【完結】 ─計算の果てに何があるか─   作:ロザミア

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本編の続きかと思った人、挙手。

残念だったな!
お気に入り3000越えたから記念だよ!

後、この世界線では一誠達がレーティングゲームでライザーに勝ってます。
本編じゃあんまり出てこないご都合主義さ!


番外編 純粋な死徒 2花

暗くはない、明かりの点いていて掃除が行き届いている部屋のソファで向かい合いながら会話をする男女の姿がそこにはあった。

 

「そしたら、焼き鳥の野郎をぶん殴って部長を助け出すことが出来たんですよ!」

 

「へぇー……何だか、可哀想かな、焼き鳥って呼ばれてるヒト。」

 

「え、何処がですか?望んでない結婚なんだから、突っぱねて当然じゃないですか。」

 

男…兵藤一誠は自分の倒したライザー・フェニックスを可哀想だと言う女性…フリージアに不思議そうに聞く。

フリージアはそれに普通ならそれでよかったんだけど、

と言い続きを話し出す。

 

「その部長さんと焼き鳥さんは貴族のヒトだったんだよね?」

 

「はい、部長と焼き鳥は同じとは思いたくないけど貴族悪魔ですよ。」

 

「なら、その婚約は親と親が決めた大事な婚約だった訳だし、部長さんの両親は分からないけど焼き鳥さんの両親にとってはそれがとても大事だったと思うな。」

 

「それは……」

 

違うとは言えなかった。

いや、正しいとすら思った。

二つの家が取り決めた婚約を、自分が嫌だからというだけで破棄させようとするのは、今の内容を思うに中々に酷な事をしたのかもしれない。

 

「それに、部長さんはグレモリー家。

つまりは今の魔王の一人であるサーゼクスさんの家だから、是が非でも成立させたかったとは少なからず思うよ。

こう言ったら汚い大人のやり方に聞こえるかもだけど、魔王っていう後ろ盾も出来るわけだしね。」

 

「そんなの、焼き鳥も部長も利用されそうになったって言ってるようなもんじゃないですか!」

 

「うん、でも、その焼き鳥さんの様子はどうだった?

嫌そうだった?」

 

「それは……嫌そうではなかったと思います。

寧ろ、嬉々としてたって感じでした。」

 

「だよね。

試合するって言って合宿に行っちゃった時に、ウチの人に聞いてみたんだけど、焼き鳥さん…ライザー君は家の事をとても大事にして、眷属にもしっかり向き合ってるって聞いたよ。

じゃなきゃ、いくら眷属でも痛みの伴う犠牲戦術はしないはずだもん。」

 

「…アイツ、そうだったのか……。」

 

家の為にも、ライザーはしなければならない婚約で家の為ならという決意があっての行為だったのかと思うと、悪い気も湧いてきてしまう。

 

「でも、その部長さんが望んでない結婚をしなくて済んでよかったじゃん!

女としては、そういうのを拒むのは理解できるよ。

政治が少し分かる側から見ると我儘にしか見えないけどね。

それに、イッセー君は後悔してないでしょ?」

 

「え、あ、はい……。」

 

「してるの?」

 

「……今の話を聞いて、少しだけ。」

 

「…そっか、でもね、そこまでしちゃったんなら後悔はしちゃダメだよ。

もう終わっちゃった事だし、そこまで分からなかったんなら仕方無いよ。」

 

本当は仕方無くないんだけど、とは言わないでおいたのは一重に彼女の優しさである。

 

「ところで、イッセー君はまだウチの人に会った事ないよね?」

 

「ないっすね……どんな人なんですか?

吸血鬼なのは分かるんですけど。」

 

「三人いるんだけど、内二人は吸血鬼で…もう一人は言いづらいかな。」

 

「あ、なら言わなくて良いですよ?」

 

「そう?ごめんね。

それで、二人とも凄い強いんだよ。

あ、名前はね……」

 

名前を言おうとして、ガチャリと玄関の扉の鍵が開く音が聞こえた。

 

「あれ、今日は早いかな。ごめんね、ちょっと待ってて。」

 

「あ、お構い無く。」

 

フリージアは玄関へと向かう。

話し声が少し聞こえるがよく聞き取れない。

 

そして、こちらへ向かってくる音が段々と大きくなり、扉が開く。

一誠は思わず背筋を伸ばす。

 

 

 

