『Divine Shooter』
機械的な女性の声と共に7つの球が空を舞い、手当たり次第に木の根を穿ち破砕する。
ほんの一瞬で木の根を断ち切り、時に複数集まり樹木を切り倒す。気がつけば空に舞う光は数を増やし二桁にのぼっていた。
彼女がいれば大丈夫、そう思わせるだけの光景に双誌の顔に光が浮かぶ。
そして負けじと周りに生える無傷の樹木へ拳を叩き込んだ。
「双誌!この木は言わばジュエルシードが形を変えたようなもの。物理的な攻撃よりも魔力を撃ちこむように攻撃するんだ!」
「……なんか難しくて分からないけど、取り敢えず魔力込めて殴ればいいんだよね!」
ユーノの言葉に双誌は腕へと魔力を込める。
何故か今までよりも込めやすくなった魔力を拳に纏わせ思う。
魔力が漏れだしていってしまうのならば、と。
「―――せいっ」
いつものように下ろし拳を打ち込む、しかしそれは今までとは違い魔力を纏わない、ただ魔力が通っているだけの拳。
そして拳が樹木へと当たる瞬間、双誌は拳から魔力を放出した。
纏うのではなく、一瞬だけ外に向かって魔力を撃ちだすのだ。
拳の速度+魔力放出速度、その一撃過激な程に火力を持ち上げ容易く樹木をへし折った。
今までのように何度も叩かなくてもいい、たった一撃の強化。
やはり魔力の使い方は難しい、そんな事を考える双誌には高町なのはのおかげで少しの余裕が生まれていた。
余裕は双誌の思考を落ち着かせ、そして大事な事を思い出させるだけの余裕があった。
本体だ、本体がある。あの二人が持っていたジュエルシード、おそらくはまだ二人と一緒の場所にあるのだろう。
しかし双誌では届かない、届けない。空をとぶことは出来ないし樹木も登れそうな場所が見当たらない。
双誌一人では完全に詰みだ。―――でも今は一人じゃない。
「高町ジュエルシードだ!あの大きな木の上の方にジュエルシードが!」
そう言って双誌が一番大きな大樹の先端を指さす。
間違っていなければあそこにジュエルシードが在る、あの二人と共に在るはずだ。
魔獣を倒した時、元となった犬に怪我は一切見られなかった。だから今回も大丈夫な筈、彼ら二人を無傷で助けることが出来る。
でも時間がかかったらどうなるのだろうか。混ざった水と氷は溶けて一つの水へ、コーヒーとミルクは互いに色を弱めて同じになる。
聞いたわけではないから分からないが、もしそうなってしまうのならば早い方がいいに決まっている。
そんな必死の思いが伝わったのか、なのはは眼前に構えていた杖を腰だめに、操っていた魔力球を全て爆発させて周りに少し余裕を持たせる。
「ディバイン―――バスター!」
『Divine Buster』
一撃、最初に覚えた大技を放つなのは。それは綺麗に予測コースを通り直撃、見事に樹木の破片を辺りに散らす。
煙が起こり上手く見えない、そんな視界は風で直ぐに開かれ綺麗な蒼い結晶を二人の前に曝け出した。
「やっぱりあった。あれの中に二人いるはずなんだ」
「思ったより硬い………全力で一発、通すよレイジングハート」
『Of course』
周囲の環境からして時間がかけられなかったが、手抜きというわけではない一撃。
それはなのはとしては、もう少し通っていても良かった、そう思わせるだけの力が篭っていた。
しかしそれは上っ面の樹木を削っただけ。その先、ジュエルシードの結晶には一切の傷がついてない。
生半可な力では足りない、力を保存している余裕など無い。いや、少し余裕をもたせようと考えたのが間違いだったのかもしれない。
なのはは思う、自分の信条は何だったかと、そんなもの考えるまでもなく分かっているのだ。
「全力、全開………」
何時でも誰にでも全力全開、自分の全てを出し切ってこその高町なのはだ。
「二人共、少しお願い!」
踏みしめる足を少し広げ、今よりも強い反動に耐えうる姿勢をつくりだす。
脇を締め、腰を深く、左手を痛めないように肘は張らずに…。
経験か才能か、恐らくは天才と呼べるだけの力をもって彼女は自身にとって一番適切な姿勢を作り出す。
距離はまぁまぁ、しかし一撃目の跡が定めるべき照準を的確に教えてくれている。
準備は整った、ここからは彼女の心の勝負である。
瞳を閉じて思い出すのは毎朝行ってきた魔力コントロール。
ユーノは前に言った、なのはの魔力は膨大だ、と。
事実、なのははディバインバスターを4回撃ったとしてもあまり疲れは感じない。
つまりはその程度なのだ。今のディバインバスターはなのはの総保有魔力量からすれば
魔力ランクの違いは同じ魔法さえも別物にしてしまうのだから、なのはの魔力量ならばもっと強く出来る筈なのだ。
「魔力を……集中……」
足元に光る魔法陣、何時も以上に魔力を込める、その量約2倍。
暴れる魔力はソレ以上の反発を見せている、短い期間とはいえ魔力コントロールの練習をしていなかったら危なかっただろう。
ソレに加え、レイジングハートという高性能なデバイス、どちらか欠けていれば今のなのはでは届かなかっただろう魔法。
