魔法少女リリカルなのは ~魔法は物理で殴れます~   作:七色

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魔法の力

 

 

 

それはピンク色の光だった。

なのはの目の前、虚空から突然と表れ大きく広がった円を描いた綺麗な光。

五芒星と二重の輪、それに添えられた不可解な文字によって作られたそれは『盾』。

機械的な音と共に現れ、飛びかかる怪物からその身を守る魔法の盾。

それを発生させた彼女、高町なのはは呆然と現状に置いて行かれていた。

 

「何が起こってるの……?」

「―――ぶべらっ!?」

 

隣で顔をぶつけている少年、木山双誌を見ればこれが本当に存在しているものだと理解できる。

が、それだけだ。彼女にはユーノが言う現状を打破出来るだけの力があるのかもしれないが、どうすれば良いのかなんて分からない。

この魔法にしろ、一体どうやって出来ているのか、本当に自分で出しているのか、そもそも魔法なのかすらも分からない。

 

『master.』

 

しかし、だからこそ彼女がいる。

不屈の意志の名を持ち、その使い手の力を最大限に伸ばすための魔法の杖。

 

『Good morning my master』

「あ、うん。えっと……レイジングハート?」

『Yes, nice to meet you』

「あ、こちらこそ」

 

両手に持つ魔杖へとペコペコと頭を下げるなのはにユーノは驚きを隠せないでいた。

別に誤っているなのはに対してではなく、その杖レイジングハートにである。

 

「レイジングハートが認めた……?」

 

そう呟く言葉は驚嘆であり感嘆。

確かになのはの才能ならばセットアップ出来る、そんな確証はあった。

しかしこれは予想外だ。まさかレイジングハートが唯一無二の使い手として認めてしまうとは……。

元々はユーノが遺跡で拾ったもの、長らく使ってきてはいるがセットアップは厳しい物があった。

古代遺跡に祀られている物としては危険度は低く、ロストロギアの扱いを受けるどころか現在の技術でわかる『高性能』の範囲内と雲泥の差。

しかしそれは古代遺跡のルールからは外れず大出力、大容量、高性能の三点特化品。

魔力ランク的にもユーノが使えば適正の関係もあり直ぐにバテてしまう代物。

だからレイジングハートが使い手と認めるには低く、そして使う時も待機状態での方が多かった。

そんなプライドの高いレイジングハートを認めさせたのだ、しかも初めての起動から1分と経たずにである。

これは予想以上の才能だ、ユーノは1抹の羨ましさと大きな喜びを胸に秘め彼女へと言う。

 

「自分の中から溢れ出る魔力を意識して!望む事を思い描いて!そうすればレイジングハートが―――」

「―――うん、よろしくね。レイジングハート」

『All'right. Barrier Burst. 』

 

その声が聞えると共に怪物を受け止めるプロテクションが炸裂、怪物を吹き飛ばし光へと消える。

これは凄い、反対側にいる自分たちには風すら来ていないのに向こう側では突風なんてレベルではない。

この力は一体何なのだろう、双誌は考える。

なのはを守ろうと前へと足を踏み出せば、一瞬のうちに壁が出来てしまった。

ただ頭をぶつけただけで恥ずかしいじゃないか、なんて思考を隅においておき通りの向こうに目を凝らす。

動いている、確実に怪物は生きている。

というかあれは倒せるのだろうか、攻撃手段は殴る位しか思いつかない。

 

「えっと、フェレットさん? あれはどうすればいいの?」

「ああ、うん。魔力による過剰なダメージ、または封印すれば収まるんだけど……今それが出来るのはなのはだけ」

「……なんかよく分かってないけど、とりあえず倒せばいいんだよね?レイジングハートお願い、力を貸して」

『All'right. Flier fin.』

 

双誌には理解出来ていないが、しかしあれを放置しておくのが不味いというのは分かる。

もはや何が起きてもおかしくない世界、そんな中ピンク色の光を残して空へと飛び立つなのは。

双誌は彼女みたく魔法が使える訳ではない。体は頑丈になったし、怪物を殴り飛ばす程の力もある。

しかし空をとぶことも、盾を作り出す事も、そんな非現実的とも言える事は何一つできない。

戦う力がない、それは思ったよりもくる(・・)ものがある。

今までなんて事のないように道場おで技術を磨き、弱くはない、そんな考えで過ごしていたのかもしれない。

しかし現実強い弱いの話ではなく、戦う力すら無いのだ

幼くも武道に身をおきながら、同い年の一般人に戦いを強いている。

そんなに難しい考えじゃない、ただ一つの感情てきな考え。

 

「……悔しいなぁ」

 

空を飛び、3つの光る球を飛ばすなのはにはためらいも戸惑いもない。

何も分かっていない環境で、それでもただただ想いのままに。

自分の正しいと思うことを貫く彼女の姿が、ただただ眩しく感じられた。

 

「……っといけない、フェレットさん、俺達もいこう」

「いや僕の名前はフェレットじゃなくて……ああうん、とりあえず急ごう

 

気づけば空の遠く、小さく光る星ほどの大きさになってしまった彼女を追いかけようと足を進め、―――

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――」

 

 

 

 

 

「……え?」

 

「そんな……だってお前はなのはが……」

 

 

 

トクンと胸に感じた鼓動、部屋から感じた移動する波動、なのはが追いかけたはずのそれ。

林の奥、一番初めに双誌が吹き飛ばした先から感じる感覚は、間違う事なくしそれであり、そして怪しく光る赤い瞳は存在を主張する。

 

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■」

 

 

 

 

