~医務室~
ツトム「いやぁ〜ハヤトッチ、お前大したもんだよなぁ。まさかオレ達の動きの先を読んでいたなんてよぉ」
ルーグ「正直完敗でした。当機は一応世界で3番目くらいに強いので、その座を差し上げましょうか?」
ハヤト「そこは2番目って言わねぇのかよ」
ツトム「いやいや、そこは1番目でしょうが!!」
どうやら何かトリオ漫才のような掛け合いが繰り広げられているようだ。流石のリリスも呆れ顔だった。
先程までの険悪で緊張感のあるムードはどこへ行ったことやら…
リリス「それでツトムさん、アナタはビブリア学園には戻らないのですか?」
ツトム「おっと、唐突だなぁ。んー、なんで答えればいいことやら」
するとドアをノックする音がした。ハヤトはドアを開けてノックの相手と少し話してから戻り
ハヤト「どうやらアンタに話がしたい人が来たようだ。オレは少し席を外すぜ。3日分のエネルギー使っちったから腹が減って仕方ねぇ」
リリス「そうですか、分かりました。ではごゆっくり」
ハヤト「おう」
ハヤトが医務室を出たと同時にミラが入ってきた。
ツトム「客って、よりによってお前か…」
先程までのハイテンションが一転して、少しシリアスな表情になる。
ミラ「お久しぶりですツトムさん。1年ぶりと言うところですね。」
ツトム「おう、久しぶりだな。一年前…あの日以来だな。アキオ先輩は?」
ミラ「先輩なら、第二試合を見に残りました。確かめたいことがあるらしくて。」
ツトム「そうか。で、何の用だ?」
ミラ「何故私に黙って学園を出たのですか?」
ツトム「お前もその質問かよ…まぁ、仕方ないな。話してやるよ。」
リーゼ「ねぇ、その前に質問なんだけどさ。三大巨星ってなんなの?」
ツトム「そういやお前には話してなかったな。リリス先生、教えてやってくれ」
リリス「三大巨星とは、ミラさんと同時期に入った高い才能を持つ生徒の事です。」
ツトム「で、そのうちの一人が自分とミラなんだよな」
リーゼ「それでもう1人は?」
その質問を聞いてツトムとミラの表情が一気に暗くなった。
そしてミラが重い口を開き
ミラ「もう1人は…死にました。私達を庇って時空の彼方へと飛ばされたのです。」
ツトム「そう、オレは忘れはしない。あの時現れた謎の黒服とマモルンが引き込まれていく姿を…」
リーゼ「マモルン?」
ミラ「大明寺マモル。嫉妬の書庫を持つ魔道士で、光を自在に操る魔道士でした。」
ルーグ「なんか少し当機と被りますね。」
ミラ「では、そろそろ教えてください。何故ビブリア学園を去ったのですか?」
ツトム「オレは真相を突き止めようとした。だから1人で旅に出た。お前はもうトリニティセブンに選ばれて、検閲官第一席になってたから巻き込めなかったんよ。そんで、その過程でマスター・リベルに誘われてリベル学園に編入したんよ。そんで、この魔道書を手に入れた訳だ。〈武装一体型試作魔道書・エールスラスター〉」
ミラ「そうだったのですね…。それで何か分かったのですか?」
ツトム「殆ど収穫は無しだ。だが一つだけ分かった。あの黒服は異世界から来た魔道士だということ。そして、この世界に多くの異世界魔道士が現れているということだ。」
リリス「異世界の魔道士…私もそのうちの一人です。まさか私以外にも異世界から来た魔道士が居たなんて…」
ツトム「安心しな。この魔道士の大量降臨と先生は関係がない。…っていうか疲れた。すまないが寝かせてくれ。」
そう言うとツトムは布団を頭までに被り眠りについた。
そしてリリスとリーゼはハヤトの夢の話を思い出す。
リーゼ「それって、もしかしたらハヤトくんの夢に出ていた陰謀と何か関係があるのかも」
リリス「その可能性はありますね。学園長に伝えなければ。」
~アリーナにて~
ハヤト「おっ、姉さんじゃねぇか。第二試合を見ていたのか」
大量のハンバーガーを抱えながらアキオの横に座る。
アキオ「あぁ。そうだハヤト、お前はあの男どう思う?」
アリーナの中央にいるリュートを指さす。
ハヤト「アイツはアカーシャ学園の代表か。突然どうした?」
~試合中~
E「これを食らいな!」
大地を槍のようにしてアナスタシアを襲う。そこに
リュート「竜爪!」
迫り来る大地の槍を竜のような形をした異形の腕で破壊する。その動きには一切の迷いも無く、戸惑いもなかった。
F「これなら!」
今度は吹雪のような魔力の雨がアナスタシアとリュートに降り注ぐ。
