引き篭もり妹が出てくる話(仮)   作:雨宮照

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プロローグ

うちには引き篭もりの妹がいる。

中学の頃は黒縁の大きな眼鏡をして、ウェーブのかかった……いや、えーっと、もしゃもしゃとした黒髪で、あいつの内向的な性格に合った見た目をしていた。

だから、自然とまわりにいる子たちも内向的なおとなしい子が多くて、生活しやすかっただろうよ。

でも、高校生になるとき、あいつが言ったんだ。

「私、高校生になったら、高校生らしくなる!」ってさ。

それで入学式の日、髪の毛を茶色くして、初めての化粧なんかして、コンタクトにして。

そうして行ったら、スクールカースト上位のグループに入れるだろうって意気込んで出かけたよ。

そしたら帰ってきたあいつは笑顔で「大成功だったよ! お兄ちゃん!」って。

その時は俺も嬉しかったし、それと共に心配もした。

俺も同じ高校の二年生で入学式には参加してたんだが、妹の性格には合ってないんじゃないかって気がしてならなかったんだ。

そしたら案の定、一週間くらいして、学校に行かなくなった。

もともとオタクだった妹の性格を、一軍の女子たちはすぐに見抜いたようだ。

それで、オタクが粋がるなと虐められたらしい。

あのとき、妹を止めておくべきだったのかも知れない。

でも、自分が変われることに喜ぶ妹を止めることなんて、できなかったんだ。

今はもう、部屋からも出てこない。

ずっと、顔も合わせていない。

飯なんかは、母さんが作って部屋の前に置いておくと、食べ終わった後の食器が外に出ているらしい。

他にも、必要なものはメッセージアプリで母さんに知らせているらしい。

母さんは妹の引き篭もりに反対したりはしない。なぜなら、妹に学校に行かなくていいと言い出したのは他の誰でもない母なのだ。

虐められて誰にも相談できなくて自殺してしまった、なんてニュースをよく目にするこのご時世だが、妹は家族に話してくれただけ救いようがあった。

虐められてるって聞いた母さんは、妹が心配だったんだろう。すぐに学校に行かなくていいって、提案した。

妹は二、三日迷ってたけど、行かないことを選んだ。

まぁ、俺は部屋からくらいは出てきて欲しいなって思うけどな。

「……っと」

 

階下でインターフォンが鳴った。

俺の部屋と妹の部屋は二階建ての二階にあって、隣り合っている。

両親の部屋は、一階の和室。

それから、一階にはキッチンとリビングがある。

階段を急いで降りて、荷物を取りに行く。

その宛先は、『黒沼綾芽』と書いてあった。

 

「綾芽宛ての荷物か……」

 

引き篭もってからというもの、妹宛ての郵便物は来たことがない。

俺は珍しく思って、妹の部屋の前にその大きな段ボールを置いておいた。

これが後に神器に変貌することを、俺はまだ知らなかった。

 

続く。

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