魔法少女リリカルなのはGhost   作:musi

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第十四話「救世主・メシア」

「ねぇフェイト。本当にあっちに戻るのかい?」

「うん、母さんは私たちの状況を知らないから、ちゃんと伝えに行かないと」

「私は正直戻りたくないよ」

「うん…」

 

昨日のうちに買っておいたケーキを冷蔵庫の中から取り出しながらアルフのぼやきに答える。

 

「それに今のプレシアがケーキなんて食べてくれるかね?」

「食べてくれるといいんだけどね。それと別にアルフはお留守番しててもいいんだよ?」

「そういう訳にはいかなよ。あたしはフェイトの使い魔なんだ、あたしが知らない所でフェイトの身に何かあったら嫌だもん!」

「セラとレオーラがいるからアルフがいなくても大丈夫だよ」

「そんな意地悪は言わないでおくれよぉ~。私は真面目に言ってるのに」

「ふふふ、ごめんごめん」

 

涙目になり抗議してくるアルフの頭を私はごめんと謝りながら撫でる。

闘いの時こそ恐ろしい狼の姿に変身するアルフだが普段のアルフは先ほどの反応の通り結構弱々しいのである。

そのギャップ故か。このように私はよくアルフを苛めている。

仕方ない。だって可愛いんだもん。

 

「でもアルフは本当に来ない方がいいよ。アルフはあの人のこと嫌いでしょ?」

「当たり前だよ。アイツが来てから全部がおかしくなったんだ!アイツがプレシアにジュエルシードのことを教えたからプレシアは…フェイトだってそうだろ?」

「うん…でも母さんは違う」

 

私もアルフも、セラ、レオーラ、要月、みんながあの人のことを嫌っていた。

ただ母さんだけは違った。

母さんはあの人からジュエルシードの話を聞いてからあの人のことを『救世主様』と呼ぶほどに盲信していた。

 

「何が救世主様だよ!私たちの場所に入って全部ぶち壊してやがって!あのヤローをぶん殴ってやる」

「ア、アルフ落ち着いて。ぶん殴ったりしたらアルフに酷いことをするようにあの人が母さんに命令しちゃうよ」

「ぐむむ」

「アルフはそんなことを母さんにさせたくないでしょ?それにそんなことしたらリニスが浮かばれないよ」

 

リニス

出来るならその名前を出したくはなかった。

その名前を説得みたいに使うことに私は軽く自己嫌悪する。

ただその名前を出したかいあってアルフは引き下がってくれた。

 

「そうだねフェイト。私が悪かったよ、あっちに戻ってもちゃんと我慢するから連れてっておくれよ」

「大丈夫だよ。ちゃんと連れて行くから。アルフがそれくらいのこと我慢できないなんて私は思ってないよ」

「フェイトー!!」

 

アルフの顔がパアァっと笑顔になって私に勢いよく抱きついてくる。

それは体格差もあってタックルをうけたように多少痛いそして寄りかかってきて重い。

でも可愛いから許す!

 

「ちょっとアルフ~重いよ」

「ご、ごめんよ」

「とりあえずセラ達の所へ行こう」

 

 

 

 

 

 

義手の手入れを終えて一段落ついた所で時計を見る。

フェイトがプレシアのいる部屋に入ってから一時間程経った。

そろそろ危険かもしれない。

親子の再開に対して危険だと考えている俺はおかしくなった訳ではない。

何日も離れ離れだった親子がそれくらいの時間話していてもなんのことはない筈で、普通の親子を待つだけでそれが危険と思うことはないんだろう。

ただそう思わせる原因が親子の間にはあった。

今のプレシアが常識的なことを言っていられる状態ではないことだ。

 

「…行くべきか」

「何処へ行くのですか?」

 

プレシアの部屋へ行こうと立ち上がるのと同時だろうか、洋風のこの場所に全く似合わない、というより浮いた太古の武士のような着物を着た細身の男が部屋の中へと入ってきた。

そいつは自称・救世主の護衛三人の内の一人のゼオドラだ。

こんな時にこいつに出会うとは、いや部屋の中をずっと窺っていたのかもしれない。

だが見られていたかもしれないなどという事は今はどうでもよかった。

 

「俺が何処へ向かおうがあなたには関係ない事だ。違うか? 」

 

俺の明確な敵意を視線にゼオドラは怯えたかのように肩をすくめた。

ただそうしただけでその顔には恐怖の色は一切なかったが。

 

