魔法少女リリカルなのは ~魔法は物理で殴れます~   作:七色

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Let's lesson!

体の中に魔力がある。

リンカーコアで生成された魔力は体に貯まり、使われる時を待っている。

リンカーコアは脈動せず、少しずつ一定量の魔力を作り出している。

魔力は貯まっているところから吸い出すように使っていく。

 

「……あれ俺全然違うじゃん」

「寧ろ何で今まで使えてたのかが疑問だよ……!」

 

ユーノは頭を抱えた、一体何がどうなってこうなったのか。

彼に魔法について教えるまでは良かった、彼が魔法について一切知らない所も大丈夫。

そう、問題は『知識はなくても使ってるんだから感覚は分かるよね』と軽く言った所だ。

 

『おう、任せとけ!魔力を大きく爆発させるのは得意だと思う!』

 

分からなかったことばかりだからか張った見栄は最後まで言う事には小さく萎んでいた。

しかし問題はそんな事じゃなくて、

 

「いいかい双誌、魔力は水みたいなものなんだ。蛇口から出てくる水を桶に貯めて、その桶から水を使う」

「えっと、つまりまず蛇口を捻って……?」

「ごめん僕が悪かった。魔法みたいに少しずつ水が増える井戸がある、そこから桶で水を汲んで使うんだ」

「えっと、魔法のような井戸にある水が魔法で……」

「……参ったな、なんて言えば良いのか分からないや」

 

ごめんね、と謝るユーノだが内心まさに困っていた。

ここで躓くとは思わなかった、そもそもこれは誰かに教えるでなく魔法を使ったら分かるものだ。

現になのはは一回目の説明と自分の感覚を照らし合わせることで理解できたし、ユーノに関しては言われるまえから分かっていた。

これも環境の違いだろうか、なんてユーノは考える。

目の前で右手に魔力を込めたり消したりしている彼はどうやって魔力を使っているつもりなのか。

というか説明は分からないし言っている感覚も違うのに何故魔力を扱えているのか。

しかも先日に比べ大分進歩している、魔力の移動が速い。

 

「……双誌、いまどうやって魔力を右手に纏わせてる?」

「ん?体の奥の鼓動を大きくして、それを腕まで伸ばしてる」

 

…………分からない、彼は一体何を言ってるんだ。

コレが天才というやつか、そうなのか。そんな訳ないと自分で言い返すユーノ。

しかし微妙な気分だ、よくわからない方法で彼は魔法を使っている。体の奥の鼓動ってなんだ。

 

「……ねぇユーノ、取り敢えずバリア何とかとか盾の出し方教えてくれない?あと攻撃も」

 

このままじゃ一日終わっちゃうよ、双誌のいう言葉ももっともだ。

土曜日、学校がない日に昼からなのはの家に来てもらったというのに気づけば3時なのだから。

魔力も何故か扱えているし、別に教えることに問題はないだろうとユーノは判断した。

 

「わかったよ。じゃあまずバリアジャケットから。魔法陣は僕が作るからそこに魔力を流し込んで」

 

まずは感覚だけでも覚えてもらう、初歩の初歩のして一番重要な方法だ。

ユーノは部屋の中央に子供一人分の魔法陣を作り出す。

ユーノの魔力で作られたそれは道筋にすぎない、ここに双誌が魔力を流し込む事で魔法陣を完成としバリアジャケットを構成させるのだ。

待ってましたと言わんばかりに魔法陣へと入る双誌、そして双誌の魔力が魔法陣へと流し込まれ―――、

 

「…………」

「……どうしたの?」

「魔力……どうやって流し込めばいいの?」

「お菓子持ってきたよー!」

 

 

まさに絶妙のタイミングと呼べるなのはの登場は二人からなんとも言えない表情で見られるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法を使う以前の問題だった。

そもそも双誌は魔力を外にだすという事が分かっていない。

彼にとっての魔力は氣と同じ扱いであり、彼は内氣功は知れど外氣功は知らない。

そもそも内氣功も知っていた程度であり、そんなもの本当にあるのかと疑問に思っていた程だ。

しかも初歩の初歩、ただの強化だ。『内なる氣を部位へと集め、密にする』としか説明されていない簡単な程度のものしか出来ない。

だってそんなの教えてくれる人もいないし、そんな事を思いながら双誌は右手に魔力を込める。

外に出す、という感覚が分からなかったので、―――取り敢えず込めまくれば外に漏れてくれないかな、と考えて。

しかしまぁそんな上手くは行かないもので、双誌は魔力を外に出す段階にも辿りつけないでいた。

 

「ふんっ、とうっ、はぁっ!」

「掛け声付けても変わってないよ……」

 

呆れたようななのはの声、しかしそれも仕方がないのかもしれない。

掛け声を上げながら右手に力を入れている双誌であるが、なのはからすれば一切変わっていないのだ。

込められている力が多少上下する事はあれど一瞬で消えてゆくため変わらない。

というか、何で一瞬で消えちゃうの……?

