自分の妄想と幻想入り   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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なんで私は気づかなかったんだろう。
なんでだろうな…頭の中には話が出来ていたのにpixivの方からすでに抜けてた……。


第七.五話〜戦闘、狂気と呼ばれるもの〜

 私は焦りを感じながら湖に向けて飛んでいた。

 大妖精をなだめ、聞いた話はにわかに信じられるものではなかったが、もし本当にチルノがあの黒い姿になって暴れているのだとしたら昴には荷が重いだろう。

 だが疑問も残る。チルノは以前にも半身に黒い衣装を纏いスイカのような剣を振り回したことがあるが、その時は普段のチルノとは比べ物にならないほど落ち着き、そして賢くなっていた。少なくとも(バカ)とは言えないほどに。

 つまり鍵を握るのは大妖精の言っていた“黒い影”の正体だ。紅魔館に近づいたらチルノが黒い影に飲まれたと言う言葉からレミリアか動かない大図書館が何かしたという線が濃厚ではあるが確証がない。ともかく急いで湖に辿り着き、チルノの様子を見る必要があるだろう。

 あと少しで湖に着く頃、私は一つの違和感を感じていた。

 —肌がピリピリする。まるで満月の前日の様に血が騒ぐ。

 理由は考えなくても解る。湖の方角からとてつもなく強い妖気が広がっていてそれに当てられているせいだ。ここまでの妖気はただ事ではない。こんなの異変レベルだ。

 事態の大きさに私は冬の寒さを忘れ、薄く汗をかきはじめていた。はっきり言って湖から感じる力の大きさは私がどうこう出来る範疇(はんちゅう)を軽く超えている。私は半妖と言ってもそこまで妖怪の血が強い訳ではなく、満月の夜を除けばそこらの中級妖怪から里を守れる程度の力しか無い。

 それでも逃げるわけにはいかなかった。生徒であるチルノが巻き込まれている。なにより、家族(・・)である昴が危険な目にあっているかもしれないのに助けに行かないなんて私が私を許しはしない。

 気づかないうちに鳥肌の立っていた自分の腕を叩き自らを鼓舞して進み、湖に着いた私が始めに見たものはボロボロの服を着た烏の翼を持つ見慣れない少女が霊夢や好杏達によってボコボコに叩きのめされている光景だった。

 一瞬だけ思考が停止し、事態の把握に時間を要したが烏の少女から私に向けて弾幕が飛ばされたことで私の時間は動き出した。

「霊夢!これは何が起こっているんだ!それにあの少女に宿っている力は——」

「——説明は後、今はあの子から影を引きずり出すのが先よ!」

 強い妖気の主は間違いなく烏の少女で黒い翼や髪のせいで判りにくいが彼女は黒い影を纏っていた。その影が大妖精の言っていた“黒い影”であるというのは放っている力で判る。

「……あの子を無力化させれば良いのか?」

 微妙に釈然としないものの私は烏の少女を正面に捉えて静かに意識を闘争へと向けていく。

 少女の気に当てられているせいだろうか?角が生えるほどでは無いが満月でも無いのに妖気が高まっている。上白沢(ワーハクタク)の血が滾る。

「無力化できるならしたいけど、おそらく無理ね。今は好杏、あの黒い奴が黒い影を剥がす為に大型の魔法を使うそうだからそれまでアイツを守ればいいわ」

 ますます釈然としない。あの霊夢が無力化を無理と言うなんて普通では無い。とは言え結局の所、好杏を守り時間を稼ぐと言うことは戦って食い止めろということだ。

「巫女様よ!流石に妾一人で戦うのは、楽では、ない、ぞ!ええい!話の邪魔をするでないわ!」

 真っ赤なドレスを着た少女が弾幕を剣で斬り裂きながら憤る。知らない顔だった。でも何処かで見たことある様な気がする赤い少女は乱雑に剣を振り回しながら烏の少女に肉薄し、その胴体を蹴りつけた。

