魔法少女リリカルなのは ~魔法は物理で殴れます~   作:七色

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それぞれの意地

 

 

 

それは唐突で、あまり遠くない場所だった。

 

「高町急いで!」

「なのは速く!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

急いで走る双誌、そしてそれに遅れるようについて行くなのはとユーノ。

その距離の近さに思わず急いでしまうがなのはにそんな運動神経は無く、自然と二人の距離は開いてゆく。

しかしそれでは不味い、ユーノは思う。

このままでは双誌が先にジュエルシードへと辿り着いてしまう。

 

「なのは!」

「分かってる!分かってるけど……!」

 

魔法のセンスは抜群であれ運動神経は普通よりもかなり低いなのは、一歩一歩息が弾んでゆく。

しかし不味いと分かっているからか、辛い体力を振り絞り彼を見失わないようにと走り続ける。

しか彼はなんであんなに迷わずに走れるのだろう……?

そんな事を思いながら角を曲がり……。

 

「っ、いない!?」

「速い……!なのは、魔力を惜しんでる場合じゃない、飛んでいこう!」

「え、飛ぶ、飛ぶって……えと、どうやって?」

「前に唱えた呪文を、レイジングハートをセットアップするんだ」

「え……えと、どれ、だっけ?」

「我使命を、から始まる4節の呪文。急いで!」

「え、そ、んなの覚えて、ないの……」

 

焦りながらも早口に会話をする二人、それでも足を止めてないあたり急ぎ様が伺えよう。

しかしなのはの体力も限界、話しながらも息継ぎが激しい。

 

「もう一度言うから、後に続けて唱えて!我、使命を受けし者なり」

「わ、われ……しめ、い…を……!」

「それじゃダメだ、足を止めても良いから落ち着いて」

「ハァ…っ…ハ……ああもう!」

 

もどかしい、速く行かなければいけないのに止まらないといけないとは。

落ち着いて唱えろというユーノの言葉に余計に急かされてしまう。

落ち着かなければいけないのに落ち着けない、そんな苛立ちが貯まりなのはは投げやりに叫んだ。

 

「お願い、レイジングハート!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『All right』

 

 

「「―――えっ?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃ!」

 

気迫と共に2段飛ばしで神社前の階段をのぼる。

感覚からして目前にあるだろうジュエルシードはやはり、生き生きと弾むように不気味な気配を放っている。

さすがに2段飛ばしは体に負荷がかかる、さっきからピリピリと体中が痛みを訴え始めた。

しかし幼いながらも長く鍛えてきただけはあって体力的にはまだ余裕。

ただ問題としてはなのは達と別れてしまった事だろう。

急いで走るうちに魔力で強化してしまったのだろうか、ふと気づいた時には後ろには誰も居らずただ一人走っていた。

まぁどうせ行き着く先は同じだし、とそのまま進んで来たが来る気配はなし。

ジュエルシードだけなら待っていたのだが、不味いことにその近くに人の、おそらく女性の気配があるのだ。

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃー!」

 

最後は一気に10段飛ばし。

魔力の波に合わせて足に送れば余裕である。

しかしまぁ問題としては足が痛くなることだろうか、主に明日の筋肉痛だろう。

魔力の波を意識し、合わせるように一呼吸、それだけで息を整え前を見る。

そこには前と同じようにジュエルシードが暴走し……。

 

「………へ?」

「Gyaaaaaoooo!」

「…………へ!?」

 

4つの黒い足で地を踏み、黄金に輝く瞳でこちらをにらみ、唸り歯を見せ威嚇する。

 

 

 

 

 

――――――どうみても豹か虎じゃん。

 

 

 

あれ、コレ違う。

いや、背中から何か生えてるから違うんだけど……いやそうじゃなくてもっと……。

 

「Gyaaaaaoooo!」

「うわ危なっ!?」

 

