魔法少女リリカルなのは ~魔法は物理で殴れます~   作:七色

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俺は悪くねぇ!悪いのは全部PSO2だ!


汝町を愛せ

 

 

木山家から高町家まで歩いて約20分。

軽く走れば約15分、なりふり構わなければ10分もかからないだろう距離を双誌は歩いていた。

日はまだ傾いて早い、そう慌てなくても夕暮れより先に辿り着けるだろう。

何より稽古の後だ、少し位のんびりとしていたい。

都会と呼ぶには少し物足りない町並みだが、田舎というには栄えている。

下町と呼ぶには華やかに思う町並みは、活気がありつつも騒がしくはない、調度良い町並み。

そんな町並みを眺めながら双誌は歩く。

自然も多く、かと言って人工物が少ないわけでもない。

機械的ではなく、今でも八百屋や魚屋等々商店街が繁盛している。

程よく混ざっていて、どちらが多いわけでもなく、どちらが少ないわけでもない。

そんな温かい町並みが双誌は好きだ。

今日も今日とて代わり映えしない、しかしそれが良いと思える光景。

そんな光景を見ながら双誌は歩き……、

 

 

 

 

 

――――――――――――。

 

 

 

 

「―――ん?」

 

感じた、強くはないが嫌な感覚。

つい最近味わった覚えのある、そう―――ジュエルシードに似た感覚。

急いで周りを見るも問題は起きていない。叫び声も何も聞こえないから近くでは何も起きていないのだろう。

ならば何処で―――。

 

「………………」

 

意識を集中し、さっきの感覚を思い出す。

感じた気配、魔力の位置を今度は意識的に探しだす。

自分の体を広げるように、手探りで探すかのように。双誌は己の体から領域を広げる。

自然と漏れだす魔力、だがそれに手を伸ばす余裕はない。漏れだす魔力を無視して探す。

 

「……駄目だ、分からない」

 

そもそも探す方法を詳しく知らないのだ、自力で方法を見つけるよりも先にジュエルシードが動き出してしまう方が早いだろう。

自分で探すことが出来ない、しかしそれでも近くに有るのは分かった。

ならば二人を呼ぶべきだ、自分では無理でも彼女たちなら見つけられるはずだ。

そう思い双誌は辺りを見回す。生憎と携帯電話はまだ持っていない。

必要もあまり感じていなかったし、なにより祖父が電子機器が多いことを良しと思っていない。

なんでも、最近の子供は携帯電話を持つことでなんとやら。詳しいことは覚えていないが何かを危惧しているのだろう。

今までは別になくても良いと思っていたが、こうも緊急の事が起きれば持っていないことが悔やまれてしまう。

 

とにかく今は公衆電話を―――。

 

 

 

―――――――――――――――。

 

 

 

「――――――こっちだ!」

 

 

 

再び感じた感覚、それを見失わないように双誌は走りだす。

近い、さっきよりももっと近くに感じる。それによりはっきりとだ。

そう、まさに目の前の信号の先。二人組の一人が……、

 

「あれ、あの二人って……」

 

楽しそうに話す男女の二人、何処かで見たことがある二人組。

その男子の服を見れば、なるほどそれは今日参加した勝負、しかも応援しに来ていたのに戦うことになってしまった翠屋JFCのユニフォームを着ていた。

そこまで思い出せば数珠繋ぎに思い出していく、キーパーだ。

中々優秀なキーパーだったと記憶している、現に何度もボールを止められたし、双誌の戦術に素早く対応していた。

女の子の方は覚えがないが、ジャージ姿からしてずっと『一緒に居たのだろう。

付き合ってるのかな?そんな事を思いながら声をかけようとして……。

 

「――っ、やば」

 

男子がポケットを漁り、一つの宝石のような石を取り出した。

見覚えのある菱型、綺麗に澄んだ蒼色。間違えようがない、ジュエルシードだ。

遠くて何を話しているかは聞こえないが、女子に見せびらかしているわけではないだろう。

差し出すように出された腕からしてあげると言っているのかもしれない、出来れば違うことを願いたいが。

 

「……なんか、嫌な感じ」

 

嫌な予感がする別に暴走している様子もないし、何か変なことが起きているわけでもない。

信号が青になってから事情を誤魔化して譲ってもらえばいいだけだ、特に問題は起きてない。

そういえば、ジュエルシードってどうやって暴走するんだろう。

ふと思ったその言葉は何か重要な答えに繋がりそうで、何故か緊張感を覚える。

もしかして、もしかしてだが……俺はその答えを理解してるのではないだろうか。

その答えをなんとなくとは言え予想しているのではないだろうか。

気づかないうちに分かってしまっているのではないだろうか。

そう、そのキーパーソンになるとするならば、それは前回と魔物の件なはずで……。

 

「魔物……倒して、戻って……元に戻った……」

 

 

 

 

―――元が、ある?

