自分の妄想と幻想入り   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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ようやく一章の終わりが見えてきてかなり安心しています。
二章以降は書き直しも少なくて済みそうだし少しはモチベ上がるかな。
一章が終わればpixivで書いてない新しい話書けそうだし。


第十一話〜不穏なる終わり〜

 俺は早る気持ちを抑えながらひたすらに走った。少しでも油断すれば意識を持っていかれてしまいそうなほど剣に意識を引っ張られている。

 やはり魔剣は魔剣。頼るべきではなかったのかもしれない。とは言え、鞘に戻そうにもこの剣は血を吸わない限り鞘に戻ることはないので今更悩んだところで遅かりし由良之助。

 既に剣は抜かれた。俺に出来るのは力を振りかざして前に進むことだけ。

 疲れは感じなかった。いつもならアドレナリンだかドーパミンだかがドバドバ出て居るのだろうとか考えそうだけど、この時の俺は何かを斬りたいと言う衝動を抑え込むだけでいっぱいいっぱいになっていた。

「……ふふっ」

 地をひたすら走り、湖まで戻りフラタニアを見つけた途端に笑いが漏れた。標的が見つかった事に心から歓喜に沸いた。標的であるはずがない。俺はただ止めに来ただけなんだから。

 —本当にそうか?

 目の前に自分で描いていたキャラクターが現れて、弾幕とか魔法が使える様になって自分の事を物語の主人公みたいに特別な存在とでも思っていたんじゃないか?まるでゲームのストーリーのように戦って勝てば解決するとでも思っていたんじゃないか?

 本当はただ戦いたいだけなんじゃないか?

 いや違う。……違う筈だ。俺は暴れるフラタニアを止めるために戻って来た。

 強く心を持って湖方を見る。何故か霊夢達の姿はなくフラタニアが一人抉れた樹木に向かって踊っていた。理由はわからないが今なら二人で話ができるかもしれない。だから話をしようと俺は草木の陰から一気に躍り出る。

 ただ俺はフラタニアに近づこうとした。この言葉に嘘偽りはない。なのに俺は手に持った剣を振り上げて縦一閃にフラタニアの身体を斬り裂いた。

 その刹那脳内には快楽が流れ込み身体を支配し、俺はさらなる快楽を求めて剣を振り回す。乱雑に適当に快楽を得たいがために振り回すとフラタニアの姿はどんどん崩れてあっという間に切り刻まれて灰と散る。すると今度は快楽を得られない事が残念でならなくなり、腹いせに抉れた樹木を斬りつける。

「何ヲシテルノジャ…?イクラ主様デモソノ樹ヲ傷ツケルノハ許サヌゾ!」

「……!」

 背後から聞こえた声に反応して振り向くと同時に肩に鋭い痛みが走る。反射的に剣を持ち上げなければ首が飛んでいたかもしれない。

「ふひっ」

 また、斬らせてくれるのか。ああそうか吸血鬼だから斬られただけじゃ死なないのか、それとも分身か?どちらにせよまた快楽を得る事が出来るなんて嬉しいのだろう。

 勢いに任せて斬りかかる。勿論正面からの攻撃が簡単に通るはずも無く、受け止められたがそれでもフラタニアの身体に切り傷を作った。

 それこそこの剣の能力“必中”なのだがそんな事はどうでもいい、こんなものじゃ満足できない。直接斬らなければ満足できない。

 斬り結ばれたまま力任せにフラタニアの剣を押しやり、よろけて居るところを横薙ぎに切り裂く。まるで豆腐を切る様にスッと入った刃はフラタニアの身体を胴を中心に二つに分ける。

 ああ、何て心地よい感触なのだろうか。でもそれも消えた。フラタニアの姿は先ほどと同じく灰となり風に散る。仕方ないのでまた樹木を斬りつけ、フラタニアが現れたら切り裂く。湧き上がる衝動のままに快楽を失った渇きを潤すために何度も繰り返す。

 次第に樹木は削れ中に隠れていたらしい黒い何かを斬りつける様になっていた。それが何かはわからないがとても堅くて壊し甲斐がありそうだ。

 気づくと空気に変化が現れた。いきなり湿気った風が吹き始め何かが起ころうとしていた。その風に好杏の魔力を感じた俺はその魔力の元に向かって剣の鞘を投げつける。無意識に風の魔法を使い弾丸の様に飛んで行った鞘は森の中に消えたが、森に入った瞬間に好杏と目があった気がする。

