魔法少女リリカルなのはGhost   作:musi

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第十七話「闘争本能 後」

「馬鹿な…」

「おい!あいつ確か自分の雷でボロボロになったよな!?なぁ!?」

「うるさい!雷堂!あんたに言われなくても分かってるから少し黙ってなさい!」

 

いったい何が起きているんだ?

大怪我を負った筈の綺人が暁を吹き飛ばしただと?

 

「傷がなくなっている」

「はぁ!?そんな訳ないでしょ!ちゃんとよく見なさいよ。さっきの雷で綺人くんの身体は」

「いや、どうやらマジらしいな」

「うそっ…あそこまでの火傷を一瞬で治癒するなんて。そんなことできるヤツなんて、それこそ綺人くんが戦おうとしている暁ぐらいものじゃない」

「これが連中にイレギュラーと言わせる由縁かよ」

 

一条綺人、彼が何故にイレギュラーと言われるのか。

これが彼の真価なのか?いや、この程度なら天使が警戒するレベルではない。

しかし、雪奈のさっきの言葉だが引っかかるな。

『暁ぐらいものじゃない』

俺の考えが正しければ、確かに天使が警戒するのも無理はないか。

だがそれを確信できる程のものは揃っていない。

とりあえず様子を見るとしてだ…今現在の事を対処しようじゃないか。

 

「雪奈、電堂、すぐに用意をしろ。戦いに行く」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

先ほど、立てなくなるほどの傷を受けていた一条綺人が目の前に立っている事実に私は首を傾げていた。

 

「今、私を吹き飛ばしたのってお前か?」

「…」

「お前ってさっきまで真っ黒にコゲてたよな?」

「…」

「無視か」

 

一条は私の問いに答える様子は一切なく、ただ黙って此方を見据えていた。

いや、ただ黙っている訳ではない。此方を見据える瞳からは先ほどとは別人となったような殺気があった。

治った傷や突然の殺気の原因は何にせよ、こいつは私と戦いたいらしい。

 

「ていうかなんでそんな殺る気満々な訳?さっきはそんな感じは一欠片も無かったよな?」

 

やはり私の言葉に応える様子はなかった。

だが殺気を続けて出しているこいつを見ていると楽しくなってくる。

こいつに起こったことなんざどうでもいい、大事なのはこいつの本当の本気ってのと戦えるという楽しみだけだ。

それ以上でもなければそれ以下でもなく、ただ単にそれだけだ。

 

「さあ、こいよ。さっさときて私を殺ってみろよ」

 

自分でもうちょっとマシな言葉があるだろうとツッコミをいれたくなるような挑発だった。

しかし、そんな安い挑発にも関わらず奴はこちらへと向かってきた。

先ほどとは比べ物にならない速さに面を食らったが、それは何の考えもない単純な突進であり回避は容易であった。

 

「よっと」

 

案の定、一条の突進は簡単に避けられた。

だが直後に一条は1メートルあるかないかの距離でこちらへ反転し再度突進を繰り出してくる。

 

「おっ」

 

それも避けるが、また追ってくる。

更に避けるが追ってくる。

 

「ちっ…っと、おわ!?ぐっ…いい加減にしろ!」

 

避けては追われ、避けては追われ、避けては追われの状況に耐え切れず反撃する。

最初は試すつもりで軽いジャブ程度の一撃を加えるつもりでいたがあまりのしつこさに怒りに任せた一撃は顔へと命中し一条を吹き飛ばしてしまった。

 

「あー…悪かったな。予定ならお前がどの程度かを見るつもりだったんだけどな、と言っても死んじまったお前には聞こえないだろうけどな」

 

出来ることなら彼が立ち上がり私に闘争心を剥き出しにして襲いかかってきてほしい。しかし、それはイレギュラーとされる彼にも叶わない願いだ。

先ほどの一撃に耐えられるのは私のような化け物と呼ばれるような連中だけだ。

それに仮に彼が化け物だとしても彼はまだ子供で到底耐えられない筈だ。

幾ら魔法がある世界でも普通の範囲内でことが進む以上は諦めるしかない。だってこれが普通なんだから。

それが普通の筈だった。

 

「…っと、マジかよ」

 

普通というのはいったいなんだったか?

