魔法少女リリカルなのは ~魔法は物理で殴れます~   作:七色

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繋ぎ回


要領、用法を守ってご使用ください。

 

 

最初に気になったのは家に帰る時だった。

出てきた時と同じように塀を登り、瓦を音を立てずに部屋へと忍びこむ。

勿論祖父がリビングに居るのを確認してからである。

そして窓を閉めようと振り向いた時、ふと思ったのだ。

 

何であんな遠くから爺ちゃんがリビングにいるのが分かったんだろう。

 

塀から家の中は見えない、見えて光くらいなものだ。

そして距離もある、塀と家の間が3メートル、しかもリビングには尚遠い。

そんな距離でどうやって位置を確かめたのだろう、と言うかどうやって場所を確認したのだろう。

何気ない行動だったが、考えてみればおかしな話だ。

家の外から中にいる人の気配を見つける、なんて芸当は正に玄人のもの。双誌にはまだそれほどの経験も技術もなかったはずなのだ。

しかし事実、双誌は祖父の位置を理解し、そして危険がないと分かった上で安心して帰ってきた。

一欠片も心配していなかった、それだけを聞けば危険な状態だったかもしれない。

だが安心して帰ってこれる程確実に気配を当てた、それは急激な進歩とも言えるし異変とも呼べる。

 

「…………もしかしてだけど」

 

今までの双誌と今の双誌、大きな違いがあるとすればやはり<Ruby><rb>あの</rb><rt>・・</rt></ruby>鼓動だろう。

心の奥から溢れてくるような命の脈動。

これぞ遥か昔から伝わる人間の神秘『氣』だと思っていたが、実際は魔力という異世界の力だとか。

しかし使い方としては武道の『氣』の扱いで構わないだろう、だって使えたし。

たまに魔法がない世界でも魔力を持って生まれる子がいるとか、フェレットより聞かされた話ではその筈だ。

意識してみれば胸の奥から今でも脈動が感じられるその魔力、それくらいしか大きな変化は見当たらない。

ならばと意識を向けてみれば、今も低テンポながらに脈動を繰り返している。

 

トクン、トクン、トクン。

 

胸の中に感じるそれに意識を合わせるように、その鼓動を体中に流すように意識してみれば、自然と体が軽くなる。

そしてそのまま気配を探してみれば、なるほど確かに今までよりもはっきりとかんじることが出来る祖父の存在。

詳しい使い方は明日説明すると言っていたが、これだけ出来れば構わないのではないだろうか……?

そんな事を考えながらも寝た夜は、まさに夢見心地の時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――翌日筋肉痛で起こされるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううぅぅぅぅぅ……」

「……双誌、一体何をしたのだ」

「え、いや、うん、何もしてないよ!―――っつぅ……」

 

何もしてない訳がない。

怪物と渡り合ったのだ、それも生身で武器も持たずに。

いや、手足が武器という意味では持っていたのかもしれない。

手に入れた『魔力』があればそれも十分に武器となるだろう。

その手足という武器を使いに身の丈に合わない異形の怪物と戦う。

 

それに無理が無い訳がない。

 

その体は限界を超える動きをし、その体はコンクリートにも優る強度を持っていた。

それを無理と言わぬ訳がない、いくら出力を上げ装甲を固くしたところで基本スペックが追いつかないのだ。

そんな基本スペックに添え木を何十にも巻き、無理やり使えるようにしたのだが……そんな添え木を全て取り外してしまえば継ぎ目はガタガタ強度はボロボロの耐久値限界まで削った軸が残った訳で。

もちろん人の体は金属や木材みたく耐久値は消費型ではないので、少しづつでも治ろうとするわけで。

その結果、『魔力に耐える事が出来る体』に上方修正されて治ってゆくのだ。

 

まぁ、有り体に言ってしまえば筋肉痛である。

 

そんな状況で稽古が出来る訳もなく、今朝は念入りな柔軟で時間を過ごす事となるのだった。

 

しかし現実は非情である。

 

 

 

 

―――そんな日に限って体育の授業があるのだから。

 

 

