「じゃあそのフェイトって子の友達を綺人が見つけたんだ。綺人も中々やるじゃない」
温泉へと向かう車内でなのは達に一昨日の出来事、フェイトと会った日の事を話していた。
その話を聞いていたアリサがめずらしく褒めてきて気恥ずかしくなり、少し謙遜する。
「いや、見つけたと言ってもその後、すぐにフェイトが来たからな、あまり貢献できては言えないな」
「その子、しつこいくらいお礼をさせてと言ってきたんでしょ?それってそれだけアンタに感謝してるって意味じゃない。それを謙遜するのは失礼よ」
「綺人くんはよく謙遜したりするけど、時と場合を選んだほうがいいと思うよ」
アリサと士郎大師匠に俺の謙遜しすぎる癖を注意されてしまった。
「そうそう、あたしに勝ったあの時はちゃんと誇ってもらいたかったかな。あの時はちょっとイラッときたし」
「まだ根に持ってるの、美由希?」
「当たり前だよ!いくら綺人が強いからって小学生に負けるのはトラウマモノだよ!!」
「でも本当に綺人くんは小学生とは思えないほど強いからな、僕とかはすぐに抜かされちゃうんじゃないかな?」
「…ご冗談を」
「また謙遜か」
「いや今のは謙遜じゃないでしょ」
美由希さんの言うとおりで今のは謙遜ではなく本音だ。
この人には後、何十年もの修行を続ければ勝てるだろうか?
というかこの人が天寿をまっとうする間に勝てる気がしないんだが。
冷や汗を垂らしながらそんなこと考えていると今まで隣で口を閉じていたなのはが話しかけてきた。
「さっき話してたフェイトちゃんって可愛かったの?」
「ん?」
『!』
なのはの質問に何故か周りが驚いていた。
なのははフェイトの容姿が気になっただけだろう?
何故驚く?
第一、質問されているのは俺なのだが。
「確かに綺麗な子だったな」
「それじゃあ綺人くんはフェイトちゃんのこと好き?」
『!!?』
なんか車内の視線が一気に俺に集まっている気がするのだが。
というか士郎大師匠は運転に集中というか、まず前を見てください。
「そうだな…」
『ゴクッ』
「好きだな」
「好きなの!?」
「ああ、友人としてな」
「ゆ、友人?」
「なぜ疑問符だ。お前は俺の話しを聞いて彼女と友人になりたいからきたんだろ?違ったか?」
「え、えーと…うん!そうだよ!だからフェイトちゃんのこともっと教えてよ!」
「お、おう」
なにが引き金になったのかやけくそだと言わんばかりに話に喰らいついくるなのはに圧倒されながら俺はフェイトのこと話した。
だがフェイトと一度だけ会ったにすぎず、そんな情報量で話が持つわけもなく、話はすぐに終わってしまった。
まあ、話が短かったことをなのははずいぶんと嬉しそうにしていたが…それは俺の語りは面倒くさいと言うことなのだろうか?
だとすれば直すように努力せねば。
そんなこんなしている内に俺達は温泉へと到着した。
「はぁ~」
僕は現在、自販機の前で大きなため息をこぼしていた。
というよりも絶望していた。
「刀牙、諦めよ」
「なんで…なんで」
そして色々とピークに達した僕は叫んだ。
「なんでココアがないんじゃあああーー!!!」
「叫ぶな!!」
ゴンッ
叫んだら、隣にいたエメスに頭をグーで殴られた。
「いきなり殴ったら痛いだろ!」
「ならば人が周りにいる状況で叫ぶな!恥ずかしいだろうが!!」
「僕は恥ずかしくない」
「我は恥ずかしいわ!!」
「だってあれだけ飲み物がないなんておかしいだろ!」
「季節を考えろ!季節を!!」
「百歩譲って冷たいのぐらいあっていいじゃないか!!」
この温泉に着いて部屋に荷物を置いてから僕が最初にやったことは飲み物が売っている場所を歩き回り内容を確認することだった。
僕は念入りに確認した。中の自販機から外の自販機、そして少しの望みを託して売店まで行った。
しかし、ココアは何処にも無かったのだ。
「風呂上がりのココアがどれだけうまいかエメスには分からないのか!!」
「知らん!!」
「「「なんと嘆かわしいぃぃ(ねぇ)!!」」」
「黙れ!って貴様らは誰だ!?」
僕のココアへの思いを叫び続けていると、いつの間にか僕の隣にナイスバディな女性と眼帯をつけた不思議な風格の男が立っていた。
「いえいえ、私達はただのしがないココア好きです」
「あたしはアルフだ」
「アルフさん、私がせっかく名前をあえて名乗らず、カッコよく盛り上げようとしてるというのに、それは非道いというものです」
「名前は名乗っといた方がいいだろ」
「確かにその通りですね」
「だからお前らは何なんだ!」
ゴンッ
堪忍袋の緒が切れたエメスが男の頭を殴った。
「普通、初対面の相手の頭をグーで殴るでしょうか?」
「お前は殴っても咎める者がいない気がしてな」
「どうぞどうぞ、ご自由に」
「アルフさん…」
「いいからさっさと名乗れ」
「私の扱いが不遇すぎせんか…」
男は表情に全く変化がないため悲しんでるのか何も思っていないのか分かりづらかったが、声が小さくなったので一様悲しんでいるのだろう。
「では気を取り直して、名乗らせていただきます。私の名前は尋道夜 要月(じんどうや ようづき)と申します」
「変な名前だな」
「だろ」
「名乗っても扱いは変わらないのですね」
「して何故、我らに声をかけてきたのだ」
「ココアを愛する者の声に導かr」
