異能者の日常~知人のキャラを添えて~   作:黄昏翠玉

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第13話 くすんだ白と

唯一は弁当をつついていた。

イチとアキ、優と紅陽と共に弁当をつつくようになったのである。

 

とはいっても皆身内も同然。

優とは直接関係はないが、紅陽の身内みたいなものであり、紅陽は唯一の師であったガンカイザーこと緋炉騎の身内みたいなもの。ならば特に拒む理由もない。

 

その弁当誰が作ったんだ、と紅陽に問いかければ、俺が作ったの、と紅陽が返す。

 

「そうなのか」

「なかなかだろ?」

「女子力」

 

イチには言われたくねー、と紅陽が返せばイチがくすくすと笑った。この後彼らは異能の操作訓練がある。

 

異能を扱うにあたって、異能を持つ者と持たない者の差は大きい。異能を持っていれば異能操作を、異能を持たなければ対処方法を教えておかねばならない。

 

この授業を担当しているのも緋炉騎である。

緋炉騎は基本的にクラス全員を見て回り、指導が必要と感じた生徒の異能の扱いに口を出す。

 

異能を持つならば、暴走を起こす可能性が無きにしも非ずと言ったところであるため、暴走の予防、および異能に対する対処を教え、身を守る手段を持たせるのである。まかり間違っても戦うための手段ではない。

 

「……俺、今回は戦闘に向かなさそうだなあ……」

「シールダーよろしくだれとかを守っていればいいんじゃないですかねえ? 晃さんがいない時は基本的に盾役って貴方だけなのですし」

「そんなもんかな」

 

唯一の呟きにイチが答える。

 

唯一の武器は盾とパイルバンカーとなっているが、まあ、通常はそんなロボットの持つような機構をわざわざ人間が使う必要はない。超重量武器となってしまうし、複合武器扱いになることもあり、そんな面倒なものを使うなよと緋炉騎以外の教員からは言われてしまった。

 

そもそも武装している時点でジャッジメントに所属する気があると言っているようなものである。それ以外で武装してはならないと定められていることをこいつらは知らないのだろうかと緋炉騎も頭を抱えた。

 

武装が許されるわけがないだろう。法治国家としては当然のことである。何のための銃刀法だと思っているのだ。

 

イチは武装などしていないし、アキも非武装。

優と紅陽はジャッジメント所属のため武装しても問題ない。

 

彼らの会話を通りかかって聞いてしまった緋炉騎はいい機会だと思ってか足早に近付くと声を掛けた。

 

「射天唯一、貴様には放課後に特別課外授業を科す」

「あれっ、ええっ、音風先生、何でッ!?」

 

声に反応して振り向いた唯一は目を丸くし、緋炉騎は憮然とした表情でもって唯一の声を受け止めた。

 

「貴様に常識というものの下地を叩き込んでやる。どうせ俺では貴様を納得させることはできんだろうからな。……教え子に恥をかかせぬようするくらいは、当然の義務に入るだろう」

 

後半は声が微かになっていて聞こえなかった――ふりをした唯一であった。

そんなことをこの人が考えるとはと不思議に思ったのもあった。が、もっと何か含みのある言葉のような気もしたのである。

 

「――ったく、城山は何をしているんだ……!」

 

緋炉騎は立ち去った。

 

「……怒ってた?」

「苛ついてるだけだな、ありゃぁ。なんかあったのか?」

「いいえ、何もないはずですが」

 

紅陽の問いに唯一は言葉を返す。弁当を食べ終えた5人は次の授業の準備のために片付けをして、教室を出て行った。

 

 

 

 

「そうじゃない、もっと肩の力を抜け」

「……????」

 

唯一は緋炉騎による指導を受けていた。異能を使う姿勢があまりにもひどいと緋炉騎は思ったのである。

 

「身体に必要以上の負荷をかけるな!」

 

「下手糞か!」

 

「自分の身体の脆さを思い知れ!」

 

