自分の妄想と幻想入り   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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第二話〜博麗の巫女〜

 翌朝、目を覚ました俺は森近さんにこの世界についての説明を軽く受けた後に、洗濯を申しつけられた。

 洗濯板にタライという古風なセットで。

 ちなみに、洗っているものの中には自分の服もある。破けたりはしてないが酷く泥に塗れているので中々に洗濯が大変だ。

代わりに着ているのは森近さんのお古だが、和服というのも思ったより動きやすくていい感じだ。

「うん、似合ってる似合ってる。サイズもぴったりなようで良かったよ」

「すいません色々と、えっとこれから人里って所に行くんですよね?」

 何でも、この幻想郷という世界は人と妖怪が住んでいるらしい。

 森近さんも半人半妖だと説明されたけど、俺には白髪な事を除けばただの好青年にしか見てない。

 たしか人里というのは、幻想郷で唯一の人が集まっている場所だと言ってたな。

「いや、博麗神社に行く。霊夢に君のことを預けなくちゃいけないからね」

 霊夢って名前は今朝も聞いた気がする。確か、俺が帰るあての一つだったか?

電車に乗ってたら異世界に来てましたーなんてのはアニメだけだと思ってたんだけどな。

 洗濯中に箒に乗った女の子が空を飛んでるのを見てしまったもんだから、ここが異世界だという疑いが薄れてしまった。

「あぁ、そうだ。大丈夫だと思うけど、念の為にこれを渡しておくよ」

 そう手渡されたのは奇妙な文字が書かれた御札だった。

「適当に持ってればいい。弱い妖怪位ならそれだけで近寄れないから」

 俺は今まで妖怪というのはイタズラをしたり、人を連れ去ったりする程度のものだと思っていたが、森近さん曰く、この世界には人食い妖怪と言うのがよくいるそうだ。

弱い妖怪でも普通の人では太刀打ち出来ないらしい。

『弾幕』と呼ばれる魔法を使えるようになれば妖怪相手とも戦えるらしいのだが、魔法なんて使えるはずがない。

 この世界に迷い込んだ人は能力に目覚め、弾幕などを使えるようになることがあるらしいのだが、やはり弾幕は出せなかった。

 準備も済み、家をでると目の前には大きな森が見える。

俺が目覚めた森で『魔法の森』と言うらしい。昨日は、魔法の森に充満しているきのこの胞子を吸って中毒を起こしたために倒れたのだという。

魔法の森には、そんな特殊なきのこが沢山生えていて殆どの人は中に入ったりしないそうだ。

「どうしたの?行くよ」

 入らなくて済むなら入らないようにしようと心に決め、さっさと一人で歩いていく森近さんを慌てて追いかけた。

少し歩くと人里らしきものが見え始めたが、それを迂回するように歩き、霧のかかった湖の側を通って進んで行く。

 神社へ続く山の麓からはかなり長い階段が続いており、登り終わった頃にはヒーヒー言っていた。

「霊夢、居るかい?」

境内に入ると森近さんは縁側の方向に向かって声をかけた。

「…あら、霖之助さんが店を空けるなんて珍しいのね」

よく通る綺麗な声の先、その声の主は鮮やかな紅白姿の巫女さんでこちらを一瞥すると縁側に座ったまま返事を返す。

「失礼な。僕だって仕事で出かけることくらいあるよ。それはそうと昨日現れた外来人を連れてきたんだ。色々手ほどきしてやって欲しい。僕は人里での仕事を終えたらまた来るよ」