自分も真似して右手に魔力を集めてみるが消えることはない、しかも一瞬で彼よりも多く集まっている。

しかしそれにあれほどの力はない、あの獣を一瞬で倒してしまえるほどの力はないのだ。

瞬発的な火力だから強いのだろうか?よく分からない、ちらりとユーノへと目を向ければ彼は険しい顔をしている。

 

「双誌、一瞬じゃなくて長く込めてみて」

「えっと……」

 

ふん、と力んで力を込めるもやはり一瞬、どれだけ試してもその力は持続してくれない。

そもそも鼓動を持続させるという考えが分からない、この時点で間違っているのだろう。

参った、前提の時点で分からない。

 

「双誌、僕の手を握って」

「えっと、はい」

 

人差し指と親指でつまむようにユーノの手を握る。

ちっちゃいなぁ、柔らかいなぁ、これ簡単に折れちゃうんじゃないかなぁ。

そんな事を考えてた双誌は急に手に違和感を感じた。

何か流し込まれているような、体の中を何かが通っているような感覚。

手だけではない、手から腕へ、ゆっくりと体の中央へと向かってゆく。

そしてそれが肩の辺りまで届いた時、―――急に弾かれた。

 

「……へ?」

「こんな事初めてだ……」

 

パチンと火花の様に魔力が散り、ユーノと双誌の手が弾かれた。

拒絶するようなその光は一体どちらから出てきたのか、ユーノは断言できる。

彼からだ、双誌から弾かれた。

なんてことはない、彼の手に魔力を通したのだ。

ゆっくりと、じっくりと。彼に魔力の動きを感覚で伝えようとした。

過去経験のない方法だが出来ない事はなかった。

出来ないはずがないのだ、魔力は分け与えることも出来るのだから問題は何一つ無かったはず。

それなのに弾かれた、彼の体の奥、リンカーコアへと近づくたびに強くなっていた抵抗は一瞬で拒絶へと変わりユーノの魔力を押し返した。

…………多分、押し返したんだろう。

押し返されたのだと思う、ユーノの制御する魔力は一瞬でその手の先を消失したし、制御が不安定になったのは急激に弾かれたからだろう。

今での頭が少しヒリヒリする、精密な魔力操作を強制的に停止させられたからだろう。

それなのに、拒絶を体内で起こした当の本人には素知らぬ顔、痛み一つ無かったかのように立っている。

レアスキル、ふとその単語が頭をよぎった。

ジュエルシードの暴走体を吹き飛ばすほどの一撃、しかもそれが体内における魔力操作のみで、外へと溢れたにすぎない魔力が吹き飛ばしたというのだから。

その一撃はレアスキル、特異的なものと言われても違和感はない。

しかしこんなレアスキル聞いたことも見たこともない、他人の魔力を拒絶し魔法を体外に出すことすら難しいなんてレアスキル、もはや呪いではないか。

これではいざと言う時に魔力の供給を受けることすら出来ない、第一に魔法を使うのが大変過ぎる。

 

「……双誌、君はしばらく魔力の操作を覚えよう。君は多分魔力の放出が苦手な体質なんだろう」

 

言ってしまえばホースのようなもの。

入り口を狭くするほどにその速度は上がる。

しかし狭すぎる為に全然水が出せないのだ。

だからホースの口径を大きくしよう。

 

「腕から魔力を放出出来るようになるのが第一段階、それを全身で出来るようにするのが第二段階、それを形にするのが第三段階。それで漸くバリアジャケットが出来る」

「分かった。取り敢えず今日はそろそろ帰るね」

「あ、双誌くん。送っていくよ」

「えー、高町走ると遅いし……」

「なんで走って帰るしか選択肢がないの……」

 

ちなみに持ってきたお菓子は忘れられていたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「双誌、ご飯が出来たぞ」

 

今日も今日とて稽古は必須。

夕暮れの中を走って帰れば調度良く祖父も買い物から帰ってきていた。

というよりご飯の準備も終わって直ぐに食事の雰囲気だった。

 

「爺ちゃんただいま」

「おかえり、粗相はしてないな?」

「大丈夫、だと思う」

「ならばよし、手を洗って席に着きなさい」

 

今日のご飯は冷やしうどんだ。

そう言う祖父の言葉を後ろに聞きながら洗面所へと。

蛇口を捻り水を流した時にふと思った。

 

「……貯まっている所から……流れる……?」

 

何か引っかかる、なんだろう。

何か重要な事を忘れている気がする、何か重要な事を思い出した気がする。

ジャー、音を立てて流れる水道を見つめて考える。

流れる水、流れ、氣、魔力、魔力の流れ、体、全身……。

 

「双誌、何時まで水を流しているつもりだ。水もタダではないんだぞ」

 

そんな今から飛んできた言葉にはっとなって蛇口を閉める。

ああそうだ、どうじゃないか、もしそうならば、だとすればだ……!