「今日の授業はドッチボールにします」

 

後に教師に言われたこの言葉に双誌は絶望した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁそんな状態でまともに対応出来る訳もなく。

 

「うぅ……」

「ちょっと……あんた大丈夫なの?すずかのボールで場外まで吹き飛ばされてたけど」

「あ、あれは……何時もよりも少し弱めに投げたんだよ?そ、そう!言うなればジャブ!」

「寧ろ今まで受け止めれてたのが凄いの……」

 

すずかの投げたボール、それは動きの鈍かった双誌の腹へとクリーンヒット。

全快の双誌ならいざしらず、筋肉痛で稽古も出来なかった状態を少し回復させただけの状態では受け止める事も出来ず。

その威力は双誌の体を場外へと吹き飛ばすだけの力を持って双誌へと当たったのだ。

言ってもまぁ30センチ程なのだが……吹っ飛ぶ時点でおかしいと思わないのは双誌故か。

そんな双誌が弱っているのは非情に心配事、そして幸いにも双誌の友人は多い。

そんなこんなで心配して来てくれた何時もの3人、それに返事をする余裕すら今はない。

机に被さるように倒れこみ何も言わない双誌は、なにかこう、不気味なものがある。

その為か、

 

「あー、痛かったー」

 

と4限終了時に起きた時は多くの生徒が安堵の息を吐いたのだった。

ちなみに体育は2限目なわけで3限、4限と倒れていたわけだが先生も注意できなかったのはご愛嬌。

勿論昼放課にお叱りを受けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもアンタ、何で今日そんな『HP赤状態』みたいになってんのよ」

「ありさちゃん、それを言うなら『ひんし』の方が……」

「どっちかって言うと『どく状態』だったと思う……」

 

 

物事を今の流行りもので表現するのはやはり子供だからか。

流行っているのは折りたためるようになった色つきゲーム機。

折りたたんで画面が隠せるようになったそれは機能が全く同じでも旧型よりも遥かに人気が高い。

そんな家計に優しくないものも、そういうものが何かと付けて家に増えてゆくアリサ・バニングスから旧型を借りて遊んでいる双誌としては嬉しい話。

それまではアニメでしか見たことのなかった世界にどっぷり浸からないようにアリサの家で管理してもらっているが……。

そんな事はさておき、体の痛みは減ったものの少しとはいえ残っている。

出来ることならこのまま帰って少し休みたいところだが、とはいえ魔法についても聞いて置かなければならない。

それに危険物が街に散らばっているのだ、出来るかぎり早い方がいい。

 

「今日疲れてるから帰る……」

「……あんたホントに大丈夫なの?鮫島に送らせましょっか?」

「いい、歩いて帰る……」

「木山君、今にも倒れそうだけど……」

「大丈夫大丈夫ー、ただの筋肉痛だから」

 

 

 

筋肉痛で『ひんし』になるのだろうか?

というかすずかのボールよりも痛い筋肉痛って……。

どうやったらそんな風になるんだろう……。

バラバラながらも疑問を頭に浮かべる三人、しかし大体が双誌だからという理由で考えるのをやめる。

 

「まぁお大事にって言っておこうかしら。また明日も体育あるんだから、逃げたらすずかが泣くわよ?」

「あ、ありさちゃん。そんあ泣いたりなんて……」

「双誌が居なかったらすずかの全力を受け止められる人なんて居ないんだから、凄くつまんない結果になると思うんだけど?」

「すずかちゃん、体育の時間は凄い楽しそうだもんね」

「なのはちゃんまで……えと、私のことは気にしないでいいから、体に気を付けてね?」

「あいよー、んじゃねー」

 

ばいばーい、と軽いサヨナラの合図で教室を出る。

背負うランドセルを少し重く感じつつも、体を少しづつ伸ばしながら廊下を歩く。

 

「ちょ、ちょっと待って!待ってってば!」

「―――ん、高町?」

 

廊下に響く声に聞き覚えがあり、振り向けばそこにはこちらへと走りよる高町なのは。

教室からの距離から考えても、彼女の体力の少なさが伺える息切れを起こしながらも急いでこちらへと走りよる。

 

