最初に仕掛けたのはレオーラだった。
レオーラはホルスターから素早く拳銃を抜くとローグ目掛けて銃弾を二発放つ。
「おっと」
ローグはそれをひょいと簡単そうに避ける。
しかし、レオーラの攻撃はまだ終わってはいなかった。
回避中のローグに続けざまに銃弾を放とうと狙いを定める。
「おいおい、回避直後に追い討ちってあんたは鬼か」
「あ?」
ローグのその言葉の直後、先程までレオーラの目の前にいた筈のローグが消える。
「っ!」
レオーラが周りを確認しようとした瞬間、後ろから何かが風を切る音が聞こえ身体を前方に回転させてその何かから回避する。
ローリングで回避と同時にレオーラは真後ろを見た。
そこには腕についた剣で切りかかろうとするローグがいた。
「ヒュウ、今のを良く避けたもんだ。まったく恐ろしいぜあんた」
「そりゃどーも」
軽口をたたいてはみたものの現状、レオーラにはそんな軽口をたたける余裕はない。
(目の前にいた奴が術式無しに突然後ろに現れる…か、速度とかそんちゃちなもんじゃないのは確かで何かの能力か)
「シッ!」
ローグは横から剣を薙払うがレオーラは槍の刃に向かって銃弾を連続で当て剣を弾く。
(まともに考えて瞬間移動系の何かだろう)
レオーラが真っ先に考えついたのは瞬間移動だった。
瞬間移動は戦闘こと近接戦闘において強力な一手であり、近接戦闘に最も適した能力だと言ってよいだろう。
瞬間移動中はレーダーなどの索敵から反応は消し、使用者の思いの場所に突然跳べる。
使用者ごとに距離はあるが、これの使用は相手の虚を突き感覚的死角、思慮的死角の両方をとることが可能な言わば戦闘の決定打になりうるような能力だ。
しかし、レオーラはこの考えにある懸念があった。
(何故、こいつは最初っから使用したんだ?)
レオーラの懸念はローグの使用タイミングであった。
瞬間移動は確かに強力な能力だが、この能力が発揮されるのはあくまで相手の虚を突いた時だ。
先程のレオーラは一時的に虚を突かれただけですぐに対応することができた。
レオーラからすればローグはタイミングを計らずに瞬間移動をただ放った馬鹿にしか見えなかった。
(だが奴がただの阿呆だったなら、今頃はセラにやられているだろうな)
セラが負けたということからローグが浅はかな人間だとは決して思えなかった。
(とりあえずは対応策をとっておくか)
レオーラはローグに向けて一発放つ、レオーラの銃から放たれた一個の弾丸が十個に分かれ、ローグを囲むように向かってゆく。
(こいつなら瞬間移動を使わざるおえないだろ)
「こりゃあまいったな」
ローグは自身の周りに円を描くように剣を振るう。
だが剣は弾丸に当たることはなくただ空を斬っただけだった。
「フ」
(あいつ何を)
ローグの空振りは目的があってやったことだというのはローグのすかした笑いから分かっていた。
そしてそれが能力発動の予兆であることも。
そこまではレオーラにも分かっていた。
しかし、ローグへ向かっていた弾丸が消えるとは分かっていなかった。
そしてその消えた弾丸が何処へ行くかも
「レオーラ!後ろっ!!」
「なっ」
フェイトの叫びに反応した時にはもう遅かった。
レオーラの背後から複数の弾が飛んできていたのだ。
背後から突然飛んできた弾を避けられる訳もなくレオーラの背中に重々しい痛みが広がる。
だがレオーラの意識は痛みよりも弾の形へと向いていた。
「おいおいまさかよぉ…こいつは俺がさっき撃った弾じゃねえのか」
「正解」
「チッ」
身体をぐらつかせるレオーラに距離を積めていたローグから剣が振り下ろされる。
レオーラは振り下ろされる剣に銃をぶつけて弾き返す。
銃を弾き返した直後にレオーラはローグを横っ腹を蹴り飛ばした。
「ぐふっ」
横っ腹を蹴られたローグは右に大きくぶっ飛ばされるが体勢を整えて着地する。
「あんた、中々しぶといじゃないか」
「そうかよ」
レオーラはいつの間にか銃をホルスターにしまってお前の言葉などどうでもいいと言うかのように不機嫌そうにタバコを吹かしていた。
「おいおい、俺は本当に驚いてるんだ。普通は今ので仕留められるんだが」
「お前の普通の基準が低いんだよ」
「自信を無くしそうだよ、まったく」
「自信なんざ無くしてさっさと帰れ」
「そうはいかないな、次で決めにいきたいんでね」
「そいつは同意見だ」
その言葉が合図かのようにお互いに動き出す。
レオーラはホルスターから銃を抜きローグに向け、ローグはその動作に合わせるように自身の前に剣を振るった。
だがすぐにことが起こることはなかった。
