魔法の使えない劣等生   作:タッツー

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ようやく書き終わったので、投稿します。文才が欲しいーーーー!


過去編

日本の魔法使達の頂点に君臨する十氏族。その内の一つ四葉家の分家の一つである四季家に待望の跡取りが生まれた。

しかし、

 

「魔法が使えないだと!」

「四葉の汚点だ!」

「早急に処分すべきだ!」

 

生まれてきた子は魔法が全く使えなかった。そのため、一族の恥として扱われ、殺されそうになった。その後、四葉家当主の意向により、魔法が使えるようになる可能性もあるので、しばらく様子を見ることになった。

 

それから10年が経った。四季家の長男ルビーに対する風当たりは未だに強く、いないものとして扱われていた。そんな彼に唯一愛情を与えていた者がいた。母親のネネである。だが、彼女に対する風当たりはルビー以上に強かった。

なぜなら、

 

「あんな出来損ないを生んでおいて、よくここにいられるな。」

「愛人のくせに。」

「四季様もお気の毒に。」

 

分家の当主達には、優れた魔法使を生むために愛人を作ることが認められている。事実、現四季家当主にはネネ以外にも愛人が二人おり、どちらも優れた魔法の才能を持つ子を生んでいる。ところが、ネネは魔法の使えないルビーを生んでしまい、愛人の意味がないと批判されているのである。ネネは初めは正妻として扱われていたが、ルビーの一軒から正妻はおろか愛人としても扱われなくなった。

 

「お前と出会ったことは私の人生の汚点だ。」

「あなたは愛人以下よ。自分の立場をわきまえなさい。」

「早く出て行ってよ!この面汚し!」

 

かつて愛した男性や、同じ男を愛した者たちからも罵倒されていた。彼女の精神状態はボロボロであった。

 

ルビー「大丈夫?母さん。」

 

ネネ「心配しなくても大丈夫よ。罵詈雑言なんて聞き飽きるくらい浴びせられているんだから。」

 

ルビー「やっぱり僕が出来損ないだからいけないんだよね?僕さえ生まれてこなければ、母さんはもっと・・・」

 

ネネ「ルビー。」

 

ネネは語調を少し強めて愛する息子の名前を呼んだ。

 

ネネ「あなたは私の大事な息子よ。他の人達があなたをどう思っていても、私はあなたを愛しているわ。」

 

そう言うと、ルビーの頭を優しく撫でた。

 

ルビー「母さん、ありがとう。いつか母さんを守れるくらいの強い男になるよ。」

 

ネネ「期待して待っているわ。でも、無理だけはしちゃだめよ。」

 

二人はお互い辛い目にあっていたが、こうやって励ましあっていた。何より自分のことを大切に思ってくれることが嬉しかった。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。

 

「では、ルビーを処分するということで異論はないな?」

「ありませんよ。あんな奴は息子ですらありません。」

「では、明日の夜に作戦を決行する。ばれないようにしろよ。」

「かしこまりました。」

 

1年後、現四葉家当主と四季家当主の間でルビーを処分することが秘密裏に決定した。ネネはこの会話を偶然耳にし、すぐにルビーをこの家から逃がそうとした。

 

ネネ「あの子だけは絶対に殺させはしない。私の命に代えてでも。」

 

そう心に誓い、翌日の夜にルビーを連れ出した。

 

ルビー「母さん、こんな時間にどこに行くの?」

 

ネネ「少しお散歩にでも行こうと思ってね。」

 

ルビーを不安にさせないためにネネはそう言った。しかし、ルビーはこの異様な状況に気付いていた。

 

ルビー「母さんは優しいね。僕を不安にさせないために嘘をついているんでしょ。」

 

ネネ「気づいていたの?」

 

ルビー「僕も馬鹿じゃないからね。大方、僕を殺せっていう命令でも出されたんじゃないか?」

 

ネネ「その通りなんだけど・・・。よく冷静でいられるわね。」

 

