自分の妄想と幻想入り   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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最新話までは、今まで書いたのを修正するだけなのですが、これが思ったよりも大変で、なぜかと言うとこの話はその場のノリで方向性を決めていてプロットとかは本当にあってないようなものなのです。

何が言いたいかと言うと、過去の私が馬鹿な性で矛盾とか、誤字脱字とか、表現ミスとか多すぎるんだよ。くそったれ。


第五話〜地底と地上の動き〜

 旧地獄へ向かうために森の穴へ入ったフラタニア達は終わりの見えない階段をゆっくりと、飛びながら降りていた。

 主様はまだ飛ぶことに慣れてないのかふらふらとしていて何だか危なっかしい。

「くっ…!ぐぐぐ!!」

 ただの人間がふっと湧いてきた能力でいきなり飛んでいるわけだから仕方ないとはいえ、はっきり言って五月蝿い。

「…早く慣れなさいよ。さっきからうるさいわよ」

「は、話しかけないで!集中力が切れるか、らぁ!?」

 イラついたような口調で巫女から話しかけられた主様は気が散ってしまったのか、身体が反転して宙吊り状態になってしまう。

 なんとか落ちずに飛んでいるようだが、あのままでは流石に危ないので妾が手を差し伸べてお姫様抱っこで受け止める。

 姫たる妾がお姫様だっこする側と言うのは何とも言いがたい気分なのだが、妾の方が飛ぶのにも慣れていて力も強いのだから仕方ないだろう。

「すまんフラタニア…、もう一度頑張るよ……」

「あのままふらふらと飛ばれては妾達も気が散る。今回はおとなしく抱っこされておるんじゃな」

「はあ……。良い気になって着いてきたけど、これじゃ完全にお荷物だな」

「大丈夫よ。恭也の弾幕はそこらの妖怪よりよっぽど強力だし、猫の手よりはマシだわ」

 ため息を付く主様に巫女がフォロー(?)を入れるが主様はなおさら落ち込んでしまった。

 妾は主様の弾幕、と言うよりスペルカードを見ただけだが他の場所で見たものと遜色なく、実戦でも役に立ちそうに見えた。

 そうでなくとも主様は妾達の持つ能力の五割程度は使えるはずだから、決して弱くはないだろう。

 それしてもこの世界のスペルカードルールは画期的だし、よく出来てると思う。

 変な話、弾幕ごっこさえ強ければただの人間でも実力のある者として扱われる。

 誰にも見つけてもらえず幻想郷を練り歩いていた時に何度か目撃したことがあるがどれも心奪われるように綺麗なものばかりだった。

 どれほど飛んだのだろうか、暗い穴をひたすら降っている間、巫女や神社に来た水橋様も含めて異変に絡めた話をしていると、やがて大きく開けた空洞へと出た。

 その空洞にはチラチラと輝く光が見え、そこに何者かが住む都市があることを教えてくれる。

「相変わらず遠いわね…。もっと近ければコッチの温泉に通っても良いのだけど…」

「温泉があるのかの?」

「温泉があるんですか!?」

 二人して温泉という言葉に飛びつくと巫女が少し驚いた様子で距離を置いた。

 引いたのかも知れないが。

「異変を解決したら案内してあげるわよ。…まずは地霊殿(ちれいでん)に連れて行くわ。私が博霊の巫女を連れて来るまでにさとりが異変に関する事を調べると言ってたから、色々聞けるはずよ。……何か解ってると良いのだけれど…」

