、どこから来た」
「……空から、来ました」
答えを持ち合わせていない僕は突っ込まれるのを承知でそう答えるしか無く、どうやってこの場を切り抜けるのか悩む他になかった。しかし少女はすぐに突っ込むことはなく、何かを考えているような顔になる。
ブツブツと呟く少女の言葉からは人里、外来人、男どという言葉を聞き取ることができ、少なくともそう遠くない位置に人の住む場所がある事や僕が既にここの人間ではないとバレている事を理解することが出来た。
中でも気になるのは男と言う言葉だ。考えるまでもない。これは僕のことを指している言葉だ。今まで幾度となく言われて来た『設定』があるから嫌が応にも耳に解る。
身長は180cnを超え、体格線を隠すように出来ている漆黒の装束に身を包み、おまけに元から大きくない胸にサラシを巻いて更に潰し、顔や声も中性的と男に見えやすいのは仕方のないことだ。
解っている。解っているのだが、こう現実で突きつけられると来るものがある。
「……とりあえず貴様を人里まで送ろうかと考えているが依存はあるか?」
「ありません。人のいる場所に送っていただけるのであればむしろ嬉しい限りです」
「そうか、ならば着いて来——」
「——ちょーっと待ったぁ!」
少女が背を向け歩き出そうとしたその時、大きな声とともにヒュゴッ!と突風が山肌に落ちた枯葉を舞い上がらせ、同時に黒い影が僕たちのすぐそばに舞い降りた。
一瞬だけ枯葉から顔を守るために手で覆いくず様影が下りた場所を確認すると、大きな烏のような黒い翼に肩が膨らんだ少し変わったシャツとミニスカートを履いた少女が枯葉のシャワーの中に立っているのが見えた。その黒い翼や風と共に現れる様は烏天狗を思わせる。
「清く正しい
「……文さん?」
「ん?なんだい
少女の明確に怒りを孕んだ声色を物ともせずに降り立った彼女は事も投げな返事を返した。
「私はこれからこの外来人を人里まで案内しなければならないんですよ。この人を取材するならその後にして頂けませんか?」
「それでも良いけど、その場合は報告上げておいてね。この人もらっちゃって良いなら後で私が上げておくよ?」
僕のあずかり知らぬ所で僕の扱いについて話が始まっていた。こちらとしては出来れば早く人里に行って皆の行方を調べたい所なのだが。
「——じゃ、そういうわけだから私が預かっちゃうね」
黒い翼の少女は勝手に話を決めると僕の腕を取って舞い上がった。そりゃあ翼はあるし、風と共に現れたし飛んだとしても不思議ではないがあっさり飛ばれると流石に驚きが湧く。
「あ、あの……。僕はどこに連れて行かれるのでしょうか?」
「んー、とりあえず落ち着いて話を聞きたいし
「そうですか……」
ああ、これは人里に行けそうにないなと思いながらこっそりと溜息をつく。
「着いたら
その言葉に身が強張るのを感じた。一体、この世界はどう言う場所なんだ。
***
好杏が山に降り立ったほぼ同時刻、紅魔館と呼ばれる真っ赤な洋館の上空から悲痛な叫びが響き渡っていた。
「ヒィエアアァァァァァ!!?!落ちてるゥゥゥゥ!!」
黒のノースリーブセーターと真っ赤なミニスカートの上から左肩に鎧と腰から金属製の黒い鎧スカートを着けた少女は、地球の引力に引かれるがまま落下の一路を辿っておりこのままでは地面に真っ赤な花を咲かせるのは時間の問題だった。
「無理!死ぬ!この高さは絶対死ぬぅ!誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「……ふぇ?え?に、人間!?まずい!あのままでは!」
紅魔館の門前に立っていた緑のチャイナドレスを着た女性が少女の叫びを聞いて目を覚まし、すぐさま大地を蹴って
「え?え?何!?ぶつかる!どいて!でも助けてぇ!」
相反する言葉を投げつけられて苦笑しながらも女性はふんわりと優しく少女のことを受け止め、そのまま空中を飛んで門の外まで行き少女を地面におろす。
その時だった。ズドォン!という激しい音と地響きを起こして何かが地面に落ちた。位置としては門の外すぐそばで、もう少しずれていたら館の外壁を壊していたことだろう。
「こ、今度は何!?」
「……あー」
困惑する女性を後目に少女は落下によってできたクレーターに近づいてその爆心地にある物を持ち上げる。