今見ている状況に普通というのがなんだったか忘れてしまいそうになってしまう。

少なくとも頭蓋骨に損傷は当たえる程の一撃をくらって兜割られただけで平然と立っていることは普通ではなかった筈だ。

 

「お前って思った以上にヤバいかもな」

 

こんなに恐ろしくなるような奴だったなんてな。

確かにこいつはイレギュラーだわ。あの反応速度と切り返しの速さ、異常な程の頑丈さ、これ自体はこの世界においてなら規格外のものではない。

だが、今の一条綺人ほどの年齢のやつがやっているというのなら話は別だ。

まったく最近のガキは強すぎだろ

 

「でもな…そうでもなけりゃ…楽しくないよなァ!!」

 

それは一瞬だった。

刀を構えた一条が目の前にいた。

気合いを入れ直したからこそだったのだろう。

もし気が抜けていた状態だったなら左腕だけでは済まなかった筈だ。

きっと私は割れた兜から見える一条綺人の顔を見ながら楽しそうに笑みをこぼしているに違いない。

 

「ハハ…神様、天使様感謝するよ。私と同じ戦い好きと戦わせてくれてよ」

 

一条綺人は楽しそうな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

今、私の目の前で暁と戦っているのは本当に綺人くんなの?

目の前で起きている出来事はそんな疑問を抱かせた。

立ち上がることが到底無理なほどの傷を負った筈なのに復活したと思ったら身体には一切の外傷がない。その後には今まで以上の速度と獣の様に獲物を追いつめるだけの何時もとは違う戦法、極めつけはあの笑み。

はっきりとはわからないけどあの笑みはなんか怖いんだ。

 

『おーい、ユーノくんになのはちゃん〜!無事ですか〜?無事なら返事返してくださーい』

 

突然、雪奈さんが頭の中で念話で話しかけてきた。

 

『あ、えと、私とユーノくんは何とか無事です。でも綺人が』

『大丈夫よ、言われなくてもそっちの状況は掴めてるから』

『は、はい』

『今、私たちがそっちに向かっててあと三十秒くらいで着くからあなたたちは綺人くんと暁の戦いに巻き込まれないように隠れてなさい』

『わ、分かりました。皆さんが着いたら僕らはいったい何をすべきでしょうか?』

『そのまま終わるまで隠れてなさい』

 

その言葉はまるでこの状況下において私たちは関わりのない存在であると告げられたようで私は若干ながら怒りをおぼえた。

 

『それって私たちはこの戦いは関係するなってことですか!』

『そうよ、あなたたちが理解できる程度で遠回しに言ったつもりなんだけど』

『ッ!!そんな関係ないなんてあり得ない!』

 

初めて魔法に触れてから私はずっと綺人くんとユーノくんと一緒に戦い続けていた。

今の戦いもそうだ。

私たちの戦いだったのだ。

それを綺人くんが危険な状況にある中で関係ないなんてあり得ないんだ

 

『ごめん、やっぱはっきり言わせてもらうわ。あんた邪魔よ』

『っ』

『確かにあんたの力に才能は感じる。正直言っていつかあなたは私は超えるとも思う』

『そんなことは』

『でもそれは未来の話であって今じゃないわ、今のあなたじゃ暁に勝つどころか私にも勝てやしないただのお荷物よ』

『お荷物…?』

『確かにあなたたちからすれば僕らは弱いかもしれない、でもそれはいくらなんでも』

『言い過ぎとでも言うの?だったら聞くけどあなたたちは敵という理由だけで人の命を奪える?』

 

出来ない。

そんな簡単に人の命を奪うことなんか出来る訳がない。

 

『私たちもそうだけど今君の前で戦っている二人はそれを当然のように出来るよ』

『え…』

『綺人くんの中で何があったか知らないけど今の彼の戦い方は暁を確実に殺せるであろう部位を狙っている。暁もそう』

『違う!綺人くんがそんな事するわけない!?』

『だったら目の前で綺人くんはどう戦ってるの?手加減はしてる?相手を最小限の攻撃で制圧しようとしてる?相手の急所は外してる?』

 