 目的地が近くなって力が入ったのか、水橋様がスピードを上げる。それに伴い後を追う妾達と自然と速度を上げた。

「主様、落ちないように捕まってくれるかの?首に手を回す感じで良いはずじゃ」

「はーい、頼んますよ王子様」

「まるで立場が逆じゃのぅ…」

 そんな情けない主様を落とさない様に気をつけながら、二人を追いかけた。

 旧都と呼ばれる地底の街に着くと一気に空間が開けた。旧都は地獄とは思えないほど華やかで賑やかな街だった。

 そんな街の中心に一際目立つ大きな神殿のようなものが目に入る。先を行く二人から察するにあれが地霊殿とやらなのだろう。

 水橋様の案内で殿の中へと足を踏み入れると、広々とした静けさの中に騒然とした雰囲気を感じる。

 案内されるまま奥へと足を踏み入れる間、不思議なことに気配と裏腹に一切の住人を見かけることがなく、主人の部屋まで辿り着いた。

 水橋様がノックをしてから部屋の中へと入って行く。

「さとり、連れてきたわよ」

「ありがと、雑用みたいな真似任せて悪いわね」

「良いのよ。どうせあいつら相手じゃ私なんて無力だもの」

 巫女はズズいと前へ出て女児と水橋様の間に立つ。

「悪いけど、雑談は後にしなさい。先に何が起きてるのか説明してもらえるかしら」

「解りました。お話しします」

 目の前で巫女様に説明し始めたのは胸元に浮かび瞳が目立つとても幼い女児だった。

 胸元の瞳からは何本もコードが伸びて、女児の服に繋げられていた。

 何やら得体の知れない何かを感じ取り、無意識のうちに身体が強張ってゆく、まるで心を覗かれているような地持ち悪さを感じる。

「実際、覗いていましたけどね。例えば、そこの殿方が私を見て『可愛らしい子』って思ってることもお見通しです」

「っヴぁい!?」

 虚を突かれた主様が素っ頓狂な声を上げる。

「ぬ、主様…」

「恭也…、貴方ね…」

「待て、お前らは何か重大な誤解をしている!」

 目の前の少女に心を読まれたらしい主様が妾達に侮蔑の目を向けられ、大慌てで弁解の意を叫ぶ。

 流石の妾もこのような女児に発情するようでは主様の見方を変えなければならない。

「ふむ、『何故バレた』と思っていますね」

「おいこら、俺の心が読めてるならそういう誤解を生む言い回しするなっ!」

「『だいたいこの中で一番好みなのは―』…誰なんです?」

「っぶねぇ!!迂闊なこと考えられねぇな!おい!」

 なんとも気になることを館の主が言った所で巫女が止めに入った。

「旧地獄にフランの分身が大量発生した所までは解ったわ。その続きを話してもらえるかしら?」

「えぇ、そうですね。恭也様の性で話がずれてしまいました」

「俺の性なの!?ねぇ、俺のせいなの!?」

 一人で騒いでる主様をみて妾はふと、あることに気づいた。

 さも当然のように女児は主様を『恭也様』と呼んだが、そもそも妾達は自己紹介もしていない。

 なるほど、先程「さとり」と呼ばれていたしこいつは(さとり)妖怪と言うやつという訳か、読心術が使えるのも納得だ。

 女児は妾をチラと見た後に、以下の言葉を述べる。

「…では、説明しますね。現在、吸血鬼の分身がこの地底に大量発生して暴れています。そして、大量発生した時期と同時期に、この地底の悪霊や下級妖怪の姿が消えました。十中八九、吸血鬼に取り込まれたと見るべきでしょう。また、吸血鬼の分身体は実態が無く、ただ吸血鬼の本能のままに動く人形…いや、影と言うべきもので、そのためかただ叩いてもただ散るだけ。しかも消せば消すほど残った分身が強くなっているようで、確実に数は減っていますが、その力は星熊勇儀(ほしぐまゆうぎ)達鬼の力を持ってしてもじわじわと押されているようなのです」

「ちょっと待って、鬼が押されるほどの力を持った分身体って、一体それがどれだけいるのよ?」

 理屈は解らないが、分身というのは原則的に自らの力を分けて生み出すもので、分身が多いから言って強いとは限らないと言うのが妾の『設定』にある常識だ。

「これでも始めは雑魚中の雑魚だったんです。ですが、数が目に見えて少なくなってきた辺りから一気に強くなっていきました。おそらくは、数が多い事で分散していた力が集中してきてるからでしょう」

