【完結】 ─計算の果てに何があるか─   作:ロザミア

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どうも、ロザミアです。

少し遅くなりましたが、内容は特別長いわけではありません。
お気に入りがまた少しずつ増えて嬉しい限りですが、その度に吐血してる気がします。

ではどうぞ


不穏

 

とある領の屋敷、そこには悪魔が何名か集まっていた。

 

一人の男が忌々しそうに発言する。

 

「あの男が冥界へと移り住んだせいで、首都の復興が数年縮んだ!

やはり、邪魔な存在だ。」

 

一人の女は賛同するように発言した。

 

「その通り、我々の邪魔者でしかないあの吸血鬼は排除するべきよ。

しかし、白龍皇を一人で蹂躙するほどの力を持ってると聞くわ。

如何様に始末するの?」

 

一人の初老の男は自信ありげに発言した。

 

「ならば、あの男の家族を狙うのはどうだ。

奴とて身内には甘かろう。」

 

数名の悪魔はそれがいいと言う。

しかし、家族とは誰だ。

あの屋敷にいるのかと疑問が上がる。

 

男は言った。

 

「奴が特殊な趣味がなければだが、女性ものの服を買っていた。

ならば、あの屋敷にいる可能性は高い。」

 

「そうか、魔王と会いに行ってる間に攻め込めば…!」

 

「家族を人質に取られれば、手も足も出せまいて。」

 

悪魔達はどんどんと作戦を立てていった。

 

八つ当たり、鬱憤晴らし、ストレス発散。

ただの我が儘のようなもの。

だが、悪魔達はそれでよかった。

 

憎き現魔王達に間接的にでも苦汁を舐めさせる事が出来る。

それだけでする価値があるのだ。

 

彼等の領の名は───

 

 

 

 

──旧魔王領と呼ばれている。

 

 

 

─────────────────────

 

やあ、皆の衆。

俺だ、最近視線を感じる気がするワラキーだ。

 

なんだろね、ストーカーかな。

まあ、何か来てもやっつけてやりますよ。

家族に手を出すなら殺すけども、因果応報だし、問題ないな。

 

しかし、バレバレという程雑な気配遮断ではないし……

これはあまり外出すべきではないかな。

いやいや、それをしては困るのはこちらだし、出向くか?

 

馬鹿言うな、出向いてる途中で何かあったらどうするんだ。

 

わざと気付かせてるのか?何のために?

誘き寄せる為にしちゃわざとらしすぎる。

……下手に考えても無駄だな。

向こうが何かしてきそうになれば動けばいいや。

 

まあそんなことよりも重要なことは沢山ある。

まず、秘密兵器の調整。

完成というにはまだまだ荒削りな部分が多いため、中身の性能がまだ発揮しきれていない。

 

こういう開発には後々の後悔がないように今のうちに完璧にするのが一番だ。

もしまた何か不具合が発生したらその時に対処すればいいだけの事。

 

現状での問題点は重量と射程だろうか。

 

重量はどうとでもなるが、射程はなぁ…ちょいと地上の知識をまた蓄えなきゃどうにもならんかな。

ま、出来るだけの範囲で弄くり回すか。

 

どっちにしろ……

 

「早めに済ませて、妙な包囲網から逃れなければな。」

 

何とかしなきゃなぁ、バレないように頑張るか。

 

取り敢えず、今夜は寝れないということが決まったので

少し憂鬱になるが、表には出さないで笑顔を張り付ける。

 

改良だけにそんなに時間を使うのかと問われれば他にも俺には仕事がある。

困ったことに、俺にまた依頼してきやがった。

 

というのも、悪魔の駒の件だ。

 

…もう分かると思うけど、はぐれ悪魔の討伐ね。

そりゃもう、怒ったよ。

怒ったけど近隣に被害を与えてるのは事実だし、自業自得だけど、俺の家が被害に遇わないという保証は全くない。

なので、家の近くの地域のみというのを条件に引き受けたのだ。

 

困った話、俺はどうも頼まれたら何やかんやで断りきれない質のようだ。

 