 

 

 

 

「――――――っ、おーい!」

 

不味い、それは不味い。

もし元が必要ならば、もし元が動物でなくてもいいのならば。

それはもしかすると……

 

「おーい!おーいってば!」

 

都合悪く横切る多くの車、距離もある為か声が届いていない。

かといって多くの車が走っているのだ向こうまで行くのは難しい。

 

 

でも、それじゃ間に合わない。

 

 

差し出された手のひらに嬉しそうに手を伸ばしている女の子。

あの手が当たったらジュエルシードが動くかもしれない。

そこに確信はないが恐怖がある、恐れがある。その先に待っていることを考える嫌な感覚がある。

耐え切れず足を前へ、まだ信号は赤で車も走っているが構わない、いやそんなことを考える余裕が無い。

思いのままに走りだした、急に飛び出してきた子供に車がクラクションを鳴らし急停止するも気にしない。

そんな音に周りが注目し、二人の視線もこちらへ向いた、それでも腕を止まらない。

 

「それを離して!持ってちゃ駄目だ!」

 

そんな叫び声を上げながら走り、―――そして撥ねられた。

車との衝突、痛くない訳がない。もの凄く痛い。

でもそんな事よりも気にしなきゃいけない事があって、そんな小さなことよりも大きな事が潜んでいて。

 

 

「―――っ、あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!」

 

 

無理やり着地、靴底が磨り減るほど地面を滑ったが足は地についている。

車に吹き飛ばされながらも着地した少年、そんなありえない光景に周りの人も唖然とし、それは二人も同じで……。

こちらを見ている彼女の腕から力が抜けおち―――、

 

 

 

「「「―――あ」」」

 

 

 

 

三人の声が重なった瞬間、その場に光が溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじい程の光量に閉じた瞳がチカチカと白黒の世界を幻視させる。。

そんな世界ではっきりと魔力を感じ、無理矢理にと双誌は瞼を開いた。

最初に目に入ったのは静かな世界。人が見当たらず、ぶつかってきた車の運転席にも人がいない寂しい世界。

そして次に目に入ったのは大木、とてつもなく早く成長する大木。

 

――――――そしてそしてその中心に眠る二人の子供。

 

理解した、これがジュエルシードだ。この大木こそがジュエルシードの暴走だ。

 

 

「……止められなかった」

 

 

あれだけ頑張ったのに、車に撥ねられても頑張ったというのに。止めることは出来なかった。

目の前で地面が割れる、コンクリートのしたから生まれ大きな幹が地を割り領土を増やしていくのだ。

 

「―――止めなきゃ」

 

悲しむよりも先に止めなければならない。

幸いジュエルシードが暴走したのはつい今さっき、今までに比べればリードしているのだ。

幸い人もいなくなった事だし、このまま一気に抑えてしまえば被害は少なく済むだろう。

そう思い双誌は魔力を込めて幹を殴り……、

 

「……あれ?」

 

双誌の魔力を込めた一撃、それはコンクリートさえ余裕に破壊出来る力を持ち、その拳を鉄をも超える強度へと持ち上げている。

例え一瞬しか出来ないとはいえタイミングは完璧、大木の幹を簡単に破壊できると思っていた。

 

 

なのに、だ。

 

 

目の前に佇む巨大な大木、今殴りつけたはずの太い幹は多少の跡を残しているだけで破壊どころか曲がる事すらしていない。

それどころか今も成長を続けドンドンと大きくなりつつある。

 

 

「…………おっかしいな」

 

もう一度力を込めるも同じ結末。

今回はさっきよりも傷が小さい気がしてきた。

 

 

 

 

 

 