ルビー「遅かれ早かれこうなることは察していたからね。それで、このまま家出でもするのかな?」

 

ネネ「家出というより、脱走に近いわね。これからは二人で身を隠しながら暮らすのよ。」

 

ルビー「こんな家で暮らすより、何十倍も幸せな生活が送れそうだね。」

 

会話をしながらも二人は走り続けた。ここまで離れればもう大丈夫だろうとネネは思った。しかし、その刹那、

 

ルビー「母さん!危ない!」

 

ルビーは剣で突如こちらにむかってきた針をはじいた。

 

ネネ「この針はまさか・・・」

 

針の投げられた方を見るとネネの予想通りの男が立っていた。

 

ネネ「まさか、あなたが出てくるとは思ってもいませんでした。黒羽殿。」

 

二人の前に立ちはだかったのは黒羽貢。暗殺を専門とする黒羽家の現当主である。

 

貢「一応、念を押して待ち伏せしておいて正解だったな。」

 

ネネ「こんなところで待ち伏せしてるなんて、随分とお暇なのですね。」

 

貢「四葉の汚点は今ここで確実に潰さなくてはならない。それなのに、こうして逃走を図ることも見抜けていないとは。相変わらず四季殿は詰めが甘い。」

 

こうして会話をしている間にも、ネネは隙をみて逃走しようと考えていた。しかし、貢は全く隙を見せない。

 

ネネ「(さすが、暗殺を生業とする黒羽家の現当主。逃げられそうにないわね。)」

 

このままでは、追っ手に追いつかれる。そう考えたネネは、ある決断をした。

 

ネネ「ルビー、あなたは先に行きなさい。」

 

貢に勝つことはほぼ不可能だが、時間稼ぎなら何とかなる。ネネはそう考え、ルビーに一人で逃げるよう指示した。

 

ルビー「でも、母さんじゃおそらくあいつには。」

 

ネネ「ええ、よくて相討ちってところでしょうね。それでも、あなたの逃げる時間くらいは稼げるわ。」

 

ルビー「ここで死ぬ気なんだね。僕を守るために。」

 

ネネはルビーの頭を撫でながら、優しく微笑み、こう言った。。

 

ネネ「あなたは私の大事な息子よ。誰からも愛されなかったこの私を、唯一愛してくれたかけがえのない存在。今までもたくさん愛したけど、まだまだ足りないわ。もっともっと愛したい。そのためには、ここから生きて逃げないといけないの。」

 

ネネは貢の方を向き、愛する息子に言った。

 

ネネ「母親らしいことは何もできなくてごめんなさい。でも、あなたの逃げ道は必ず作ってみせるわ。」

 

ルビー「そんなことないっ!母さんはいつだって僕のことを思ってくれていた。今だって、こうやって命を懸けてまで守ろうとしてくれている。それに比べて僕は母さんを守ることもできなかった。」

 

ルビーは涙をこぼしながら、愛する母に自分の気持ちをぶつけていた。

 

ネネ「その気持ちだけで十分よ。ルビー、これは私からの最後のお願いよ。」

 

いつしかネネも涙を流していた。悲しい運命を背負った親子は最後の会話をする。

 

ネネ「必ず生き延びて。そして、立派な大人になって、幸せな人生を送ってちょうだい。」

 

ルビー「母さん・・・」

 

ネネ「あなたならきっとできるはずよ。なにせ、あなたはとっても優しいし、強いもの。」

 

そういってネネは微笑んだ。

 

ルビー「わかったよ、母さん。だから、僕からも一つお願いだ。必ず、生きて僕のところに帰ってきて。」

 

ルビーはそういうと、颯爽と走り出した。

 

ネネside

 

ネネ「無事でいてね、ルビー。」

 

貢「茶番はおしまいか?」

 

親子の会話の間、貢は一歩も動かず立ち尽くしていた。

 

ネネ「随分と余裕ですわね。」

 

