やっと俺たちは北海道から戻ってきた。
なにやら部屋一杯のオレンジ色のケーキとかが現れる夢を見た気もするが…気のせいだよね!
「キャット~…ご飯~!」
「ほいさ!」
最近はよく言うことを聞いてくれる。
部屋の中で暴れる…みたいなことも無くなったし。
「食え!」
「うん。ありがとね。」
出てくる料理の腕前も不思議と上がっているような…
最近のキャットは良妻と呼んでもおかしくないレベルになっている。
いや、以前もおかしくはなかったんだけど…
いつも助けてもらっているから、たまにはキャットにも何かしてあげたいなー…と思っても…
「キャット。何かして欲しいこととかない?」
「む?では…撫でろ!」
これだ。
本当にキャットには欲がない。
俺自身もキャットを撫でるのは楽しいし、膝の上で気持ち良さそうにしているのを見られるのは嬉しい。
でも…たまには特別なことをしてあげたい。
そう思った俺はネットで調べ始めた。
「グーグルさん…教えてくださいな…」
「ご主人が何か真剣そう。これは…浮気か?」
「オススメのデートスポット…あー…水族館とか…?
いや、キャット連れて魚がいるところは行けないだろ…」
「ふむ、これは一夫多妻去勢拳なのだな。よし、ご主人。立て。」
「純粋にショッピングとかでも喜ぶ女の子も多い…キャット…買い物か…普段から一緒にしてるもんな…」
「オリジナルよ、この記憶はどういうことだ?なぜ拳なのに蹴りを入れている?それもご主人の股に…
痛いのか?ヤバイのか?よし、やるか。」
「遊園地…うん、これかな。行ったことないし…行ってみるか。
キャット!今度一緒に遊園地…に………何してるの?」
「蹴り!である!」
「あっ………」
クリティカル…入りました…!
「ご主人!あれはなんだ!?」
「観覧車だね。」
「あれはなんだ!?」
「ジェットコースターだね。」
「あれは!?」
「………なんだろうねぇ………」
朝イチでやって来た俺たちは特に並ぶこともなくすんなりと中に入ることができた。
まだ朝だから少し肌寒いが…キャットが喜んでいるのを見ると嬉しくなってくる。
「さて、どれ乗りたい?」
「ふむ…ご主人はどれだ?」
「俺はキャットが乗りたいのに乗りたいかな」
「アタシはご主人についていくぞ?」
やだなにこの子!可愛いんだけど!?
とりあえず片っ端から遊んでいこうか。キャットが気に入ったのがあればもう一度それに乗ればいいだろうし。
「よし、じゃあまずはあれだ!」
「おー!」
キャットの手を握る。
少し驚いたような顔を見せるが、すぐに笑ってくれた。
その笑顔に笑い返す。邪念の混じっていないこの笑顔を失ってはいけない。今日は全力で楽しませてあげよう。
「わはははははは!!!」
「速い速い速い!あ~~~…」
ジェットコースター、メリーゴーランドなどをめぐり、今はコーヒーカップ。
はい、定番ですね。おっそろしい早さで回してますとも!
「oh…」
「どうしたご主人!もう終わりか!?」
「ごめん…ちょっと休ませて…」
コーヒーカップを降りる。体がふらつく。
あー…視界が…グルグル…キャットが…二人…?
「おっと、大丈夫か?」
「いや、ヤバイ…」
その時、体の浮かぶ感覚が。
足が地面から離れる。太ももと肩の辺りに温もりを感じる。それと胸元に何か柔らかいものが押し付けられているような…
「では行くぞ」
その声と共に俺の体は風を切り始めた。
恐ろしい早さで景色が移り変わっていく。
元々気持ち悪かった状態にこれである。完全に意識はどこかへ飛んでいってしまった。
再び意識が戻る。
どうやらどこかに寝かされているようだが…
「む?起きたか、ご主人よ。」
上から声が聞こえてきた。
この感覚は前にも味わったことのある。
どうやら今俺はキャットに膝枕されているらしい。
「ありがとね…」
「起きたのならもう一度行くぞ!さっきのあれに乗りたいのである!」
「いやいや…あれ!あれにしよう!あれ!」
寝起きにコーヒーカップは吐きます!
慌てて別の方向を指差す。その指の先にあったものは…
「ご主人…あれは…かんらんしゃ、というやつだな?」
「うん。のんびりできるし…速くないし。乗ってみようよ」
「よし、行くぞ!」
またも体の浮かぶ感覚が。
先程はよくわからなかったが、キャットの顔が目の前にある。
少し大きな目に、ふっくらと膨らんだ柔らかそうな唇。
近くで見るとやっぱりキャットの顔は整っていて美人さんだ。
そんな彼女に今俺はお姫様だっこされているわけでして…
「歩けるから!離せ!離してください!お願いします!」
「ご主人は病み上がり。つまり良妻の出番である!
安心するのだな。ちゃんと連れていってやるぞ!」
「いやいや!周り見ようよ!すごい人いるからね!?笑われてるのがわからないのかな!?」
「うむ!皆ご主人の可愛さにメロメロである!」
「いや、キャットの方が…って何言わせんのさ!」
どれだけ抵抗してもキャットの腕の中から逃れることはできない。
というか…動けば動くほどキャットの豊満なそれが柔らかく形を変えているわけで…それに気づいたとたんに動けなくなってしまう。
「む?道ができていくぞ?」
「はは…そりゃ俺たちを拒めるやつはいないだろうね…」
キャットが歩き始める。
前にいる人たちはスマホを構えたまま横へずれていく。
あえて関わろうとするやつはきっといない。誰も…助けてはくれないのだ…
そんなこんなで観覧車の前に到着。
気がつけばまだお昼も食べていないのに日は傾いてきている。
「これに乗るのか?」
「うん。順番は待とうね。」
下ろしてくれないんだね…うん、もう諦めたよ。
キャットと待つこと数分。ようやく俺たちの前の人が観覧車に乗り込んでいく。
「さすがにそろそろ下ろしてくれない?」
「何か言ったか?ご主人よ」
「はは…観覧車の中でもお姫様だっこだったら驚きだね…」
俺たちの番だ。
キャットは俺を抱えたまま…思いっきりジャンプした。
「乗るって言ったよね?」
「乗ったぞ?」
「上にね!?中!中に入ろ!?前の人見てなかったの!?ほら!係員さん困ってるよ!?」
俺たちは観覧車に乗った。文字通り…乗った。観覧車に。
「あー…」
「高いナ!」
「高いね…」
ゴトゴト揺れる観覧車。
ガタガタ揺れる体。
ビュービュー吹き付ける風。
お母さん…お元気ですか…?僕は今…死にそうです…
「楽しいか!楽しいかご主人!」
「はは…キャットは楽しそうだね…よかったね…」
この日…俺は人生に忘れることのできない一ページを刻んだ
なお、このあと係員さんにめっちゃ怒られました…