自分の妄想と幻想入り   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

6 / 18
結構シナリオがガバってて解らねえ!って時は素直に言ってください。
加筆かなんかで誤魔化します()


第六話〜一時の休息〜

 レミリアが言うには、あの分身体は下級妖怪や妖精など力の弱い者に取り付いて自分の分身としてしまう存在らしい。

 倒せば取り付かれていた存在は戻るはずだが、分身を『血』している間は倒しても本体に力が還元されるだけで、大本を叩かないとダメなんだそうだ。

「でも、なんだってそれがフランの姿をしているんだ?」

「おそらくは、近頃薄くなっていたフランの狂気性が分身を通じて分離、暴走したんでしょうね。…私の予想が正しければ、フラン。今の貴女は随分と力を吸われているのではないかしら?」

 レミリアは手をつないでいるフランにそっと話しかけると、フランは黙って頷いた。

 つまり、フランの別人格とも言うべき狂気が勝手なことをしだしたと言うことらしい。

「一先ず、あの分身体を一掃しましょう。あの分身は倒せば倒すほど力が集約されていくから倒していけばそのうち本体が見えるはずよ」

「でも、それだと最後に残った1匹とかやばくないか?」

 魔理沙がこともなげに聞く。

 まるで自分は強いのと戦うのはさしたる問題では無いと思っている口ぶりだ。

「いいえ、大丈夫よ。今からみんなで一掃すれば集まった力は地底で袋叩きにされるわ」

 レミリアがそう言った。

 どういうわけかは解らないが、とにかく手分けして倒せば良いらしい。

 そうと決まれば話は早い。とにかく見つけ次第ぶっ飛ばせばいい。

 守りながら戦うのは苦手だが、一人で暴れるのなら得意も得意、大得意だ。

 なにせ周りを巻き込む心配がいらない。

「じゃあ、魔理沙。どっちが多く倒せるか競争しよう」

「そういえば鈴とは、今のところ一勝一敗だったな。数をちょろまかすなよ?」

「それはこっちのセリフだ」

 ニッと笑うと、魔理沙もニッと笑い返してきた。なんとなくだが、元気も湧いてきた気がする。

「それじゃ、私はこの異変の調査をしてるから頑張ってちょうだい」

 目的が決まり、一丸となったアタシ達は調査のために図書館へと戻るパチェリーを除いたメンバーで館の一掃をすることとなった。

 その道中、アタシにとっては嬉しい出会いが待ち受けていた。

「どけどけどけぇい!鈴様のお通りだぁ!」

 館を駆けながら騒ぎまくり、分身体のヘイトを集めていく。

 そして数体集まったら一気にぶっ飛ばす。周囲を気にせずにぶっ放せるのは楽でいい。

 …まあ、調子に乗って壊した壁とか後で治すのは考えたくないけどな。

 そうして駆けていると、廊下の先からアタシを呼び止める声が聞こえた。

「鈴ちゃん!!」

 それは、あたしの大好きな姉―という『設定』―の好杏(このあ)だった。

 本当に血が繋がっているかは知らない。多分、恭也(あいつ)も知らないと思う。

「おー!?好杏じゃん!」

「この騒ぎは一体なんなのですか?」

 好杏は辺りの血だまりに目配せをしながら聞いて来た。

「あたしもよくわかってないけど、今はとにかくフランの分身を倒してけば良いってレミリアが言ってたから、好杏も協力してくれ。それじゃ、あたしはキルレースしてっから先行くよ!」

 何か言いたげな好杏を置き去りにして新たな標的を探す。

 ようやく会えたのは嬉しいが、ここで話し始めて魔理沙に負けるのは御免被る。

 しかし、悲しいかな。好杏が通ってきた通路を進んでしまったのか所々に赤い染みがあるだけで分身体が一体も現れない。

 少しだけ引き返そうか考えたが、今更戻る方が手間だと考えてやめた。

 結局、探しまわったがあれから一体も見つけることが出来ずに分身体の一掃は終わった。

 魔理沙に負けたのは微妙に釈然としないが、これも勝負なんだ。仕方がないというものだろう。

 もしかしたらまだ隠れてるかもしれないということで、結界を解く前に見回りして警戒を強めていると同じく巡回してたはずの好杏が、窓辺に立って外を見ている所に出くわした。