貢「お前如きはどうとでもなる。あの出来損ないも他の追っ手に捕まるだろう。だから、何もしなかった。」

 

貢の言う通り、二人の間には確かな実力差がある。やりあえば、一瞬で負けるだろう。しかし、そんなことはネネも理解していた。

 

ネネ「黒羽殿、あなたは2つミスを犯しました。1つはあの子の実力を見誤ったこと。そして、もう1つは、」

 

そういうと、ネネは貢に向かって一直線に走り出した。

 

ネネ「私の覚悟を見極めていないことですっ!」

 

貢「!!!!!」

 

貢は一瞬怯んだものの、ネネに向かって大量の針を投げた。だが、ネネは一切避けることはせず、貢との距離をつめていった。

 

貢「(なぜ避けない?時間稼ぎが目的ではないのか?)」

 

貢はネネの考えが全く読めなかった。遂にネネが貢を捕えた。。

 

ネネ「意外ですね、逃げないんですか?」

 

貢「どうせお前は既に虫の息だ。このまま放っておいても死ぬし、もう体も動かないだろう。」

 

貢の放った針には速効性の神経毒が塗られており、ネネの体はほとんど動かなくなっていた。貢もそのことを理解していたのであえて避けなかった。

 

ネネ「それこそ傲慢というものですよ。私の覚悟はこんなものじゃないっ!」

 

ネネはそう言うと、魔法式を起動した。貢は咄嗟に離れようとしたが、それより早くネネの魔法が発動した。

 

貢「っ!ぐわぁぁぁぁぁっ!」

 

貢の体にとてつもない電流が流れ、あまりの強さに貢はネネを突き飛ばした。

 

貢「はあ、はあ、いったい何を。」

 

貢はそう言ったが、ネネは答えなかった。今放った魔法はネネの固有魔法の放電であった。この魔法は使用者の肉体を媒介として対象者に電撃を浴びせるものである。相手を再起不能にすることも可能な魔法だが、使用者には対象者の倍近くの電流が流れるため、使用されることはほとんどなかった。そのため、貢はこの魔法を知らなかった。

 

貢「どうやら、自分を犠牲にする魔法のようだな。私を道連れにしようとしたようだが、失敗だったな。」

 

貢はそう言うと、体を起こそうとしたが、体が全く動かなくなっていた。

 

貢「どういうことだっ!何故体が動かないっ!?」

 

これこそがネネの狙いだった。ネネは貢を道連れにしようとしていたが、満身創痍の状態では殺すことはできないかもしれないと考えていた。だが、放電なら殺せなくても、動けなくすることはできると判断した。その狙い通り貢は今、全身の神経が麻痺してしまい、体が全く動かせなくなっていた。

 

ネネ「(どうやらうまくいったようね。)」

 

ネネの体は丸焦げになり、毒により意識が朦朧としていた。

 

ネネ「(私の命はどうやらここまでみたい、ごめんなさい、ルビー。)」

 

ネネは意識が消えかけてゆく中でも、愛する息子のことを考えていた。

 

ネネ「(時間は十分稼げた。黒羽殿がいなければ、あの子が捕まる筈はない。)」

 

ネネはルビーが逃げ切れることを確信していた。

なぜなら、

 

ネネ「(私は知っているのよ、ルビー。あなたが魔法が使えないハンデを克服するために、自分のスピードをひたむきにあげようていることを。)」

 

ネネは今のルビーなら貢以外にはスピードで勝っていると判断していた。だから、貢が動けなくなった今、ルビーに追いつける者はいないと確信していたのである。

 

ネネ「(素敵な人生を送ってね、ルビー。私の自慢の息子。)」

 

そう言うと、ネネの意識は途絶えた。

 

ルビーside

 

ネネと別れた後、ルビーは涙を流しながら走り続けていた。

 

ルビー「(立ち止まっちゃだめだ、母さんの覚悟を無駄にすることになる!)」

 