「……ほう、君があの子の話し相手になってくれていたイッセー君かね?」

 

話し掛けてきたのは、どことなく掴みようのない存在感を放つ男性だった。

 

『……。』

 

「は、はい!兵藤一誠ていいます。

……あの、お名前を聞いても?」

 

「そう固くならないでほしい。

私はズェピア。

ズェピア・エルトナムだ。

一応、フリージアの父親をしているよ。」

 

「えっ、ち、父親!?って一応ってことは……」

 

「ああ、本当の親ではない。

あの子は遠い昔に追放された身でね、私が保護して、そこから家族になったわけだ。

あと、私があの子を吸血鬼にした張本人だ。」

 

「貴方が……」

 

「ズェピア、その話はあまりしなくていいから。」

 

「…うむ、君が言うのなら。」

 

「うん。」

 

仲が悪いわけではないが、その話をされるのはフリージア的にはあまり良くないみたいでズェピアはあっさりと了承した。

 

一誠はこの家族関係があまりわからなかった。

 

「……すまない、少しイッセー君と話がしたい。」

 

「分かった、じゃあ、部屋にいるね。」

 

「うむ、終わったら呼ぼう。」

 

フリージアはそう言って自室へと向かう。

一誠はズェピアと二人きりになったせいか緊張している。

 

その様子にズェピアはクスりと笑う。

 

「緊張しなくともいい。肩の力を抜きたまえ。」

 

「あ、はい……。」

 

「ハハハ、私相手に緊張するのは君が初めてかもしれないな、赤龍帝君。」

 

「そうなんですか……へ?い、今、俺の事……!」

 

「どうかしたのかね?

ああ、バレているのがそんなに驚きかね?

安心して良い、私は何もしないよ。」

 

「そう、ですか……」

 

「私がしたい話は、そうではなくてフリージアについてなんだ。」

 

「フリージアさんについてですか?」

 

「ああ……ここ最近、君がフリージアの話し相手になってくれているお陰で、また笑顔を見る機会が多くなってね。

私達がどれだけあの子に吸血鬼というストレスを与えてしまっていたかを痛感したよ。

……ありがとう。」

 

頭を下げるズェピアに、一誠は戸惑っていた。

自分とて自分なりの思惑…まあ、美人とお話ししたいという高校生男子特有の欲で話し相手になっていたのもあるから困惑は大きかった。

 

「あの、頭を上げてください!

俺も話したいから話してただけですから。」

 

「…そうか、分かった。

ちなみに聞くが、君はあの子の事をどう思っている?」

 

「へ?どうって……友達、かな?」

 

「本当かね?

あの子の美しさ、優しさ、健気さを感じておきながらそれだけとはどういうことかね?

もっとこう、あるだろう?

恋に落ちたとかあるだろう!だがそれは私やネロやオーフィスを倒してからでないと認めん絶対に認めん!!

フリージアは純情だから変な男に連れてかれでもしたら、ああ、何ということだ滅ぼさねば!」

 

「あ、あの……ズェピアさん?」

 

「…………すまない、取り乱した。」

 

一誠は確信した。

この人は、極度の親バカだと。

 

「いえ……」

 

「フリージアの事……いや、家族の事になると前が見えなくてね。

さて、話を戻そう。

リアス君はどうかね?」

 

「部長の事も知ってるんですか!?

もしかして、魔王様とも?」

 

「知り合いというより、友人かな、サーゼクスとは。

他の魔王とも既知だ。

それで、どうなのかね?」

 

「婚約の件は知ってますか?」

 

「ああ、サーゼクスから聞いたな。

レーティングゲームで勝ったらしいじゃないか。

よく勝てたね。」

 

「ありがとうございます。

……でも、俺達はライザーの家の未来を縮めたようなもんだと、フリージアさんと話して気付きました。」

 

「ふむ、聞かせてもらっても?」

 

一誠はフリージアとの会話をズェピアに話した。

すると、ズェピアは感慨深そうに紅茶を飲む。

 

「……あの子がそのような話をするとは、意外だ。

私の見えないところで、成長してるということかな。

確かに、君達の行いは常識的に考えればナンセンスだが、レーティングゲームでの賭けだったのだろう?」

 

「はい。」

 

「ならば、気にすることはあるまい。

あちらは了承し、成立した上でのレーティングゲームだ。

ライザー君も、それを承知で戦いに臨んだ筈だよ。

それに罪悪感を感じるのはそれこそ勝者としてあってはならない。

それは敗者の意思すら踏みにじる行為なのだからね。

……いいかね、君は、賭けに勝ち、見事目的を達成した。」

 