「おつか——」

 あたしが声をかけようとすると好杏はいきなりこめかみに手を当てて苦しみはじめた。

 その顔は苦悶の表情で歪み、汗が浮かんでいる。

 崩れ落ちたりする様子は無いが、あたしは慌てて駆け寄り、その身体を支えるように腕をとる。

 まあ、あたしと好杏の身長差じゃ介添え出来ないのだが……。

 しばらく支えたのち、好杏はもう大丈夫だと感謝して窓の外、館の庭に現れていた黒い竜巻を睨みつけた。

 分身体と入れ替わりで現れた影のような実態のない竜巻。

 異変に関連するものだとしてパチュリーが書物を漁っているようだが、今のところは特に手がかりもない。

「どうかしたのか?」

 好杏に問いかけると、

「……頭痛と共にマスター達のヴィジョンが頭のなかに浮かんだのです。地底をフラタニアと駆けまわり、集めた分身体を隠れていた人たちが一網打尽にしていました」

 そう答えた。

「『集まった力は地底で袋叩きにされる』ねぇ…。それで?他にも何か見えたんだろ?」

 力強い目で庭の黒い竜巻を睨みつける好杏に、確信を持って尋ねる。

「えぇ、見えました。あの黒い竜巻ような影の塊が」

「あれはなんなんだろうな」

「わかりません。ただ、見ているととても不安を煽られますね」

 マスター(あいつ)がどうして地底なんかに居るのかは知らないが、マスターも大概面倒事に巻き込まれる体質だからな。

 それと、気になるのはフラタニアの方だ。この世界に現れていたらしいことは好杏から伝言を受けた美鈴に聞いたけど、マスターと一緒と言うことは実体を得たのだろうが、一体どうやって得たのだろうか?

「あら、居候のくせに見回りをサボるなんていい度胸ね」

 二人して庭の竜巻を見ていると、不意に後ろから声をかけられた。

「レミリアか、まあ多めに見てくれよ。久々に好杏と再開出来て軽く話してただけだからさ」

 随分と偉そうな事を言ってるかもしれないが、レミリアはそんな事には気にも触れずに、

「…久々にって、実体を得てから初めて会うのではないのかしら?」

 と言った。

 そんな身もふたもないこと言われても、と思ったのはアタシだけでは無いらしく、好杏と顔を見合わせて苦笑いする。

「多分だけど」

 そう呟きながらレミリアは窓際まで来ると庭の竜巻を見下ろした。

 雰囲気も先程とは変わり、真面目ものに変わる。

「あれは、吸血鬼の"力"の影か何かじゃないかと思うの。なんとなく見ていると、私の吸血鬼としたの本能が刺激されるのよ」

 そう言って、小さな口を開けて牙を舌で這わせる。

 一瞬だけ紅く輝いたレミリアの瞳は、その可愛らしい見た目とは裏腹に背筋がゾクッとするような怖さを感じる。

「この先の運命は私にもよくは見えないわ。ただ、貴女達のマスター。通里恭也(とおりきょうや)と言ったかしら?彼がこの異変に深く関わっているはずよ」

 どんな形であろうと、レミリアはそう付け加えた。

 その後、好杏は地底へ向かうと言って紅魔館を後にし、別れ際にもし困ったら人里の昴を頼れと、昴の居場所を教えてくれた。

 

 ***

 

 地霊殿に集められた怪我人達も、ほとんど処置が終わって、残りはさとりのペットがなんとかしてくれるとのことで、俺らは殿には似合わないカーペットと2つあるこたつのセットを囲んでいた。