 森近さんはいうことだけ言うと、俺の肩をグイっと巫女さんの方へ押しやり手を降って去っていってしまった。

あとに残されたのは大きなリボンをつけ、肩や二の腕を露出してる巫女さんと俺だけ。

「…こっちに来て座ったらどう?お茶くらい出すわよ」

「へ?あ、ああ。すいません。頂きます」

声をかけられた俺は慌てて縁側まで駆け、お茶うけの入った小さな籠を挟んだ巫女さんの横に腰を掛ける。

俺が座るのと同時に巫女さんは一言を発することなくお茶を淹れて俺の脇へ置いてくれた。

ぽかぽかとした陽気と心地良い風が吹き抜けまったりとした時間が流れてゆく。

 話しかけようかと思ったのだが、悲しいことに俺は可愛らしい顔立ちの巫女さんに話しかけられずにチラチラ横目で見ることしか出来なかった。

しばらくの時が経った頃、巫女がため息を付きながら話しかけてきた。

「…あなた、そろそろ名乗ったらどう?」

「っ!ゲホッゲホ!」

「ちょ、ちょっと大丈夫?」

挨拶すら出来てなかった事に慌ててお茶で咽せた。

我ながらなんとも情けないが、やってしまったものは仕方ないので、呼吸を整えてからしっかりと名乗る。

「そう、私はこの博麗神社の巫女。博麗霊夢(はくれいれいむ)よ。それで、この世界のことはどの程度聞いてるのかしら?」

「えっと、ここが幻想郷って日本のどこかにある隔離された世界で妖怪とかが居るってことくらいですかね…?」

「まあ、だいたいそんな感じよ。なんだ。私が説明することなんて無いじゃない。そうね。付け足すとしたら、この幻想郷はね。忘れられたモノが流れ着く地なの。だから人々に忘れられたりしてくるものも居るわ」

「…でも人が忘れられるなんて」

「そうね。人は関わりの中に生きているから余程の事でもない限りあり得ないわ」

 博霊さんがそう呟くとまた静寂が訪れた。

言葉に詰まり、何を聞いたらいいのか解らなかった。

博麗さんは忘れられたモノといった。つまりは人に限らず物でも人外でも流れ着くのだろう。

だから現代ではその存在がオカルトとなり忘れられてしまった妖怪などがいるのかもしれない。

お茶を啜り一息ついた後、俺は本題を切り出す事にした。

「あの、俺が帰る手がかりがここに、博霊さんにあると森近さんが仰っていました。単刀直入にお聞きしますが、俺を元の世界へ返してもらうことは出来ますか?」

「無理ね。あなたがどこから来たか解らないもの。例えば、この幻想郷は確かに日本にあるわ。でも、日本という国。もっと大きく見れば地球と言う星自体がいくつもあるのよ。純粋にこの日本に返すことは出来るわ。でもそれがあなたの知る日本とは限らない。もし違えばあなたは元の世界に帰る手段を失うわ。それでもいいなら送ってあげるけれど、私は大人しく(ゆかり)が冬眠から目覚めるのを待ったほうがいいと思うけれどね」

バッサリだった。

 口ぶりからして紫と言う人が『境界を操る妖怪』のようだが、その人(?)が起きるまでは何も出来ないのだろうか?帰るに帰れず過ごすしか無いというのはなんとももどかしい。

かと言って博霊さんの言うとおり軽率に帰してもらって、違う日本とかだったら怖い。

「まだ冬の初めなんだしゆっくり考えなさい。もしかしたら別の道が見える可能性もあるわ」

「どういうことですか?帰るには境界を操る妖怪か博霊さんに頼むしか無いのでは?」

「今までにも自分の能力で帰った存在や、元の世界に居る存在に呼び戻された者などが居るのよ。一概に私や紫じゃないと帰せないわけではないわ」

 一瞬、希望があるかと思ったがそんなことはなかった。夢も魔法も無い世界に俺を異世界から呼び戻せるような人なんて居るわけないし、居たとしても赤の他人を呼び戻したりはしない。