本音をいえば、すぐにでも母の元に戻りたかった。だが、今の自分では足手まといになるだけだということもわかったいた。

 

ルビー「(自分の無力さが憎いっ!)」

 

力のない自分に苛立っていた。そんな時、強い魔力を感じた。

 

ルビー「この魔力は母さんの。まさかっ!」

 

その直後、強い電流が地面を駆け抜けるのがわかった。

 

ルビー「母さん、あの魔法を使ったのか・・・」

 

ルビーは母が切り札を使ったと確信した。同時に母の命が、もうすぐ消えることも理解した。

 

ルビー「母さんっ!」

 

ルビーは思わず、立ち止まってしまった。だが、このまま立ち止まってはいけないと思い、すぐさま走り出した。

 

ルビー「(母さん、必ず生き残るよ。そして、幸せな居場所を作ってみせる。それと・・・)」

 

ルビーは何の思い入れもない家の方をみながら誓った。

 

ルビー「(四季家と四葉一族に必ず一泡吹かせてみせる!そのためにも、もっともっと強くなる!)」

 

そう誓い、ルビーは走り続けた。

 

 

 

 

その後、四葉家ではネネとルビーが脱走し、二人とも処分したことが発表された。正確には、ネネしか死亡を確認していないのだが、ルビーが生きていても四葉家に影響はないと判断され、二人とも死亡という形で発表された。二人は四葉家で不遇な立場にいたので、二人の死を悲しむものはほとんどいなかった。

それから1年後、

 

ルビー「あれからもう1年経ったのか、時間が流れていくのは早いな。」

 

あの日、四葉一族を抜けたルビーは、更なる強さを求めて武者修行の旅に出ていた。そのせいか、1年前よりもたくましくなり、見た目も大人っぽくなっていた。

 

ルビー「今の俺なら母さんを守れたかもしれないな。」

 

1年の修行により、ルビーのスピードは更に磨きがかかり、相手に何もさせないまま倒すことも可能になった。また、剣術も格段に磨きがかかり、一対一の戦闘なら誰にも負けない自信がついた。

 

ルビー「手紙によるとこの辺だよな・・・。」

 

あの日、追ってから逃れたルビーは自身のカバンに手紙が入っていることに気付いた。手紙はネネからで、自信を愛してくれたことへの感謝や、もっとルビーの成長をみたかったなど、後悔の思いが綴られていた。その手紙をよみ、ルビーは号泣した。そして、これからよりいっそう強くなることを誓った。さらに、この手紙には、生前ネネがルビーの生活のために、お金を貯めていてくれたことや、住む家を用意していたことも書かれていた。もうすぐ、中学生になるため、ルビーは母が用意してくれた家に向かっていたのである。最初は、中学に行くくらいなら修行をしていたほうがいいと考え、入学するつもりはなかった。しかし、ネネはルビーが小学校に行っていた時すごく嬉しそうにしていたことを思い出し、中学に通うことに決めた。

 

ルビー「きっと母さんは天国から、俺の学生としての姿を心待ちにしているんだろうな。」

 

そう言いながら、ルビーは目的地に向かって足を進めた。

 

ルビー「ここが俺の新しい家か。」

 

特に特徴もない一軒家。だが、ルビーには何の不満もなかった。

 

ルビー「母さん、本当にありがとう。一生大事に使うよ。」

 

愛する母が用意してくれた家。それだけで、ルビーは満足だった。

 

ルビー「誰もいないけど一応言っておくか。」

 

それは、ネネが最も喜ぶ言葉だった。

 

ルビー「ただいま。」

 

そう言って、ルビーは我が家の扉を開けた。すると、そこには・・・

 

?「お帰りなさいませ、お待ちしておりました、マスター。」

 

見たこともない美少女がメイド姿で待っていたのであった。




次回はいつ投稿できるかわかりません。一応年内に投稿できるよう努力します。

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