「そんなに怖い顔しないでくださいよ。私はただ興味本位で聞いただけですから」

「怖い顔をされたくないのなら二度と話しかけるな」

「そんなあからさまに邪険にするほど私のことが嫌いですか?」

「ああ嫌いだ」

「まさか直球で言われるとは思いませんでしたよ。まったく傷つくなー」

 

ゼオドラはただそう言っただけで傷ついた様子は微塵も感じられない。

自分がどう扱われるか全て予想していたのだろう。

だからこいつは怯えもしなければ心に傷つくこともなくずっと薄ら笑っていられるのだ。

それがこいつを気に入らない理由の一つだった。

その気に入られてない当人はそれを知りながら変わらない笑みを浮かべたまま話を続ける。

 

「っとまあお喋りはこの辺にして、あなた方、今回のジュエルシード集めに随分と時間がかかっているようじゃないですか?」

 

ゼオドラは細目であったが今はその細目の奥で俺を嘲笑っていたのがよく分かった。

 

「散らばった正確な位置も分からないうえにジュエルシード自体が探知しにくい」

「困るなぁ」

 

困った様子なし。

 

「此方はあなた方が提示した額を出しているというのにあなた方が此方の提示した条件を果たせないのではお話になりませんねぇ」

「俺とレオーラは仕事をこなしているつもりだ。大方そっちの見立てが理想論すぎるんだろ」

「ハハハ、そうかもしれませんね」

「…それに」

 

今回の仕事は確かにゼオドラの言うとおりで普段よらも滞っていた。

それは先ほど言ったものが原因ではなかった。

 

「俺たちの邪魔をする奴らがいる、ですか?」

 

俺が言わんとしたことをゼオドラが先に答えた。

どうやらゼオドラは此方の状況を知っているようでこの会話はゼオドラにとってただの文句を言う場のようだ。

 

「しかしあなた方ほど強い方々を退けるような奴があの世界にいるとは、いやー驚きでした」

「俺とレオーラはまだ本気を出していないだけだ」

「それは心強い」

「…フンッ」

「そういえばそうとその邪魔者の一人はレオーラさんの知り合いだとか?」

「そうらしい。詳しくは俺も聞いていない」

「それは残念」

「…あっちにはいなかったのに随分と詳しいな」

「いえ、先ほどアルフさんから聞いたもので」

「…そうか」

 

これは嘘だ。

アルフは救世主を含む護衛の事を嫌っていた。

いや彼女を除いてだが。

 

「そういえば彼女はどうした?護衛中か?」

「おや?気になりますか?」

「アルフが話したいだろうからな」

「あ~、そういえばお二人とも仲がよいですもんねぇ」

「それで何処にいる?」

「ん~、実は彼女にはちょっとお遣いを頼みましてね」

 

お遣い?護衛対象から離れてまでやることがあるか?

 

「いえね、あちらに残しているのが傭兵だけでは些か不安なもので」

「あれを向かわせたのか?」

「ええ」

「あれがジュエルシード探しの役に立つのか?」

「確かにそういう細かいことには彼女は全く役に立ちません」

「なら」

「ですがこと戦いにおいてならあなた以上に役に立ちます」

「…」

 

その通りだった。

彼女は技術面においては下手くそと言えるほどの技術しかなく。探知魔法やバインドと言った繊細なものへの才能はほぼ皆無と言ってよいほどであった。

ただ彼女にはある脅威的な才能があった。

それは彼女と戦った俺自身がよく分かっていた。

今の俺が彼女に挑んで勝てる気がしない。

一回の戦い、それだけでそう認識してしまっていた。

だからこう言ったのかもしれない。

 

「奴らは大丈夫なのか…?」

 

それは無意識のうちに出たものだ。

ただそう思ったら口に出てしまったものだ。

 

「おや、敵の心配とはお優しい。ですがそれよりもフェイト・テスタロッサの心配をしたらどうです?」

「!」

「こんなとこで道草食ってていいんですか?そろそろ彼女の体力も限界でしょうに。あ、道草食わせてたの私でしたね。これは失礼」

「どけっ!」

 

ニタニタと笑みを浮かべるゼオドラを押し飛ばして部屋を後にする。

後ろからゼオドラの笑い声が異様に響いていた。

 

 

 

 

 

 

セラは部屋の前に着くやいなや扉を開くべく手をかける。

鍵がかかっていなかったため扉は簡単に開かれた。

部屋の中に入ってからセラはすぐにフェイトを探す為に部屋を見渡した。

 

「フェイト!」

 

フェイトは部屋の中心に横たわっておりすぐに見つけることができた。

不安になっていたセラは居ても立っても居られずフェイトに駆け寄っていく。

 