当たり前だが俺は能力なんて持っていない。 

「そう悲観するのは早いわよ。あなたも何かしらの能力を得ているはずなのだから」

 そう言うと博霊さんは俺に立つよう言った。郷に入っては郷に従えとは違うかもしれないが、この世界の理に身体が合わさるように必ず何かしらの能力を得ているらしいのだ。

それを確かめてくれるらしい。ただし、殆どは有ってないような能力ばかりらしいのだが…。

「…良かったわね。無意味ではなさそうな能力があるわよ」

「無意味ではなさそうって…、少なくとも帰れそうな能力ではないですよね…」

「あなたの能力は『自己の空想を操る程度の能力』よ。自己の空想が何かは知らないけれどそれは自分で探しなさい」

 確かに無意味ではなさそうだった。だが意味がわからない。一見すると自分の空想したことを実際に出来るような気がするが、それはないと思う。

なんでかと言うと今朝、弾幕を出そうとした時に出せなかったからだ。

「言っておくけれど、弾幕と能力は別よ。もしあなたが弾幕を出したいならば、まずは自分の弾幕の性質を知りなさい」

 空中に手を空振りさせる姿で何かを察したのか博霊さんは一枚の紙を手渡してきた。それは長方形で何も書かれていない真っ白で厚めの紙だった。

「それを握って念じなさい。あなたに素質があれば弾幕も出せるようになるわ。素養が良ければスペルも持てるかもね。まぁ、見ててあげるから精々頑張んなさい」

「…ありがとうございます。博霊さん」

「その、“博霊さん”って言うのやめてくれない?何だかムズムズするわ」

「ではなんとお呼びすれば良いでしょうか?」

霊夢(れいむ)でいいわよ。この幻想郷じゃ名前で呼び合うほうが普通なの」

「霊夢…ですね。わかりました」

「あと、敬語も要らないわ。まあこれはどっちでもいいけれども、ほら頑張んなさい」

 何か言おうかと思ったが、話は終わったと言わんばかりにせんべいをバリバリと食べ始めたため、俺も渡された札を握り念じた。

弾幕って言うくらいだから弾をイメージしてみよう。

 そして、三十分ほど念じたが何も起きずに時間だけが過ぎた。

ずっと集中していたためか、喉の渇きを覚えてお茶に手を伸ばし喉を潤す。

「諦めるのはまだ早すぎるわよ。もっと自分自信をイメージして念じなさい。はい、コレあげるからもう少し頑張りなさい」

「あ、弾をイメージするわけじゃないんですね…」

 霊夢に渡された飴玉を口に放り込み、今度は自分を意識しながら念じ始めた。それは森近さんが神社に戻ってくるまで続いた。

 

 ***

 

『いやー助かりますよ!私が人里に降りると人々を怖がらせてしまいますからねー。では好杏(このあ)さん頼みましたよ!』

 のりのりでカメラを手渡しながら僕を見送った(あや)さんを思い出して苦笑する。

 好杏は今、人里まで降りていた。

昨日、射命丸文(しゃめいまるあや)とした約束があるからだ。

約束の内容は好杏が文々。新聞に協力する代わりに、幻想郷にいる間の世話をしてもらう事。

要するに住み込みの仕事って訳だ。

 仕事とは言えど、人里で何かを取材するわけではなく。変わったことがあればそれを撮る。

なければ探す。

それだけしか言われてないので、仕方なく人里をぶらぶらと歩いた。

 多少の路銀(ろぎん)を渡されているので買いたいものがあれば買っていいとも言われている。

僕はそのお金でお茶屋に入り、お団子を買って食べたのだが、これがえらく絶品だった。

 確かに古風な町並みにで、現代の日本と比べたら生活レベルの差は歴然だろう。なんてったってまず電気すらないのだから。

 僕はお茶を啜りながらこれから何処へ行くかを考えた。里の人に話を聞いた所、里自体は特に見るものもなく、強いて言えば里の外になるが里の東の方に博麗神社と言う神社がある位だと言う。

