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私は今年のクリスマスを、Omoiさんのスノウドライヴというボカロ曲を聴きながら一人で過ごしました。
皆さんは、どんなクリスマスを過ごしましたか?
では、引き篭もり小説が始まります!
天才ボカロP、玄野白の正体がはっきりしてからしばらく経って、母さんからメールが入った。
今日は遅くなるから、適当にあるものを食べてくれだそうだ。
冷凍庫を見ると、はち切れそうなほどの冷凍食品。
冷凍食品というものは本当に画期的な発明で、電子レンジという魔法の箱にしばらく入れておくと、勝手に料理ができてしまうのだ。
きっと昔の人が見たら、魔法だなんだって驚いて、使った者は神として崇められることだろう。
そう思うと、タイムスリップなんてものもしてみたいかもしれない。
そこでふと、俺は妹のことを思い出した。
タイムスリップができたら、入学式前の妹のところへ行って、高校デビューをやめさせることもできるのに。
そのときに未来の俺が来てないってことは、まあそういうことなんだろうけど。
それでも、タイムマシンには期待をしてしまう。
無理だとわかっていることでも、それが本当に欲しい、憧れると思うものであれば期待をしてしまうのは、必然といえるのではないだろうか。
そんなことを考えながら、妹と俺の二人分の冷凍チャーハンを取り出す。
そして、電子レンジにかけるとすぐにそれは美味しそうなアツアツのチャーハンへと姿を変えた。
俺はそれを大きなお皿に出し、少食な妹の分を少しスプーンにすくって、俺の皿へと移した。
そしてそれを、妹の部屋まで持っていく。
部屋の前まで来るとノックして。
「綾芽ー? ここにチャーハン置いとくからなー!」
夕食を持って来たということを大声で伝える。
普段ならここで階下に降りて自分の分のチャーハンを食べ始めるのだが、今日の俺は少し興奮しすぎたようで、おかしなことを思いついた。
「なぁ綾芽。やっぱり、今日は一緒に食わないか? せっかく、久し振りに会えたんだしさ」
……返事はない。
寝ているのかもしれないが、俺は少し待ってみることにした。
すると三分後、ドアノブがくるっと回って、少しずつゆっくりと、扉が開き始めた。
そして、柔らかそうなぷにぷにとした手のひらが、ひょこっと顔を出す。
それから、何かないかと地面を探るように手を彷徨わせた後、チャーハンを掴んだ。
と同時に、俺の手が綾芽の手を掴んだ。
「んぁがっ!?」
ドアの向こう側から、声になってない声が聞こえてくる。
悲鳴でもないし、嗚咽でもない。
なんていうか、普段声を出し慣れていない人が久し振りに無理やり声を出したみたいな、そんな声。
俺はそんな中、妹がチャーハンから手を離しているのを確認してチャーハンを避難させると、ドアを勢いよく開けて、妹を引っ張り出した。
「なんじゃぁ!?」
いきなり部屋の外に引っ張り出された綾芽は、目を白黒させてたじろいでいる。
それにしてもお前、なんじゃぁって。
「お、お兄ちゃんかー! この悪魔め!」
歯をむき出しにして、威嚇の体制をとる妹。
外に出るのがそんなに嫌だったのだろうか。
「一緒に飯食おうって! ボカロの話もしたいしさ!」
「え? ボカロの話にも付き合ってくれるの?」
「おう。一緒に飯食おうぜ!」
なんだか乗り気になって来たぞ!
「うーん。いいけど、でも、部屋の外では食べないからね。なんとなく自分の部屋じゃないと落ち着かない体になっちゃったし」
いやどんな体質だよ! 治せ治せ。
「仕方ねえなぁ。じゃあ俺がお前の部屋に邪魔するよ」
「えっ? やだよ。お兄ちゃんに今の私の部屋は見せられないね」
「じゃあどこで食うってんだ!」
おかしな返答ばかりする妹に呆れて、半ば適当に突っ込む。
すると妹は。
「うん! じゃあここで食べよう!」
廊下の床を指差した。
少し冷たくなってしまったチャーハンを温め直して、もう一度二階に上がる。
すると、スプーンを持った妹が、あぐらをかいて座っていた。
「さぁ、お兄ちゃん! 食べよ食べよ!」
待ちきれないといったふうに、キラキラとした目でこちらを見上げている。
引き篭もりっていうと、ポテチにコーラのイメージが強かったのだが、当たり前だけど部屋から出なければ、ポテチもコーラも手に入れることはできない。
綾芽は空腹なのだろう。
俺はチャーハンが盛り付けられた皿を二皿ちゃぶ台の上に置き、その場にあぐらをかいた。
妹は俺が座ったのを確認すると「食べてもいい?」と両手をグーにして、プレゼントを前にした子供のようにはしゃいでいる。
「ああ、食べよう」
「「いただきます」」
冷凍食品のチャーハンなのに妹は、まるで高級料理店の炒飯を食しているかのごとく満足そうな表情をして、一口一口を丁寧に口に運ぶ。
そしてその度にほっぺたが落ちそうだと言わんばかりに嬉しそうな顔をする。
そんな妹を見てる俺も、このチャーハンがただのチャーハンじゃないような気がして。
特別な気持ちを味わいながら、チャーハンも味わったのだった。
「お兄ちゃん」
「うん?」
「誰かと食べるご飯って、おいしいね!」
「……ふっ。そうだな」
これを機に、妹は少しでも部屋から出て来るだろうか。それとも、今までのように引き篭もったままなのか。
どちらにせよ、俺と綾芽の心の距離は、これまでよりも少し縮まったような気がした。
続く