異能者の日常~知人のキャラを添えて~   作:黄昏翠玉

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さて、いかによその子を弱体化させるか。そんなこと考えて設定してたら見事にヒロイン属性が付与されてしまった主人公()

なんてこった
だがそんな設定はまだ出てこない


第2話 くすんだ白は夢を見る

少年の最後の記憶は、友人たちと共に買い物に行った時のもの。

それは優しい記憶であり、けれども悲しい記憶でもあった。

 

たとえばそれは相棒と呼んでいた青年が一瞬で火に巻かれたのであるとか、義姉がパニックに陥った子供を庇って死んだのであるとか、友人たちが自分と炎を隔てた向こうにいて、そのまま焼けていくのであるとか。

 

子供を外に逃がしたところで炎に隔てられた。

もう、いいかなと思った。

少年の記憶はそこで途切れている。

 

 

 

 

ぱちり。

 

目を開けた少年は、辺りを見回す。

はて、ここはどこだろう。

 

真っ暗だ、ここはどこだろう、少年は身体を包んでいる布から抜け出す。

服は着ておらず、本当にただ布を巻いているだけだった。ぺたりと手を伸ばした先に触れればそこは冷たく、コツコツと叩いてみて、ガラスだと理解できた。

 

と、急にその空間は揺れた。

なんだなんだ、巨人か何かにでも捕まったのか、ますます少年は混乱する。

 

『ただいまー』

 

遠く、声がする。

少年は温かみのあるオレンジ色の光に包まれた。

そして気が付く。自分はどうやら、何か瓶のようなものに入っているらしい。

 

音もなく少年の入った瓶を持っている人物は歩いていく。

テーブルにことりと瓶は置かれた。

 

『あら、セイ、どうしたのその瓶?』

『聞いてよ母さん、これヒカルに押し付けられたんだよ。どうせあいつのヤバいやつ発見器というかなんというか、アレが発動したわけ』

『あらあら』

 

女の声がする。たぶん女の声だ。少年の耳にはだいぶ低く聞こえてしまうけれども。

 

『どうするの?』

『なんか弱ってるらしいんだ。しばらくここで面倒見てくれってさ』

『報告書は?』

『誤魔化した!』

『そのうちバレて減給ね』

『いいんだ、それで1人のホムンクルスが救えたんだ……』

 

少年が目を覚ましていることに気付いた女が声を上げる。

 

『あら、お目覚めみたいね。出してあげたら?』

『……母さんってホントに危機意識薄いよね』

『そうかしら?』

 

黒髪の人物が近付いてくる。ふと、自分の身体に対して、瓶が大きくなった気がした少年である。

 

「?」

 

とにかく、出なくてはと思う。ガラスであるから、少年の力をもってすれば造作もないことではあるのだけれども。

 

コルク栓が抜かれた。

 

「出て来な、少年。夕飯にしよう」

 

その言葉に、少年は目を煌かせる。

布を引っ張りつつ、ゆっくりと倒された瓶の口に向かって前進する。

香ってくるシチューの匂いにつられたとか、そんなのでは断じてない。

 

外に出れば、目の前には巨人がいた。いや、分かっていたことである。瓶を振り返る。

それは小さな、百均に売られているような小瓶であった。

 

「!」

 

少年は布ごと摘まれて宙に放り投げられた。

とっさに飛ぼうとしてはっとする。そこは、()()()()()()()()()()()

 

どうしようと一瞬迷った。直後、少年の視界が急激に小さくなった。

 

「――」

 

自分が大きくなったのだと少年が認識するまでに要した時間が3秒。

ちなみに布は、落ちた。

 

「へー、女だと思ってた。男なのか」

「はっ? ――わああああああああああ!?」

 

割と声が低い目の前の黒髪黒目の人物に全裸を見られたとか、さらっと女々しいと言われているのであるとか、いろいろとキャパオーバーして一旦少年は叫び声を上げた。

 

「どしたの~」

「どうしました?」

「おかえり、セイ」

 

男子3人の声。

オレンジ色の髪に青い瞳の少年、黒髪赤目の少年、黒髪緑の瞳の少年。

それぞれ彼らは部屋に入ってきた。ああね、と小さく納得の声を上げて緑の瞳の少年が姿を消し、直後、服を差し出された。貸してくれるようだった。

 

「……流石ですねセイさん。男子の裸を見ても動じないとは」

「はあ? 俺が風呂に入ってるときに突撃してきてたのはお前らだろうが」

「そんな昔のことは忘れました」

「先月までやっててどの口が言うんだオイ」

 

少年はとりあえず着替えることにした。布を被って中で下着から難から借りる羽目になった。ちなみにサイズは合った。一発で合わせてきたのがすごいとむしろそこに感心した。

 

「んじゃ、一応自己紹介してもらえると助かるんだが?」

 

セイと呼ばれる人物の言葉に、少年は布から顔を出す。

 

「え、と。射天(いてん)唯一(ユウイチ)、です」

「ユウイチね。俺は城山誠。誠でいい。こいつ兄貴」

「誠の兄の(ミツ)です。みっちゃんとか言われてるけど呼びやすく呼んでくれて構わないよ」

 

少年――唯一は驚いた。

 

「僕は東雲(しののめ)(アキ)。よろしくね」

「俺は笹垣(ささがき)(イチ)です。イチでいいですよ」

 

唯一はひとまず、息を吐いた。危機管理能力が低いどころの話ではない。本人がその話をしておきながらこんな風にあっさりと名前を明かすあたり、誠と名乗った者とてそこまで意識が高いわけではないのだろうなと思った。

 

最後に女がすっと出てきた。

 

「私は城山葉月(ハヅキ)。この4人の母親です」

 

苗字が違うなあとか、ツッコミどころは満載だ。

けれども一応、これからきっとしばらく世話にならねばならないであろう家族を見ながら、少し怠い身体を何とか立て直す。

 

「あらあら、そこのソファに座っていいのよ。夕ご飯食べたら寝ると良いわ」

「……はい、ありがとう、ございます」

 

葉月の言葉に唯一は小さく頷いた。お言葉に甘えさせてもらおう。

 

 

 

 

出されたシチューは、とてもおいしかった。

 

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