 その神社の名前は昨日も文さんから聞いていたので知っていた。元の世界へ帰る手立てがその神社と、とある妖怪らしい。

もっとも、僕には会わなくてはいけない人が居るし帰る世界があるわけでもないのだが。

 ふと、僕を見つめる子供たちと目があった。挨拶をすると子供達も大きな声で返事を返してくれる。良い子達だ。

「…えっと、僕の顔になにか付いているかい?」

 僕は子供たちの中心に居る活発そうな男の子に声をかけた。

「お前外から来たんだろ!」

「あー、なるほど。僕みたいな外来人は珍しいのか」

 今日は色んな所で視線を感じていたので、その理由が解り一人で勝手に納得した。

「がいらいじん?お前みたいに外から来たヤツのことだな。うちの寺子屋にも来たぞ!耳が生えてて真っ赤だし妖怪みたいなんだぜ!」

 耳が生えた外来人と聞いて僕の脳裏に一人の女性が思い浮かんだ。

「君、その耳の生えた人はまだ寺子屋に居るのかい?」

「えっと、わかんない!」

 少年が元気に叫ぶと少年の後ろに隠れていた少女がおどおどしながら答えてくれた。

「放課後にケーネ先生とお話してたから…、まだ寺子屋にいると、思います…」

 その言葉を頼りに僕は寺子屋へと向かうことにした。おそらくだが耳の生えた外来人は知り合いの可能性が高い。

寺子屋の場所はお茶屋さんの娘に聞いた。寺子屋は里に二つあるそうだが"ケーネ先生”が居る方だと言ったらあっさり解った。

「先生またねー!」

「うん、気をつけて帰るんだよ」

 聞いた場所へ行くと、黄金色(こがねいろ)の耳を持ち真っ赤なジャケットを着た女性が子供を見送りしているところだった。

(すばる)さん!」

「ん?おー!好杏じゃないか、無事だったようでなによりだね」

「まさか先生をやっているとは思いませんでした」

「あはは、まぁ色々と運が良かったもんでね」

 昴さんと軽く挨拶をしていると、寺子屋の中から青い服の女性が出てきた。

「昴、お客人か?」

「ああ、私の知人だ」

「初めまして、僕は響代好杏と申します」

「これは丁寧にどうも。私は上白沢慧音(かみしらさわけいね)と言う。この寺子屋で教員をやっている」

 いくつか話をした後、慧音さんはハッと何かを思い出した様な顔をし、仕事を終わらせてくると言って昴さんを引きずりながら奥へ消えていった。

待ってろと言われたのでボーッと待ってると五分もしないうちに二人は戻ってきた。

「好杏は“コレ”いける口か?」

 戻ってきた慧音さんは口元に手を当てクイッと飲むしぐさをする。

ようはお酒のことだ。

飲めることを伝えると僕らはそのまま慧音さんに里の酒場へと連れ込まれた。

「人と飲むことなんて滅多にないからな。昴の知り合いと言うことは好杏も外来人だろう?お金は私が持つから心配せずに飲んでくれ」

 飲み始めて早々に酔った慧音さんと、昴さんに色々聞かれ。逆にこっちからも色々と聞いた。

 昴さんは慧音さんの家で世話になっていると、迷いの竹林と言う場所で出会った妹紅と言う人に人里まで送ってもらって、別れた後に慧音さんに話しかけられて、世話になることにしたらしい。

 驚きなのが、慧音さんの家に帰ると妹紅さんが居て、二人は一緒に住む仲だったということだ。偶然というのはとても面白いと思う。こうして僕が昴さんと再会出来たことも含めて。