「……どうかした?」

「どうかしたじゃなくて……き、今日は……ユーノ君と、探すって……」

「探すって……何を?」

「ジュエルシードだよ!」

「え、聞いてない……」

「言ったよ……お昼の時間に」

「寝てた……」

 

お返事してくれてたのに、とショックを受けているなのはには悪いが記憶に無い。

それにこの体調でそんな事出来るとでも思うのか、走ることですら厳しいのに。

 

「ならさっき言ってくれれば良かったのに……」

「あ、あの時は皆の前だったから。……忘れてた訳じゃないもん!」

「忘れてたんだ……」

「ほ、ほら急ごうよ!ほら、ユーノ君待ってるんだから」

 

そう言って駆け足で先に進むなのは、結局行くのは決定のようだ。

出来ることならば家で休みたかったが、しかしまぁ返事をしてしまったのならば仕方ない。

別に体に問題が起きているわけでもないし、と足早になのはを追いかける。

 

しかし体はやっぱり痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユーノ君おまたせ」

「なのは、それに双誌も」

「おはよー」

 

学校から出て少し進んだ道先、こんな何もない所でどうやって待ち合わせしたのだろうという場所で一匹と二人は合流した。

なのはの差出した腕に塀から飛び移り、自分の場所と言わんばかりになのはの肩へと落ち着くユーノ。

 

「よし、それじゃあジュエルシードを探しに行こう。発動する前に見つけなきゃだね」

「どうやって探すの?」

 

体の痛みは無視できるが、出来ることなら街中を走るなんて事はしたくない。

小さな宝石を一体どうやって探すのか、そんな不安になのはは自慢気に胸を張る。

 

「昨日ユーノ君から探しものに使う魔法を教えてもらったので、なのはの近くに落ちてたら分かります」

「近くってどれ位?」

「…………」

「…………?」

「………5メートル」

「それもう見える距離だよね……」

「だからオススメしないって言ったのに」

「せっかく魔法使えるんだから、ちょっと位使ってみたいと思うのが乙女心なのです……」

 

もうちょっと使える魔法ないの?他の人にバレたら駄目だから……。

そんな話を小声でする一匹と一人、一匹曰く周りの目を気にした結果がこれだとか。

魔法がバレたらいけないものとは聞いていたが、まさかこんな弊害があるとは……。

 

「それじゃあ、二手に分かれて探そうか。見つけたら念話で教えあおう」

「ね、ねん……何?」

「念話だよ。昼にやったでしょ?」

「ユーノ君、双誌君寝てたの……」

 

だって体痛かったんだもん……。

気まずい空気から逃げるように双誌は目を逸らす。

言い訳のようになってしまったが、しかし事実なのだから仕方ない。

そしてそれはユーノからしても重要な事だった。

やっぱり、多少想定していたかのようにユーノは呟いた。

 

「なのはもだろうけど、初めて魔法を使った疲労は凄まじい。なのはの場合はレイジングハートというデバイスを使って上手く制御された魔法を使ったけど、双誌はデバイス無しで、しかも制御も出来ずに使った」

 

 

言わば魔力の暴発。

制御しきれていない魔力が腕を通り、ジュエルシードへと爆発。

その火力は高かったが、しかし体にかかる負荷は凄まじいものだろう。

その負荷にユーノは心配していたが、今日あった時の反応からして杞憂だと思っていたのだ。

まぁ、予想としては今日一日動けなくてもおかしくなかったので、思っていたよりも軽症だったらしいが。

とはいえ体に負荷がかかっているのは間違いない、本格的な探索は今度にして、今日は体を休めたほうが良い。

ユーノがそう言おうと口を開き、

 

「―――っ、嫌な感じがする」

「この感じ……同じ!」

「っ、ジュエルシードの魔力だ」

 

 

 

三人同時にそれに気づいた。

 

 

 

 




次回戦闘開始

待ってくれてありがとね!

別に待ってくれなんて誰も言ってないんだからね!

でもありがとね!
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