ユーノは呆然としていた。
理由は言わずもがな、目の前に立つ少年である。
自分が頑張って防いだ敵を殴り飛ばす、というよく分からない事をしてくれた少年。
助けに来てくれた少女とは知り合いらしいが、彼も自分の声を聞いてきてくれたのだろうか。
と、そこまで考えて、
「…………あ」
今は非情に大きな隙なんじゃないだろうか。
急に出来た好機が大きすぎてついていけてなかったが、この勝機を逃す気はない。
「君、えっと…………なのは、さん?」
「あ、うん。なのは、高町なのはだよ」
「僕はユーノ・スクライア。急な話で悪いんだけど力を貸して欲しいんだ」
「よく分かってないけど………でもうん、いいよ。どうしたらいいの?」
これを、と首にかけていた宝玉、否、デバイスを彼女へと渡す。
やっとここまで出来た、と少し感動しながらも彼女の後ろに見える黒い蠢きに注意しながら口早に話を進める。
「君には魔法を使える才能がある。だからこれが使えるはずなんだ」
「てっきり超能力とか妖怪とかかと思ってた………」
「ヨウカイ?よく分からないけど、君にはぼくの代わりにあれを捕まえて欲しい」
僕にはもう、その力も残っていないから。
そんな言葉に彼女なのははデバイスを受け取り、いう。
――――――どうやるの?
その言葉は肯定で、そしてやる気の表明。
そんな言葉をユーノは嬉しく感じ、改めて真剣に考える。
これは多分間違っている事だ。現地の民間人に、しかも管理外世界、魔法がない世界の少女にこんな事をさせるべきではない。
しかし声に反応してくれたのは少女か少年の二人だけで、そしてなのはの方が彼よりも秘めている才能が高いだろう事が分かる。
適材適所、いい言い方をすればそれだが悪く言えば利己的。
相手の事を考えず、自分が良い判断と思う方法を行っている。
だからユーノは決意する、彼女は何が合っても守ると、彼女に力を与えた全ての責任を自分が負うと。
「――――――僕に続いて唱えて」
これが新しい始まり、悲しくも残酷で、そして優しい物語の始まり。
「あーびっくりした………」
十字路を曲がった先、音からして何かが起きているとは思ったが、まさか知り合いがいるとは思わなかった。
しかもチラリと見えたのだが、黄緑色の光が複雑な模様と空に列ねていた気がする。
今日は訳の分からない事ばかりだが、しかしはやり理解できないことは少しとはいえ思考を止まらせる。
そこを襲われたのは危なかったが、気づいたら反射的に殴っていたから大丈夫だろう。
…………というか、あれは殴れるものだったんだ。
今思えば『なんか凄かった』という感想しか出て来ない怪物。
黒い体に赤い瞳、何処からか出ている何本もの触手。
どう見ても動物ではない。いや、動くものという意味では動物なのだが。
「……えっと、あれが原因なのかな?」
ゲームや漫画とかなら、確か発生源ヲ叩けば大体直る。
ただまぁ、よく分からないものを殴るのはあまりよろしくないので知っている人に聞くことにした。
「高町ー、あれ何ー?殴っても大丈夫なのー?」
「我、使命を受けし者なり……」
あっれー、なんか呟いてる。
話を聞ける状態ではなさそうだし、何処か緊張しているようにも見える。
どれほど続くのかは分からないが、取り敢えず終わるのを待ってもう一度聞くとしよう。
「契約のもと、その力を解き放て」
「――――――ん?」
とくん、と何かが跳ねた。
体の奥底、今まである事すら分からなかった何かが動いている。
体中に脈動が周り、体が喜んでいるかのように力を満たす。
これは一体何なんだろうか。
既に一度味わっている感覚ではあるがやはり理解できないし分からない。
ただ、心地良いと思う程には慣れてきた。
「風は空に、星は天に、そして不屈の魂はこの胸に」
今までに無いほどの高揚感。
彼女の一句一句に脈動が強くなってゆくのが分かる。
やはり彼女に反応しているのだろうか、でも何故今更?
彼女と知り合って長くはないが短くもない、今更すぎる。
だとするとやっぱり他の何かが関係しているのだろうか。
そんな事を思いながら彼女へと視線を―――――。
双誌は見た、怪物を。
背中より多くの触手を突き出し、なのはへと走らせた怪物を。
そうだ、あれがいたのだ。
安心してい構えている余裕などなかった。
殺気にしろ気配にしろ何故感じれなかったのか、そんな考えは後回しでいい。
今は、
「―――――高町っ!」
気づけ、と叫びながら足に力を込め、一気に前へと―――――。
「――――――へ?」
まるでカメラのズームのように、車に乗っている時のように。
その体は前へと進み、力強い風が速さを教えてくれる。
全力で走るつもりではあったが、こんな風に跳んで行くつもりは無かった。
というか普通飛べない、どれほど力を込めても一気に10メートルも跳べるわけがない。
なのにどうして、彼女へと向けた体は怪物の突き出す針の様な触手よりも速くなのはへと到達し彼女の前へ。
遅れて飛んできた触手を掴み、その力で半数を握り潰す。
「…………へ?」
あっけない、空き缶よりも簡単に、割り箸よりも簡単に潰してしまった。
これなら刺さることも無かったし、放っておいても大丈夫だったんじゃないだろうか。
というか、この体どうしたんだろう。何かがおかしい、あれはおかしい、絶対おかしい。
だってあんな跳べるわけないもん、爺ちゃんだって出来ないし。
あれやこれやとこれ以上ないほどに体験できる意味不明で理解不能な現実は今まで以上に衝撃が強かった。
「この手に魔法を。レイジングハート、セットアップ!」
「――――――ふげらっ!?」
そんな思考の海から戻してくれるのが背中への強い衝撃というのは流石に過激すぎるのではないだろうか。
その原因は考えずとも分かる、目の前で突風を起こしながら空へと上がる高町なのはだ。
いやしかし、何故彼女は逆さに………。
「…………あ、俺が逆さなんだ」
どうなっているからよく見えないが取り敢えずと両手前へ、少しの抵抗とパラリとなる音と共に伸びる両手に痛みはない。
そのまま足も同じように抜けば、体も一緒に地へと落ちる。
「………………」
なぁにこれ?