木山双誌、今まで味わったことのないピンチである。

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそも木は今まで叩いてきたものとは違い加工されてないものだ。

それは生きているものであり、生きるために柔軟性を持っている。

それが例え大木の幹であれ、枯れ木ではないそれは柔軟に打撃の力を拡散してしまうのだ。

もちろん完全にとはいかず傷は出来てしまうが、その破壊性は急激に下がってしまう。

剣の様に切る事も出来ず、魔力攻撃のように爆発することも出来ない、拳という攻撃を用いた双誌だからこそ陥ってしまうピンチ。

そんなピンチに双誌は……、

 

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ」

 

 

 

 

取り敢えず壊せるまで殴る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先も述べたとおり、生き生きとした木、若々しい樹木というのは叩いて壊すのに向いていない。

振動を吸収し、微弱ながらも柔軟な作りで衝撃を弱めてしまう。

だがそれでも通る事は通るのだ、故に何度も繰り返せば破壊することが出来ない訳ではない。

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ」

 

とてつもなく効率は悪く、時間も掛かってしまうのだが……。

しかし双誌にこれ以外でどうにかする方法は思いつかなかった。

こんな事なら内部破壊系も教われば良かった、と小さく後悔しながら殴り続ける。

徹しと呼ばれる部類の技は外への攻撃ではなく、その衝撃によって内側を壊すことをメインと考えられた技。

もしそれが使えれば衝撃を吸収される事もなく簡単に破壊出来ていたのかもしれない。

まだまだ未熟、改めて心に焼き付けながら樹木を殴る。

効率は悪くとも進んではいる、現に樹木のかけらが地面へとつもり、上へと伸びるはずの蔦は地を這う様に進んでいる。

―――しかしそれでは足りない

 

「―――もう一本!?」

 

汚く割れた重低音が鳴り響き、歪んだ樹木の後ろにもう一つの樹木が現れた。

驚く双誌を嗤うようにまた一つ、重低音が地に轟く。

一つ、また一つ、そして再びもう一つ。

 

 

合計本数―――5本。

 

 

 

「……ヤバイかも」

 

 

 

時間が経てばなのは達が来ると思っていた。

けれどそれは一本の時、しかし今ではそれも5本に増えている。

それに先程よりも早く伸びている気もしている、来るまで耐えられるとは思えない。

両手を使って一本、しかもそれも完全に壊せているわけではない。

早く来てくれないかなぁ、なんて思って気づいた。

 

……呼べばいいじゃん。

 

そういえばその予定でした。

 

 

「電話!電話電話電話!」

 

 

周りを見回すもやはり公衆電話は見られない。

そもそも周りを見ても緑ばかり、綺麗に双誌を囲うように伸び出た樹木が辺りを染めている。

ならば、と双誌は手近な店に入り込んだ。

今は緊急事態だし、お店の人もいないから勝手に上がるの許してね、なんて思いながらもレジ奥にあった電話を取っ手ダイヤルボタンを押す。

今も昔も公衆電話を使っていた双誌には友人全員の自宅番号が頭に入っている、その中から高町家の電話番号を間違えることなく押して電話を耳へ。

 

 

 

「――――――繋がらないじゃん!」

 

 

 

電話から聞こえる呼びかけ音を5度聞いた辺りで双誌が叫ぶ。

横目に見える路上は樹木に埋もれ、そこから伸びる蔦が地面を隙間なく色に染めている。

今はあの男女は何処に居るのだろうかなんて考えつつ、苛立ちを見せるように机を小突く。

トントントントン、机にもたれかかりながら人差し指で机を叩く。

呼び出し音を8度聞いた辺りで苛立ちが強くなった、それに合わせ指の叩く速度も上がってゆく。

聞いた回数が10を超えた時、双誌は電話を投げ捨てた。机に人差し指の穴が凹んでいたりするが気のせいだ。

実は結界の所為で電波も何も届かなくなっていたりするのだが……そんな事は双誌の知る所ではない。

一件、また一件、隣に並ぶ店の電話を手当たり次第に掴んでは戻し掴んでは戻しの繰り返し。

店の数が5を超えた時、双誌は連絡をとる事を諦めた。

それが諦めるのには早かったのか遅かったのか、少なくとも町が緑に埋め尽くされるのには十分な時間だった。

 

「…………は」

 

