《はーい、検査自体はこれで終了です。今から検査の報告とかあるから私のいる部屋まで来てください》
「はぁ…」
暁との戦いから一週間経った。
数が少なくなったのかこの一週間はジュエルシート絡みの事件がなかった。
それは暇な時間を作れるという利点はあったが、数が少ないというのは探すのが困難な状況でもあった。
そろそろ場所を絞って一つ一つを地道に探していくことになるだろうとローグたちは言っていた。
ただそれはもうちょっと期間を置いてからにして、今は俺やなのはが休ませたいらしい。
そして今はローグたちの船『ノルマンディー』にて身体を検査している。
ローグから呼び出されたのだが検査が何なのかは伝えらなかったが、恐らくは暁と戦った日の俺の記憶が無い部分についてのものだろう。
あの後、何があったのかはなのはおろか誰一人として話してくれなかった。
あの時に何が起こり、俺が何をしたのか。
それは分からない。だが見当がついていない訳ではない。
自分は造られた存在だ。
それなら何かしらのバグが起こって暴走してもおかしくはない。そういう結論だ。
そう答えを出しても俺の心はあまり動じない、そのことがより自分がまともな人間じゃないという考えに至らせた。
これ以上はこの事を考えたくない。
誰でもいい、俺をまともに扱ってくれる奴と話してくれるならなのはでも雪奈でも管理局員でも誰でもいい。
しかし、その願いは届きそうもない。
なんせ、今から行く場所にいるのは自分がまともとはほど遠い存在だと思い出させた張本人がいる場所だ。
「やあ、ご苦労様」
部屋に入った俺を迎えたのは黒い長髪をなびかせる眼鏡の女だった。
女の名前は矢本 一樹、まるで男のような名前だったが美人と言える整った顔と無駄にデカい胸を見れば一目瞭然で女と分かった。
最初の印象はここまでの美人で男の名前なんて不憫な奴だと同情した。
ただそれはすぐに後悔へと変わった。
『人としてお前はあり得ない、オブラートに包んで述べてもまともじゃないとしか言いようがない存在だ』
会った瞬間、こいつはろくに挨拶もせずにそう言放った。
それは自覚はしているつもりだし、普通ならそうだなと言って返してやるつもりだ。
ただそれを挨拶もなしに唯一無二の親友のような笑みをこちらに浮かべて言われれば話は別だ。
何だこいつは?俺の理解者のつもりか?
そんな疑問が浮かぶ最中も矢本の言葉は続いた。
『人の皮を被った悪魔のようだ』
『非現実的だ』
『人体の構造に異常をきたしているに違いない』
そういった内容が矢本の口から次々と出てきた。
内容の殆どを俺は無視しようとした、でなくては矢本を殺しかねなかった。
そしてそれは検査中にも続き、今現在も終わってはいない。
「今回行った様々な検査の一つ一つで君の身体が常人の者ではないものではないことが証明された。あ、君はココアが好きらしいね?飲むかい?」
「いりません」
「そうか、それは凄く残念ね」
この人権という言葉を知らないかの物言いと自分の飲んでいた飲み物を勧めてくる時の顔は全く変わらず笑顔だ。
人を馬鹿にするのもいい加減にしてもらいたい。そんな言葉が出かけたがそれをぐっと堪えた。
暁との戦いの時に何があったのか、そのことを誰も話さない以上はそれを知るにはこいつの行った検査の結果を知るしかなかった。
ここまで我慢を水の泡にしたくはない、その一心のみで矢本の言葉を耐える。
「通常の検査だったら隠し通せたんだろうけど私が行っている検査は見ている視点が違うから隠し通せる筈がない」
隠し通せる筈がない、その言葉に怒りにより沸騰していた頭が急に冷めた。
気のせいか、突如として話の雲行きが怪しくなった気がした。
「最初から完成していたとでも言おうかしら、あなたの身体に宿されている異能は生まれついての異能による物を大きく超えている」
「待ってくれ、なんの話だ?これはただの身体検査だろ?」
「そんな完成した存在が生まれつきである訳がない。なんせ天使がそれは法則上はあり得ないと言ったんだから、つまりあなたは完成品として誰かに造られた存在ということになる」
「黙れ!」
「あらあら怖いわ、確かそんな人造人間の実験は管理局では行われていないことになってるわね?あらら〜?つまりそれって管理局にそのことがバレたら大変なことになっちゃうかも」
状況は最悪であった。
いっそ矢本を殺してしまうか?