 戻った霊夢が言うには、分身を倒した広場に現れたという黒い旋風は力の塊なんだそうだ。

 もっとも、すでに逆巻いていたのは収まって赤黒い球体になって浮いてるらしいのだが、実物を知らない俺からしたらなんのこっちゃか解らない。

「相変わらず実体はねぇのか?」

「無いわね。札を貼れないかと思ったのだけど、駄目だったわ。何かしらの力だけがあの場所に留まってるだけみたい」

 霊夢に訪ねているのは一本角が凛々しい鬼の女性、星熊勇儀(ほしぐまゆうぎ)だ。

 先程、怪我人を見ている際に出会った人で地底の鬼をまとめている人なのだとか、

「つまり本来その力を持つものが何処かにいるって事?…でも何処に」

 率直な感想を俺が漏らすと、場は静まり返ってしまった。分身と違ってそこに見えている明らかな異常なのに手が出せない。

 皆ももどかしく思っているのだろう。

 特にこの場に居る二人の鬼は分身の件もあって非常にイライラしてる様子で、そんな雰囲気にバシバシ当てられてる性で怖くてたまらない。

 身を縮ませて様子を見ていると、さとりとフラタニアがお盆を持って現れた。

「根を詰めすぎないでください。お茶とお菓子を持ってきたので、一旦落ち着きましょう。すぐになにか起きるというわけではなさそうですし…」

「気を貼り続けても疲れるだけじゃ。今は流れが来るのを待つべきじゃろ」

 その言葉で場が少しだけ緩むのを感じて、長いため息を付く。

 本当に息が詰まるような空気って言うのはあるものだな。

 しかし、さとりは地霊殿の主だそうだけど、お茶汲みを自分でやるとは殊勝な人だな。

「…あの、通里さん」

 さとりは俺の前に湯呑みを二つ置きながら、こちらを見ずに話しかけて来た。

「俺に何かようですか?さとりさん」

「心のなかで呼び捨てにするなら、わざわざ口にだすときに『さん』付けする意味は無いと思うわ」

 そういえば、さとりという名前なだけあって人の心が読めるんだっけか。

 変なこと考えないでよかった。うっかり考えて、読まれでもしたら変態呼ばわりされてしまう。

 お茶を配り終えたさとりはなぜか、俺の膝の上にちょこんと座った。

「なんすか……?」

「それ、意識して考えないようにしなければ、そういうことも考えてしまうと自白しているようなものよ」

 耳元でぼそっと言われた俺は、ボッと顔が熱を持ったような気がして首元に手を当てる。

 やっぱ心を読まれるのは非常にやりにくい。何を考えたものか悩んでしまう。

 と言うか膝に乗ってると本当に子供見たいで可愛いな。…俺は、あれか。馬鹿か。

「主様。そんな女児とイチャイチャしてないで妾にも構ってほしいのじゃ」

 声に反応してそちらを向くと、プクーっと頬を膨らませて不機嫌そうしているフラタニアの姿があった。

「別に私はイチャイチャしてるわけじゃ…」

「主様の膝に座るなんてずるいと言いたいのじゃ」

「…だったらツァイベルさんが乗れば良いと思うわ」

 そう言いながらもさとりは俺の上からどこうとはしなかった。まるで俺の言葉を待ってるかのように。

 あまりフラタニアを刺激しないでほしいんだがな。

「まあ、なんだ。フラタニアと違ってさとりは小さいから良いけど、フラタニアが俺の膝に乗ったら危ないって、色んな意味で」

 フラタニアの年齢は『設定』では十九歳。

 当然、それなりに身体つきもよくそんな子が俺の上に乗るのは流石にアウトだと思う。

「そう言うわけだから、このまま座らせてもらうわね」

「“そう言うわけ”って、さとり様は妾とは比べものにならない位歳上じゃろ!」

 確かにそうなのかもしれないが、性格はともかく見た目は中学生くらいに見えるし、乗られたところで重いわけでもない。

 結局何が言いたいかと言うと、体格の問題なのである。

「あら、通里さんはどうやら私みたいな方が良いみたいよ?——ふぎゃ!?」

「………」

 ちょっとフラタニアをからかい過ぎだと思った俺は、頭をなでると心で考えながら親指でデコピンしてみる。

 心が読めるなら別のことを考えながらやればいいのだ。覚えたぞ

 しかし、フラタニアも言葉ほど怒っているわけでは無いらしく、頬を膨らませてはいるものの、自分で運んできたお菓子をむしゃむしゃ食べるだけで、それ以上は何もしなかった。