「ココアが好きでおもしろそうな奴だったからかねぇ」
「それだけか?」
「しいて言うならば貴方が面白そうなので暇つぶしにお茶化しに来たのです」
「提案はあたしなんだけどねぇ」
「…」
「…」
「…」
「…」
……………
「帰れえええええええええええぇぇ!!!」
長い沈黙の後にエメスが山にまで響くほどの声で叫んだ。
「ふぅー…」
「はぁー…」
なのは達に女湯に連れてかれそうになっていたユーノを救出し、今現在、ユーノ(人間)と風呂に入っている。
「綺人、さっきはありがとね、なのはに連れて行かれそうになった時はどうなるかと思ったよ」
「構わない。それよりも良かったのか合法的に女湯に入れたというのに」
「なッ…」
俺の言葉でユーノの顔が一気にゆで蛸のように真っ赤に染まる。
「女が風呂に一緒に入ろうなどと誘ってきたら迷わず入るだろう」
「そ、それは、その…何ていうか」
「意気地なしが」
「だったら綺人はどうなだよ!なのはやその友達のアリサさんやすずかさんがOKしたら入るn」
「入る」
俺はユーノが言い切る前に答えを出していた。
その即答したことに何故かユーノは驚いていた
「なんか普段の綺人とはぜんぜん違うね」
「そうか?」
「今までの綺人の印象がなんか堅いって感じだったからさ、正直言うと今は凄くおどろいてるよ」
自身の人物評に多少恥ずかしくなりながらも確かにそうかもしれないと思うところがあった。
「ユーノ、俺も正直に言いたいことがある」
「なんだい?」
「俺はお前のことが嫌いだった」
「…そりゃ、そうだよね」
「だけど今気づいたよ。お前はなのはだけじゃなく俺のことも見てくれていた。嫌いだと思われていることを知りながら」
ユーノに言われて今までの出来事を思い出す。
彼はなのはが魔導の道を行くことになった原因と自身で理解し償おうとなのはを全力でサポートしてくれていた。
そんな中でも俺のことを見ていてくれていた。
そして俺がなのはの先を考えて苦悩していることも気づいていてくれていた。
「俺は一人で戦っているつもりだったのかもしれない」
自分は全てのものを背負って戦っているとでも思っていたのだろうか?
だとしたら自分は大馬鹿者なのだろう。
俺と同じように罪を背負おうとしている奴が近くにいることにも気付けなかったのだから。
「ごめんな。ユーノ」
「やめてくれよ、僕はただ当然のことをしているだけなんだから」
「ふっ、そうか。いやそうだな」
「はぁ…ていうかそういう話は場所をわきまえようよ、綺人。何で温泉に入って疲れなきゃいけないんだよ」
「ははは」
「笑い事じゃないよ」
「だが、お前と話す機会はあまりなかったから良かったのかもしれないな」
「そうだね」
俺たちはこうして和解することが出来た。
罪を共有する友、罪を背負う者にとってそれは何よりも心強い存在だ。
だからこそ素晴らしい時を素晴らしい時として終わることは出来なかったのだろう。
いくら友を得ても罪と苦悩が消えるわけではないのだから。
「…士郎さんが言うにはここ最近のなのはは見てきた中で最も生き生きしているそうだ。まるで自分がやるべきモノを見つけたかのように」
「…」
「それを話している時の士郎さんの顔がとても…とても嬉しそうなんだ」
「綺人…」
「俺はなのはが魔導士になるのを諦めさせる事がなのはの幸せにつながると思っていた。だが士郎さんは今の魔導士の世界へと近づいていっているなのはを誇りに思っているんだ。やるべきこと、守るべきことを見つけたなのはを誇りに思っているんだ!」
俺は拳を水面に叩きつけた。
そうせずにはいられなかった。
何かに当り散らさずにはいられなかった。
「士郎さんだけじゃない、恭也さん、美由希さん、桃子さん、すずかにアリサ…なのはを知っている人が全てがだ!俺以外の全てがだ!!」
俺の考えが全ての者に否定されているような気がした。
俺の考えは受け入れらず、それでもなお俺は自身の考えを曲げずにいた。
それは孤独であった。
自分の考えが正しいと一人で言っている者を孤独と言わず何と言うのか…
そうしてついに俺は自分自身を疑いだした。
「俺は…なのはに自分の考えを押し付けているだけのか?俺の考えは間違いなのか…?」
俺の問いは決してユーノに言っているのではなかった。
これは俺が自分自身に問いをぶつけているのだ。
ユーノはただ俺の自問している場に居合わせただけなのだ。
ユーノもそれを理解していたからこそ何も言わなかった。
「…変なことを言って悪かった。今、言ったことは忘れてくれ」
「そうする」
「俺は先に上がるがお前はどうする?」
「僕はもう少し入ってるよ」
は~い、今回は温泉回でしたね。
女子の入浴シーンを期待した方々にご連絡
そんなもんあるわけねぇだろ
男の俺が女の子の入浴シーンなんて書いたら色々とあれだ、うん、あれだよ…書くのがかったるかっただけです。はい
申し訳ないとも思わんがな
だから変わりにユーノと綺人の入浴シーンを入れたぞ
最近の若いもんはこういう方が好みなのだろう(偏見)
あと言えるのはココアのくだりは必要なかったな
俺がココアが好きだからアルフ以外の人もココア好きの方がいるかもね、タヌキとかタヌキとかゲートボールとか
あ、綺人は純ココア派だよ
それでは、ばいなら~