目を綺人くんの戦っている方向へと移す。

そこにあるのは手加減など毛頭なく、一撃一殺と言えるように刃を振るっている綺人くんだった。

 

『嘘だ…綺人くんがあんな風になるなんて』

『嘘じゃない現実よ。そしてその戦場に立てるのは敵という理由だけで人を殺せるような化け物だけよ』

『ッ〜〜!!』

 

何が切れたように私の目から涙が溢れ出てきた。

化け物、雪奈さんが言ったその言葉が今の綺人くんの姿にピタリと重なっているという事が自分にはどうしても拭うことが出来なかった。

 

『おいバカ雪奈、なにもそこまで追い込む必要はねぇだろ』

『何よ電堂、文句でもあんの?』

『あ?文句しかねえよ。別にそこの語尾なの野郎と化けイタチはお荷物って程度の実力でもないし、だいたいお前とローグさんだけのサポート&サポートのアタッカー抜きじゃ暁に勝てないだろ?俺じゃあるまいし』

『ぐっ…』

『でそうなるとその暁と対等にやりやってる綺人の相手も務まらないってのは明白な訳だ。さすがの俺もあの二人いっぺんに相手にするのは無理じゃねえが二人を殺すかもしれないし俺も死ぬかもしれないからイヤだ。状況的にみれば猫の手すら借りたいわ』

『ぬ、ぬぬ』

『どうせお前アレだろ。綺人と将来はあわよくば的な考えをしてて正気に戻ってから私が救ったのよとか何とか言って好感度欲しいだけだろ?醜い嫉妬だろ?』

『ぬおおぅ〜!?電堂に正論言われたあああぁぁー!?ムカつくー!!』

『俺も今回は電堂の言葉が正しいとしか言えん』

『ハンッ!これだ天才と凡人の差だッ!』

『うっさい!!』

『はぁ〜、緊張感ってのを何時になったら理解出来るようになるかね、ウチの部下は…という訳で話は理解出来たと思うんだが、大丈夫かな?』

『にゃ、にゃはは、私は多分拒否されてても飛び込んだかもしれないんで大丈夫です』

『そうか、なら君には私たちが着いたら無理しない程度の援護を頼むよ』

 

無理しない程度の援護、やはり私では実力が不足しているのはローグさんの目から見ても変わらないらしい。

 

『でも私たちがだめであったり、私たちが付く前に暁が死にかけるようなことがあるなら、悪いが君には綺人くんと刃を交えてもらうよ』

『え、それって』

 

暁が死にかける前にという言葉に疑問が湧き聞こうとした時だ。

 

『あー、なら悪いんだけど今すぐに援護かなんか頼めるかな?お嬢ちゃん』

 

私とローグさん達に突然割り込んできた声、それは現在、綺人と戦っている暁だった。

 

『…久し振りだな、暁。お前が音を上げるなんて珍しいな』

『彼思った以上に強くてさ、調子乗って遊んでたら不意をつかれてバインドで捕まちゃってあとはもう煮るなり焼くなり好きにしろ状態なんだわ。綺人くんがなんかため技みたいなことしてるから多分十秒以内に肉片が残らない攻撃くらって多分死ぬわ』

『…なのはちゃん。すまないが君の出番が来たようだ』

 

さっき私はローグさんに大丈夫だと言った。

だが実際にその時というのが来てみてからは大丈夫だなどと言える気がしなかった。

今の綺人くんと刃を交えれば私は私を殺そうとする綺人くんを見ることになる。

それは私の中であり得ない現実で、耐え切れない現実で、それに挑むことは私には不可能な現実だった。

そんな考えの中で悔しいという意外な考えが私の中にあった。

『敵という理由だけで人を殺せる化け物だよ』

雪奈さんが言ったその言葉だ。

確かに綺人くんは人を殺すような戦いをしている。

でも綺人くんはまだ誰一人として人を殺していない。

そんな綺人くんがなぜ化け物などと言われなくてはいけないのか、浮かんでいたのはそんな悔しさだった。

そこでふと、思った。

この今の状況を放っておいたら綺人くんは雪奈さんの言った化け物になってしまうのではないか?