 重そうな音とともに吹き飛んだにも関わらず烏の少女は何事もなかったかの様にふわりと体勢を立て直し再び弾幕を打ちだす。

 赤い少女が気を引いているうちに私は背後から烏の少女に近づいて、その頭を両手で掴み、自らの額を思い切り叩きつける。私の十八番であるヘッドバッドだがなにやら奇妙な感触があった。

 いくら私が石頭だったとしてもヘッドバットなんてすれば多少は私にも痛みがある。だのに今のはまるで痛みを感じなかった。当たる寸前に柔らかいような固いような何かに阻まれて額が少女の頭に届かなかったのだと気づいた瞬間に私の身体は赤い少女の手によって真横に吹き飛ばされていた。

「何をしておる!死にたいのか!」

 少女の叫びで私は助けられたのだとわかった。もし吹き飛ばされてなければ烏の少女の放つごっこでは許されない(・・・・・・・・・・)レベルの弾幕を受けていたことだろう。

 私は痛みを堪えながらも烏の少女から目を離さない。いや、離さないんじゃない、離せなくなっていた。久しく感じていなかった遊びではない本物の闘争に恐怖し、一寸でも目を離したら死んでしまうなのではないかという考えに身体も脳も支配されてしまったのだ。

 もはや昴やチルノのことなんか頭から飛んでいたと思う。我ながら教師としては最低だったと思うが、それほどまでに恐怖していた。

 それでも逃げずに居たのは心の何処かに大切な人を守りたいという気持ちが残っていたのか、はたまた妖怪の血が騒いでいただけか。

「好杏!まだなの!?」

「……!…………っ!!」

 霊夢が好杏に対して吼えると好杏は詠唱を続けながら目を見開いて霊夢と顔を合わせた。

 チラッと視界の端に移った表情は焦りに満ちていて、あと少しなんだと物語っている。

 すると、霊夢の弱音に反応するように烏の少女が霊夢を集中的に狙い始めた。それだけではない。弾幕が苦手なのか近接戦闘ばかりしている赤い少女からは距離を取るように飛び回り、私のことはもはや無視されていた。

 竦んでまともに戦えない私は脅威ではないと思われているのだろう。否定はしない。実際、私は狙われなくなった事で安堵している。

「皆さん!目を閉じて!」

 何をするでもなく、ただその光景を眺めていた私は巻き起こる全てを目に焼き付けることとなった。

 好杏の叫びに呼応して霊夢と赤い少女が同時に水面近くまで下降しはじめるのを合図に好杏が詠唱し終えた魔法を解き放つ。

 まるで太陽そのものがそこに現れたかの様な光と熱が辺りを包み、直視した私の視界を奪ってゆく。反射的に腕を持っていかなれければ失明していたかもしれない。

 だが、そのおかげで私は決定的な瞬間を見た。光に照らされた烏の少女から引き剥がされるドス黒い影を。

 しばしの間、光が治るまで湖を静寂が訪れる。

「——な、なにあれ…?」

 そんな誰かの呟きで目を開くと白目を剥いた烏の少女、その後方に全てを飲み込みそうな漆黒の十字架が浮いていた。

「あっ……!」

 私たちが見ている目の前で烏の少女が大地に引かれて落下を始め、私達は助けるために慌てて駆け寄る。中でも赤い少女はとても素早く、私や好杏なんかは届きそうですらなかった。

「しっかりせい!」

 赤い少女が烏の少女を湖のほとりに寝かせて、頬を叩き意識を揺り戻そうとする。

 そして一番遠く、上空にいた私はまたしても見ることになったのだ。漆黒の十字架が少女達を目掛けて落ちていく様子を。

「っ避けろ!」

 なんとか喉から絞り出して危険を伝えると赤い少女は振り返って私たちのいる空を見上げた。そして、その振り返った少女の胸に漆黒の十字架は容赦なく突き刺さり、世界が震えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




8話後半の前に入る話です。
ほんと、抜けてたの気づかないとか阿呆でした……。
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