 どれほどの強さかは計り知れないが、鬼と言うからにはとても強いはずだ。問題は残りがどれほど居るのかだろう。

「…確認しているだけでざっと“百体”ほど、まだ一対一なら楽に相手できる程度ではありますが、大体が三体から四体でセットになって襲ってきてます」

「面倒そうねー。でも本能で動く能なしならいくらでも対処法はあるわ。そうね…。ちょうど『人間』の恭也も居るし、ね?」

 巫女はそういってニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべた。その半面、主様は「やっぱり」と言いたそうな表情で肩を落としていた。

 作戦はこうだ。「妖怪って、本能的に人間を襲う生き物なのよね。でも旧都って亡霊ばっかで人間って居ない訳よ。良かったじゃない。恭也でも役に立ちそうな仕事が見つかって、そういうわけだからちょっとばかし『旧地獄を走り回ってフランの分身を私が指定するところまで引き連れて来なさい。』私は先に勇儀達と合流して潜伏してるわ」とのこと、つまり囮である。

 旧地獄の各地に出現する分身体を引き連れろと言うのだから中々無茶苦茶な作戦だ。

 そして、妾達は沢山の分身体を引き連れて旧地獄を走っていた。人である以上、ほいほいと飛ばないほうが釣れるはずだと言う女児の言葉のせいだ。

「本当に数は減っているのかよ!」

 主様の叫びはもっともだ。妾達の後方には百を軽く超えそうな数の分身体が迫っている。

 目的地は近いが分身に遊ばれているせいで遠回りばかりしているし、なにより逃げると言うのは疲れる。

 そんな時、分身体が一斉にスペルカードを取り出した。

 戦慄が走った。あの数が同時にスペルカードを使うとなればこの狭い街並みは一瞬で弾幕が溢れかえる事は容易に想像がつく。

「「「禁弾:カタディオブトリック♪」」」

 楽しそうな分身の声と共に産み出された大型の弾幕が妾達を襲う。しかもこの弾幕は壁に当たると跳弾するらしく、あやうく避けたと思って油断した所に当たるところだった。

 跳弾に気を使いながら主様の様子を見ると、主様は壁から遠い性か、右からくる跳弾に気づいていない様子だった。

「主様!右じゃ!」

 すぐさま妾は叫んだが弾幕はもう主様の目前まで迫っていた。

「っぐ…!!」

 主様はそれを済んでの所で飛んで躱す。

 避けられたというのに少女は特に気にした様子もなく、ただただ楽しそうに笑っていた。

「「「なんだ。やっぱ飛べるんじゃん」」」

「…もう、隠す必要もないからな」

 その言葉を聞いて気づいた。いつのまにかに辺りは旧都にある広場。巫女様の指定場所に到達していたのだ。そして、広場を囲むように複数の影が現れる。

「札を使いなさい!」

 巫女様の言葉を合図に、妾達は事前に渡されていた『夢想の札(むそうのふだ)』を体に貼り付ける。自身を一定時間だけ夢想状態にする札で、夢想状態になってる間はあらゆる物が当たらなくなる(・・・・・・・・・・・・・)

 札を貼り付けた途端に弾幕の嵐が巻き起こった。

 四方八方から誰のものかも解らないほど幾重に入り混じった弾幕が広場を蹂躙(じゅうりん)する。

 いくら弾幕が当たらないとは言えど、そんな広場の真ん中に浮いているというのは非常に怖いもので、弾幕の音が止んで、巫女様に札を剥がしてもらうまで目を閉じてじっとしていた。