しかし、それはこの状況ではできなかった。
殺したという事実が管理局に追われる原因となるし、データを読み込まれれて解析されればこの事実も浮上し逃げようがなくなる。
かと言って何もせずに見ていることも、素直に事実を認めても何も変わる気がしなかった。
今現在の俺に出来ることは自分の甘さを呪うことだけだった。
「悩んでる所にすまんが幾つか言わせてもらいたいんだがいいかな?」
「好きにしてくれ」
「この部屋は完全防音で監視もされていないぞ、それに加えてこの記録は設備が良く外部に漏れるようなことはない。そしてこの事実を知っているのは私だけだ」
「それは…つまり」
「私と君で取引をしよう」
思わぬ場所から光明が見えた。
しかし、それは俺の明日が矢本の手に握られていることに変わりはなく、矢本の出す条件に全てを委ねるしかなかった。
「その条件は?」
「それはな」
矢本が不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。
一歩一歩近づいてくる矢本の姿が死神にしか見えない。
人生を握られている俺には終わったとしか思いようがなかったのだ。
そして不敵な笑みを浮かべる口が動いた。
「結婚を前提にお付き合いしてください。子供は二人でお願いします」
口が動くと同時に矢本は目に止まらぬ速さで俺の目の前で綺麗に土下座していた。
意味が分からんし、状況が掴めないし、理解の埒外だ。
つまり俺は混乱していた訳で、だからふと思ったことを気づかぬうちに口に出してしまったんだ。
「いやそれは絶対におかしいだろ」
「ぎゃぴーん!?な、何故だ!」
「何故に成功すると思ったしお前?あり得んだろ常識的に考えて」
「いやだってシチュエーションとか完璧だっでしょ!?」
「どこがだよ!?」
「二人きりを邪魔されない部屋で緊張状態の中で二人の今後の人生を語らっているなんて理想的かつ完璧なシチュエーションじゃないかっ!!」
「度合いってもんを考えろや!度合いってもんをよぉ!」
「ぐっ、まさかこの本に書いてあった『恋仲になれる可能性100%の理想のパーフェクトシチュエーション』が嘘だったなんて!信じた私が馬鹿だった…」
「お前が馬鹿だという事実は正しいと思う。つーかその本は極端すぎだろ」
「で、でも自分で言うのはなんだが私はとても美人で胸もあるぞ?管理局の勧誘のポスターに使われてるんだぞ?」
「ま、まあ、美人だとは思うし胸も男としてもあるとは思う」
「な、なら何故だ!エロサイトでは私の二次創作とかも上がっちゃうんだぞ?そんな男の欲望が集中しているような美女を自分のモノとして好きなように出来るんだぞ?男としてそれは夢だろう!?」
「小学生にんなことを言うような奴を好きになる訳ないだろう!ボケェ!!」
「ぐはっ!?」
全てノリで言っていたが血反吐と血涙流して倒れてる所を見るに馬鹿の撃退に成功したらしい。
ただ弱みを握られている状態であることに変わりはない。
その弱みを何かしらで黙っていてもらわなくてはならない、できればこの馬鹿との結婚前提のお付き合い以外の方法で
「ていうかお前、何で俺と付き合いたいんだよ?最初に会った時とか検査中とか俺の存在を否定することしか言ってなかっただろ?」
「ぐすん…あれは君の素晴らしい部分を独り言で言ってただけだよぅ」
「は?…いやこれ以上はお前にツッコミを入れる気がおきないわ。はぁ、俺もおかしくなったのかそれ聞いたら俺のどこが気に入ったのか聞きたくなってきたわ」
「気に入った所は好みの顔とか性格とかいっぱいあるけど
しいて挙げるなら…遺伝子の強さかな」
「聞いた俺が馬鹿だった。間違いなく俺もおかしくなってるわ、これ」
「私の夢は強い子供を産むことなの、転生する気になった理由もそれだし、強い子供を産むにはまず遺伝子が強くないとなんか信用ないわ、後は君ってドSそうだから子作り楽しみです」
「そろそろ自粛って言葉を覚えようか、でないとリアルで昇天させるから、火星まで飛ばしてあげるから」
「す、すみません。あ、謝るんで、拳を、拳をどうかお納めください」
わりかし本気で言ったため、さすがに察したようで泣きそうになりながら謝ってくる。
ていうかこいつも転生者かよ、雪奈といい電堂といい転生者には変態しかいないのか?転生者コワイ!!
…これはアレだ。外から崩すような作戦は意味がない。
これは直球勝負しないと永遠と続く感じだな。
「聞きたいんだが、お前はどうやったら俺の弱みを黙ってくれるんだ?」
「それは君が私と結婚前提で…」
「結婚前提のお付き合い以外の方法でだ。第一そうやって脅してくるうちはお前を好きになるなんてあり得ないからな」
「…あ、じゃあそのことは心の中で握りつぶします。後はデータも消して上司には普通の結果という改竄したデータを渡しておきます」
「は?いやお前マジで言ってんの?」
「はい、私は大真面目に言ってますよ。あなたの愛を得ることに邪魔な要素があるなら切り捨てますよ。あなたを愛してますから」
「っ!」
くそ…こんな馬鹿でも美女に真摯に愛してると言われるとドキッとしてしまうぞ。
まあ、こいつは馬鹿だから自滅するがな
「あぁ〜!ドキッとしましたね!若さ故の過ちそのまま勢いを押し倒しても構いませんよ!小学生とか背徳感が〜!!」
「一瞬でもクラっとした時の自分をぶっ飛ばしたい」
ほらやっぱりこうなったよ。
根はいい人なのだろうが考えが突飛過ぎる。
ん、つーか今までの苛立ちとか恐怖とかコントのような今までの会話は全て無駄だったのか?