雄叫びを上げて飛びかかってくるそれを横に避けて少し距離を取る。

ちらりと辺りを見回せば確かに女性が一人境内の奥、双誌から少し離れた位置に倒れていた。

人命救助が第一だが、しかし今彼女を助けに行く余裕はない。

ジュエルシードの暴走体、正に魔物と呼べるだろう存在は隙を逃さない言うかのように姿勢低くこちらを伺っている。

今彼女を助けに行こうものなら背中からガブリだ、上手く女性の所に辿り着いたとして逃がす手段もない。

向けられている敵意に自然と鼓動が早くなる、魔力を使うのには好都合だが……。

 

「………………」

 

お前は弱い、そう言われているようで悔しい。

それも誰に言われているわけでなく、自分自身に言われているのだ。

高町なのはは空を飛び、魔法の杖で敵を倒す。

フェレットのユーノは魔法の知識を持ち、誰もが知らない事を教えてくれる。

 

 

 

だが自分はどうだ、何が出来る?

 

 

 

拳は鍛えてきた、武術もある。

下手な大人には負ける気がしないし、頑張れば勝てるだろう自身もある。

しかしその程度だ。

空は飛べないしビームも撃てない、魔法陣を出すことすら覚えていない。

できる事は魔力を纏う事、それも纏えているかすら分からない。

そもそも魔力が何なのかも上手く分かっていないのだ、気と同じように扱ってはいるものの本当にこれで良いのかと聞かれれば分からないと答えるしか無い。

気配と探知するのは得意になったが、しかしそこに根拠などない、ただ『ある』ということを感じるだけだ。

前に倒した時は無自覚だった、何をどうしたらあんな事が出来たのかも分からない。

一撃を強くすることは出来たが、それは大人よりも強いといった程度だ。

あの爪に触れて拳が勝つとは思えない。

 

「………っ!」

 

手に汗がたまる、気持ち悪い。

額を汗が流れる、心地悪い。

しかし視線は動かさない、動かせない。

一瞬でも隙を見せればやられる、そう感じるだけの威圧感が魔物にはあった。

どちらも動かぬその睨み合い、それを崩したのはピンク色の球体だった。

 

「双誌くん、おまたせ!」

 

空から聞こえてきた声と共に3つの球が囲うように魔物へと迫る。

上を見れば何時の間にか、レイジングハートを構えるなのはの姿。

 

「高町、後ろの人を!」

「それは僕が!」

 

飛べるというのなら好都合と女性の救助を頼むが、なのはに肩に乗るユーノがそれに答え地へと降りた。

だったらと拳を構え魔物へと走るが、降りてきたなのはによってそれも止められた。

 

「双誌くんは下がってて……」

「え、何で……?」

 

テンションが下がる、なんて話ではない。

どういう冗談だ、そんな気持ちでなのはを見るも彼女は魔物から視線を動かさない。

助けを求めるように後ろのユーノを見るも、彼も知っていたかのようにこちらの視線を無視する。

 

「……なにさ」

 

皆で戦うと思っていた、そんな話はシていなかったけれど、それが当然だと思っていた。

でも、そう思っていたのは自分だけで、他の二人は全く違う。

裏切られたような、体中の熱が冷めてゆく感覚。

 

「……キミにはデバイスがない。バリアジャケットも着れない今じゃ掠っただけで死んでしまう」

 

女性にを守るように薄緑の膜を張ったユーノが言う。

 

「だから、戦うのは私の役目。ユーノ君と決めたんだ」

 

双誌を庇うように立ちながらなのはが言う。

 

「探すのは手伝って欲しい」

「でも、戦うのは駄目だよ。大怪我しちゃうんだから」

 

 

 

………………………………なんだよ。

 

言葉からして双誌の事を考えてだというのは分かる。

 

……………………なんだよ。

 

双誌の身の安全を考えてだということはよく分かる。

 

…………なんだよ。

 

だが、それでも……。

 

「……なんだよ、なんでだよ。ここまで来ておいて何も出来ないのかよ」

「……君の為にも」

「街がピンチなのに何もしちゃいけないのかよ!高町が頑張ってるの見てる事しか出来ないのかよ!」

 

 

 