リュート「竜翼!」
今度は背中から竜の翼を2人を包むように広げ防御をする。
アナスタシア「ありがとうリュート。一気に決めるよ!精霊剣手!」
リュート「了解した。竜煌天舞!」
精霊の光を纏った斬撃と、巨大な翼から放たれた竜巻が相手選手を一気に蹂躙する。
審判「両者戦闘不能。勝者、アカーシャ学園!」
ハヤト「アイツ、竜の体の一部を使える魔道士のようだな。」
アキオ「…やはり私の勘違いのようだな。あの人は生きていたとしても、もっと老けているだろうからな」
寂しげな表情を浮かべるアキオ。ハヤトは何かを悟ってかこれ以上何も聞こうとはしなかった。そして黙ってアキオにハンバーガーを差し出す。それをアキオは受け取りハヤトと一緒に食べた。
~試合終了後~
ハヤトは控え室へと戻ろうとしていた。すると反対側からアカーシャ学園の2人が来て鉢合わせる。
アナスタシア「やぁ才河ハヤトくん。決勝出場おめでとう。」
ハヤト「お前達こそな。」
アナスタシア「次は僕達との試合だね。アラタくんが相手じゃないのは残念だけど、お互い全力を出して良い試合にしようね」
そう言うとアナスタシアは手を差し出す。ハヤトもまた手を差し出そうとした途端、リュートが割って入る。
リュート「浅見リリスはどこだ?」
ハヤト「リリスは別件があって別行動中だ。」
それを聞くとリュートは無言のままアナスタシアと一緒にハヤトとすれ違う。そのすれ違いざまに
リュート「アビスの血族はオレが抹殺する」
ハヤト「?!」
その言葉を聴いた途端、ハヤトの表情が一気に険しくなり、リュートに拳を叩き込もうとした。それをリュートは竜の翼で受け止める。2つのぶつかり合う音は廊下に反響し、その後一瞬の静寂に包まれる。
アナスタシア「ちょっと!二人とも落ち着いてよ!」
ハヤト「お前、アビスの血族ってリリスのことか?お前、リリスを殺そうってか!」
リュート「そのままの意味だ。」
ハヤトは拳を収め、リュートに背を向けた。
ハヤト「お前がリリスに何の恨みがあるか知らないが、リリスは殺らせないぞ?次の試合、オレはお前を全力で倒す。」
リュート「オレもお前を倒して、浅見リリスを抹殺する。そして、お前ではオレには勝てない」
ハヤト「そんなのやってみなければ分からねぇだろ」
アナスタシア「あちゃぁ…これはマズい展開になっちゃったね…」
そしてお互いに背を向けたまま廊下を歩いて行く。
~決勝戦当日~
リリス「少しテンポが早かったですが、ついにこの日が来ましたね。」
ハヤト「あぁ、やっとここまで来たって感じだな。」
リリス「ここまで来れたのもハヤトのお陰です。感謝しています。」
ハヤト「…なんだよ、一昨日までスタンドプレーするなって叱っていたくせに」
少し頬を赤くしながらハヤトはリリスから目を背けた。
そして、別の方を向きながら
ハヤト「オレこそ昨日はマジで感謝している。お前のお陰で迷いが吹っ切れた」
リリス「迷いですか?」
ハヤト「オレはずっと、学園のみんなにどう償えばいいか考えていたんだ。そんで昨日見せたあの術、あれはかなりリスクの高い賭けだったんだ。」
リリス「リスク?」
ハヤト「急激な魔力増幅、下手をすれば魔に落ちる可能性があるってのは分かるだろ?オレもユイとの特訓の最中、何回も暴走しかけた。だから、あの場で使ってまたお前を傷付けることになったらと考えたら…」
リリス「もし仮に暴走したとしても私がまた止めますよ」
ハヤトの肩に手を乗せて微笑んでそう言った。突然肩に温もりを感じてハヤトは少し戸惑った。戸惑いながらもリリスの方を向くと、そこには久々に見た誰かの微笑みがあった。
ハヤト「…でも、もう致命傷だけは勘弁だからな」
リリス「はい、努力します」
ハヤト「努力とかそういう問題じゃないだろ…しっかりしてくれよ!」
リリス「そうでしたね」
リリスはハヤトの慌てる顔を見て笑った。そしてハヤトもそれに釣られて笑った。ハヤトはその時思った。こんなにも笑ったのはいつぶりだろうか…自分の名前しか記憶の無いハヤトには分からなかった。だが少なくとも、学園を出たあの日以来全く笑っていなかったと実感した。
ハヤト「よし、今日も勝って頂点を取ってやろうぜ!」
リリス「はい!」
2人はハイタッチをした。その残響が鳴り止まない中、突然放送が入る。
「会場にいる皆さん及び、組織委員にお知らせします!只今会場内に魔物が出現しました!観客の皆さんはスタッフの支持に従い避難してください!」