でんぐり返し、と頭を上げれば、それは人型に凹んでいる塀の姿。
一体何時から自分の体は塀に勝てる硬さになったのだろうか。
これも武術の賜物なのだろうか、だとしたらマンガも現実なのかもしれない。
いや、でもあれ最後のページに『フィクションです』って書いてあるし。
フィクションは架空、空想の事だってアリサが言ってたし。
でもやっぱりこれなら出来るんじゃないか、手からビームとかも頑張れば。
「…………凄い」
「うん、ホント凄い…………へ?」
誰か喋った、でも周りにいるのは高町一人。
しかも声は男の子、自分が気づいてないだけで周りにいるのだろうか。
しかし周りの気配を探ってみるも、いるのは少し遠くに怪物と近くになのは、そしてイタチ一匹だけしか感じれない。
というか、このイタチ、二本足で立ってる。というか何でイタチがいるんだろう。
そんな場違いな動物を不思議がって見続ければ、こちらに気づいたのか瞳があう。
この子人を怖がらないんだなぁ、イタチなのに珍しい…………。
「あの、君も僕の声を聞いてきてくれたんだよね?」
「…………………………………………」
「さっきはありがとう君が吹き飛ばしてくれたから時間が出来たよ。でも一体どうやったの?」
「…………………………………………」
「それで、えっと…………」
「………………………………」
「…………あの」
「…………し」
「…………?」
「喋ったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「え、あ、うん。というかさっきからずっとだけど」
「ふぇ、え、なにこれ。一体どうなってるの!?」
「タタタ高町高町!」
「へ、あ、双誌君、どうしたの?」
「い、いた、いたち、いいいいたちが…………イタチが喋った!」
「へ?…………ああ、ユーノ君の事?ユーノ君はフェレットだよ」
「フェ、フェレット………?」
フェレット、とは何だ。
よく分からないが、なのはの反応を見る限りでは喋っていてもおかしくないのだろう。
…………初めて見た。
オウムやインコが話す、と言うのは聞いたことがあるが、イタチみたいな動物が話すのは初めて知った。
世の中知らないことがまだまだありそうだ。
だとすれば、もしかして、もしかしてだが………。
さっきのアレも珍しい動物だったりはしないだろうか。
だとしたら不味い、不味いんじゃないか?
珍しい動物をためらいなく殴ってしまった。
動物殴るのは良くないことだよね、なんて考えに冷や汗が一筋。
「えと、ひょっとしてだけど……さっきのも珍しい動物だったりする?」
「え、いや、あれはジュエルシードっていうロストロギアを核とした魔力の暴走で。生きている訳じゃないから」
「あんな動物がいるわけないよ、アニメじゃないんだから」
喋るイタチ…じゃなくてフェレットもアニメレベルの物だと思ってたんだけど……。
しかしきっと自分が間違っているのだろう。現実を分かってないみたいだし。
しかしまぁ、あれが動物でないと分かったのは嬉しい事だ、動物じゃないなら問題ない、うん。
「…………高町そんな服だったっけ?」
「ちょっと反応遅すぎると思うの。私が驚いている余裕無くなっちゃったし」
なんだかよく分からないが、取り敢えず問題ないならいいや今度で。
人は理解できないことが続くと考える事を放棄するものである。
ましてやそれが小学生であるのなら、分からないことが多すぎる社会に分からない事が少し増えただけの事。
考えたところで変わりやしないし、分からなくても問題無さそうだし、と思ってしまえば考えを放棄するのは簡単だ。
「■■■■■■■■■!」
「――――っ、危ない!」
気づけば様子を伺っていたのか、今まで何もしていなかった怪物が素早い動きでなのはへと襲いかかる。
分からないことが多いからと考えるのを放棄しすぎた、周りを見るのも忘れていた為に双誌も怪物に気づけず。
そしてユーノには守れる余裕もない。
しかしユーノは慌てていない。正直自分がなにかするよりも確実に安全な状態にいる。
なにせ、
『Protection』
彼女、高町なのはは魔法使いなのだから。
褒められて調子のった結果
ちょっと短いかなーとか思ったけど、次何時書くか分からないし、なにより(`・ω・´)が良かったので………違う、そうじゃない、キリが良かったのでここで投稿
まさか2話の投稿で感想もらえるとか思ってなかった。