 

 

そんなのは……嫌だ。

 

 

 

 

 

「止めたければ止めれば良い、でも俺は止まる気はない。高町一人に任せるなんてごめんだね」

「……どうして分かってくれないの」

「分からないよ。そっちも分かってくれないんだから」

 

一緒にやれば出来ると思っていた。

一緒に戦えば大丈夫だと思っていた。

でも二人は違うらしい……。

 

だったら、自分の意思を貫くだけだ。

 

技術が無くても、才能がなくても、力がなくても。

自分の意思で行動し、自分の意志で戦う。

頭が悪い、才能がない、技術がない。だからどうした。

 

双誌には体がある、双誌には拳がある、双誌には祖父より学んだ腕がある。

それにほんの少しの魔力、それがあれば頑張れるのだ。

なにより祖父から学んだ精神が、力がないからと目をそらすのを、力が無いからと少女に戦いを任せるのを良しとしないのだ。

どれだけ辛くとも、どれだけ怖くとも、逃げることだけはしてはいけないのだ。

 

「……ユーノ君」

「……分かった」

 

しかしそんな考えをも壊すように、双誌を中心に薄緑の半球が描かれる。

それは女性を守っていたのと同じもので、外から身を守る為の盾。

そして、閉じ込める壁でもあった。

 

「―――っ!」

 

一人だけを包むように作られたそれは双誌が殴ってもぴくりとも動かない。

それどころか殴った双誌の拳の方が赤く痛めてしまう。

 

「……そこまでして戦わせないの」

「うん、双誌くんは戦えないんだから……」

「っ、戦える!拳もあるし、前にもジュエルシードを倒したんだから!」

「でも、バリアジャケットを着れてない。ユーノ君やレイジングハートから聞いたもん、バリアジャケットがどれだけ大事か」

 

気づいてる?と彼女は双誌の右手を指さす。

二の腕、その中央の位置に一直線に入る赤い傷跡を。

何時出来たのか双誌も分からない程小さな傷、しかしだからこそなのはにはその重要性がよく分かる。

 

「その傷、バリアジャケットがあったら出来なかったんだよ?大きな怪我でもバリアジャケットがあれば大丈夫かもしれない」

 

その恐ろしさがなのはには分かる。

大きな怪我を負って入院した人を知っているから。

大きな怪我で意識不明になった人を知っているから。

倒れた人が目を覚まさない、おはようと言ってくれない事の悲しさが彼女には分かっているから。

しかもこれは魔法だなんて理外の理が絡まっているのだ、考えたくないが死んでしまうという可能性だってありえてしまう。

 

 

 

 

 

……それは、いやだ。

 

 

 

だから彼女は戦う。

自分の身を傷つけてでも、少しでも友達を守るために。

もう二度とあんな悲しみは知りたくないから、あんな悲しみを他の誰かに味わってほしくないから。

 

「戦うのは……私だけなの」

 

だから高町なのはは杖を構える。

自分の意思を汲み取り、自分の意思を貫き通す為の魔法の杖を。

 

「ユーノ君は見てて……あの子は私だけで戦うから」

「なのは無茶だ。君はまだ魔法に触れて2日目、詳しい事はまだ何にも―――」

 

大丈夫だよ、強く握ってなのはは言う。

大丈夫、私ならやれる。自身をつけるかのように、恐怖へと立ち向かうように。

敵の姿は動物、昨日の敵よりも不気味ではないが恐怖は鮮明。

でも、―――。

 

 

 

「お願い!レイジングハート!」

『All'right my mater』

 

 

 

 

負けられない、こちらにも意地があるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




メリークリスマスよりハッピーニューイヤーの方が近そう

今回は全員が全員正しいというか

なのはとしてはバリアジャケットも持たない双誌を危険に合わせられない。

双誌としては女の子一人で戦えさせない、力があるのだから自分も頑張る。

ユーノとしては……まぁこれは後日。

どちらの意見も間違っていない、的な事を書いてみたかった。

こんな補足無くても大丈夫かな?



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