異能者の日常~知人のキャラを添えて~   作:黄昏翠玉

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第3話 鴉濡羽と語らう

誠は目の前にいる少年――唯一と名乗った――を、じっと眺めている。

居心地が悪そうに唯一は身じろぎする。

 

唯一は、ホムンクルスであった。

ホムンクルスというのは、人造生物と呼ばれるモノ全般を指している。

 

本人は、自分自身がホムンクルスであるということに驚いており、一般的に行われているはずの刷り込みが行われていないことを誠たちに認識させるには十分だった。

 

「誠、さん」

「なん?」

「あのー、信じられないと思うんですけど、さっき言ったのは全部事実で……」

 

現在、事情聴取中である。

個人宅で事情聴取というのもおかしな話ではあるが。

 

隣にはイチも居座っており、少々威圧感を感じる構図になっている。

当の唯一はむしろ2人とも綺麗な顔だなあと思っているのであまり気にしていない。

 

誠はむしろ唯一が話した内容に頭を悩ませていた。

 

前世の記憶らしきものを持っている。

それだけでも面倒だが、加えて自分をホムンクルスであると断じられた時、彼は「俺がホムンクルス!? なんで!?」と騒いだのである。

 

明らかにホムンクルスがどういうものか分かっている反応をしていた。

 

そもそもホムンクルスというのは本来極端なまでに寿命が短い。そこがまず難点として挙げられるだろう。誠たちはもう慣れたものだが、案外ホムンクルスはありふれているし、体細胞から培養されるクローン人間なども存在している。

 

では彼らに人権があるかと言われるとそこがまた難しい。

ホムンクルスという括りで見てしまえば化物のような容姿のものも存在する。人型でくくって今のところは人権を与えられているがどこの研究所で生まれたのかということを特定せねばならない。

 

まさか敵方の組織のもとにいたホムンクルスで前世の記憶持ちなどと言われたら確実に実験素体にされる。

 

報告書をもう一度上げねばならなさそうだと思いながら、誠は息を吐いた。

 

「……そんなに大変なんですか、ホムンクルスの扱いって」

「……ただのホムンクルスなら、表向きにはどっか別の研究所の所属にすればことは済む。お前が前世持ちとか抜かすからだろ。“へえ、前世の記憶って本当にあるものなんですね、この人ホムンクルスならまた作ればいいじゃないですか、何百体、何全体、何万体と作ったら同じように前世の記憶を持っているホムンクルスが生まれるかもしれませんよ!”とか平気で抜かす奴を俺は知ってるぞ」

「うわぁ……」

 

唯一の問いを演技がかった台詞でバッサリ切った誠はイチを見やった。

イチは唯一がホムンクルスであるということを唯一に伝えた張本人である。ついでに案外話も合ったようなのでそのまま組ませようかと思ったのだが、これである。

 

「……まあ、それは後で大人に投げよう。父さんのいる研究所に引き継がれたものであるとして。――で、唯一君? 君の異能は何?」

 

唯一は彼らに逆らう気はなかった。

そもそも話を聞けば、本来ならばどこかの研究施設に放り込まれる予定だったようだから。

 

「俺の異能は、見てもらった方が早いんですが」

「裏庭に出ようか! 嫌な予感しかしねえ!」

 

 

 

 

裏庭にやって来た3人、そこに実とアキもやってきて、5人で唯一の異能を見ていた。

 

「――とまあ、こんな感じで、いろいろ出せるんですが」

 

実演で鋼鉄の装甲を出してみたり、様々な素材のものを出してみたりしたのだが。

唯一は気付いていた。

 

(パワーダウンどころの話じゃない! これじゃ戦えないじゃないか!)

 

やばい転生のそれ以前のお話も言っとくべきだったか、と思い始めたところで、目をキラキラさせている野郎3人に対して誠の拳骨が落ちた。

 

「いっ――」

「いったあああああい!」

「何するんですか誠さん!」

「お前ら目を煌かせて唯一君のを見てるが、明らかに物理法則無視だろ! アイテムボックスかなんかか! ジャッジメント案件じゃねえか!」

「「「カッコいいから許す!」」」

「そうは問屋が卸さねえ!」

 

テンポよくツッコミを入れていく誠を見て、かつての義姉や友人たちをふと思い出した唯一だった。

 

彼らは今どうしているのだろうか。

どこかに転生して生きてくれていたらいい。

たとえ覚えていなくても。

 

「……はあ。ったく、面倒な力だな、それ。ガンダム世界にでも飛んだわけ? そのあと幻想郷入りでもした? 二次創作小説じゃあるまいし」

「似たような世界には行きました! ていうか乗りました!」

「人外級の化物の世界で生きてたわけだな、分かったお前は確実に研究所行きだどうやって庇えってんだカルナの野郎!」

 

頭を抱えた誠にはてなを浮かべる唯一と、苦笑を浮かべた実。

あとの2人は勝手に漫才を繰り広げていた。

 

「あ、あの、でもパワーダウンしててまともに扱えそうにないです」

「! マジ!?」

 

唯一の言葉に途端に元気になった誠に、唯一は実に問う。

 

「なんでこんなに喜んでらっしゃるんです?」

「あー、君について報告書を上げなきゃいけないのさ、引き取っちゃったから」

「え、そうなんですか」

「ホムンクルスは珍しい能力者の大量生産なんていう胸糞悪いことのために確立された技術だからね。“パワーダウンってことは劣化しているのでここまでの能力しか使えないようです。御安心くださいこのまま家で引き取ります”とか書くんじゃないかな」

 

実の言葉に、口は悪いけどこの人悪い人じゃないんだなと誠のことを見直した唯一だった。

 

「あ、ところで一番得意なのは何?」

「シールドとパイルバンカーです」

「ロマンだね?」

「ロマンです」

 




主人公の本来のスペックは、いつか出てくる日が来るのか。
でも書いてあげたいです。
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