 酔った慧音さんに勧められるまま飲み、身体が温まって来た頃、一人の来訪者が現れた。

「…慧音。やっと見つけたぞ…」

 その人はメガネを掛けた男性で、とても疲れた様子だった。

男性は慧音さんに近寄ると頭サイズほどの木箱をテーブルに置いた。

「自分で寺子屋に届けて欲しいと頼んでおいて、寺子屋に居ないなんてひどいんじゃないか…?」

「すまない。すっかり忘れていた…。お詫びと言っては何だが霖之助も飲んでいくか?」

「遠慮しておくよ。霊夢の所に人を待たせてるからね」

 霖之助と呼ばれた男性は慧音さんからお金を受け取ると、木箱を開けて慧音に中身を確かめてもらった。

「霖之助が人を待たせてるなんて珍しいな。霊夢の所と言うと外来人か?」

「昨日、うちの前に倒れてるのを魔理沙が見つけてね。今日は僕が人里へ来るついでに神社に案内したんだ」

 昨日拾われた外来人。おそらくは僕達と同じ時間に幻想郷にやってきた人物だと見るのが妥当だろう。マスターか、鈴ちゃん。そのどちらかだと思った。

「霖之助さん…でしたか。その外来人のお名前をお聞きしても?」

「ん?恭也のことかい?確か―」

「―いえ、もう結構です。そのマス…恭也さんはどちらに行けばお会いできますか?」

「帰れてなければまだ博麗神社に居るはずだ。なんだったら一緒に行くかい」

 この世界にきて二日目だが、なかなかツイてると思った。昴さんに会えただけでなくマスター―通里恭也―の手がかりまでつかめるなんて。

 だが席を立ち、霖之助さんに着いていこうとした僕を慧音さんと昴さんが止めた。

慧音さんからは、まだ酒の席なのに途中なのに帰るなと、昴さんからは慧音さんの絡み酒から逃げるなと言う意思を感じ渋々席へ戻る。

「…。恭也に会いたいなら僕の店に来るといいよ。魔法の森の入り口にある香霖堂(こうりんどう)という骨董屋だ。恭也が帰えれてなければ引き続き僕の店で預かるから、店に来れば会えると思うよ。ついでだからもし恭也に伝言があれば受け取っておこうか?」

「では、響代好杏と昴、鈴の三人がマス…、恭也さんに会いたがっているとお伝えして頂けますか?」

「解ったよ。それじゃ」

 結局、その日は夜が随分と更けるまで三人で飲んでいた為にマスターに会うことは出来なかったが、マスターの居場所が判明し、安心して美味しくお酒が飲めた。

 帰り際、昴さんは酔って寝てしまった慧音を抱えて帰るハメになっていたが、僕も文さんの下へ帰らなければならないので、せめて楽になるように風の魔法で慧音さんの重さを軽くしてあげた。

 今日だけで昴さんと出会えた上にマスターの事も解った。後は鈴ちゃんの居場所を探すだけだ。

このまま順調に見つかってくれるとありがたいな。

 里の中から飛ぶわけにいかない僕は、飛んで帰るために里の外れへと向かっていた。その途中、建物の影に綺麗な赤いものがチラと見えた。

月の光だけが地上を照らす闇夜の中だと言うのにその赤はとても映えて見えた。

「今見えたものは、もしや…!?しかし、あの子はまだ存在出来るほどの力なんてないはず…」

 好杏は赤い影を少し追ってみたが、夜の産みだす暗い空間が広がるのみで何も見つけることは出来なかった。

 

 ***

 

 門番の朝は早い。いや、むしろ特定の人物においては早いも何もないかもしれない。

「zzZ」

 朝だろうが夜だろうが、この門番は寝てばかり居るのだから時間なんて関係ない。

「あーあ、暇だなぁ。美鈴(めいりん)は立ったまま寝てるし、門番っつったってこんな霧の深い湖の側の洋館なんて誰が来るのよ」

 鈴は一人で誰に話すわけでもなく呟いた。世話になる代わりに門番を引き受けることになったが、やることがないと言うのは非常に暇である。

 昨日、咲夜と言うメイドに連れられて、この紅魔館の主と会い、色々と話を聞いたのだが、意味不明とか言いようが無い。

ここがあたしの知る世界で無いことはなんとか理解出来たけど、あんなチビロリが実は五百を超える吸血鬼だとか、メイドは時間止められるだとか、ジャ○プ漫画じゃないんだぞって話だ。

 一緒にこの世界に降り立ったはずの恭也(あいつ)達と再会するのが目的なところも含めて、○ャンプ漫画っぽい。

 大体、恭也達と会わなきゃっつったって、闇雲に探すより向こうが来てくれるのを待ったほうが早いだろう。

 知らない土地で互いに探し合っても、すれ違いになって無駄足を踏むだけだ。

ならば居させてくれる場所に居座っていた方が賢明な判断だと思う。

大方、好杏辺りが探し当ててくれるはず。

「あーあ、早く昼になんないかなぁ!」

 グッと身体を伸ばしながらまた独りごちる。

昼食を食べたら美鈴と稽古をする約束があるので早く昼になって欲しくてたまらない。機構化篭手(マシンガントレット)の調整も既に終わったし暇も暇、大暇である。

 身体を反らし、背骨からポキポキと小気味いい音を鳴らしていると、空から何かが近づいてくるのが見えた。

始めは鳥か何かかと思ったのだがどうやら人のようだ。

近づいてくると、真っ黒いドレスと絵に描いたような魔法使いの帽子を被っているのが見える。

 遠目に顔が視認出来るほど近づくと、寝ていたはずの美鈴がハッと目を覚まし飛び上がった。

「魔理沙さん!いつも言っていますが、館に入るときは入館表にサインをお願いします!」

「面倒だから美鈴の方で書いといてくれよ」

 門の上、15m程の高さで箒に乗った黒い少女と美鈴が何やら言い合いを始めた。どうやらこの少女はしょっちゅう館に来るが、毎度毎度強行突破で門をくぐらずに入ってしまうらしい。