「もう大丈夫よ」

「…終わったのかの?」

「それは…、わからないわ」

 肩を叩かれて恐る恐る目を開くと浮かない顔の巫女様が横を向いていた。

 釣られるように横を向くと、広場の中心に黒い影が逆巻いているのが目に入る。

「な、なんじゃあれは!」

「さあね。ただ、良くないことなのは間違いなさそうよ。なんなのかしら?……不気味ね」

「わかりませんが、少なくともすぐに何かが起こると言うわけではなさそうですし、ここは一旦戻りましょう」

 そう言って近づく女児は、ぐったりとした主様を脇に抱えていた。

「心配しないでください。気を失ってるだけです。空気の重い地底で無茶な運動した性でしょう。しばらく休ませれば目を覚ますと思いますよ。…あと、私の名前は古明地さとり(こめいじさとり)と言いますので女児呼びはやめてください。これでも貴女よりずっと年上なんです!」

 息をするように心を読んださとり様は憤慨した様子で妾に訂正を申し入れた。

 広場はさとりのペットだと言う猫耳の妖怪に見張らせて、妾達は一同、地霊殿へと戻り一時の休息を取ることとなった。

 地霊殿は、運び込まれた負傷者が多く運ばれていてさとり様のペット達があっちこっちでてんやわんやしていた。

 さとりは一部のペットに下級妖怪や亡霊がどうなっているかを確かめに行かせ、巫女様もそれについていく。

「あなた方には助かりました。まさか人間に感謝する日が来るとは思いもしませんでしたが…」

「いや…、妾は半妖じゃ。活躍した“人間”なら主様だけじゃ」

 自嘲気味に言う。そんなことしてもコヤツには透け透けじゃろうが。

 はたしてさとり様は心を読んだのかは解らないが「そうですか」と一言だけで、深くは聞いてこなかった。

 主様が目を覚ましたのは、さとりがペットの対応に追われて席を外した後だった。

「ん…、あれ。俺は…寝てたのか…。悪いな。またフラタニアに運んでもらっちゃったな?」

「主様を運んだのはさとりじゃ。あのちっこい女児じゃよ」

「そっか、じゃあ後で例を言っておかなくちゃな」

 特に取り乱した風でもなく、上半身を起こして身体を伸ばしはじめる。

「具合はどんなもんかの?」

 聞くまでもなさそうだったが、一応聞くのが礼儀ってものだろう。

「上々!ってほどでもないけど、まあ大丈夫だ。さて、なにか判明するまでは待機だろ?俺らも負傷者の相手をしに行こう」

「ま、待つのじゃ。元気そうで安心なのじゃが、自体は把握しておるのかの?」

「へ?……あれ?」

 勢い良く起き上がって、負傷者が居る部屋に向かおうとする主様を呼び止めると、主様は眉をひそめて不思議そうに唸り始めた。

「ど、どうしたんじゃ?」

「俺さ、気を失って寝てたじゃん。でもさ、記憶があるんだよね。それも二つだ二つ。一つは地底の記憶と、もう一つは地上…、こりゃ鈴の居た紅魔館での出来事か?」

 突然主様が電波になったのかと不安になるが、冷静に話を聞いてみると確かに地底での出来事はだいたい有っていた。

 ただ、ところどころ抜けているようで、自分を運んだ人だったり逆巻いてる黒い影のことだったりはうろ覚えのようだ。

 当然だが、地上の事など妾は知らないので、少なくとも地底の事は合ってるとしか言えないが。

「とりあえず、紅魔館でも似たような事が起きてたみたいだけど、それは鈴達が解決したみたい。もしかしたら、コッチみたいに影が逆巻いてる可能性もあるけども…」

「主様は、妾達の『設定』に“記憶の共有”とかって付けておったかの?」

「いやー?俺が覚えてる限りは、テレパシーが使える予定だっただけで記憶の共有は無いはずだぞ。テレパシーだって厨二臭すぎるって理由で消してるしな」

 そう言うと主様は腕を組んで唸りながら部屋を出て行った。

「なにしてるんだ?俺らは元気なんだから少しでも手伝うぞ」

 どうやら、考えながらでも出来ることをすつるもりのようだ。そんな主様を妾も追いかけて負傷者の相手を買って出た。

 なにやら妙な違和感はあるが、今は考えずに目の前の問題を片付けることにした。

 