見た目は巨大で無骨な鉄の腕、少女の胴よりも大きいソレを少女が持ち上げると軽く振って見せた。驚きの表情を見せる門番の女性に少女は自分の物だと説明する。
「助けてくれてありがとう。……助けてもらったついでに教えて欲しいんだけど、街か何かってどっちに行けばある?」
「え?あ、ああ。人里なら森つたいに歩いて行けばあるけれど、貴女は外来人、ですよね?それでしたら、先にあちらの方向にある神社に行くべきだと思いますよ。そこに居る巫女がここの事を色々と教えてくれると思います」
ひとまず邪険にはされて見たいで安心する。外来人と言う聞き慣れない言葉には少し考え込んだが、すぐに「よそ者」だと言われてる事に気付いた。
お礼を言ってから指し示された方向に向かって足を一歩踏み出そうとした瞬間に嫌な気配を感じたあたしはその足を空中で止めた。
その脚の先の地面には一本のナイフが刺さっており、踏み出していたら足に刺さっていたかもしれない。
あたしはゆっくりと足を下ろし、ナイフが飛んできた方向へ首を向け、ナイフを投げた人物、門番の女性の更に後ろ門の内側に居るメイド服の女性を睨みつける。
「へぇ…、本当に避けるとはねぇ?」
メイドは台詞とは裏腹に意外そうな声で呟く。
あたしの気のせいでなければ、地面に刺さっているナイフは
無論、ただ私が気付けなかっただけという可能性もあるが。
「咲夜さん!何をして——」
「——黙って見てなさい」
門番を一言で一蹴すると、メイドは腿に付けたベルトからナイフを数本抜いてこちらに向けて投げる。
「——っ!?」
あたしの目が節穴でなければ、メイドの手から投げられたナイフは一本だったはずだ。
しかし、実際にはナイフがあたしを取り囲むように現れた。360度全方位から襲い来るナイフはとても避けられるものではなく、このままでは私は剣山へと変わってしまうだろう。
ならばと、あたしは右腕に持った
爆発により吹き飛んだナイフの一つがメイドの頬を軽く裂き一筋の傷を作った。
「やるってんなら遠慮なく潰すぞ。メイド」
「いえ、十分だわ。ついてきなさい。お嬢様がお呼びよ」
メイドはわざとらしく指をパチンと鳴らすと姿を消し、館の入り口まで一瞬で移動した。超スピードか、はたまた時間干渉か。先程の虚空に現れたナイフを鑑みれば後者だろうが、いずれにせよ実力の底が見えないメイドだ。
個人的にはああいった小手調べの様な戦いは小馬鹿にされている気がしていい気はしない。
開けられた門を潜る際に、門番から渡された“入門証”を服に貼り付けて周囲に警戒しつつメイドの下まで歩く。あの門番もどことなく只者ではなさそうだし、こんなメイドをけしかけるお嬢様とやらもまともな奴では無いだろう。
「で、あたしに何の用なんだ?」
「そうピリピリしないで頂戴。貴女は招かれた客なのだから危害を加えたりすることはないわ」
「はん。どうだか…」
いきなりナイフを投げつけてくる相手に危害は加えないなんて言われても信じられるはずがない。全くもって馬鹿げた言葉だ。
入り口を開かれ、メイドに続いて屋敷へ足を踏み入れるとそこは外の空間とはまるで違う世界が広がっていた。
——赤、赫、朱、緋、紅。
外装も紅いが、中まで赤一色に染まり何処と無く空気も重く感じる。例えるならば血に染まった吸血鬼の館とでも言えば良いだろうか。心なしか外から見た時よりも広く感じるし、まともな空間では無いのは確かだろう。
しばし歩いた後、メイドが重厚な扉の前で立ち止まった。
「こちらに紅魔館が主人がおわします。どうぞご無礼のなさらぬ様に」
「あたしをいきなり襲ったのは無礼じゃねえのか?」
「………」
メイドはあたしの問いに答えず、黙って扉を開いた。すると開いてゆくとの隙間から薄い霧の様な物が廊下へ流れ出す。
つくづく趣味の悪い。そう思いながら開かれた戸を潜った。
「待っていたわ。幻想に招かれざる者よ。いや、敢えてこう呼ばせてもらおう
その声の主は明確な殺意を向けてそう言い放つ。
小さな体躯に似つかわしくない存在感と威圧感を放ち、あどけなさの残る顔には真っ赤な瞳が輝き、薄くはにかんだ口元には鋭い牙が覗いていた。よく見れば足下を撫でる霧も目の前の彼女から出ている様に見える。