それは二体目の怪物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユーノの対応は早かった。

 

「走って!」

 

もう自分にはあれを防ぐだけの力はない。

だから彼女が戻って切るまで逃げる、それが唯一の選択肢だろう。

双誌にも才能がある、それを使えれば助かるかもしれない、なんて考えは捨てる。

今ユーノの手元にはデバイスはない、魔法の使い方を1から教えるには時間も余裕もない。

しかも相手はジュエルシード、ロストロギアに生身一つで挑めなど誰が言えようか。

今できるのは逃げること、情けなくも彼女が戻ってくるまでコレの注意を引きつけておくこと位だ。

だから少しでも遠くに、少しでも長く逃げよう、そう考えてユーノは走りだす。

全力で敵から離れるように、しかし離れすぎて興味を失わないように気をつけて。

ついて来ているか、そんな事を考え振り返り―――――――――足を止めた。

 

「……何をやってるんだ」

 

怪物は追ってこない、追ってくる必要を感じていない。

それもそうだ、逃げる小さな獲物よりも、その場にある大きな獲物を優先するなんて事は当たり前の話なのだから。

 

「――――なにをやってるんだ!」

 

ユーノは声を張り上げる、それは怪物に向けられたものではなく、それに立ち向かうように立つ一人の少年。

 

「なんかよく分かってないけど―――」

 

両足を広げ、腰を落とし拳を握る少年は逃げるという考えを持っていない、持っていればそんな事が出来るわけがない。

彼はロストロギアが何かすら分かっていない、だからこそそんな事が出来てしまうのかもしれない。

無謀だ、愚かだ。理性がそう訴える。彼の行動は間違っていると思考が答えを導き出す。

それなのに嗚呼、どうしてだろう。

 

「―――とりあえずぶん殴って止める!」

 

彼のその姿が、その意思が、どうしようもなく輝いて見えた。

そして、悪しき力が牙を向いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪物が襲いかかってくる、大きく口を広げ素早く飛びかかってくる。

落ち着け、早まる鼓動へ言い聞かせるように呟く。

相手は異形の怪物、人と同じ感覚で戦えば負ける。

敵の武器は針のような突き刺す攻撃、それか体当たりしか見ていない。

しかしそれだけと思って戦うのは危険だ、一欠片も見れていないのかもしれない。

 

―――重要なのは感覚だ。

 

思い出すのは祖父の言葉、第六感、存在しない感覚を信じろという父の言葉。

今まで悩みに悩んで分からなかった言葉が、今なら理解できる気がする。

深く深呼吸を一つすれば、体中から感じる不思議な鼓動、それは怪物からも、そして飛んでいった彼女からも、少し後ろに立つフェレットからも感じる事ができる。

これが何かと考えた、しかしどれだけ考えても分からなかった。

しかし祖父の言葉と共に考えてみれば、これがそれなのかもしれない。

見ることは出来ずとも感じる事が出来る生命の鼓動。

足と腕から余分な力を抜き、右手を腰だめに構える。

そして鼓動を強く意識し、それを次第に大きく変えてゆく。

体のそこから溢れてくるその力を右手へと送り、ゆっくりと腰をひねる。

これを使うのは初めてだ、どれほどの反動があるか、どれほどの威力があるかも分からない。

しかし今ならこれが使える、そんな気がした。

 

「初歩の一手」

 

腰を捻り、その動作とともに右手を突き出す。

ストレート、正拳、言い方はいくらでもある一撃。

初歩の一手は技ではなく、その名の通り準備とも言える。

これが出来なければ教えられる技はない、そう言う意味の一撃だ。

初歩の初歩、しかしそれが逆に言えば、その一撃には全ての可能性が詰まっていると言う事。

それが使えれば、他の技も出来る、そんな重要で、単純な一撃としては最高峰の威力。

そんな一撃は怪物へと当たり、―――

 

 

 

―――破散させた。

 

 

「これが―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……凄い」

 

正直なにが起きたのかは分からない。

しかし一瞬だけ彼の魔力が跳ね上がり、そしてその右手に込められた魔力がジュエルシードへとダメージを入れたのだろう事は分かる。

しかしそれは跳ね上がったと言ってもユーノの全力よりも少ない。

ランクとしてはB以下ではないだろうか、全体的に見れば一般的だがロストロギアを一人で相手にするには少なすぎる。

しかも彼はデバイスを持っていない、魔法陣すら展開していなかった。

元々魔法を知らない世界、彼も知らなかったようだし魔法を使った訳ではないのだろ。

腕に魔力を込めて殴る、たったそれだけでジュエルシードに対応できる訳がない。

なのに、ユーノの視線の先、先ほどまで暴走していたはずのジュエルシードはその身を鎮め道に転がっている。

レアスキル持ち?ロストロギアに対応出来るレアスキル、そんなもの聞いた事もないし存在しているとは思えない。

分からない、分からないが。

 

「……この二人なら」

 

そう思わせるだけの力がある、そう思わせるだけの実力がある。

幼い身で膨大な魔力を有する彼女と、生身でロストロギアの暴走体を打ち倒す彼。

二人ならば、きっとジュエルシードを、きっと……。

 

「これが―――これが気の力だ!」

「……何か間違ってる気がする」

 

一段落ついたらちゃんと全て説明しよう。魔法の使い方も、どうしてこうなってしまったのかも。

空で手を振りながら笑顔で戻ってくるなのはを見ながら、ユーノは思うのだった

 

 

 




主人公武道派なんで、魔法よりも気の方が出てくる

氣って書いても良かったけどどっちでもいいかなと

久々の投稿でした

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