「決めたいんじゃなかったのか?」
「あんたこそ、その銃でさっさと俺のことを撃ったらどうだ」
「…は、やっぱりか」
「?…何がやっぱりなんだ?」
「こっちの話だ」
レオーラはニヤリと笑みをこぼしてからタバコを前方へと投げ捨てた。
投げ捨てられたタバコが放物線を描くように地へ向かって落ちていこうとする。
「ちっ!」
だがタバコは地へ落ちることはなく、空中で消えるとローグの目の前へと現れた。
ローグが目の前に現れたタバコを腕で払おうとするがタバコを払おうとローグの腕がタバコと同じように何も無い空中から現れた手に捕まれる。
ローグはレオーラに視線を移した。
そこには左手がなくなったもとい目に見えない空中に開いた穴に左手を突っ込みながら残忍そうな笑みを浮かべたレオーラがいた。
「捕まえたぞ」
「まだだ」
ローグが剣を振り上げる。
「いーや止めとけ、その剣で空間を断ったとしてもその前にお前の腕をこっちに引き込むからな」
「くっ」
「タバコはガキどもが嫌がるから吸わないでおいたんだがな」
「殊勝な心がけで」
「うるせえ、しかし空間と空間を繋いだり断ったりする能力とはな、恐れ入った。がもう少し考えて使うんだな」
「返す言葉も無いよ」
しゃべりながら空間の中に銃を突っ込む。
勝負を終わらせようとレオーラの指が引き金にかけられた。
《綺人よ》
「何だ」
エメスが何か言いたげに俺の名前を呼ぶ。
恐らくエメスが考えている内容と俺が考えている内容は同じことで時間が限られる現在においても話さなくてはならないことであろう。
《あの女は信用できると思うか?》
エメスの言った女とは先ほどまで話しをしていた笠原雪奈(かさはら ゆきな)という管理局員のことであった。
俺は先ほどまで彼女にジュエルシードの確保の協力とある提案しており、彼女はそれらを了承したのだ。
「信用も何も協力を申し出たのは俺達の方だ。言い出しっぺが信用しないなんてのはそれこそマズいだろ」
《だが信用するには奴は色々ときな臭いぞ》
「フムン」
俺達が出した「俺達のことを管理局に報告しないでくれ」という提案を彼女は何も聞かずあっさりと受け入れたのだ。
一見これは俺達の提案をすぐにのんで考慮してのことに思えるのだが、違う視点から見れば約束を反故する可能性などもあった。
だからエメスが彼女をきな臭いと思うのは仕方ないことだろう。
実際、俺だって彼女を信用すべきか分からなかった。
「確かに彼女を信用できる材料はないけど、逆に彼女を信用できないと思わせる材料もない」
《まあ、そうだが》
これはどちらとも予測の域を出ていない可能性の話であり、そんな話を未来が見えるわけでもない俺達がしたところで無意味であった。
綺人もエメスもそのことを理解しており、それ以上は語らなかった。
ただし、それ以上語らなかったのはそれだけが理由ではなかった。
《ジュエルシードがある場所に二つの魔力反応》
「レオーラと彼女が言っていたローグという奴だ」
二人はジュエルシードがある場所で起こっている戦闘に気付いていた。
《セラ達の反応が薄いところを見るにローグという男にやられたのだろうな、どうやらあの管理局の小娘が強いと言ったのは嘘ではないようだな》
「そうだな、そして今なら」
「綺人!」
「ああ、ユーノか」
綺人は今まで様子を窺ってやっと出てきたユーノに驚いた様子もなかった。
「その様子だと僕がビルの上で見ていたのに気がついてたの?」
《無論じゃ》
「ああ、それに気付いてたのは俺達だけじゃない」
「え、あの管理局の人にもバレてたの?」
「バレバレ」
「そんなぁ」
「ユーノ、今は落胆してる場合か?お前がここにいるのはなのはがらみのことだろ?」
「うん、またその様子だとなのはの居場所も気付いてるよね?」
「あのなのはのことだジュエルシードの側だろ」
「あ、あはは…それでどうするの?」
ユーノの問いに数時間前の学校での出来事を思い出していた。
綺人も綺人なりにあれから冷静になって考えてなのはには言い過ぎたと思っていた。
ただ、それは言い過ぎたと思っただけであり決してなのはが協力するのが最良であると判断したのではなかった。
「話そうと思ってる」
「…そう」
綺人はユーノの問いに自身でも気づかぬような無意識の中で答えていた。
だが綺人は自問することはなかった。
遅かれ早かれやらなければいけないのだ。
それに言うべきこともとい聞くべきことは決まっていた
それならば早くにしたほうがいい。
決まっているならば早くに越したことはない。