「恭也ー!手助けしにき——」

 鞘を投げた方向とほぼ同じ方向から数人の影が俺に向かって近づいてくるのが見えた俺は剣に風の力を乗せ湖に向けて剣を振り抜く。

 ズバァ!っと風で巻き上げられた水が壁の様に立ちはだかり数人の影を飲み込んだ。楽しみを奪われてたまるか。

「何すんのよ!」

 数人の影の中心には霊夢の姿があり、水をかけられた事に腹を立てて居る様子だったが、いくら師匠である霊夢と言えど俺の楽しみを奪うことは許さない。

「邪魔を、するなァ!」

 牙を剥き、霊夢を強く睨みつける。叫びに応じたのか霊夢達はボソボソと相談してから引き上げていく。これでまたあの黒い何かを壊しに行ける。

「クソォ!ナンナノジャナンデ主様ガ妾ヲ!」

 また復活したらしいフラタニアが憤りを口にしながら斬りかかってくる。俺の左肩に向けて袈裟懸けに振り下ろされた剣をいなしてそのまま斬りつける。

 フラタニアが消えるまで追撃を重ね、灰となったら黒い何かを斬りつけてゆく。何度目かわからない一撃が入ったところでピシッと音がした。あと少しで壊せると思ったら更に気分が高まる。

 そんな超絶気分の良い時にまたしても霊夢達が邪魔しに現れたので今度は小さな竜巻を起こして霊夢達に向けて放つ。何度も邪魔しやがって、仏の顔は三度までって言うが俺は仏じゃない次来たら剣のサビにしてやる。

 邪魔がいなくなったのでまた壊しにかかろうと樹木を見やるが樹木の姿は見えず代わりに今まさに俺を斬り裂こうと振り下ろされるフラタニアの刃がきらめいていた。

 霊夢達に気を取られていた俺は避けるにも受け止めるにも間に合わず身体を捻るも腿の部分を大きくえぐられてしまった。

 焼ける様な熱さが脳を痺れさせる。

 太い血管が斬られて大量の血が流れ湖に垂れて行く放っておけば出血多量で死ぬのは間違いない大怪我も快楽の海に浸された俺の脳は恐怖を感じずに目の前で俺の血を舐めるフラタニアに剣閃型の弾幕を飛ばして消し去ってから勢いをつけて樹木に埋め込まれた黒いものに向けて剣を叩きつけた。

 既にヒビの入っていたそれはこの一撃で硝子の割る様な音を響かせながら壊れた。

「主様!」

 壊れたものの中から伸びる手を俺は無意識に掴んで一気に引き抜く。樹木から現れたフラタニアの身体を引き抜いた勢いのまま抱きしめると同時に閃光が俺とフラタニアを包み込んだ。

 眩しさに目を閉じ、少ししてからゆっくりと目を開いて行く。まるで心が洗われた様に澄んでおり、意識もはっきりとしていた。

 剣は相変わらず握ったままだが殺戮衝動が湧いたり、意識が引っ張られることもない。

 何が起きたのかを理解する前にジワっと腿から激しい痛みが広がり全身から脂汗が吹き出す。痛みのあまり歯噛みし腿に手を当てると先ほど抉られた傷がじわりじわりと埋まってゆき程なくして完全に言えたではないか。

 もう痛みはないが、吹き出た汗が目に入りそうになったので顔の汗を袖で拭うと、俺はあることに気付かされた。

 服装が変わっているのだ。普段着ている地味な作務衣姿ではなくフラタニアの様に真っ赤なダブレット姿へと。

「クソォ!依代ヲ返セ!」

 狂気の残り火はフラタニアの姿を崩しかけながらも俺に切っ先を向けて吠える。

 どうやらフラタニアの身体を取り戻したことで取り込んでいた要素が消えている様だ。

「返せと言われて返す奴は居ないだろ」

「むしろ妾の能力を返してくれんかの?」

「黙レ!黙レェェェェ!」

 狂気の残り火は激しく憤慨して無動作に剣を振るう。するとボロボロになった樹木の方から根っこの様なものが伸びて来た。

「死ネ!死ネェ!死んで死ンデシマエェェ!」

 幾本もの根は俺たちを串刺しにしようと高速で迫る。だが不思議な事に俺には根の動きが良く見え回避行動を取ることが出来た。それもほぼ無意識に、だ。

 ただでさえ力を奪われているらしいフラタニアを抱えていると言うのに飛行と片手に持った剣だけで十分なまでに動き、しのぐことが出来る。

「アアアァァァアアァァ!!」

 いくら避けることが出来てもフラタニアを抱えたままでは攻めることも逃げることも出来ずに防戦を続けていると業を煮やした狂気の残り火が大きく吠えながら一度に多数の根を上方を除いた全方向から伸ばして俺たちを狙ってきた。