 そんな俺らの様子を霊夢がにやけ顔で見ていた。

「なんすか…」

「恭也は両手に花で羨ましいわねーって」

「霊夢にはこの状況が羨むべきものに見えるのか?」

「いや、全然」

 素っ気なく返す霊夢にため息が漏れる。

 頼むからこれ以上、俺で遊ばないでほしい。

 正直、実年齢はどうだろうと小さい女の子の手のひらで遊ばれてるのはあまり良い心地がしない。

「ご、ごめんなさい。降りたほうが良いかしら?」

 適当に、運ばれてきたお菓子に手を伸ばそうとしてると襟元を引っ張られる感覚がして、見るとさとりがお菓子を差し出しながら謝ってきていた。

 …ほんっと、心を読まれるってのは考えもんだな。

「別に良いよ。いじめようとしてるじゃないんだろう?」

「それは、勿論そうよ。心を読んで嫌がらせなんて悪質にもほどがあるわ」

 それがわかれば十分である。

 元々、年下の従姉妹が多かったのもあって子供と遊ぶのは嫌いじゃないし、なんなら学童っ子で、大学入るまでは偶に手伝いに行ってたまである。

 さとりを子供扱いするのも違うのかもしれないけど、やはり慣れというのは関係あるだろう。

「さとり様。お燐がさとり様を呼んでいらっしゃいます」

 少し時間が経ち、部屋に入って来たペットの一匹がさとりを呼ぶ。

「解ったわ。すぐに行くと伝えなさい。…と言うわけだから、あの広場まで行ってくるわ」

 さとりは少し惜しむように俺の膝から降りると、部屋を出て行った。

 出て行く直前に「次からは気をつけるわ」ともう一度だけ頭を下げてから。

 なんやかんや長生きしてるだけあって、人が出来てるのだろう。…妖怪だけど。

「……」

 ここで、問題が発生した。さとりが降りたことで痺れていた足が猛烈にビリビリする。

 非常に痛い。何?動かさなければ痛くないだろうって?