「話したい」その言葉はそう感じていたからこそ無意識の内から出た言葉だった。
綺人はそれが頭で理解は出来なかった。出来なかったがすでに行動していた。
『なのは』
『ふぇ!?き、綺人くん、あ、あのわた』
『大丈夫だ。今はお前のことを怒っていない』
『…ほ、本当に怒ってない、の?』
『ああ』
綺人はなのはを驚かせないように凄みの抜いた柔らかな声で話す。
『一つだけ質問する。なのはにはそれを答えてもらいたい』
『質問?』
『そうだ。なのははそれにどう答えても構わない。俺はそれに口を挟む気はない』
『…うん、分かった』
なのはの了承から聞くと安心してか、はたまたこれからの質問を聞くにあたって心の切り替えによるものか、それは分からなかったが綺人を一度息を吐いてから質問を始めた。
『お前は魔法の力を得て後悔しているか』
『ううん、これは私が選んで得たものだもん。後悔なんてしないよ、今もこれからずっと先も。それで何時かは綺人くんの隣りで戦えるくらいすごく強くなるよ』
『…』
なのはの最後の言葉に綺人は面を食らう。その言葉はなのはがあれだけムキになった理由を理解させた。
(なのはがムキになっていたのはがむしゃらに何かをしようとしていたのではなかった。俺を心配してのことだったのか)
実に高町なのはらしい答えだと綺人は思うと同時にそれに気づいてやれなかったこととそこまで自身を思っているなのはに少し気恥ずかしい思いになった。
『綺人くん?』
『なのはにそこまで思われてることに驚いたんだ』
『うん。私は綺人くんのことを思ってるよ』
『それ以上言われるのは…恥ずかしいんだが』
『あ…ご、ごめん』
『いや、構わないよ。むしろありがとう』
『えへへ~、あ、それで私は』
『大丈夫だよ。なのは、俺と一緒に戦ってくれないか?』
勝負を終わらせようとレオーラの指が引き金にかけられた。
だがレオーラは引かなかったというよりも引けなかった。
レオーラが引き金へと指をかけた瞬間、背後から光の砲撃が放たれたのだ。
それに気づくと同時にレオーラは地を蹴って、上空へと逃れようとする。
しかしそれを阻む者がいた。
「逃がすか!」
レオーラの真上から綺人が突進するように落ちてくる。
綺人はその突進の勢いのままに刀を振るった。
レオーラは綺人の刀を銃で防ぐことには成功した。だがそれは刀に斬りつけられるのを防いだだけのことだった。
真上から振り下ろされた刀は綺人の全体重がかかっており、その力がかかった刀を簡単に止められる筈もなくレオーラは地上へと落とされる。
そして地上に落ちたレオーラを砲撃が追撃する形となって飲み込んだ。
砲撃が止んでから砲撃を放ったなのはの方へと綺人が近づく。
「よし、うまくいったな。なのは」
「うん。こんなにうまくいったのも綺人くんのおかげだよ」
「なのはが引きつけておいてくれたからだ」
「えへへ~」
《お二方。仲むつまじいところに水を差したくはないのだが。どうやら奴はまだ健在のようだぞ》
エメスの言葉に抉られたコンクリートの地表の先を見る。
そこには未だに軽傷といえるほどのダメージしか受けていないレオーラが立っていた。
お久しブリーフ。musiです。
ブリーフではなく殆どトランクスだぜ。
まあ、そんなことはどうでもいい。
前回の後書きでここの戦いが終わると言ったがすまないが後一回だけ付き合ってくれ。
今回の話は書いてる時に何かスゲー楽しくなってしまったんだ。
次では流石にここの戦いは終わりますね。
流石にね。
今回の後書きですが、ちょっとローグの能力について軽い説明をします。
レオーラはローグの「空間を繋いだり断ったりする能力」と言ってましたが実際はちょっと違います。
殆ど当たりと言っても差し支えないんですがローグの能力はあくまで空間を繋ぐ能力てわす。
断つ能力はデバイスの魔法によるものです。
はっきり言ってこの設定はいらないかもしれません。一つに纏めてしまえばいいかもしれません。
ですが普通の管理局員が空間を断つなんて能力を持ったデバイスを持っているでしょうか?
とここでローグの一般的な周りとの違いをほのめかしておきます。
分けたのはその為だけです。
あれですよね。勘がいい読者やフロム脳みたいな考えができる人はだいたい予想ついてるんじゃないかな?
それではこの辺で。
あ、大分遅れましたが、新年の挨拶をしておいたほうがいいかもしれません。
あけましておめでとうございます。本年も作者と小説をよろしくお願いします。
そして前回の予定を嘘こいて本当にすみませんでした。
それでは皆様。ば~い!