 とてもではないが捌き切れる密度では無いので上方に向かって飛ぶものの、明らかに空いた穴に対策がされて居ないはずもなくグネグネと曲がりながら根は追尾してくる。

 それだけでは無い。新たに何本かの根が湖から俺の進行方向に向かって飛び出したりしていてこのままでは当たるのも時間の問題かと思われたその時。

「——だらし無いわね」

 突如として現れた結界が包み込み、根の攻撃から俺たちを守った。

「さっきまでの威勢はなんだったのかしら?」

 二枚の結界によって攻撃を阻んだ強固な術。俺はこの術をよく知っている。

「霊夢!」

「魔剣に振り回されてこの私に水をぶっかけたこと、後で覚えておきなさいよ?」

 言葉の割に格段怒っているわけでもなさそうな霊夢がふわりと飛びながら俺の側に立つ。

「僕に鞘を投げた事も忘れちゃダメですからね?はい、これ剣の鞘です」

「格好付けしたいのはわかるけれど心配かけるのは良く無いわね」

「咲夜殿の言う通りだな。その身は君だけのものではないのだろう?」

 霊夢の後ろから続く様に好杏や咲夜が近づいてくる。みんな先程俺を助けに入ろうとしてくれた人達だ。つまり剣に踊らされた俺が危害を加えようとした相手でもある。

 なんとなく肩身が狭く感じた俺は顔を引きつらせながら好杏が差し出す鞘を受け取ってそのまま鞘へ納める。

「とりあえずマスターはフラタニアを連れて降りてください。詳しい話は鈴が知っています」

 そう言いながら好杏は森の一角を指差した。よく見るとそこには鈴が居て手を振っているのが見える。

「行ってください!」

 強い口調で言われて少しビビりながらも言われた通りに湖の辺りにある森にゆっくりと降り立つ。

 フラタニアが一人で立ったのを確認してから鞘に収められた魔剣をフラタニアに渡して鈴ともう一人、件の分身体と同じ姿をした宝石羽の少女に向き直る。

「ったく、あんまし好杏を心配させるなよな」

「あーいや、その……。すまん……」

「謝るならあたしにじゃなくて好杏にだろ?っつかなんだよその格好。似合ってねえぞ」

 鈴が悪態を吐きながら俺の姿をジロジロと見る。似合ってないと言われても知らぬ間にかわっていたしどうやって戻るのかもわからない。

「ねえ」

 鈴と話していると宝石羽の少女—フランだったか—が口を挟む。

「貴方って人間、なのよね?」

「ん?そうだけど…。なに血でも欲しいのか?」

「やめとけフラン。こいつの血なんて飲んだら腹壊すぞ」

「ひでえ」

 何気なく答えただけなのにちょっとばかし扱いが雑すぎやしませんかね?

「ううん。違うよ。血が飲みたいわけじゃなくてね。私が聞きたいのはさっきの動きのこと」

「動き?」

「うん。真っ赤な姿に変わってから急に動きが人間離れしていた気がしたから」

 それは自分でも気づいていた。狂気の残り火との攻防はちょっとした能力が使える様になったばかりのただの人間(・・・・・)が対処できるレベルではなかったと思う。

 明らかに動体視力が上がり、動作動作も素早くなっていた。だから高速の連続攻撃からも逃げることが出来たのだ。

「……なんとなく、じゃがな。主様と手を繋いだ瞬間に心がつながった様な気がしたんじゃ」

「はぁ?いきなり何言ってんだ?」

「一旦黙っておけ。……続けてくれ」

 茶々を入れる鈴にチョップを落として続きを促す。

「う、うむ。それでな。主様のその姿はまるで妾の姿を真似ている様に思わぬか?」

「まあ真っ赤だし、ダブレットがドレスの対だと考えればわからないこともないが……」

「じゃろ?だからの、その姿はきっと妾の力を最大限借りた姿なんじゃないかのぅ?ほれ、その姿になったら剣を持っていても狂気に狂ったりしなくなっておったし、妾の“呪い無効の体質”とかをじゃな」