ハヤト「一体何が起きたっていうんだ?」
リリス「まさか崩壊現象が?!ハヤト、様子を見に行きましょう。」
2人は控え室を飛び出してアリーナの方へと向かった。そこには、トカゲのような姿をした魔物が複数体現れており、観客達を襲っていた。
ハヤト「なんだこいつらは!とにかくこいつらをぶっ倒さねぇと!」
ハヤトとリリスは散会して、魔物討伐へと向かう。
ハヤトは観客席の方へと跳躍し、1体の魔物へ槍の性質を与えた蹴りを放った。だが魔物は驚くことに、その攻撃を腕に持っていた斧で防御し、そのままハヤトを突き飛ばした。
ハヤト「受身を取った…おいリリス!こいつらには恐らく意思がある。気をつけろ!」
リリス「意思ですって?!そんなの有り得ないはずです、魔物に意思なんて…」
アキオ「だからどおりで倒すのに苦労するって訳だな」
観客席には観戦に来ていたトリニティセブンの面々もいた。
ミラ「この戦闘力コードD程ではありませんが、少なくとも技量は空手の有段者並みはありますね。」
リーゼ「私もこのタイプの魔物は見たことが無いわ。それに解析をしようにも情報が多すぎて解析しきれないわ。」
レヴィ「自分たちは会場の外にいる魔物を相手して来るっす!」
ユイ「私も行くよー!」
アラタ「オレも本調子じゃないが、ハヤト!ここは任せたぜ」
アリン「旦那様が行くなら私も行くわ」
ハヤト「言われなくても分かってるよ!とにかく難しく考える必要は無い。こいつらをぶっ倒せば全て終わるってことだな!」
ハヤトは難しく考えるのは辞めた。今は目の前にある命を守ることが第一だと。
そしてハヤトは魔物に取り囲まれる。次々と斧と剣がハヤトを襲う。だが、幾ら意思のある魔物であってもハヤトの戦闘技術には敵わなかった。巧みに攻撃を交わし、懐に入って魔物の急所に重い一撃を叩き込む。ハヤトの一撃を食らった魔物は次々と倒れて消滅していった。
学園長「これは予想外の展開になったねぇ。」
マスター・リベル「お主、実に冷静だな。これが起こることを知っていたのか?」
学園長「いや、今言った通りだよ。僕も何も感じなかった。文字通り予想外の展開だよ」
マスター・リベル「いささか信じられないが…仕方ない」
懐から決勝を取り出す。そこから魔力が溢れ出、青い髪の少女が姿を現す。
マスター・リベル「聖よ。まだ調整中ではあるが、外で魔王候補の援護に行け」
聖「はい!どうやら只の崩壊現象という訳ではありませんね。すぐに向かいます」
聖は少し嬉しそうな声でアラタ達の元へ向かっていく。
リュート「竜王爆進!」
反対側のゲートから勢いよくリュートが突進をして現れる。彼もまたこの自体に感づいて、ハヤト達と同じく魔物を狩っていたようだ。
ハヤト「おい、これはお前の親戚か?」
リュート「馬鹿を言うな。コイツらは恐らく竜のなり損ない、リザードマンと言うべき存在だ。どこから湧いてきたんだか」
ハヤト「竜のなり損ないって、お前も同じようなものだろ!」
リュート「そこにツッコミを入れるな!そんな事言っている暇があるなら戦いに集中しろ!」
ハヤト「言われなくても分かってるよ!オレは今マジで腹が立っている。大事な決勝戦、お前をぶん殴る機会を台無しにされたからな!」
リュート「それはこっちのセリフだ!」
口論しながらも2人は背中を向け合いながらリザードマンを次々と倒して行く。この絵はまるで、東を守る青龍と、西を守る白虎の絵のようだった。リュートは圧倒的な魔力で敵を蹂躙し、ハヤトは圧倒的な体術で敵をなぎ倒す。まさに表裏一体の戦闘スタイル。
その戦いの中、異変が起きた。倒されたリザードマン達が突然フラフラと立ち上がり、リュート達の前へと集まり、2体の巨大なリザードマンへと合体したのだった。
ハヤト「おいおい、今度はデカいトカゲか?一体何が起きてるってんだよ!いい加減誰か説明しろ!」
会長「なら教えてやろう!」
そこに突然主催者が現れ、ハヤト達に語りかけた。
リリス「アナタは一体…」
会長「初めまして、色欲のトリニティセブン。私はこの大会の主催者、グレムリンと申します。」
アナスタシア「グレムリン、イタズラ好きの妖精。随分と物騒な名前をしているのね。」
グレムリン「復活の聖女もいましたか。では丁度いい。ここは混沌図書館の第4階層〈竜の間〉と呼ばれております。」