   ***

 

 好杏(このあ)は閑散とした神社の境内に立っていた。

 修行しに行ったと聞いてわざわざ来てみれば恭也(マスター)はおろか、博霊の巫女―霊夢―すら居ない。

 それだけの事なら、(きびす)を返して大人しく仕事すればいいだけなのだが、どうにも妙な妖力を感じて辺りを見回してしまう。

「巫女なら外来人の男と、妖怪の女を引き連れて地底にでかけたわよ。何かあったんじゃ無いかしら?」

 妖力を探って気を張っていたにも関わらず、背後から声をかけられて咄嗟に弓を構えて距離を取る。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!私は敵じゃなっ―!?」

 背後に居た少女…、いや幼女か?は後ずさる時に脚がもつれたのは後ろ向きにズルッ!と倒れた。

 なんか猛烈に悪いことをしてしまったような気がして、手を差し伸べると女の子はお礼を言いながら手をとってくれた。

「驚かせてしまったみたいで、申し訳ありません」

「良いのよ。元はといえば私が貴女を驚かせちゃったみたいだし、転んだのだって自業自得だからね」

 パタパタとスカートに付いた土を払い落とし、自分の悪い所はしっかりと認めていた。

 この幻想郷で出会った人の中じゃ慧音さんに並んでトップクラスに良い人だと思った。

 それにしても、小さい身体に真っ白いドレスに良く合う縦ロールの金髪に黒いリボンがいっぱい付いていて何だかお人形さんみたいだ。

「あぁ…良い子ですね…。しかも可愛い」

 マスターや鈴さんに見習わせたい…。

「な、ななな!いきなり有った相手に何を言ってるのかしら!―ぁ!?」

 女の子は顔を真赤にして手をぶんぶん振る。そしてまた転ぶ。

 反射的に手を伸ばすと、ドレスにあしらわれた黒いリボンだけ掴んでしまいリボンはハラッと外れてしまう。

「あ、貴方いくら妖精が相手でも、私のような外見の女の子に発情するなんて犯罪ですわよ!?」

「…ん?」

 何故かすごい既視感を感じて、リボンを握ったまま固まってしまう。

「私を手籠めにしようたってそうはいかないわよ。いくら男が相手でも、人間相手ならそう簡単に敗けないんだから!」

「ああ…。やっぱり」

 さてこれで男と間違われるのは何度目になるのだろう?

 里では慧音さんと昴さん二人相手に二股してるとかいう噂も流れているし、『設定』とはいえど少し悲しい。

「あのですね。確かに長身で胸無しだから男に見えるかも知れませんけどね。これでも僕は女性なんですよ…。もう何度目か解らないからどうでもいいですけどね…」

「……本当なのかしら?」

「なんなら脱いでも良いです。変態ロリコン“男”と思われるよりは100倍マシなので」

「そこまでしなくていいわよ。解った。信じるわ。…えっと、それでどちら様だっけ?じゃなかった。まずは私が名乗るべきよね。私はルナチャイルド。普段は他に二人の妖精と一緒に行動してて三妖精なんて呼ばれてるわ」

 感動的なまでに丁寧な人(?)で、しかも可愛い。それに何処と無く小動物のような雰囲気もあるし、凄く愛でたい気分に駆られる。

「こちらこそ自己紹介が遅れてしまい申し訳ありません。僕は響代好杏。今は妖怪の山で文々。新聞の手伝いをしながら過ごしてる外来人です」

 ドレスの裾をつまみ優雅にお辞儀する姿は妖精というのも納得の可愛さである。

 抱きしめたら気持ちよさそうだなぁ。

「…やっぱ同性だからって油断しちゃいけない気がしてきたわ」

「そ、そんなこと言わないでくださいよ」

「ところで好杏さんは何か用があって神社に来たのでは無かったの?」

「あー…」

 そういえばマスター達は地底に行ったとか言われたような。

 地底はまだ行ったことないし、会えなかったとしても話題性がありそうだけど、

「まあ、また会いに来ればいいですし、何なら待ってればそのうち戻ってくるでしょう」

「どうだろ?この神社の巫女は異変解決に行くとしばらく戻ってこない事が多いわよ」

 だから待つくらいなら後日また来た方が良いとルナちやんは言った。

 ここまで会えないとなると、何か運命的な妨害を感じてくる。もしくは僕が絶望的に運が悪いだけなのか。

 こうなったら、いっそ僕もその地底とやらに向かうか?

