【完結】 ─計算の果てに何があるか─   作:ロザミア

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どうも、ロザミアです。

少し遅めの投稿ですみません。
GW満喫してたものでね!

ところで、fehで龍ルフレ当たらんとよ。


番外
番外編 純粋な死徒 1花


駒王町。

 

一見平和な町であるが、そこはいつでも人外達が関わる厄介事に巻き込まれる損な町。

 

そんな町を駆ける元気そうな男が居た。

 

彼の名前は、兵藤一誠。

元人間、現悪魔の青年であり、『赤龍帝の籠手』という特別な神器を宿した悪魔。

 

彼は今、悪魔の願いを叶え、代価を貰うという仕事を行っている最中であり、今は依頼人の家へと急いでいる。

 

「悪魔の体って不便なところもあるけど基本便利だよなぁ。」

 

そんなことを呟きながら走る。

 

数分後、彼は足を止めて目の前の家を見る。

普通の家より多少大きい家ではあるが、屋敷などの特別な場所でない事が分かる。

 

「ここが依頼人さんの家か。

よし、インターホンを押して……と。」

 

ピンポーン、と気持ちのいい音が鳴り、彼は立って待つ。

そして、すぐにガチャリと鍵が開く音がして、彼はどんな人が出るのかと緊張する。

 

以前、彼は大柄な男でありながら魔法少女を目指すヤベェ存在、通称ミルたんと出会ってから依頼人に対して多少の警戒心が出来てしまった。

 

今回はヤバイ人じゃなくて美人のお姉さんがいいなぁと思春期男子高校生に相応しい思考力をしている一誠は姿勢を正す。

 

扉が開き、中から人が出てくる。

 

「─はい、何かご用でしょうか?」

 

出てきたのは、彼の願っていた美人だった。

しかも彼の大好きな胸がある。

 

内心、ガッツポーズを彼は取る。

 

しかし、顔には出さない。

流石にそれは失礼だと1%の理性が告げたからだ。

 

彼は懐からチラシを取り出して、彼女に見せる。

 

「えっと、このチラシ、ご存じですか?」

 

「チラシ?…あ、はい。私が依頼人です。」

 

おお、よかったと安心する。

これで違ったら違ったで返しはあったので問題はないが、一発正解であったのは嬉しい。

 

女性は扉を開けて中へ入ってくださいと言う。

失礼しますと礼儀正しく言ってから挨拶する彼に女性は少しクスリと笑う。

 

中も中々に普通であり、少し拍子抜けした一誠は、用意されたスリッパを履いて女性に案内されるままリビングへと向かう。

 

リビングへと入って中を見渡す。

これまた普通。

 

「座っててください。お茶を出しますので。」

 

「あ、いえ、お構い無く!」

 

「お客さんですから。それに、私がしたいんです。」

 

「えと……じゃあ、お願いします。」

 

ソファに座り、女性のお茶を入れる姿を見る。

 

(何だろう、見たことあるような。)

 

だけど、見覚えが全くない。

自分のアルバムの写真にもこの人の姿はない。

 

……ドライグは知ってるだろうか。

 

声に出さず、心でドライグを呼ぶ。

 

『……。』

 

「(なあ、ドライグ。

あの人に見覚えが何でかあるんだけど、お前の知り合いだったりは……)」

 

『……、相棒。』

 

「(?どうした?)」

 

『俺からは、話せない。

せめて彼女の話を聞いてからでないと。』

 

知っているが、言えない。

何か訳があるのだろう。

一誠は深くは聞かないでドライグの言うように女性の話を聞くことにした。

 

気付けば、お茶と茶菓子が置いてあり、向かいには女性が座っていた。

 

「…まず、自己紹介を。私は──」

 

彼女は名前を言おうとして、一旦口を閉じてからもう一度口を開く。

どうしたんだろうかと一誠は疑問に思ったが、気にしないでおいた。

 

 

「─フリージアといいます。

良ければ、貴方の名前も聞いていいですか?」

 

その名前を聞いたとき、彼に宿る龍が目を閉じた。

 

一誠は、外国人っぽいし、金髪でそれっぽかったからいい名前だなって思った。

 

「俺の名前は兵藤一誠です。

それにしても、日本語がお上手なんですね。」

 

「そうですか?一生懸命練習した甲斐がありました。

……それで、このチラシに書いてあった悪魔…もしかして、本当に悪魔なんですか?」

 

「えっと……まあ、はい。

あ、でも他言無用っていうか「安心してください、私も人じゃありませんから。」へっ?」

 

「私も、悪魔じゃないですけど、吸血鬼…死徒ですから。」

 

「吸、血鬼……?」

 

「はい…元人間、ですけどね。

ふふっ、悪魔のように羽は出せませんけどね。」

 

儚そうに話すフリージアに一誠は無理矢理されたのだろうかと思ったが

 

「あ、勘違いしないでください!