「なあ、萃香だっけ?やめてほしいんだけど。すごい痛いんだよね。痺れてるのよね」

「知ってる。ほれ」

「ちょっやめっ!痛い!痛いから!」

 いつの間にかにこたつの下から潜り込んで俺の近くに来ていた萃香と言う二本角の鬼に痺れた足をツッツンされているのだ。

「ほれほれ!どうじゃ?」

「…いや、流石にもう大丈夫だけどさ。足が痺れてる人の足をつつくとかなかなか鬼の所業だぞ」

「だって鬼だもん。…よっこいしょ」

 しばらく俺の足を突っついて遊んでいたかと思うと、今度は膝に乗ってきた。さとりよりも小柄で軽いのだが、鬼の象徴である2本の角が非常に邪魔である。

「ところで、お前さんはお酒を飲めるくちか?」

「一応、20歳は超えてるから飲めるけど…」

「歳なんて関係ない。飲めれば良いんだよ」

 俺がそう答えると、萃香はどこからともなく盃を取り出して、俺に持てと言いながら盃を掲げる。

 条件反射で両手を前に差し出して盃を掴んだのだが、萃香が膝に乗っているため、抱きかかえるような形になってしまう。

 持ち直そうか迷っていると萃香は、自身の腰に下げている瓢箪(ひょうたん)から盃に波々とお酒を注ぐ。

 どうしたものかと盃を見つめたまま固まっていると、萃香に早く飲めと急かされてしまった。

 仕方なく萃香の頭の上に盃を持ってきて口をつける。

「あ、美味しい。……!ぐぁ、しっかしこれは重いぞ!一体何度あるんだ!?喉が焼けそうだ!」

「私の瓢箪でしか作れない特製の酒だからな。まあ、残しても怒りゃしないよ。余ったら私が飲むからな」

 どちらかと言えば辛口だが、重さの割に飲みにくさは無い。

 しかし、酒感はかなり高いので酒酒しい酒が苦手だと飲めないかもしれない。

 とは言え、やはり度がかなりあるのだろう。喉がカーっと燃えるような感覚と、体全体にアルコールが染みてゆくような感覚を覚える。

 正直、残してもいいと言われてかなりホッとした。俺は決して強くは無いし、なによりも鬼の酌を残すとか、かなり怖いからな。

 その後もみんなが駄弁る姿を見ながらちびちびと飲んでたら、ふとフラタニアが羨ましそうに萃香を見つめているのが見えた。

 羨ましそうにするのは結構ですが、フラタニアは俺と体格に差が無いんだからやめてくださいね。

 フラタニアは机のみかんを一つ手に取ると、右手をかざすような仕草をしてから萃香に軽く投げ渡した。

 口元が歪んでいることから何かを企んでいるのだろう。

 萃香は特に気にした様子もなく渡されたみかんを剥いて、口に放り込んだ。

 するとどうやら酸っぱかったらしくバタバタと足を動かしながら口元を抑え始めた。

「暴れるなって!酒が、酒がこぼれ―」

「あ、赤いの!何をしたぁ!」

「呪いをかけたんじゃ!その食べてるみかんに、鬼が食べると強烈な酸味を出すような呪いをな!『物に呪いを付与する程度の能力』を得た妾にとってはその程度朝飯前なのじゃ。ホッホッホ」

 挑発された萃香は面白いくらいそれに乗っかって、フラタニアに向かって食いかかっていった。

 なんとかお酒はこぼさないで済んだのだが、これ以上飲むと何かあった時に動けなくなるような気がして机に盃を置く。

 すると、勇儀がその盃をかっぱらって豪快に飲み干す。

 まだ盃の半分くらいあったというのに、鬼は豪快なもんだ。

 それにしても、フラタニアが言った一言が気になる。『物に呪いを付与する程度の能力』なんて俺の『設定』には無いものだ。

 つまり、俺の能力と同じようにこの世界のルールに則って手に入れた力なのだろう。

 物に呪いを付与。"物"って言うのがどこの範囲までを捉えるのか解らないが使い方によってはかなり強力な能力なように感じる。

 もし、人に直接呪いをかけれるなら―

「―ねえ。お兄ちゃん。頭撫でてほしいな」

「ん。あぁいいよ」

 もし、相手に直接呪いをかけられるなら、剣術しかないフラタニアにとってはかなりの戦力になるはずだ。…いや、今は樹木子としての力もあるから更にか——。

 ——あ…れ……?