「それは、そうですけど……」

 

「どうしても、気になるのなら仕方無い。

その分まで頑張りたまえ。

私から言えるのはそれだけだよ。」

 

「……そうですね、そうします。」

 

「では、そろそろフリージアを呼んでくるよ。

……ああ、一つ言い忘れていた。」

 

「?」

 

「君は一度、主に同意するだけではなく、よく考えてから言葉を発すると良い。

フリージアとの付き合いで、その辺は冷静に考えられるはずだ。

……ではね。」

 

「はぁ……。」

 

ズェピアがフリージアを呼びにいくために部屋を出ていき、部屋には一誠一人になった。

時計の針が進む音を聞きながら、一度考えてみる。

 

─確かに俺は、部長や仲間達の意見に同意したりするだけのイエスマンになってたのかもしれない。

 

そう思った一誠は、感情に身を任せるのではなく一度冷静にモノを考えてから動こうと決めた。

 

『相棒、変わったな。』

 

「そうか?」

 

『ああ、あの娘と話す日々で少しずつだが、相棒は変わっていっている。』

 

「……それは悪くない変わり方かもな。」

 

フリージアとの会話で、自分が変わっていくのが一誠本人も理解していた。

だが、これは嫌な変わり方ではなく、受け入れられる変わり方だった。

 

詳しく言うと、最近覗き行為が無くなった。

彼の友人、知人はこれに驚いた。

それもその筈、一誠と友人二人は変態三人組で知られている犯罪予備軍……いや、もろ犯罪者だ。

だというのに、突然の変わりように心配する声すら挙がったというのだから相当だろう。

 

「ズェピアとの話、どうだった?」

 

「あ、特に変なことは聞かれませんでした。

それどころか、アドバイスを貰って……。」

 

「ズェピアのいつもの癖が出ちゃったかぁ。」

 

「いつもの癖なんすか?」

 

「うん、直せそうな点があったら指摘しちゃう癖。」

 

私も昔からよく指摘されてたんだーと懐かしむように言うフリージア。

だが、目は少し虚ろだった。

 

『塩気が多いかもしれないね。』

『ここ、書き順が違う。カット。』

『ここはこの公式を使うんだ、これではない。リテイク!』

 

「ふ、フリージアさん!」

 

「え、あ、ごめんね!

少し思い出しちゃって……でも、あれのお陰で料理とか上達したし、悪い気はしないんだけど……

本人曰く、監督癖らしいよ。

監督業してないのに。」

 

「ハハハ、なんすかそれ!」

 

「だよね、ちょっとおかしいよね~。」

 

二人して笑い合う。

こうしていて、心が安らぐ。

仲間と居るときとは違った安らぎがここにはあった。

 

「ふふ……ねぇ、イッセー君。」

 

「はい、なんですか?」

 

「もし、私が危ない目に遭ったら、助けてくれる?」

 

突然の質問に、一誠はどう答えたものか一瞬だけ迷った。

そもそも、ズェピアや他の家族が実力者なのは確実だろうし、自分よりも強いだろう。

それなのに自分に聞くのは何でなのかと疑問に思ったが、聞かないでおいた。

 

「任せてください、友達を助けるのは、友達の役目ですから!」

 

「……うん、お願いね。

 

まあ、ズェピア達が居るから大丈夫だろうけどね。」

 

「ですよねー。」

 

夕方まで、談笑は続いた。

 

 

 

 

 

 

「……?ズェピア、何してる?早く中に入る。」

 

「シー……静かに。」

 

「?……フリージア、男と話して笑ってる。」

 

「……ふふふ、彼女は誰にでも影響を与えるのだから、不思議なものだよ。

主役にまでそれが及ぶとは、流石だ。」

 

「ズェピア、嬉しそう。」

 

「嬉しいとも。

娘の笑顔に、喜ばぬ親などいない。」

 

「じゃあ、妻は我?」

 

「君は何を言っているのかね?」

 

部屋の外で、ひっそりと見ている二人に気付かずに。




え?一誠が変わりすぎだって?
フリージアの力だよ(笑顔)

この世界は、色々と優しい世界なので。


─追記─

活動報告をまた作成しました。
見てくださると嬉しいです。

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