私が望んであの人にしてもらっただけですから。」

 

「あ、そうなんですか。」

 

「はい、あの人も私とここに住んでいるんですが、仕事で忙しくて。」

 

「へぇ、もしかして、男だったり?」

 

「よくわかりましたね。」

 

「ハハハ……何となくです。」

 

て事は二人とも吸血鬼なのか。

結婚してるのかな?と思ったが、指輪は嵌めてないっぽいし一緒に暮らしてるだけなんだろうなと思い、それ以上は考えないでおいた。

 

「それで、チラシの件なんですけど……」

 

「あ、そうでしたね。

私のお願いは簡単なものです。

その、お話ししたくて。」

 

「お、お話し?」

 

「えぇ。私、吸血鬼ですから弱点も少し多くて。

日差しの下で誰かと話すなんて出来ないから…

だから、せめて同じ異常な存在同士でなら気軽に話したいなぁって。」

 

「えぇと……一緒に住んでいる人とは?」

 

「あ、勿論話しますけど、家族以外と普通に会話したいし、寧ろ愚痴りたい時とかあるし。

……えっと、駄目ですかね?」

 

こちらの時間を取るようで悪いと付け足しながら返事を待つ彼女に、一誠は吸血鬼なのに普通な人だなぁと思った。

もっと奇抜な要求をされると思ったが、そんな事はなく、寧ろ日常的な何かを感じられてホッとしている。

 

彼としては、こんな美人と穏やかにお話しできるなんて夢みたいだと思いつつも、同時に吸血鬼としての生き辛さに多少同情してしまう。

 

「俺でいいなら、話くらいなら聞きますよ!」

 

そう返事をすると、彼女はパァッと花咲くような笑顔を浮かべる。

 

「本当ですか!ありがとうございます!

……あ、代価、とか…」

 

「あー……どうしたもんかな……

そうだ、じゃあ、俺も会話することを代価として貰います!」

 

「会話を代価としてって……それだと単に私だけ得をしてるような?」

 

「いやいや、これは俺も得してますから、大丈夫です!」

 

「うーん……何だか納得できないけど、兵藤さんがそれでいいなら。」

 

釣り合ってないと思いながらもそれでいいと言ってくれる一誠の言葉に甘えようとなった。

 

それから、二人はその場で思い付く会話をあまり暗くならない程度の時間まで話した。

 

最近暑くなってきたことに対する愚痴や、料理でここの味をどうしようかという話、あの人はこんなで~とかいう愚痴。

 

愚痴が大半であったが、一誠は聞きながら、話していって段々口調が砕けていき元気そうな笑みが多くなるフリージアに彼も何時のまにやら笑っていた。

日常的でありながら、非日常的な存在である彼女に、何処と無く親近感を覚えた彼は、何だかいつものような調子のエロ小僧にはなれないでいた。

 

これがフリージアという女性の出せる雰囲気なのだろうか。

 

そうして、夕方になって、フリージアは会話をキリのいいところで止める。

 

「もうこんな時間になっちゃった。

兵藤君も帰らないとだよ。」

 

「うわぉ、時間の流れってスゲェ……。

じゃあ、俺はこれで。」

 

「うん、ありがとうね、今日は楽しかったよ。

……それで、君がいいならなんだけど、また話したいなぁって。」

 

「…勿論!俺も楽しかったですし、また話したいって思ってました!」

 

「わぁ、結構気が合うのかもよ?」

 

「マジですか。」

 

「マジマジ。……さ、帰った帰った!」

 

彼女に言われ、玄関まで移動して靴に履き替えてから扉を開ける。

 

「じゃあ、また今度。」

 

「うん、気を付けて帰るんだよ。」

 

そうして、扉は閉まって彼は外へ出る。

朝方ほどのしんどさは無くなり、いい気分のまま徒歩で帰る。

 

『相棒。』

 

「どうした、ドライグ?」

 

『……いや、彼女は、どうだった?』

 

「どうだったって……普通にいい人で、話してて人間に戻れたような気分だったぜ。」

 

『笑っていたか?』

 