「どうしたのお兄ちゃん?」

「君は…」

「私はこいしだよ?忘れちゃった?」

 そう言われると、なんだかそうだった気がする。いや、そうではない。

「一体、いつの間に膝に乗ったんだ?」

「?さっき、お兄ちゃんがおいでってしてくれたんだよ?」

「あ、ああ。すまない、そうだったな」

 言われればそんな気がしてくる。だが、この言いようのない違和感はなんだ。何かがおかしい。

 少し考え込んでいたら、段々と思い出してきた。

 先ほど怪我人の手当などを手伝っていた時に会っていたはずだ。確か、さとりの妹だったはず。

「それにしても、こいしお腹すいたなー」

 言われてみれば、お菓子は摘んでいるが飯は食べてない。

 どうやら他の人たちも空腹だったようで、勇儀が給仕のペットに人数分の食事を頼んだ。

 その後も特に何もなく、時間だけが過ぎていく。

 眠くなったものは用意された他の部屋で寝て、残りはこたつ部屋で駄弁ったり酒盛りしたりと騒いでいた。

 まるで平和が訪れたみたいしないか。

 そんな中、俺は悲しいことにほぼ常に膝の上に誰かが乗っていると言う椅子っぷりを発揮して、まともに歩くことすら出来なかった。

 挙句の果てには、こいしとさとりがダブルで俺の膝を枕にして寝てしまうものだから、俺までこたつで寝ることとなった。

 起こそうかと一瞬悩んだのだが、地霊殿の主として駆け回っていたのを知ってる手前、ぐっすり眠っているさとりを起こすことに躊躇いが生まれたからだ。

 だが、いつまでものんびりしていられるわけではない。翌日の朝に事は動き始める。

 霊夢に蹴り起こされると既に館の中が慌ただしい空気が漂っていて、否が応でも目が覚めた。

 どうやら広場の例の黒い影に変化が起きたらしく、すでに鬼の二人とさとり達は出発しているとの事で、俺も固まった体を無理やり伸ばして霊夢の後をついて行く。

 他のことを考えて居たおかげか、無意識のうちに危なげなく飛び、程なくして広場へたどり着くことが出来た。

 広場では猫耳の生えた緑と黒のワンピースを着た女の子—お燐と呼ばれていた子—が広場の真ん中に巻き起こっている竜巻に向かって叫んでいた。

「お(くう)!戻ってきて!お願いだからー!」

 どうやら、旋風の真ん中に誰かが取り込まれてしまったようだ。

 よく目を凝らすと大きな翼を持った長髪の女の子が中に居るのがうっすら見える。

「…今度は本当に風が巻き起こってるのね」

 霊夢がポツリと呟いた。

 そうだ、話では実体が無く風もなければ触れることも出来なかったはず。

 しかし、こうして目の前に竜巻があり、物凄い風が俺たちを煽っている。

「通里さん!」

「さとりか、これは何が起きてるんだ?」

「わからないわ。ただ、お(りん)が言うには、お空が球体に近づいたらお空が球体に飲み込まれてしまったそうなの!」

「どうして!?昨夜、私が札を貼ろうとした時は何も起きなかったわよ!?」

 憤慨した様子でさとりを睨みつけるが、霊夢はすぐにお門違いと気づいたのか、その視線を竜巻へと戻した。

 同じように竜巻を注意して見ていると、黒い影らしきものがだんだんと旋風の中心に集まってきている気がする。

 いや、気がするじゃない。間違いなくしている。

「おい、なにか——」

 キューっと影が女の子—お空—の中に吸い込まれたと思われた。次の瞬間。

 ―ズドォン!!

 と言う激しい爆発音と共に、黒い爆風が吹き荒れた。

 様子を見に来ていた下級妖怪が一瞬で吹き飛ばされ、地面や壁に叩きつけられているのが視界の端に写る。

 何故か俺は大丈夫だったが、ビリッという音がポケットから聞こえて、中を探ると随分前に香霖から持たされていた札が縦に避けていた。

「お…空……?」

「あれは!?」

 爆発の発生地点。黒い旋風に飲まれたお空が居た場所はすでに逆巻いている風は無く、うな垂れたお空が右腕につけた長い棒を上空に向けている姿がはっきりと見える。

 その姿は黒いオーラを纏い、お空は棒をゆっくりおろして先をこちらへ向けると、棒の先からとても大きな弾幕らしき球体を打ち出した。

 突然の爆発に加えて、お空が唐突に放った攻撃に俺らは驚きで行動が遅れる。

 その一瞬の隙に打ち込まれた攻撃は広場に居た者を巻き込み、大きなクレーターをつくりだした。

 

 

To be continued




次回「黒い影」

〜ここからおまけ〜

今回紹介するのは「フラタニア=S=ツァイベル」
年齢19歳
身長160中盤
真っ赤な髪と真っ赤なドレスを着ている派手な剣士で、元々持つ能力、と言うか体質として呪いの類が一切効きません。
これを利用する事で、神話級の魔剣をノーリスクで使うことが出来ます。
……と言いつつ、使っている剣は殆どがオリジナルです。
ちなみに、フラタニアが常に腰から下げている大ぶりの剣は両刃で、サーベルの様なシールドがついていてバスターソード並みの大きさの謎剣です。
一応、剣の名前は「ガ(ー)ベラティーン」としてて、ガラティーンのまがい物として作られた魔剣(と言う設定)です。

この作品では樹木子と言う妖怪の血が混ざった半妖として登場させて居ますが、この樹木子は日本妖怪大全に乗っており、戦場などに生えた木で主に死者の血を吸う吸血鬼の仲間です。
また、枝などを自在に操り生者も襲うらしいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。