「やめたほうが良いわ。地底は地上から爪弾きにされた者の巣窟(そうくつ)よ。単身で行くなんて自殺しに行くようなものだわ」

「僕は腕に自身がある方なんですけど…、そんなに化物揃いなんですか?」

「私自身は行ったことないから、勝手なこと言うしかないけど地底は旧地獄って言われてて鬼の様な強い妖怪がわんさか居るって聞いてるわ。地上の者はまず行こうとしないわね」

 マスターはそんな場所に行ったのか、霊夢さんが強いのはよく知ってるけど、一緒に行ったという妖怪の女ってのが気になるなぁ。霊夢さんが連れて行ったということは実力があるということなんだろうか?

「あら、今日は色んな人が来るわね」

「…博霊の巫女は…、巫女は居られますか……?」

 ルナちゃんの声に釣られて境内の上空へ目をやると、ぼろぼろな姿の妖精メイドが神社の敷地へ入ってきていた。

「ここの巫女は地底へでかけてるわ。見たところ吸血鬼の館のメイド妖精みたいだけど、何か有ったの?」

「フランお嬢様が…、暴走…して……、巫女様に異変の…解決…つ、つつつ、つつつつつつtttttt——」

「な、何だ!?」

 メイド妖精がいきなりガクガクと震えて始める。形容しがたい表情で眼の焦点も合っていない。

 ひとまず降ろしてあげようと飛び上がった時、メイド妖精は突然弾けた。

「ひ、ひゃ!?」

 ぴちゃっと言う音と鉄臭い匂いが鼻をつく。

 跳ねて頬に当たった液体を拭ってみるとやはりそれは血で、嫌が応にも顔がしかめる。

 しかも何者かが現れた気配を感じて妖精メイドが弾けた位置をもう一度みると、そこには金髪の髪に赤いドレスと宝石のような翼を持った少女が浮かんでいた。

「あらららら?ここって霊夢の所じゃない。霊夢は何処?あなた達を壊せば会える?」

「きゅ、吸血鬼!?わ、私は妖精だから美味しくないわよ!!」

「この子は…!」

 この少女は本物じゃない。

 僕自身がまだ存在の確約しない空虚な存在(・・・・・・・・・・・・・・・)だから、解る。この少女は、偽物だ。

「あっは♪その顔素敵…!壊したくなっちゃう」

 少女は愉快そうに笑い弾幕を飛ばしてきた。武器で受け止めようかと思ったが、少女の顔が笑いで歪んでるのが見えて、すんでのところで避ける。

 その判断は正しかった。

「じ、地面が抉れて!?好杏さん!これは逃げるが勝ちよ!」

「いや、必要ありません。既に方は付きました」

 そう言って僕は少女を指差す。指さされた少女が先程までうるさいほど笑っていたのが嘘のように、口を開け虚空を見つめたまま固まっていた。

 そして数秒経つと少女は弾け飛び、血を撒き散らした。

「え?え?何が起こってるの!?」

「やはり分身ですか、吸血鬼らしい力ですね」

「好杏さんがやったのよね?一体いつの間に?」

 驚愕の目で僕へ詰め寄るルナちゃんに、思わず抱きしめたい衝動に駆られるがぐっと我慢して、今度は虚空に浮いた弓を指差す。

「あれは僕の持っている弓の一つ、アッキヌフォート。別名『無駄なしの弓』とも呼ばれます。仕掛け弓の一つで必中の弓とも知られています」

「う、うん?それでいつの間に?」

「この世界での能力は『気取られない程度の能力』なんです。それに僕自身が元から持っている弓と魔法。それを使って弾幕を避けた隙に遠隔で矢を飛ばしておいたんですよ」

 これでもかと言うくらいのドヤ顔で弓を手元に引き寄せる。これらを浮かせたり弓引かせたりもすべて魔法によるものだ。

