【完結】 ─計算の果てに何があるか─   作:ロザミア

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どうも、ロザミアです。
白龍皇との戦いなんて言ったけど、タイトル通りです。

マトモな戦闘なんて書けるわけ無いだろ!(開き直り)

では、どうぞ


白龍皇、蹂躙

舞台は幕を開けた。

夜は赤へと染まった。

役者は既にこの場に揃った。

ならば始めよう、ならば終わらせよう。

 

この下らない三流劇を。

 

 

───────────────────────

 

 

「何だ、空が……」

 

「よそ見をしていいのかね。」

 

俺は空を見て隙だらけの男にほぼ一瞬といっていいほどの速さで接近して鋭く伸ばした爪で肉と骨を裂かんとする。

 

「うぉっとぉ!中々速いなアンタ!」

 

反射的といった様子で大きく跳んで後退し、『白龍皇の光翼』を展開し俺には多少劣るがそれなりの速さで肉薄し鳩尾へ拳を叩き込みに来る。

 

まあ、当たるわけないでしょ。

分割思考もあってこちらの防御姿勢は完璧よ。

即座に体を逸らすだけで避けて腕を掴み、地面へと叩き付けるが

 

『divide!』

 

という声が響くと共にこちらの力が弱くなったのを感じる。

現に地面がクレーターも出来ないでただ叩き付けたという結果になっている。

まあ、本人は威力を殺しきれずにガハッと言ってますが。

なるほど、こういう感覚か。

今の内に把握しておかないとな。

 

「ふむ、これが半減の力か。なるほど確かに厄介だ。」

 

『宿主よ、この男は危険だ。お前では勝てん、一時撤退をするべきだ。』

 

この声はアルビオンか。

なるほど、賢い選択だが数分遅かったな。

当の本人は即座に立ち上がって俺から距離を取って

 

「撤退だぁ?ふざけんじゃねぇ!」

 

と怒ってますね。

いやいや、お前よりも長く生きた実力者の忠告なんだから従えよ。

これには俺も呆れる。

 

「君、一応年長者の言葉は聞き入れるものだよ。」

 

「知らないね、俺の体は俺のものだこいつのものじゃない!俺が何をしようと勝手だ。

それで死んだのならそれまでだ、そうだろう?」

 

「私に同意を求められても困るな。

私は至って平凡な死徒だからねぇ。

まあ?力の差を自覚しながらも挑む勇気は認めよう。

蛮勇ともいうがね。」

 

「ハッ!だったら俺の力が通じるくらいに半減させてやるだけのことよ。」

 

……どうやら、まだ勝てると思われているらしい。

心外だな、とても心外だ。

仮にもこの身は死徒二十七祖。

それを龍の力の一部を使える程度の若造が勝てるつもりでいる。

嘆かわしきかな、その無謀さは報われることなく打ち砕かれる。

彼はこの場で赤い花を咲かせ即座に散らす運命だ。

 

「不愉快、実に不愉快だ。

君は私に勝つ腹積もりなのだろう?

半減、半減ねぇ。

なあ?後、何回半減すれば君のその貧弱な拳は私の腕を砕くのだね?

君のその脚は私の足を壊すのだね?

可能性の、それも低い可能性の話を私の前でするのは愚行というもの。

君は逃げなかった。君は忠告を聞き入れなかった。

故に、この地で死ね、若輩者。」

 

「へっ、今すぐ死ぬ訳じゃねぇんだ。

足掻ける処まで──」

 

『後ろだ!避けろ!』

 

アルビオンの言うとおり、白龍皇の後ろから巨大でいてかつ鋭い獣の爪のような攻撃が迫るが、寸でのところで避けられてしまった。

あーあ、それで死んでりゃよかったものを。

 

「─ッ!?なんだ、こいつ!?さっきまで気配を感じなかったぞ……!」

 

「当然だ、今この場(・・・・)で出したのだからね。」

 

白龍皇の後ろに突如現れたコートを着た大男─ネロカオスが不敵に笑いながら地面へ溶け込み、俺の隣へと現れる。

まず、一人。

 

「今出しただと?そんな準備をするような仕草、どこにも……」

 

「あったとも、最初にね。ほら、見たまえ空を。

赤い夜(タタリ)があるだろう?」

 

「まさか……まさか!この夜の顕現してる範囲内全てがそうだってのか!?」

 

「そうだ、そうだとも。だから宣言したじゃないか。

虚言の夜を始めようとね。

さぁ、足掻きたまえ藻掻きたまえ!

一人増えれば二人増え、二人増えれば三人増える。

君が何に挑んだのかその身でじっくり味わうといい。

戦いたいのだろう?戦いの場はもう用意してやったぞ!」

 

次々と白龍皇の周りから黒で塗り潰された人型が現れる。

それはナイフを構えた青年であったり、黒鍵を握る少女であったり……真祖であったり。

 

白龍皇はこの状況を予想していなかったのか唖然としており、勝ち気な笑みは消え、冷や汗が止まらず、青ざめていき、震えていく。

 

「あ、あ?」

 

さあ、蹂躙の時間だ。

五分持てば褒めてやる。

 

「ああ、安心したまえ、君の要望通り──」

 

俺は普段閉じている赤く染まった目を開け、三日月のように笑いながら

 

「─全て、本来の強さだよ。」

 

そう告げた。

 

「あ、ぁぁ……アァァァァァァァッッ!!?」

 

 

男は悲鳴をあげながら、傷付きながらも半減し、殴り、蹴り、抗う。

 

抗う、抗う、抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗う抗───

 

 

 

 

─おうとして、ついに千切れかけていた両腕が落ちて、痛みに耐えきれずに声をあげたところを青年のナイフに喉元を刺されてしまった。

 

男は当然のように倒れる。

血溜まりの上にベチャリと音を立てながら倒れる。

苦しそうに、可哀想に、滑稽に掠れた声を出しながら。

 

俺はタタリを解除して男の側まで拍手をしながら歩み寄る。

生きている、まだ生きているじゃないか。

 

「ハハハハハハ、凄いじゃないか。

手加減に手加減を重ねたとはいえ二分耐えたぞ。

どうした?もっと喜びたまえ!