改めて町を見た。電話の事を忘れ、視界も広がりよく見える現状を見た。

見えない、見れない。見えてたものが見えない。見えているはずの世界が見えてこない。

 

木、木、木、木、木。

 

世界が緑に覆い尽くされていた。

建物を覆うように、建物を壊すように、建物を突き破るように。

様々な方向から樹木が伸び、人工物を壊し、曲げ、持ち上げている。

 

 

なんだこれは。

 

 

これは本当に双誌の好きだった町なのか。

あの活気に溢れた商店街なのか。

影も形も見当たらない、けれどここは確かにあの町、あの光景があった場所な筈。

つまりこれは……。

 

「……ぅぅぅ」

 

唸るように声を上げる。

抑えきれない思い、激情、怒りと悲しみ。

町を壊された悲しみ、そしてジュエルシードへの怒り。

それは双誌の拳の力を強め、よりはっきりと魔力を纏わせる。

今までのような制御された操作ではなく、力に任せるような暴力的な、無理やりな魔力操作。

感情のまま溢れるように出てくる魔力をひたすら腕に集め続ける。

考えてやっているわけではない、ただ高ぶった感情が無意識に行っているだけの作業。

しかしそれは確実に双誌の一撃を強くしていた。

 

「―――ぅらぁっ!」

 

感情のままに手近な樹木を殴りつける。

その一撃で破裂音が鳴り響いた。樹木を見れば大きく残る殴打の跡。

先程よりも格別強い一撃、それを確認するでもなく双誌は再び二撃目を叩き込んだ。

 

「―――らあああぁ!」

 

まだ出てきたばかりの細めの木だったからか、より腰の入った強い一撃は利き手で無いのにも関わらず見事樹木を粉砕していた。

これならいける、双誌は両手に更に魔力を集め駈け出した。

手当たり次第に樹木を殴りつける。高ぶった感情を表に出して双誌は駆ける。思いをぶつけるように樹木を殴り続ける。

2本、3本、4本。最初とは比べ物にならない速度で樹木を粉砕していく。

しかしソレでも足りない、ジュエルシードも進化しているのか、気づけば壊した先から新しい芽が伸びてゆく。

粉砕した数=再生する数、新しく生える数だけ手数が足りない。

壊した先から再生されるのだ、壊した所で意味を成していない。

 

 

 

 

それでも双誌は樹木を殴る。

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

 

 

たとえソレが全体の本の一部で、そんな一部にも対してダメージを与えられていないとしても。

 

 

 

今出来る唯一の事を双誌は続ける。

 

 

 

町を侵食する勢いが少しでも遅くなればと、少しでも時間をかせぐことが出来れば、と。

 

 

 

自分に出来ないことがあるから、自分じゃなければ出来る事があるから。

 

 

 

だから彼はひたすら殴る、彼女が辿り着くまでの時間を増やすため、彼女が町を救うのに少しでも手助けをするために。

 

 

 

拳一杯力を込めて、意思と魔力が尽き果てるまでも。

 

 

 

彼はただ、ひたすらに樹木を殴り続ける。

 

 

 

「たかまちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――うん、任せて」

 

 

 

 

 

白き翼は降り立った。

 

 

 

 

 

 




お待たせいたしました(白目

不定期とか言ったけど長すぎた。
全てオンラインゲームがいけないんですはい、ゲームが楽しいのがいけないんです。
PSO2とかPSO2とかPSO2とかがメインでいけないんです、毎日深夜までやりたくなるからいけないんです。

だから俺は悪くねぇ!←


はい、今回はアニメでもおなじみ町破壊回です。
少々原作とは違っている所が多くなっておりますが、お気にせずにお願いします。
というか原作だと色々と不明な所が多かったので個人的に変更を加えさせて頂きました、はい
今のところ大きくは変わっておりませんが、おなじみスク水娘が出て来る辺りで結構変更になるんじゃないかな、とはいっても跡には響かない程度です。
路線変更ほどの大きなものではないのでご安心を。

久しぶりに手を出したらなんだら上手くかけていない気がす……。
こう、強調したい部分とかシリアスとギャグの使い分けとか難しいですよね、フルメタ見てるとよく分かる。
あのレベルで急激な変化付けれたら面白そうなんだけれども……レベル高いです。

長くなりましたが、ではまた。
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