「おう!最初は何話したもんかってなったけど話し出したらお互い止まんなくってさ。

俺が料理に興味持つほどには楽しかったし、フリージアさんも笑いながら会話してたぞ。」

 

『そうか……それはよかった。』

 

心の底から安堵するドライグに、一誠は珍しいなと思った。

もしかしたら昔の関係者なのかもしれない。

 

「ドライグ、結局フリージアさんとはどんな関係なんだ?」

 

『……知らなくていい。

その方が、お前にとっても彼女にとっても幸せだ。』

 

「知らなくていいって……まあ、お前が話したくないってんなら仕方ねぇか。」

 

『それでいい。

後、出来るだけ話してやってくれ。』

 

「親戚のおじさんみたいだな、お前。」

 

『……放っておけ。』

 

 

─────────────────────

 

 

時計が針を進める音が部屋に木霊する。

ソファに座って、外を眺める。

 

「兵藤一誠君、か。」

 

今日あった家族以外の異性の名を口にする。

何かを懐かしむように、安心するように。

 

「ドライグは、彼に宿ったんだ。

……私から抜き出した結果、彼に。」

 

ドライグ、それは自分にとって様々な感情が湧き出る存在。

怒りが、哀れみが、そして安堵があの龍に対してある。

 

目を閉じて、家族の帰りを待つ彼女は、名残惜しいかのように向かい側のソファに見ている。

 

久しぶりに、心行くまで会話ができたと。

 

「……ふふっ、今度が楽しみだなぁ。

話題を作っておかないと。

今度会って話す日が楽しみ。

だから、それまでは……助けてあげてね、ドライグ。」

 

ただ、純粋なまでに友達となった男の心配をする。

 

そして、玄関の扉が開く音がした。

帰ってきた、と少し急ぎめに玄関まで歩く。

 

そこには、今では学園で教師をしている家族の姿があった。

 

「おかえり、ズェピア。」

 

「ああ、ただいま、フリージア。

…む?何だか楽しそうだが、何かあったのかね?」

 

「そう?楽しそう?

ふふ、でしょでしょ~!

でも教えてあげないもんね。」

 

「おや、ならばこのシュークリームは私が全て貰うとしよう。」

 

「えっとね、今日は人が来てね、その人と夕方までお話ししたの。」

 

チョロい。

スイーツに弱い娘に苦笑しながらも、人が来るなんて珍しいとズェピアは思った。

 

リビングまで行って、鞄を置いてシュークリームの入って箱を渡してから椅子に座る。

 

「ふむ、ならば、どのような話をしたのか、夕食後のティータイムに聞くとしよう。」

 

「うん。…あ、今日はズェピアの好きなシチューだよ。」

 

「なんと、それはありがたい。

いやはや、出来た娘を持って、私は感動した。」

 

「大袈裟だなぁ……。」

 

呆れながらも、喜ぶ姿に自身も嬉しく思った。

 

しかし、ズェピアは急に顔を暗くする。

 

「……君が楽しそうで、よかった。

不便な生活をさせてすまない。」

 

「不便なんて、大丈夫だよ。

そりゃ確かに、吸血鬼だと血とかいるし朝とか日傘差さなきゃ歩けないけど、でも平気。」

 

「そう、か。」

 

「それに、私が決めたことでもあるから。」

 

「……そうか、そうだね。

すまない、またこのようなことを。」

 

「ううん、いいの。

ズェピア達が私を大切に思ってくれてるのは理解しているし、私ももっと居たかった。

……それで、いいんだよ。」

 

「……ああ。」

 

「……さ、この話はおしまい!

ご飯にしよっか!」

 

「うむ……君のシチューは美味しいからね。

早く食べたいよ。」

 

他の家族の帰りは遅いので二人で先に夕食を食べてしまうのが最早この家のいつも通りとなっている。

 

そうして、夕食を食べ終えて、敢えて何も言わずにフリージアの食後の今日何があったのかを楽しそうに話す姿に嬉しく思いながら聞くのであった。

 




はい、という訳でリクエストにあった人として死ぬのではなく、人外として生きる道を選んだフリージアというifの世界での話です。
はい、1ってあるから続きあります。

その辺は、本編が進んだらということで。

後、フリージア生きてるのにドライグが何で一誠に宿ってるのかはヒント書いてあります。

そして、一誠とフリージアが友達というかこのまま行くと恋愛系フラグ立つんじゃねとか皆思ってるんだろうなと私は思ってる。

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