さっきメイドが『紅魔館が主人』だと言っていた。紅の悪魔、紅に染まった館。つまりこいつは——
「そう怖がるな。
——
***
時を同じくして、鬱蒼とした竹林にも一人の外来人が降り立っていた。
豊満な胸にスラっとしたモデルの様な体型に真っ赤なジャケットを羽織った金髪の女性。それだけではなく、彼女の頭部には特徴的な大きな狐の耳が付いていた。
「……なんだか、降りてきた時よりも広く感じるなぁ」
私はボヤく。魔法を使いゆっくりと竹林へ降りたまでは良かったのだが、何故かいくら歩いても竹林の外へ出ることが出来なかった。
上空から見た時はそこまで広いと思わなかったので迷っているだけと見たほうが良いかもしれない。
私はため息をついてから柏手をポンと打ち、そのまま耳を立て静かに神経を研ぎ澄ます。
これは柏手に合わせて魔力を飛ばし、跳ね返りを耳で捉える事で周囲の地形を把握するソナーのような探知魔法の一種なのだが鬱蒼とした竹が邪魔で広範囲を知る事は出来なかった。だが、近いところに家の様な物があるのは感じ取れたので少なくとも無駄ではなかったようだ。
念のため、数歩進むごとにポン、ポン、と柏手を打ちながら探知した家の方角へ歩いて行くと、やがて平屋が目の前に姿を現した。
「ごめんくださーい」
戸を叩いて声を張るが家の中からは誰も出て来なかった。
平屋の付近は明らかに人の手が入っているので、誰も住んでいないと言うことはないはずなので待ってみる。
探知をしていてわかったのだが、この竹林は不可思議な力、おそらくは結界のようなもので囲まれており普通に歩いていたら一生かけても出られはしないと思う。
ならばそんな場所に家を構えている人物なら抜ける方法も知っているだろうというのも読みだ。もっとも家主がすぐに帰ってくるとは限らないが。
最悪、数日程度なら瞑想でもしていれば生きていられるけれど、私自身は仙人でも何でもないのでこれは最悪の中の最悪の案だ。
何にせよ待つのは暇なのでその辺に腰掛けて竹林をボーッと見ていると、ある事に気付いた。
迷うのはてっきり結界のせいだけだと思っていたが、ここの竹は目で判るくらい早く成長している。意識してみなければ気付けない程度ではあるが、一般的な竹の成長と比べて圧倒的に早く、三十分としない内に景色は変わるためこれでは目印などの方法はまるで役に立たない。
厄介な竹林だ。そう思いながらゆっくりと待つ。
どれほど待ったかはわからないが元より傾いていた日がいよいよ沈もうとするほどの時間が経ち、ようやく待ち人は現れた。
パキパキと地面の竹を踏み潰す音を鳴らしながら来たのは赤いもんぺを履き、大きな籠を背負った白髪の少女で、少女は家の前に居る私に怪訝そうな顔を向けてから多少の警戒を孕んだ目を私に向けた。
「こんにちわ」
「…こんにちわ。えっと、どちら様かしら?」
少女らこちらからは目を離さずにゆっくりと籠を降ろしながら挨拶を返す。
「私は通りすがりの者なんですが、少々道に迷ってしまいまして——」
「——仕方ないわ。ここは
訳を説明しようとしたところで少女は話を食った。話が早くて助かる。
「はい。人の居るところまでお願いできますか?」
「人里まで…?これから暗くなるって時に妖怪が人里に何の用かしら?」
「へ?妖怪?」
「ごまかそうって言うの?その耳、さしずめ妖狐ってところでしょう。わざわざ人型になってまで人里へ行く理由を教えてもらいないかしら」
いきなり妖怪扱いされたのには驚いたが、言われてみればこんな耳の付らそいた人なんて居ないのだから妖怪と思われても仕方ないのかも知れない。妖怪が本当に居るなんて到底思えないけれども。
「信じてもらえないかもしれませんが、これでも一応は人間なんです」
「……まあいいわ。見ない顔だから言っておくけれど人里で何かしようってつもりなら止めるのね」
元々凛々しかった少女の瞳がまるで猛禽類の様に鋭く輝く。それだけでも私は少し萎縮してしまったが、少女は更に身体から熱を放ちパチパチと火花を散らしてみせた。
「んな!?」
「さもなくば私が貴女を消し炭にするわ」
ジリジリと肌を焼く感覚と汗が垂れる感覚で、その言葉が冗談でないのははっきりとわかった。
熱気からは妖気や魔力の類は感じない。なるほど