「確かに剣で狂わなかった理由としては強いけど、あたしらの力は『設定』で五割までしか借りられないんじゃなかったか?」

「……そうか!」

 俺は今まで風魔法なりが使えるのを自己の空想を操る程度の能力だと思っていたが、鈴達に言わせればそれは俺が好杏達を描いた時に考えた『設定』でしかない。

 しかし『設定』通りなら好杏達の能力を借りられるだけで体質など生まれつき持つ能力までは借りられない。

 つまり自己の空想を操る程度の能力とは——

「——あたしらの誰かと繋がることでその能力を全て借りることができるって所か。随分と狡い能力を得てんな……」

「ははは……。と、ところで鈴はなんでここに?お前の性格なら頼まなくても戦闘に参加しそうなものだけど、なんかの作戦か?」

「誰かさんがあたしに飛行能力を与えなかったせいだよ!」

「あー……。なるほどな……」

「作戦はお前が暴れたせいで台無しになったよ!とりあえずフランがあの狂気を吸い取らせるのが目的だから隙ができたらフランを抱えて狂気の所まで飛べ!以上だ」

 逆鱗に触れてしまったもののなんやかんやで説明はしてくれた鈴に感謝しつつ俺はフランの手を取った。レミリアの妹だというフランも狂気に力を奪われているそうで自力では飛べなくなっているのだそうだ。

 鈴から逃げる様に森を移動して、地上から狂気に近づく。下から見る攻防は激しく、根による攻撃の手数と速さに攻めあぐねている様子だった。とは言え、霊夢達は四人と数によるアドバンテージが大きく徐々に狂気は押され、ついに霊夢の一撃を食らって大きく吹き飛ばされて樹木にぶつかり破片をまき散らした。

 この隙だと思った俺はフランと顔を合わせてから一気に大地を蹴って近づく、だが

「舐メルナ!」

 吹き飛ばされながらも体勢を立て直していた狂気の残り火は即座に俺に気づいて牙を剥きながら根を伸ばす。最速で近づこうとした俺は自身の勢いが災いして回避行動が取れずに正面からぶつかりそうになる。衝突に備え、せめてフランだけでも護ろうと身体を丸めて抱き込み目を閉じる。

「『爆符:——」

 いやはや、俺はとことん悪運が強い様だ。

「——メガフレア』!!」

 地底でお空が放った技に良く似た火の玉が後方から飛来し、迫り来る根を容赦なく消し炭に変えてそのまま狂気の残り火さえも燃やそうとする。

「フラン!」

「いいよ。投げて!」

 予想外の一撃で焼かれ今度こそ隙を晒した狂気の残り火に向かってフランを投げ飛ばす。火だるまになった狂気の残り火に抱きついたフランはその燃え盛る首筋に牙を立てて炎もろとも全て吸い取った。

 狂気は凄まじい断末魔を放ちながら消え、辺りには静寂が訪れる。

「……」

「…どうだ?」

「……」

「フラン?まさか……」

 黙ったままのフランに皆が警戒して見守る中、フランはゆっくりと顔を上げて笑った。

 その笑顔は歪んだりしていない明るくて可愛らしいもので彼女が狂気に呑まれたりしていないことは火を見るより明らかだった。

「なんて言うか怖がっていたのが馬鹿みたいね」

「うにゅ?馬鹿って言った?……というか、あれ?ここはどこ?」

 フランのぼやきとお空の言葉で皆の緊張が解け、それぞれは笑みを浮かべながらため息をついた。

 それからは湖や周辺の後片付けをする事になったのだが、真っ赤になっていた湖は気づけば青く戻っており、霧も出てきたため最低限樹木の破片などを湖から取り除くだけで終わらせて、この異変は幕を閉じた。

 とはいえ、局地的で地底を除けば被害も少なかったものの謎が多く残り原因も判明していないため好杏は調査をするらしい。

 霊夢は霊夢でレミリアに話があるとかで紅魔館組と一緒に紅魔館へ向かってしまったので、後に残る慧音さんに未だに眠っているチルノと永遠亭に居る昴の事を任せて俺はフラタニアと一緒にお空を連れて地底へと戻る事にした。

 目的のためにそれぞれが飛び立ち、霧が深くなった湖のほとりに二人分の影が森の陰から姿を現わす。二人とも緑を基調としたポンチョを被りその顔と性別は判らない。

「ひとまずこれで解決、ですね?」

「とりあえず、だけどな。さて俺達も帰るか、あんま遅いと心配させちまう」

「……一晩経ってる時点で今更感が凄いですけどね」

「それをいうなって…予想外のことばかりだったんだから」

「はいはい。言い訳は後にしてください。行きましょう。キョーヤさん(・・・・・・)

 

 

To Be Continued……・

 




次回「異変の終わり、その後」


—あとがき—

キャラ紹介しようかとおもったけれど、紹介する人が特に居ませんでした。ごめんね。
一応、次回で話自体は一区切りが付きます。
異変が終わったものの、異変が解決したわけではないため一部のキャラは引き続き異変に関わって行く方針です。
最後の二人に関してはそのうち判明するのでご期待ください。

……あ、そうだ。謝らないといけないことがありますね。
1章が終わると霊夢の出番が極端に減るけど気にしないでね!
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