異能者の日常~知人のキャラを添えて~   作:黄昏翠玉

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やっと出たぞ、黒のセイバー……出番がほとんどなくてすまない……

良い名前思いつかなかったんです、許してください止めて石投げないで


第15話 竜の騎士と放課後テスト

ある日のことである。

唯一が緋炉騎に常識を叩き込む課外授業(仮)を受けているときのことであった。

 

ちら、と、灰髪が見えた気がして、唯一は廊下側を見た。

西日が入ってきているのもあるだろう。今は窓の傍には立っていないらしく、影しか見えなかった。

 

「……誰かいますね」

「む」

 

背を向けていた緋炉騎は気付かなかったらしく、振り返った。

誰か分かったらしく、ドアを開けに行く。

 

「――どうした」

「こんにちは」

「あ、いや、えっと……忘れ物を取りに来ました。射天の課外授業中だったようなので……」

「こんにちは。――構わん。入っていい」

「すま……すみません。失礼します」

 

褐色肌の背の高い少年である。

こちらも青い瞳が印象的なのだが、何より彼の場合はその名が特徴的である。

 

いや、他にも類似の者はいるのだが。

 

「あ、竜ヶ崎君?」

「……ああ……課外授業中失礼する」

 

竜ヶ崎、と苗字では呼ばれ慣れないらしい。

彼の名は、ジークフリート=竜ヶ崎であるためだろう。普段からジークと呼ばれ慣れているためこうなったようである。

 

机の中に忘れていたメモ帳を取り出して、ジークフリートはほうと安堵の息を吐いた。

別の誰かの声がしていた気がするが、連れがいたのだろう。

 

ちなみに名前が長いことも相まって緋炉騎は彼をジークフリートとしか呼んだことがない。いいねハーフ、とは誰の言だったか。

 

「失礼しました」

「気を付けて帰れ」

「はい」

「ありがとうございました」

 

ジークフリートとお連れ様はゆっくりと教室から離れて行った。

 

あ、待ってくれ、リツカ!

待たないよ! 特売セールの時間に間に合わなくなっちゃう!

す、すまない……。

まあいいや、急ごう。

 

「……カップルですかね?」

「いや、藤丸立香は男だが」

「だって今の会話――!」

「藤丸立香の家にジークフリートが下宿しているそうだ。お前たちの近所だぞ?」

「え、今初めて知った」

 

そら、他人のことより自分のことを優先しろ、と緋炉騎に急かされ、手元に置かれた小テストの紙を眺める。

 

「……こんなのテストして何になるんです?」

「お前の思考回路を直せとは言わんが、周りの人間がどんな常識の下で動いているのかくらいは知っておけ。お前たちの常識はこちらの人間にはシビアすぎるし、常識外れでもある」

「……それくらいは分かってますけど……」

「お前を現状守っているのは城山誠と日和晃、そして無悪雷華、間接的に鳴神白斗もだ。鳴神白斗が危ない橋を渡るのを父親は好かん。無悪雷華がいる分、日和晃もお前から手を引きやすくなっている。あまり常識を逸脱すると嫌われていないのにそっぽを向かれるぞ」

「……いつものことでは?」

「そう考えるからお前の周りはやたら感情が重たいあの3人娘に固められてしまうんだぞ? 駄目とは言わんがもう少しどうにかならんものか……」

 

ならないな、お前家族間でも争ってたな。

 

緋炉騎が呆れ気味に溜息を吐いた。

そんな表情をされるいわれはないぞ、と唯一は思う。が、事実なので何とも言えない。

 

「まあ、ほら、うちは、戦うなら全力で、ですし……」

「今は家族ですらないことをゆめゆめ忘れるなよ」

「うぐ……」

 

緋炉騎は唯一を囲んでいた状況を知る数少ない人物の1人である。

日和のマスターであるスーリヤと白斗の父であるインドラは確実に知っていると緋炉騎は言った。

 

けれどもそれはあくまでも緋炉騎にとって敵陣営にいた頃の姿である。

何度争ってきたことかと溜息を吐いた唯一に、緋炉騎はあっさりと「神というのは面倒なものでな、かつてのことを引きずっている柱もいればまったく気にしていない柱もいる。あの二柱は気にしていないタイプだ」と告げた。

 

「……正直な話、俺を本当の意味で保護したのはインドラとスーリヤだ。こちらの世界ではそもそも俺の身体の材料を補填できなかった。それでも資材を掻き集めてこのレプリカのボディを作ってくれるくらいには、彼らも頑張ってくれたのだ」

「条件が重そうです」

「……ああ、セーフティはかけられてしまった。だが、いつものことだ」

 

自然と小声になっていた。

2人にとってはというよりも、緋炉騎にとって、この話はあまりしたい話ではないらしく、声が小さくなっていったのだ。

 

「……貴方はいつもその逆境を越えてきた。今回もそうなんです?」

「……いや。今回は、カルナやアルジュナ……日和晃や鳴神白斗をはじめとする、神性を持っている者をスーリヤやインドラの許可なく殺すなという条件だ。破格といっていい」

「……裏がありそうですよね?」

「いや、あれに裏があったら太陽神はやっていけん。『カルナを傷つけるな』と即答しおった」

 

あれはただの親馬鹿だ、と緋炉騎はぼやいた。

 

「それだけではない。この世界には本来ならば神性として分類されねばならない者が、認識されていない。分かるか、射天唯一。この世界に神はいないことになっている」

「……科学が進んだから、ですか」

「ああ。インドラの雷もスーリヤの太陽光もすべて科学で解明された事物としてしか存在していない。おそらく、そんな世界だからカルナやアルジュナといった者たちがここに居るのだろう。もし彼らの異能が特定された時、真っ先に狙われるのは彼らだ」

 

何せ神の力を一部持っているのだからな。

 

緋炉騎の5、6年間を唯一は知らない。

間で起こった悲しいことも、二度とこんな過ちを起こしてたまるかと誓ったことも知らない。

 

けれども、分かることはある。

 

「……ガンカイザーは、音風緋炉騎先生として生徒を守りたい、ってことですね!」

「……そうだな。義務感に囚われている感覚はある。けれどこんな状態も悪くないと思っている自分がいる。6年、実際に生活し、馴染むためには短くはない時間だ」

 

緋炉騎は窓の外を見る。

夕焼け空はもうほとんど紺に代わり始めていた。

 

「やれやれ。長話してしまった。さっさとそれを解け。今日はこれで解放してやる」

「はい!」

 

言葉少なな緋炉騎が口を開いていたことが嬉しくて、唯一は小テストを頑張った。

ちなみに、回答は満点なのに一言余計だったのは置いておく。

 

 




緋炉騎「なぜこれだけわかっていて我を突き通したがる?」
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