 

「ッ」

 

その事実に私の背筋は凍りついた。

一番好きな人が狂気に支配されて人を殺した

それこそあってはならない現実で、それこそが私にとっての最上級の恐怖だった。

それは彼だったからこそ私にこれほど危険な事させたのだと思う。

 

今まさに殺意の塊を放とうとしている綺人の前に飛び出していた。

 

「ダメえええぇ!!」

 

真っ白の世界が広がった。

 

 

 

 

 

 

 

「…ん!…人くん!起きてよ!綺人くん!!」

 

 

俺を呼ぶ声に目を開けると不思議とぽっかり穴の空いている空が見えた。

まさか空を呼ぶわけもないだろうと思い視線を下へ向けるとそこには目から大粒の涙をボロボロと落としているなのはがいた。

自分は何をしていたのかを思い出そうと考える。

 

(封印の途中に雪奈がいってた暁が現れて俺は…)

 

暁との戦いは雷刃爆破を放ったとこまでは憶えているがその後の記憶はない。

不思議なことに雷刃爆破による自身の傷は一切なく、分かっているのは自分が気絶していたことだけでなのは達や暁に何があったのか予想はつかなかった。

しかし、何があったにせよ俺はなのはを悲しませるような事態を引き起こしたのは間違いないようだ。

なら最初に言うべきは

 

「ごめんな、なのは」

「…ぇ」

 

そう言ってなのはを起き上がると同時に強く抱き締める。

 

「なんで綺人くんが謝るの?綺人くんは何も…本当に何も」

「何があったのかは分からないけどなのはは泣いていた。でもなのはが泣くなんて中々ないけど、泣くとしたら大切な人に何かがあった時だ。ここには俺となのはしかいない、なら泣かせたのは俺なんだよ…だからごめんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木々の間から一条綺人と高町なのはのやり取りを眺める。

 

「おい、事情は聞かなくていいのかよ」

「いいのさ、どうせ答えは分からないと返ってくるだろうからな」

「仕事しろよ」

「じゃあ聞くが気を失った君は突然狂ったかのように暴れまわった挙句、お天道様に魔力砲ででっかい風穴を空けましたなんて言われたら何て答える?」

「きっとそりゃ悪夢でも見たのさ」

「さらっといい例えで返すな」

「悪夢だったら良いよな本当…それでローグ、部下を下げたけど私を生きて捕らえるっていう管理局の仕事もサボるのか?」

「サボる」

「ぷっ」

 

ナチュラルすぎる回答に思わず吹き出してしまった。

 

「ハハ、何だよそれ?私がいうのもなんだが本当に仕事しろよな」

「そいつは山々だがな…お前に対して一つ疑問があってな」

「私に疑問?何だよそれ、私に言ってみろよ。答えれるかもしれないぞ?」

「暁、お前はなんであの人以外の下についている?」

「…分からない」

 

ローグの疑問は私にとっての疑問でもあった。

 

「分からない?お前が曖昧な答えなんて珍しいな」

「何故かは分からないが何時の間にかそいつの下にいた…惹かれたとかじゃない、気付いたらそうなってた」

「何か術でもかけられたか?」

「かもな。まあ、それが何にせよ今は裏切れそうにない」

「なら次に会う時もまだ捕縛対象という訳だ」

「そうなる。それじゃ捕まえる気がないなら帰るぞ?」

「ないって言ったろ。またな、暁」

「またな、ローグ」

 

その後、ローグは本当に追って来なかった。

次の戦いはローグ達も出てくるに違いない。

そして何よりも一条綺人と高町なのはだ。

ああ〜、次の戦いが楽しみだ。




はい、お久しぶりです。musiです。

だいぶ長い間、投稿してなかったと思う。
とりあえず謝っておいた方がいいと思うんで謝ります
すみませんでした。

何故、今さら謝るか?それはまあ…今回の話のデキがアレだろ
ご都合主義大爆発じゃん
自分で言うのもなんだが酷いなこれはww
いや毎回似たようなもんだが…
まあそれでも読んでくれてる人がいるわけで蒸発はしないぞ!
本当に読んでくれてる人はありがとうございます。
まだまだ書きたいことあるから書くからね!

では次回まで、サ・ヨ・ナ・ラ!!
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