「っ!?」

 

フェイトの下へ近づいてからセラは気付いた。

フェイトのその身体の至る所に何かを打ちつけたような傷痕が幾つもあることに。

 

「おい返事をしろ!フェイト!フェイト!」

「うっ…」

「フェイト!!」

「セラ…?」

「良かった」

 

フェイトの意識が弱々しくもあることにセラはホッと息をもらし安堵する。

とはいえフェイトをこのまま放っておくのは危険であった。

セラはフェイトを担ごうとする。

 

「何をしているのかな、セラ・ヴァシュタロン」

 

突然、セラの背後から発せられた声が部屋中に響き渡る。

その声はセラにとって聴きたくない声であり、だからこそすぐにそれが誰なのか分かった。

セラは声が聞こえたほうへと振り向いた。

そこには眼の部分だけに穴が空いたそれ以外に特徴がないシンプルな白い仮面を付けたローブの優男がいた。

 

「邪魔をするなメシア。フェイトを治療しに行かなければならないんだ」

「それは良い心がけだ。良い心がけだが、しかしそれはいかんな」

「何故だ?」

「彼女には分かってもらわなくてはならないからな。そういう場合には仕置きが必要だろう?」

「ふざけるな!これ以上はフェイトが死んでしまうぞ!」

「ふむ、確かにその通りだ。私としたことが駒が減れば面倒になるからな…すまないな。それは抜けていたよ」

「貴様…!」

 

セラは今すぐにでもこの男を殴り倒してしまいたかったがそうはしなかった。

それをフェイトは喜びはしない。セラはそう考えたのだ。

だからこそセラはその気持ちと震える拳を共に抑えて部屋を早々に出ようとした。

 

「ああ、そうだ。少し待ってくれ聞きたいことがある」

「急いでいるんだ」

「どうしても聞きたいことでね。なに質問は一つだから時間はとらせんよ」

「ちっ…要件は」

「すまないね。質問はこうだ。君たちを邪魔した者の名前を知りたくてね」

「名前?」

 

そんなことを聞いてどうするのか?セラは一瞬だけ疑問に思ったがフェイトのことを見てすぐに疑問を切り捨て質問に答えた。

 

「高町なのは、一条綺人、一条刀牙、ユーノ、それと…そうだデバイスのエメスだ」

「エメス…セラ、本当にそのデバイスはエメスという名前だったかな?」

「そうだ」

「確かか?」

「しつこいな、周りの奴らがそう呼んでいたのだから間違いない筈だ」

「ふむ」

「悪いがもう行くぞ」

「結構、早く行きたまえ」

 

セラが部屋を出て行ってすぐにメシアが出て来た場所と同じところから女性が現れる。

その女性は片目を前髪で隠し服の胸元はばっさり開かれており妖艶な雰囲気を漂わせていた。

ただ女性の目は虚ろで生気を感じさせず、彼女の良さを損なわせていた。

 

「…メシア様、先ほどセラが言ったエメスという名前に反応していましたが?誰なのですかその方は?」

 

女性の問いにメシアは気付いていないというように応えなかった。

無論、メシアは女性に気付いてないという訳ではない。

ただ単に今のメシアの中では彼女はこの場に存在しないも当然の扱いであるだけなのだ。

そんなメシアの態度に女性は困惑したが無理に聞き出そうとする様子はなかった。

 

「クッ」

「?」

「クックックックッ…ハッーハハハハハ!」

 

メシアから上がった突然の笑い声に当然女性は困惑を強めた。

更にメシアは狂ったかのように一人語り出した。

 

「ハハハハハッ!このような所でまた出逢うことになるとは、ハハハ、全くもって想像がつかなかった」

「メシア様…?」

「そうかそうか、運命からは決して逃れられぬのだな、クックックッ…ならば私はその運命を受け入れようではないか」

 

笑い声混じりに何も無い所に向かって話すその姿は狂人であるかのようで、とても側には近寄れぬものであった。

メシアはとても陽気そうに両腕を天へと掲げた。

 

「だからこそどうか君達も逃げずに受け入れくれ…その運命を」

 

目に見えぬ誰かにメシアは告げた。




おっし今回は早かったぞ!
ただ後書きに書くことが特にないな、まあいっか。

そういえばセラくんが怒りっぱなしじゃね?

セラ「貴様の文章が単調なのが悪い」

さーせん。
そんじゃこれくらいで、因みに次の投稿は内容を考えてないのでまた遅くなります。
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