 入ること自体は問題ないが、門番としては黙って入られたんじゃ仕事にならないので引き止めている。と美鈴が説明してくれた。それで毎回、強行突破を防げずに咲夜さんに怒られている。とも、

「あーもう!私はさっさと図書館に行きたいんだ。早速だけど退場願うぜ!『恋符:マスタースパーク』!!」

 少女は何やら八角形の物を美鈴に向けて構えると、極太の光線を景気よくぶっ放した。

「よし!」

 美鈴は避けようとしたが、レーザーが太過ぎて避けきれずに食らってしまう。心配して美鈴の姿を追ったが、心配は杞憂なようで服が少しボロっとしてるが体に傷は無いようだった。

「『よし!』じゃねー!!」

「ん?何だお前」

 思わず地上から叫ぶと黒い少女は今更あたしに気づいたらしく、ゆっくりと降りてきた。

「あたしは、門番その2って所だ。あんたが誰だか知らないけれど、美鈴が通さなかった奴を通すわけにはいかないな」

「ふーん。通さないって言うけど、見たところ外来人だろ?お前“弾幕”が撃てるのか?」

「だんまく?」

 そういえば、昨日「弾幕ごっこ」とかいう言葉を聞いたような。

「知らんけど、ようはあんたをぶっ飛ばしていいんだろ?」

「出せないなら、避けるだけでもいいんだぜ」

 そう言うと黒い少女は箒に跨がり宙へと浮いた。生憎、好杏みたいに飛ぶことの出来ないあたしは地上で構えて待つ。

「飛べない相手に本気は出さないから心配しなくていいぜ!まずは小手調べに『魔符:スターダストレヴァリエ』だ!」

 黒い少女がカードのようなものを掲げると、少女を中心に大小七色に輝く星形の“弾幕”が撃ちだされた。

 相手は空中で拳の届かない距離に居る。

地上で無数の弾幕を避ける俺はさながら蜂の巣にされかけてる気分だ。そうは言っても避けてるだけでは勝てないのでなんとか弾幕を掻い潜り、館の塀を蹴るようにして飛ぶ。

機構化篭手を思い切り振るが自在に飛び回る少女に当たるわけもなく空を切る。その代わりに大きな星形の弾幕があたしに直撃した。

 吹き飛びこそしたが、不思議と痛みはほとんど無かった。

「まず一回目。後二回当たったら私の勝ちだ。…私は親切だからいいことを教えてあげる。ただ闇雲に突っ切ってくるより、しっかり見切って弾幕が当たらないように動かないとこの幻想郷じゃ誰にも勝てないぜ。次はちょっと本気出していく『光撃:シュート・ザ・ムーン』」