「ご安心ください。私は別に人里を脅かそうとして居るわけではありませんから。ただ宿を探しているだけですよ」
「そう。なら着いてきなさい。早くしないと夜の帳が降り切ってしまうわ」
「はい。お願いします。あっ…」
「どうしたのかしら?」
いよいよ案内してもらうって時になって私はようやく思い出した。そう、まだ名乗ってすらいない事に。
「申し遅れました。私は
「ああ、そういえば名乗って居なかったわね。
「藤原さんですね。改めて、道案内のほどよろしくお願いします」
藤原の案内の下、すっかり暗くなって来た竹林を歩くすがら、私は考えていた。言葉は通じるものの日本とも言い難い奇妙な世界。存在を追われた者の最期の楽園。私達が存在を得るために好杏が選んだこの舞台で一体何が待ち受けているのかを。
***
それぞれの者が幻想の世界に降り立ち住民達との邂逅をしている頃、男は鬱蒼とした森の中で目を覚ました。
すでに日は暮れかけており、ただでさえ陽の光が差し込みにくい森の中は一足早く闇が訪れ、辺りの様子は掴めない。俺は近くに落ちていた自分の鞄とコンビニの袋を手に取り、携帯の光を頼りにその中身を確認する。
ひとまず中身が無事な事に感謝してコンビニで買ったおにぎりを平らげる。どれほど眠っていたのかはわからないが少なくともおにぎりが痛むほどではないようだ。
携帯は相変わらず圏外を示しておりライト代わりにしかならない。幸い大容量のモバイルバッテリーがあるため充電に関してはしばらく持つが、警察や消防にすら繋がらないのは困る。
そもそも俺は電車に乗っていたはずだ。変な声が聞こえて、急に眠くなって。もしや、夢?
そう思って頰を抓ってみると確かに痛みを感じるため夢とも思いにくい。
ゆっくりと長いため息をついてから俺は鞄を担ぎ直して気を引き締める。遭難した場合は下手に動かないのが鉄則らしいけれど、一人暮らしの大学生なんて一日や二日学校に来なくたって誰も心配しない。何より俺は友人も少なく精々あの呑んだくれが不思議がる程度だろう。
水分は500mlのお茶が一本とキャップ付きの缶コーヒーが少しだけ、時期的に汗はあまりかかないとは言えど心許ないと言える。かと言って十一月に入りすっかり夏の過ぎ去った気候はお世辞にも暖かいとは言えず。ジッと待つのも寒くて仕方ない。
まっすぐ歩くのは難しいかもしれないが、都心にある森なんて大した広さもないだろうと高を括り、どこかしらの道へ出られる事に期待して歩く事にした。
携帯のライトで足元を照らし、慎重に、でも少し急ぎ足で進んで行く。そして時折立ち止まって電波が入っていないかを確認してはため息を吐いた。
順調に歩いているつもりだったが、途中から身体に違和感を感じ始め、立ち止まる回数も増えてきた。
妙に息が切れる。胸が苦しい。いくら獣道で歩きづらいとはいえ歩くくらいで簡単に息が切れるほど体力が無いなんて事はないはずなのに。
一旦落ち着いて深呼吸をしてみるものの、一向に苦しさは和らがず悪化する一方だった。
仕方なく木々に手を突きながらもゆっくりと進む。頼むから道に出てくれと念じながら一歩一歩足を動かすと、その想いが通じたのか歩む先から微かな光を感じた。
これで助かると思い自らを鼓舞して光の下へ急ぐ。
ようやくその光の近くまで辿り着く頃には既に男はまともな呼吸が出来ておらず、焦点もまばらで口からは涎を垂らしていた。
光の正体は古ぼけた家屋で、男は住民に助けを呼ぼうとしているのか涎の垂れた口から「あ…あ…」と声とも吐息とも解らない音を出しながら光の方へと腕を伸ばす。
さながらゾンビのような状態で家屋に近づこうとした男だったが、手を突く木がなくなった事で身体を支えられずに地面へ倒れ込んだ。
「本当だって、確かに外から何かが倒れるような音が聴こえたんだ」
「どうせ妖怪か何かだと思うが…」
男が倒れてから然程経たずに家屋の戸がガラガラと音を立てて開かれ、中からフリルのついた真っ黒いゴシックドレスに三角帽子と絵に描いた魔法使いのような格好をした少女と青い着物を着た男性が現れた。
二人はすぐに倒れた男に、正確には男の手にした携帯の光に気がついた。
「死んではいないが呼吸がおかしいな…」
着物の男性が倒れた男を揺さぶり声をかけるが意識を失っている男は何も答えない。