その力強い魔力はジュエルシードにも危機感を与えたのか、今まで無作為に飛び続けていた樹木がなのはへと向きを変える。
上から押しつぶすかのように襲い来る樹木、なのははそれに気づくも何もしない。何もする必要がないのだ。
―――ラウンドシールド。
その盾は彼女へと迫る樹木を押しとどめ、
―――破っ。
その一撃は樹木を外へと吹き飛ばした。
高町なのはは何もする必要がない。何故なら二人に任せたから。
全力全開の一撃を撃つ為の時間稼ぎを信頼できる二人に任せたのだから。
守りの才の高いユーノが樹木を防ぎ、双誌がその破壊力を存分に打ち込む。
その咄嗟のコンビネーションはまさに鉄壁、樹木をなのはまで通すことはない。
「双誌!1、6、11,3、7!」
「大分多いんじゃないの!?」
合計5体、襲う相手をなのはと定めたのかなのはを中心に1時の方向へ走り樹木を吹き飛ばす、そしてその反動のままに6時方向へ。
それに体をぶつけるように飛び込み拳を当てる、そのまま樹木を踏み台に次の樹木へと飛び移る。。
別に樹木を砕かなくていい、一つ一つにそんなに力をかければ全ての樹木を防げない。
強い力で殴る程に反動は強い、ならばその反動を上手く使いこなせばいい。
そんな考えで編み出された技法のひとつ、腕の筋肉をバネの様に扱うことで反動を吸収し腕を戻す、攻撃の間を限りなく小さくする技法『反転』その応用。
殴るときの反動で腕を引くように、殴った時の衝撃を四肢で緩和する事により余すことなす利用する。
一撃一撃の単発ではない、全てが繋がる連打、その一撃毎に速度は上がる。
徐々に強くなってゆく樹木の抵抗に、まさしくギリギリではあるが対応する二人。
10分にも感じる刹那の数十秒、それも。
「―――いきます!」
『Divine Buster―――』
回転する魔法陣から御しきれていない魔力が溢れる、なのはの色である淡い桃色が撒き散る幻想的な世界。
トクン、と一度空気が跳ねた。魔法陣に出来た球体が一度収束、そして―――
――― Full Power.
猛威が振るわれた。
凝縮された魔力球から撃ちだされた魔力砲の余波が辺りに落ちた木の葉を吹き荒らす。
フルパワー、その名に似合うだけの膨大な魔力が籠もった一撃がジュエルシードを狙う。
無理やり凝縮された魔力が少しづつ飛び散っているも、それでもやはり圧倒的な攻撃力を誇るディバインバスター・フルパワー。
天賦の才とも呼べるほどに高い砲撃魔法への適正がある高町なのはだからこそ、圧倒的な魔力を保有している彼女だからこそ出来る無理やりな手段。
多くの魔力が飛び散ってしまい、コストを考えれば過食過ぎる一撃だが、それは逆に『もっと強くなれる』要素があると言う事。
自らに迫る危機、それを理解したのかジュエルシードが全ての樹木を守りへ向ける。
幾重にも重なる枝、密度の高い生きた壁。そんなもの知らぬとばかりに突き破る砲撃。
そして直撃、過剰な魔力が爆風を吹き散らしジュエルシードを貫いた。
「―――やった!」
主を失い役目を果たしたかのように結界が崩れ、樹木が掻き消え何時もの日常が帰ってきた。
ジュエルシードに囚われていた二人も道端とはいえ無事に眠っている。
何時もの日常、さっきまでの何も問題のない―――
「―――え、ちょっと双誌くん!?」
路上で急停止している車を見つけた時、双誌は反射的に走っていた。
車とは反対方向、車から逃げるように冷や汗をかきながら走り去った。
―――あれぶつかっちゃった車じゃん…!
車に被害はなかったが、しかし確実に大事になるのが目に見えて分かっている。
だからつい逃げてしまった、ジュエルシードに囚われていた二人をなのはとユーノに任せ、急いでその場から立ち去ったのだった。
なのははそんな双誌を不思議に思い、しかしそれよりも、と倒れている二人にかけよっていった。
万事解決、一件落着。
そう、全て終わった。だからこそ…。
―――結界から散りばめられた黄色い魔力に気づいたものはいなかった。
投稿、遅れてしまい大変申し訳ありません
また、この作品を待っていてくださった方、大変申し訳ありません。
何度も何度も何度も何度も何度も考えなおし、
何度も何度も何度も何度も何度も書き直しました。
それでもこのような稚拙な文章になってしまい申し訳ない。
自分でも納得出来ない書き方です、あまりにも淡白だ。
文才が無いことがこれほど悔しいと思ったことはない。
しかし今の私にはこれが限界でした。
もうコレ以上は上手く書けないでしょう。
ですから申し訳ないが、一旦このような状態で投稿させていただきました。
話はまだまだ続きます、途中で打ち切るつもりは未だありません。
ですので今後、また自分の文才が今を少しでも超えたと思った時、この話をまた描き直そうと思います。
それまではどうか、この状態で我慢していただきたい。
この次の話を楽しみにしていただきたい、自分も次の話を精一杯書かせていただきます。
長くなりました。
また次の話で会いましょう