「あ、そうだ!あのメイド妖精は紅魔館のだってルナちゃん言ってたましたよね!こうしちゃおれません!」

「わっ!ちょっと——」

「——今度来るときはお菓子を持ってきますのでゆっくり話しましょう!では、さらばです」

 僕は矢継ぎ早に言い残し、風を使って一気に飛んだ。

 むしろ、飛んでいるというよりは風で自分をふっ飛ばしてると言った方が近いかも知れない。

「何よ。もう……、折角暇つぶしの相手が見つかったと思ったのに……」

 後に残されたルナは唇を尖らせてぼやく。

 そんな事は露ほども知らない好杏は紅魔館での異変を探るついでに鈴を助けんとして紅魔館へと急いでいた。

 ひとっ飛びで紅魔館までたどり着き、門の前に降り立つ。

 しかしそこには本来居るはずの門番は何処にも姿が見えず、仕方ないので少し迷いながらも勝手に入ることにした。

 また館の正面の扉にも仕掛けが施されており、内側から結界が掛けられていてとても出入りが出来る様子ではない。窓も壁もすべて同様に結界が掛けられている。

 もしかしたらさっきの分身が中で湧いているのかもしれない。

 だとすれば迂闊に結界を破るわけにもいかないので、何か他に入る方法は無いかと辺りを見回す。

 その時だった。突如、風の様に黒い何かが館の横の建物に吸い込まれていった。

 吸い込まれた部分をよく見ると、扉が開いていて結界もはられていない様子だった。

 僕はその扉から中へ入り、念の為に結界も掛けておいた。

 扉の中は巨大な地下図書館で、背の高い本棚が都心のビル群のように佇んでいる。

 そして、本棚には例外なく大量の本が刺さっていた。

 気配だけで魔道書があるのが解る。こんな時でなければ色々と読んでみたいものだ。

 その光景に目を奪われているとバンッ!という大きな音が聞こえ黒い姿が奥にある扉から何処かへと飛び去っていく。

 どうやら彼女はこの館に詳しいようだ。ちらっと見えた顔が少し悪戯めいた表情だったが悪い奴ではないと思いたい。

 そして入れ替わりで、

「「「…あれぇ?パチェが居ない?」」」

「やはりか…」

 黒い彼女が出て行った扉から先程の分身体達が現れる。

 僕は素早く本棚の影に隠れていくつか仕掛け弓(無駄なしの弓)を飛ばす。

 分身の数は7人。まだなんとでもなる。

 僕は一枚のカードを取り出し、分身に気づかれないようにそのスペルを読み上げる。

「『隠符:見えざる蛇』」

 発動したスペルカードは、既に各所に飛ばしてある仕掛け弓に効果を与えてゆき、的確に急所を狙う無音の矢が一斉に分身達を襲う。

 音も気配もなく一瞬で分身を仕留めた僕は、ささっと移動して扉を潜り、またしても結界をかける。

 これで図書館から入ることも出ることもできなくなった。

 館の中は薄暗く人の気配もないガラーンとした状態で、時折遠くからドーンと言う重低音が響いてきた。

 とにかく音がする方へ進めば、黒い彼女なり館の人間なりが居るだろうと思い、歩みを進める。

 慣れない館はまるで迷路で音を追うだけでもかなり大変だし、その上、所かしこに分身体が居るものだからその都度、闇討ちしながら音を辿って行く。

 どうやら、一体一体の分身はさほど強くないようで急所に当てれば一発で沈めることが出来る。

 ただ、先程大きな音が聞こえてから、分身が強くなり半端な位置だと倒せなくなってしまった。

 それでもまだ気づかれずに進めて居るのは好杏の技量に寄るものだ。

 ドンパチとした音が随分近くなった所で、音がそれぞれの方向へ別れて散った。

 その中の一つが正面からやってくる。