「魔力中毒だな。胞子を吸いすぎたんだろうぜ」
「それなら解毒薬があるはずだ。一旦うちに入れるとしよう」
二人は端的に会話を済ませると、男を担いで家の中へと入れ、汚れた衣服を脱がせてから布団の上に寝かせた。
その後、青い着物の男性が箪笥の引き出しから小瓶を取り出し、中に入っていた錠剤を水と一緒に眠っている男の口に流し込んだ。当然、男は激しく噎せたがお陰で薬は飲み込ませる事が出来たようだ。
そんな倒れた男のことなど意にも介さない少女は、
「駄目だー…」
男の持っていた携帯を弄っていた。
「香霖ー。これなんだ?」
「まったく君は、また人の持ち物を勝手に弄って……。どれどれ?ふむ、これは俗にスマホと呼ばれる随分と新しい物のようだね。基本的には前に話した携帯電話の様なものだよ。その他にこのスマホはアプリと呼ばれる物を読み込む事で様々な事が出来たりするみたいだ。他にもインターネットにつなぐ事で調べ物が出来たりと非常に万能アイテムみたいだ。ちなみにスマホと言うのは俗称で、このタイプの物はアイ―」
「—あーいや、もう大丈夫。つまり携帯なんだろ?だったら私の持ってるやつと繋げられたりしないか?」
解説を遮られたのが不満なのか香霖と呼ばれた男性は口をへの字にしながらも少女の問いに「出来る」と答えた。
「だが、繋げてどうするんだ?また魔理沙がもっていくつもりかい?」
「持っていっても“ぱすわーど”ってのが無いと動かせないみたいだから今回はいいや」
「……まあ、改造自体は難しく無いから一応やってみるよ」
「ん。じゃあ、私はそろそろ帰るぜ」
魔理沙と呼ばれた少女は軽く手を振ると、戸を開けて勢いよく出ていく。後に残された香霖は開きっぱなしの戸を閉めてから、一瞬だけ寝ている男の呼吸が安定しているのを確認してから、携帯を維持し始めた。
それから香霖が携帯を改造し終えるほどの時間が経った頃、ようやく男は目を覚ました。
「あれ…。俺…」
目が覚めた俺は辺りのを見回して自分が建物の中にいる事を理解した。
何故か着ていた服が無くなり、代わりに浴衣の様なものを羽織らされられてはいるが様子を見るに助けてもらえたらしい。
はっきりとは覚えてないが、確か俺は光の灯った家を見つけて近づいたはずだ。
「起きた様だね。調子はどうだい?」
いきなり聞こえた声に驚いてばっと振り向くと、そこには着物を着た男性が居てその手に俺の携帯を持っていた。
「だ、大丈夫です。助けていただいきありがとうございます」
「いいよ。久々とは言え外来人には慣れているからね。僕は森近霖之助だ。よろしく」
「俺…、自分は
「そうか、恭也。とりあえず解らない事だらけだろうが、疲れているだろう?話は明日にして今日はこのまま休むといい」
言われるがまま俺は再び布団の中へと戻され、部屋の電気を消される。
森近が部屋から出て行く際に携帯を手渡して来たので、確認して見るも画面が示すのは圏外という事と二十一時という時間だけ。繋がりやすさNo.1が聞いて呆れるね。
とりあえず充電を無駄にしないために電源を切って枕元に置いて目を閉じる。
色々な事がありすぎて不安だらけでも、疲れた身体は正直で大きな欠伸が出る。次第に眠気が襲ってきて、俺は再び眠りに落ちた。
***
すっかり日も暮れ、華やいでいた人里の通りも人がまばらになっている中、夜の暗さの中でも激しい存在感を放つ真っ赤な髪と真っ赤なドレスを着た少女は通りの中央に立っていた。
目立つ格好だというのに少女の事を気にかけるものは一人もなく近くを歩いていた酔いどれは誰もいない道を悠々と歩くかの如く少女のいる方へと歩いて行く。
少女は酔いどれが近づいてくるのを黙って見つめ、ある程度近づいたところで手を前に出して近づくなという意思を見せた。
しかし、酔いどれは少女ことなど見えていないかの様に無視して進み、いよいよぶつかるかと思われたが酔いどれは少女の身体をすり抜けてそのまま去っていってしまった。
少女は歯噛みし、月に向かって吼える。
「足りぬ!妾が存在するには、まだ足りぬ!!」
静寂に轟く少女の声はただ虚しく空に響き、そして再び静寂に飲まれた。
少女は肩を落として、とぼとぼと歩く。あてもなく、目的もないまま。
つづく