データとかも消して脅しもなかったことになるから…うわ〜、そう思うとどっと疲れが押し寄せてくる。
あれ?俺ってなんでわざわざ検査なんて面倒なことをやって…あ
「ちょっ、まだデータを消さないでくれ!」
「え?」
そうだった。ここへ来た本当の目的は暁との時に何があったのかを知る為だ。
矢本にここへ来た事の顛末を全て話した。
するとデータを見せるだけではなく分かりやすく説明してくれた。
「君にとっては色々とショックな事実があるが本当にいってしまって構わないのかい?」
「構いません。だから聞かせてください」
「分かった…まずは綺人くん、君が考えていた自分が暴走したかもしれないという仮説だがそれは正しい。あの時に君は何らかの影響によって自分の意思とは別の闘争心のみの感情によって動かされていたんだ」
「何らかの影響とは?」
「そうだな、あくまでこれは仮説なんだが君のその暴走は君が造られた時に書き込まれた一種のプログラムなのかもしれない」
「え、書き込まれたって俺は機械かなんかなのか?」
「あ…あー、すまないな。言い方が悪かったよ、正しくは刷り込まれただ。そのー、さっき私は闘争心のみの感情と言っただろ?」
「はい、言ってました」
「君が刷り込まれたのは恐らくはその闘争心のみの感情を呼び起こす為のトリガーなんだと思う」
「は、はあ」
「ある特定の自体が起きるとそのトリガーが引かれて君の元々の感情を消し去って感情を闘争心のみで覆い尽くす、人の感情が何たるかも知らないどこかの阿呆が作った悪趣味極まりないプログラムさ」
どこかの阿呆が作った悪趣味極まりないプログラム
矢本は多分だが俺のことを気にして俺に取り付けられたプログラムとは言わずに誰かが作ったプログラムと言ったんだと思う。
でもそれが俺にあるのは逃げようのない真実だ。
なら繰り返さないためにも俺は逃げてはいけない。
「…そのトリガーってなんなんですか?仮説でも一様はあるんですよね?」
「ああ、勿論あるよ。そのトリガーは君が生命の危機に陥った場合、つまり死にかけた場合に発動する火事場の馬鹿力のような切り離す事のできない生命維持システムなんだ」
「ハ、ハハ」
「綺人くん?大丈夫かい?」
「ハハ、ハハハハハ!」
その暴走のカラクリ、それを知った俺は笑いが止まらなかった。
「落ち着いて!綺人くん!君には」
「大丈夫ですよ、俺はおかしくなったり絶望なんてしてないですから」
「え、なら何故笑って」
「だって簡単なことじゃないですか。俺が死にかけるなんてあり得ない位に強くなればいいんですよ」
「あ…あー…」
そうだ単純に強くなればいいんだ。
そうすれば大切な人を傷付けることもなければ傷付くこともない。
それならさっさと強くなるために精進しなくては
そう思い部屋を出て行こうとすると矢本が声をかけてきた。
「今の君が悩んでるかは分からない。でもこれでは言わせてくれ、暁を殺しかけた時に君は高町なのはの声で戻ったんだ。何も単純な力強さだけじゃなくてそう言った強さもあるんだって覚えててくれ」
「…お前って結構いい奴だな、ありかどうな」
矢本の部屋の扉が閉まる直前に小さな声だったが「また来てくれ」と聞こえた。
わざわざ戻って答えはしなかったが俺の中での答えは決まっていた。
はい、お久ぶりだmusiだぞ。
今回の話ですが色々と夜中のテンションがたかった結果できた内容となっております。
なので内容が前、中盤辺りは酷いことになってますね
朝に読み返して恥ずかしくなったわ
でもまあ、これはこれでいっかな〜、何て思ってるんで直してはいない
ていうか皆さんは台風の影響とか大丈夫でしたか?
私が住むS市はこれを書いていた夜中は酷かったのですが朝はサンサンと晴れており大学が午前中は休講というだけでした。ちくしょーめえぇ!!?いっそ休講しろよ!
とまあ私の近辺では殆ど影響は及ぼしていません。
ですが最近は台風が本当に多いですね。連続三回くらいできてたんだっけ?
やはり地球温暖化の影響ですかね?少なくとも地球がおかしくなってることですかね?
と、たらたら語ってますがそんな地球温暖化がどうこうしようとか考える場じゃねえはな
此処はちょっと疲れた方が癒されるような楽しいモノを提供する場であってそんな難しいことを語る場じゃねえよな。
んな小難しいことは他の場で語るとして、作品へのご意見またはご感想がある場合は気軽に書いてくれ。単純な内容でも構やしない。
気付いたら答えてやるし、アホな質問でもいい、ただし支離滅裂と英語だけは勘弁な
それじゃ、次回にご期待ください。さよなら