君が望んでいた闘争だ。

君の見たかった血溜まりだ。

君のしたかった圧倒だ。」

 

「ァ─ヒュー─ヒュー───」

 

「さて、どうやらもう劇は終わりらしい。

嘆かわしいな、本当に。

これからが本番だというところで役者が息絶えては一人芝居ではないか。

まあ、よく踊ったよ君は。

これは監督としてお礼を与えなくてはね。」

 

体を動かす事も儘ならない可哀想な男の頭を掴んで持ち上げる。

男は俺に恐怖に染まった顔で睨み付けてくる。

まだ睨めるか。凄いじゃないか。

 

「─化け─物─め──!」

 

「化け物?化け物ときたか……いやはや、実に、実に的を射ている!

ようやく真理に辿り着けたようでよかったよ。

そうだとも、私は化け物、タタリ、ワラキアの夜だ。

本当は殺して放置という形にしようと思ったがこれはもっとも相応しい最後にしてあげよう。

 

血を全て吸われて死ねるなんてそうそうない体験だよ。」

 

そして俺は、男の生き血を飲み干す。

ネロカオスが暴食ならばワラキアの夜は暴飲。

そんな俺がチロチロと飲むわけないだろ。

一瞬だ。

 

白龍皇だった者は既に死に絶え、神器である『白龍皇の光翼』も消える。

……結局使う機会が無かったな。

いや、無いだけマシか。

これを使うということは俺の敗北の危険性が高いということだからな。

 

ああ、しかし……

 

「脆いなあ……脆い、弱い、馬鹿と三つも揃っている役者はそう居ない。その点で言えば彼は名役者といえよう。

まあ、この世界ではそれは大根役者という奴だがね。」

 

こんなんに苦戦するようなら俺はとっくに死んでいる。

アルビオンは不運だったとしか言いようが無いな。

宿主の性質は間違ってはなかったが、そいつが驕るような奴だったのが今回の出来事の原因といえる。

ま、龍の事情なんざ知ったことではない。

人様の家族に手を出すからこうなるんだ。

アイツらも学べばいいが……。

 

俺はさっさと転移して我が家へと戻ることにした。

 

「次はもっと上手くやりたまえ。

誰を標的にし、誰を避けるのか。

それが出来てようやく一般の役者と言えよう。」

 

既に物言わぬ死体に、俺は言葉を言い残して転移した。

 

 

───────────────────────

 

 

さあ、帰ってきましたよ冥界の我が家へ!

ハハハ、ワラキーキメたから今日の俺は絶好調だ。

 

さてさて、フリージアとオーフィスの様子はと……

 

俺は玄関から中に入り、フリージアの部屋へと向かった。

オーフィスが一緒にいるから大丈夫だと思うけど…。

 

部屋の前へ着いたのでノックして居るかどうか確認する。

 

「っ、ズェピア!?」

 

「やあ、待たせたかな?私だよ。」

 

「ん、おかえり。」

 

「ああ、ただいまオーフィス。……フリージア、悪い虫は追い払ったからもう安心だよ。……フリージア?」

 

フリージアからの反応がなかったので見ると、顔を俯かせ、泣いていた。

え、あれ?

何故泣くのか。

オーフィスと顔を合わせて困惑する。

とりあえず何故泣いているのか聞こう。

 

「フリージア、何故泣いているのかな?」

 

「だって、だって……貴方、無事だったから…突然、転移しちゃったからずっと心配で。

私のせいで貴方が居なくなっちゃうんじゃって…それで、それで……!」

 

ああ、そういうことか。

…思えば、自分の強さを知ってるのは誰も居ないからなぁ。

そりゃ、心配するのも当然か。

それに、この子は優しいからな。

白龍皇邪魔だったんで殺しましたなんて言ったら私のせいでって言うに決まってるし……。

 

俺はいつまで立ってても仕方ないと思い、中に入って扉を閉めてから優しくフリージアを抱きしめる。

オーフィスはフリージアの頭をよしよしと撫でている。

可愛いなおい。

 

「心配せずとも私は君達を置いて死にはしないとも。

私はこう見えて強いんだ。それに、無事に帰ってきたのだから何か一言あってもいいと思うのだが…具体的には、帰ってきた者に対する台詞が私は欲しいものだ。」

 

「ぐすっ、うん─」

 

フリージアは泣き止み、抱擁を解いてから涙を拭ってから花が咲いたような笑顔で言った。

 

「─おかえりなさい。」

 

「─ああ、ただいま。」

 

この子は、この表情が一番似合う。

守れてよかった、この笑顔。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、これだけ頑張ったからそろそろパパと呼んでほしいのだがね……」

 

「それは無理。」

 

「ズェピアは、親戚の叔父さん、みたいな?」

 

「これは手厳しいな……叔父さんはやめてくれ、叔父さんは。」

 

今年一番心が傷ついた瞬間かもしれないワードを言われて心の奥で涙を流したのは言うまでもない。

あ、そういえば白龍皇の血って飲んだけど平気だろうか?

半減の力が俺の物に!

 

後日試したけどそんなことはなかった。くそが。




あくまで気ままに生きる物語なんで戦闘も適当に終わります。

ほのぼのが主流なんで……主流なんで……。

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