 再び少女がカードを掲げる。すると今度は魔法陣のようなものが降り注ぎ、そこから細いレーザーを空に向かって打ち出し始めた。

さながら地上から空に向かって雨が降ってるようだ。その上、星形の弾幕まで降り注ぎ、非常に動きづらくなってしまった。

 ここで、ふとあることに気づいた。先程と違い、小型の弾幕があたしに向かって飛んで来るのだ。

よく見れば大きな弾幕も先ほどと動きが違うように思える。

 どうやら「しっかり見切って」と言うのは、技ごとの法則性を見出して避けろと言うことのようだ。

しかし、解ったところで空へと降り注ぐレーザーは増える一方でどんどん動けるスペースが減っていく。

 なんとか体を反らし、弾幕がかすりながらも避けたところでレーザーに囲まれ動けなくなってしまった。

目の前に小型の弾幕が迫り思わず目をつむる。しかし何時まで立っても衝撃がやってこないので恐る恐る目を開けるとレーザーや弾幕は綺麗サッパリ消えていた。

「時には避けて避けて避けまくって、スペカの時間切れを狙うのも手だな。まさか避けきるとは思わなかったけどさ」

「避けるだけでも良いってのはこういうことか」

「そういうこと。さて、次でラストだ。『彗星:ブレイジングスター』!」

 少女はあの極太レーザーを出した六角形の物を箒の先につけると、レーザーを出しながら勢い良く突撃してきた。

ただの突進かと思って避けると、少女が通った後をさながら彗星の尾のように星形の弾幕が広がり中に漂う。

再び突進を避けると今度は広がった弾幕が突進で弾かれて不規則に飛び散った。

 先程に比べると幾分も避けやすく、反撃のチャンスもありそうだった。

とは言えあまり考えている余裕もなさそうだ。少女が駆け抜ける度に弾幕が増え続け、動きづらくなってきている。その時、丁度真ん前から少女が突進してきた。拳を当てるチャンスである。

 あたしは辺りの弾幕に気を使いながらギリギリまで少女を引きつけて横っ飛びに避けた。そしてすぐさま機構化篭手を振るい爆発弾を炸裂させる。

直撃こそしなかったが、爆風が空飛ぶ少女を煽るには十分で少女はバランスを崩して空中で暴れまわった。その間に時間切れが来たようで弾幕が消え去る。

 なんとかバランスを取り戻した少女がゆっくりを降下してくる。

「…これはあたしの勝ちで良いのか?」

「ぐぐぐ、まさか弾幕ごっこも知らん奴に敗けるとは思わなかった…」

「じゃ、入館表にサイン貰うよ」

 ゴネるかもと少しだけ思ったが、少女はすんなりとペンを受け取りさらさらと名前を書いた。

「霧雨魔理沙さんね。はい、入館許可証。帰りもサインが必要だから勝手に飛んで帰らないでね」

 サインの代わりに、札状の許可証を渡して門を開く。

「へいへい…。お前、名前は?」

「響代鈴」

「鈴だな。次は敗けないから、首を洗って待ってろよ」

 魔理沙は箒をあたしに向けて、これでもかと言うくらい明るく微笑んだ。あたしが男だったら惚れてたかもしれない。

「そういえば美鈴は…?」

 魔理沙との弾幕ごっこに夢中になり、すっかり忘れていた美鈴のことをキョロキョロと探すと美鈴は門の脇で塀にもたれかかりながら眠っていた。

 なんとも、平和そうな顔だ。門を閉じながらそう思った。

 

 

To Be Continued……?

 ***

 

 真っ赤な戦ドレスに、影の目立つツリ目をした少女は夜の人里をとぼとぼと歩いていた。

「気づかれぬと言うのは思ったよりも辛いのぅ…」

 未だ、この世に存在できるほどの力を有していない彼女は、誰にも気づいてもらうことが出来ず。行く宛も無く、さまよい歩く他無かった。

「明日は、人里を離れてみるかの。確か、北の方に吸血鬼が住む館があるとか里の者が噂しておったしの…」

 そこに一陣の風が吹き、彼女のドレスが[[rb:翻った >ひるがえった ]]。月の光に照らされて赤く輝くその姿を見るものは誰も居ないはずだった。

「今見えたものは、もしや…!?――」

 そう、ただ一人。彼女を除いて。

 

 

…To Be Continued

 

次回「交差」




次回「交差していくモノ」


〜おまけ〜
※これは6話まで上げたタイミングで書いてます。

主人公の紹介
名前は「通里 恭也(とおり きょうや)」
年齢は21歳で身長は170ない位です。
特に目立った特徴は有りませんが、眼鏡をしています。
後は、幻想入りした時はジーパンにシャツと上着みたいなラフさですが、以降は服の入手の都合上から基本的に和服を着ています。
一応、ただの人間ですが、好杏達を生み出した妄想の主でもあります。
また、その際の『設定』としての力を持っています。
その他、幻想入り特有の外来人が会得する能力もありますので、詳細は作品の中でお願いします。(この話ではまだ出てないけど)
ちなみに、特殊能力では有りませんが、自身を元に作られたキャラなので私ができる事は恭也も出来る事にして有ります。
例えば、家事全般とか、裁縫とか、製菓とか、水泳とか、地味ですがあると困らないスキルが結構あったり、子供好きで、お兄ちゃん属性持ちでもあります。
この辺は確か活用したはず。
そんなところですね。
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