「音風先生の鬼!!」

「お前目覚めて4年だろう! なんでこんなに下手糞なんだ!」

「だって俺の能力は系統が分からなくて指導できないって誠さんも晃さんも言うんですよ! 仕方ないじゃないですか!」

「あいつらが分からんわけがあるか!」

 

2人の口論を聞いていたアキが口を開く。

 

「ジャッジメント案件になるからじゃない?」

「ああ、それ可能性高いですね。普通の家ですから、圧力かけられると弱いですし」

 

応えるように口を開いたイチの言葉に唯一は顔をしかめた。

圧力をかけられる――()()()()()そうなのかと。

 

「阿呆。お前一体何を見せた。武装置換を見せたのではあるまいな」

「? 見せましたけど」

「……常識が著しく欠如したな、射天唯一」

「何故溜息を吐かれなければならないんですか!?」

 

唯一の言葉に緋炉騎はただ小さく首を左右に振った。

 

「お前の異能は勘違いされている状態だ。放出の方しかしなかったからな。お前に似た力を持っている親族ならば城山にいたはずだ。それにお前が会わされていない時点であの2人が勘違いしている。……こういう時にはあの性悪を連れて来んあたりがあの2人らしいッ……」

 

緋炉騎は誠たちとも長めの付き合いである。故に知っている人脈もある。

何故ここにきて彼を使わなかった、と小さく文句を垂れながらも唯一の異能を使うコツを探り始めた。

 

「そう言えば音風先生の異能はどうなってるんですか?」

「俺は人間区分ではないから異能は持たんことになっている。それと一部は封印してもらっている」

「え、何で」

 

貴方を封印するなんて、と言おうとした唯一はその言い方に引っかかる。

 

「してもらっている?」

「俺のスキルは神性あるものに対して有利に働くだろう? こちらの法則にあてはめられた途端常時発動、貫通付与、攻撃力倍化と馬鹿げた性能になってな。初撃で日向を殺すところだった」

「え、ええええ??」

「俺はその日向にいろいろと取り繕ってもらって生活している状態だ。故にスキルのほとんどは封じている。あと、日和晃と城山誠も神性持ちでな、普通に生活したければ封じておけと言われて従ったまでだ。――どうしたそんなに青くなって?」

「……弱体化不可避……え、待って今ガンカイザーの整備してる人校内にいましたよね!?」

「いるにはいるが今日はおらん。力むな、下手に魔力をそんなところに貯めたら身体がボロボロになる! なぜこんなにも魔力の吸収率が悪い? 心当たりはないのか、これではまともに動かんぞ!」

 

紅陽や優は自分の異能を使いこなすというのに、と他の教員ならば口にしていただろうが、緋炉騎はそんなこともなく。

ただ、横で何か換装体を大量生産している紅陽とそれを使って何か遊んでいる優に視線を向けて、暇なら手伝えと声を掛けた。

 

「へーい、で、何手伝えばいいんすか?」

「こいつは身体にこれ以上負荷をかけてられん。お前の換装にかなり近いからな、コツがあれば伝えてやってくれ」

「……慣れてねえのに随分と負荷のでかい異能だな……?」

 

いつも笑みを浮かべている紅陽から表情が消えれば流石にイチ達も驚いて近寄ってくる。

紅陽ははて、としばらく唯一を見て、あー、と小さく言った。

 

「お前魔石の入れ替えしてねえだろ」

「……は?」

 

魔石、とは。

入れ替え、とは。

ああそう言えばなんかそんな話聞いたような?

 

そんな表情になった唯一を見て、紅陽は緋炉騎の方を向いた。

 

「緋炉騎センセー、ホムンクルスについての資料って図書館にありましたっけ」

「あるはずだが」

「よし、じゃあ今日はそれ借りて行くぜ。魔石提供は身内からってことでイチかアキは来いよ。保健室は使えねーから、更衣室借りようぜ」

 

てきぱきと話を纏め終えた紅陽の横で、アキがさっそく手にパキパキと石を形成し始めていた。

 

授業終了のチャイムと共に、緋炉騎の掛け声が飛ぶ。

 

「集合!」

「気を付け、礼!」

「「「「「ありがとうございました!」」」」」

 

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