ハヤト「混沌図書館?何故お前がそれを知っている?」
グレムリン「何故とは、察しが悪いですね。私はこの場所をよく知っているのです。」
ハヤト「まさか、この事態を起こしたのはお前か!」
グレムリン「Exactly!その通りです!私はこの場所に眠る〈混沌の眷竜〉を目覚めさせるのが目的。その為にはより多くの魔力が必要でした。ですので、私はこの会場に全世界の有力な魔道士を集め、その魔力を搾取し、眷竜復活の儀式の贄とする為に…」
リュート「って事は、お前がここを会場に選んだのは、オレ達を利用してその竜を復活させるためだったのか?ふざけるな!!」
怒りに任せてリュートは竜の翼を翻し、グレムリンへと飛びかかって行った。この怒りはどこから湧き上がるものなのか…それは自分の守りたいもの、アナスタシアを傷つけようとしたことへの怒りだった。
グレムリンに間合いを詰めたリュートは右腕を突き出し、竜の魔力を帯びた魔弾を放とうとした。その瞬間、リュートの右腕に傷みが走る
リュート「グッ…」
その瞬間、みるみるうちにリュートの背中に生えた翼が消え去る。そして右腕に持つ杖でリュートは地面へと叩きつけられる。
リュート「っ貴様、何をした!」
グレムリン「少々君の魔力を封じさせてもらいました。」
リュートの右腕には謎の刻印がされていた。
アナスタシア「刻印…君はどうやら〈聖刻術〉の使い手のようだね」
グレムリン「流石復活の聖女。お見事です。しかし、少し気づくのが遅かったようですね」
~会場の外にて~
レヴィ「なんすか…急に体から魔力が…」
ユイ「えっ…一体何が起きているの…」
アリン「…旦那様…」
アラタ「おい、3人ともしっかりしろ!どうしたんだ!」
外にいたユイ、レヴィ、アリンが突然力無く倒れた。その右腕にはまた別の刻印がされていた。
アラタ「なぁ聖、これは一体なんなんだ?!」
聖「これは…聖刻術の刻印?!私も初めて本物を見ます」
グレムリン「トリニティセブン、貴方達に少しイタズラをさせてもらいました。」
アキオ、ミラ、リーゼ、そしてリリスにも同じ刻印が現れ、刻印を打たれた全員が突然倒れ出す。
ハヤト「テメェ!リリス達に何をしやがった!」
グレムリン「魔力吸収の刻印を入れさせてもらいました。私は聖刻術を極めし者。故に遠くから刻印を打つのは容易いこと。そして、この集めた魔力を…」
刻印のついた左腕を巨大なリザードマン達に探した。その瞬間、リザードマン達は苦しみ始め、その肉体が更に頑強なものへと変化していった。
グオオオオオ!!
巨大な方向と共に2体がハヤト目掛けて拳を放っていく。体が大きくなっただけではない、スピードも先程よりも上がっていた。ハヤトの回避は間に合わず、2体分の拳を何とか硬化で受け止めたが、完全に抑えるまではいかず、壁へと吹き飛ばされていった
ハヤト「ぐあぁぁぁ!!…こいつら図体だけがデカくなった訳じゃないようだな…肋骨が何本かやられたな…」
フラフラと立ち上がり、攻撃の構えをとった。
グレムリン「ハハッ!素晴らしい!流石トリニティセブンの魔力!これなら竜の復活は容易いだろう」
ピンチ、圧倒的なピンチだった。リザードマンは更に体が頑強なものへと変化し、再び暴れ始め、無差別殺戮を始めた。会場に観客の鮮血、叫び声が飛び散り始めた。まるで地獄絵図のようだった。
ハヤト「(クソッ。体が思う様に動かねぇ…このままでは会場の全員が死ぬ。いやその前に、リリス達の魔力が尽きて死ぬかもしれねぇ…どうすれば)」
???「何をしているハヤト!立て!」
突然ハヤトの目の前に長いマントを肩にかけた男が現れる。
学園長「これはまた予想外の展開だ。まさか彼が助っ人で現れるなんて」
マスター・リベル「ヤツは…もしや」
???「グレムリン!貴様の陰謀もそこまでだ!」
グレムリン「貴方はまさか…マスターレグルス!」
ハヤト「…師匠!」
レグルス「随分とボロボロにされたようだな、ハヤト。」
続く
少し行き詰まりましたが、最新話ということでまたもや急な展開にしてしまいましたw
大会の裏に隠された陰謀、そしてまさかの主催者が黒幕!でもってハヤトの師匠の本名が明かされる!
ネーミングセンスは触れないでくださいね!
次回は、マスターレグルスが大活躍!そしてまたもや新しい展開を準備しています!最近なんか端折りぎみになってますが、全力で次回も書きますので楽しみにしてくれれば幸いです
では!!