速る鼓動を抑えて双誌は席につく、コレ以上食事を遅めてはいけない、後でも間に合うのだから。

いや、寧ろ今聞こうそうしよう。

 

「ねぇ爺ちゃん。前に氣に付いて教えてもらったよね?」

「ああ、教えたが……それがどうかしたのか?」

「氣ってさ、技とかに使うんでしょ?じゃあ減るよね」

「そうだな、使えば簡単に消えてゆくだろう」

「じゃあさ、―――氣って何処で作られるの?」

 

水も使えば消えてしまう、氣も同じだ。

内氣功でも使っているのだから、それは何時か消えてしまう。

だったらそれは何処から増えるのか、それが分かれば少しは答えに近づけるかもしれない。

 

「氣は世界に満ちている。人はそれを体に取り込み使っていると言われている。それを集めている場所が何処かと聞かれれば、丹田と呼ばれる場所だろう。ヘソの辺りに位置していたと記憶している」

「じゃあさ、氣は体中に回っているって言ってたけど、それはどういう風に回っているの?」

 

急に食い付きがいい双誌を訝しげに見つめながら、祖父は言葉を続ける。

 

「実際に体の中を回っている訳ではない。体中に浸透している、という意味のまわっている、だ。氣は丹田に取り込まれ、体中に広がっている。そして指先や関節、様々な所から少しずつ外へと流れているのだ」

 

体を巡回しているものではない、その言葉に双誌はやっぱりと口にする。

そして急ぐようにうどんを啜り込み、お先にと席をたつ。

普段であれば注意する祖父も、その時はなぜか注意しなかった。

寧ろそれを喜ぶ様に微笑んでいた。

そんな事は露知らず、双誌はそのまま道場へと駆け込んだ。

靴はきっかり脱いでいるが、日頃の癖なだけであり脱ぎ方は雑。

そして道場の中央へと立った彼は考える。

もしこの仮定があっていれば、もし正しい答えを見つけられているのであれば……。

 

「――――――」

 

波動ではない、もっと奥、体の芯にあるだろうそれを目指して意識を潜らせる。

深く深く、鼓動が聞こえるもっと深く。地震の魔力の奥、魔力を作っている源。

 

「―――あった」

 

双誌は腕に力を込める。今までとは違う、波動を意識していない込め方。

しかしそれは波動よりも強い魔力の源、リンカーコア。

ユーノの言っていた通りだ、一度分かれば嫌でも分かる。

体の奥、その芯にある魔力の塊、そこから溢れる魔力を。

今までよりも強いそれを腕へと動かせば、今までよりも強く感じる事が出来る。

これならばタイミングを選ばない、鼓動に合わせないでも魔力が使える。

でも正念場はここからだ。

思わず笑顔になりながらも双誌は腕を前へと伸ばす。

集中しやすい、意識を集めやすいように左手で支える。

魔力の使い方は理解した、だから次は第一段階。

 

―――右手からの魔力の放出。

 

右手に貯まる魔力を大きく通すのではなく覆うように広げる。

 

「……むむ」

 

思ったよりも難しい、まるで暴れ馬のように言うことを聞いてくれない。

体の中の時は楽なのに、体の外に出した途端制御出来ずに消えてしまう。

なんだか勿体ないような気もするが、しかし練習なくして上達なしと自分に言い聞かせる。

「……ふ、ぐぐぬ!」

 

なんだこれ、全然固まらないぞ、暴れまくってまとまんないじゃん。

一体どうやるんだ、なんて双誌が考えた時魔力は再び霧散した。

 

「……また明日にしよう」

 

もう疲れた、魔力を一気に喪失したからかな。

そんな辺りをつけて双誌は家へと戻る。

 

「しかしまぁ、なんというか……」

 

思い返してみれば自分でも阿呆らしい。

 

 

「まさか意識してたのがただの血液だったなんてなぁ……」

 

道理で一瞬しか出来ないはずだ。

だってそれ魔力じゃないもん。

 




だって魔力がわからないもの、仕方ないね
リンカーコアって言われても分からないもの、仕方ないね
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