「どけどけどけぇい!!」

 叫びを上げ、分身体を蹴散らしながら現れたのはワイシャツにオレンジのベストカーディガンとグレーのプリーツスカートを履いた鈴だった。

 その姿は威勢に満ちていたが、服のあちこちに血が滲んでおり、叫びもどちらかと言えば空元気の様に聞こえた。

「鈴ちゃん!!」

「おー!?好杏じゃん!」

「この騒ぎは一体なんなのですか?」

「あたしもよくわかってないけど、今はとにかくフランの分身を倒してけば良いってレミリアが言ってたから、好杏も協力してくれ。それじゃ、あたしはキルレースしてっから先行くよ!」

 ロクな説明も得られなかったが、とりあえず分身体を倒していけば良いらしい。

 あまり派手に暴れるのは性に合わないんだよなーなどと考えながら好杏は身体の随所に隠してあるナイフをポンと叩く。

 まぁ、たまには閉所によるナイフ格闘を練習しておくのも良いだろう。

 そうして僕はナイフを玩びながら、鈴ちゃんが向かった通路とは別の方向へと足を向けた。

 一通り屋敷を巡り、道中会ったメイド長に屋敷内の分身が一掃された事を聞き、一息つくために窓際に立つ。

 ひとまず屋敷内はこれで安全が確保されたとは言え、一概に喜ぶことも出来ない。

 分身が消えたと思ったら今度は庭におおきな黒い竜巻が吹き荒れている。

 しかも風が起きてるわけではなく、ただ黒くて実態のない何かが逆巻いているだけのようだ。

「——ッ!?」

 その逆巻いた黒い竜巻を見ていたら急に頭がズキンとした。そして頭にとあるイメージが流れ込んでくる。

 華やかな街で一組の男女が駆け回り、ここと同じように発生していた分身体から逃げている様なそんな光景。

 男女の姿は恭也(マスター)とフラタニアで間違いなかった思うが、街並みには心当たりがなかった。

 少なくともこの幻想郷の地上(・・)ではの話だが。

 一体、何が起きていると言うのか。

 沈みゆく太陽に目を細めながら好杏はかんがえをめぐらせた。

 

 

To Be Continued




現在書いてる最新話、3章のプロットの所為で細かい修正が多いんですよね。

それはさておき
次回『一時(ひととき)の休息』

〜おまけん〜

「響代 鈴(ひびしろ すず)」について
年齢は20歳、身長は155位。
背は高く無いが胸が大きく、この辺は好杏と対になってます。
描写し損ねてますが、前髪が長く、垂らして居ると顔の左半分が隠れるほどあります。
格好としてはYシャツに赤のリボンタイとオレンジの袖なしカーディガン、グレーのプリーツスカートにソックスとローファーと言う、学生服のような格好をしています。
その他、戦闘服としてピッチリとした黒のノースリーブシャツと肩鎧、下は鎧スカートに足具と言うグラディエーターの様な格好もします。
能力は特になく、魔力保有量は高いものの、不活性であり、魔導具が無ければ魔法も使えません。
使用武器は機構化籠手(マシンガントレット)で、鈴の胴ほどある鉄の塊で、先端は拳状になっており、爪の脱着が可能。
これは魔導具であり、使用者の魔力と結び付け無ければただの鉄塊となります。
また、砲撃機能が備わっており何種類かの魔力弾が撃てる。(実弾も可)
目の前を爆発させる『爆裂弾』
威力の高い単発を撃ち出す『スラッグ弾』
打ち出した大きな玉を任意で炸裂させ、小型弾を飛ばす『炸裂弾』
が撃てます。
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