そんなお人好しの俺はこうしてはぐれ悪魔を討伐する立場にいるわけだが、一つだけ気にくわない事がある。

駒の開発者であるアジュカ・ベルゼブブは全くと言っていいほどこの駒がもたらす現状に興味も示さないということだ。

責任者であるこいつが飄々としているのはおかしいだろうに、被害を被っている元人間、元他種族の奴等を好き勝手に悪魔にしてるんだからもっと感じてほしいね。

責任って奴を。

 

これだから研究者は嫌いなんだ。結果だけ見て後は関与しない。

俺も迷惑してるんですよ、ふざけんなってんだ。

 

…駒の摘出もしてあげたいところなのだが、悲しいことにまだ確立してないのが現状だ。

 

こちら側が迷惑をかけてるのだから何とかして早めの解決をしたいが、未だに目処は立っていない。

サーゼクスも魔王としての責任が人一倍強いのか手伝ってくれているが……うむ。

 

今後の課題は多いが、やれるだけやるとしよう。

 

さて、着いたな。

 

家の周りにも勿論他の悪魔の家はありますとも、そんなに広すぎなくていいと言ったからちょうど良さそうな土地をもらっただけだから、俺は新参者な訳だしね。

 

なので、ご近所への被害拡大を防ぐためにも──

 

 

「─おや、ここで当たりのようだ。」

 

鉄臭い、これは間違いなく血の臭いだ。

 

「隠れてないで、出てきたらどうだね。

あまり引き込もっていては舞台役者としてナンセンスだ。」

 

「……なんだ、今日は客が多いな。」

 

出てきたのは、異形だ。

人の形を取れなくなったのだろう、説明しづらい程にまで歪んだ体を暗がりから現す。

言葉は理性的だというのに、姿は狂気的だ。

元の種族がキメラと言われた方がまだわかるというもの。

 

「客、ということは他にも来てたのか。

君を討伐しに?」

 

俺がそう尋ねるとはぐれ悪魔の男は苛立ちを隠さずに頭を激しく掻きながら答える。

 

「ああそうさ、俺はただ元の生活に戻りたかっただけなのに!

それなのにアイツは聞き入れちゃくれなかった!

それどころか下卑た笑み浮かべてお前は奴隷だとか言ってきやがったんだ!

だから殺した、どんなに頼んでも無理なら、もう実力で何とかするしかないじゃないか!

さっきの奴もそうだ、話を聞かずに殺しに来た。

だから殺したんだよ。」

 

悲痛な叫びだった。

それはどうしようもないという絶望に満ちた目で俺に訴えかけてるようにも見えた。

きっと、俺が対話の姿勢を見せたからだろう。

 

「……私には、駒をどうすることも出来ない。

君のその姿を元に戻すことも出来ない。」

 

「…そうかい。アンタも、俺を殺しに来たのか?」

 

「そうなるな。

……だが、本音を言ってしまえば、無駄な殺生は好まない。

君がおとなしく捕まるというのならまだ刑は軽くなるだろう。」

 

「だから投降しろって?馬鹿言うな、こんなことをした手前、おめおめと帰れるか。

それに、刑が軽くなるなんて信用できるか。

貴族社会の思想に染まったお上が、懲役なんて生温い考え出来るかよ。」

 

「主人を殺して、何人かの追手も殺したらしいがそうなったのも我々冥界側の責任だ。

こちらが言えば少なくとも死刑は免れる。」

 

「それでも嫌だね。第一、悪魔なんかの世話になるのが嫌なんだ。

俺の人生を無茶苦茶にしておいた挙句逆らったら独房か処刑だって?好き勝手するのも大概にしろ!

悪魔ってのは契約を厳守するんじゃないのか、人を陥れるだけが悪魔のやり方なのか!」

 

「いや何とも反論しづらいな。

ぐうの音も出ないとはこの事だ。

いやはや、これ程までにボロボロに言われるとは将来安泰だな冥界も。

将来があればの話だが……。」

 

「……なあ、アンタ本当に俺を殺しに来たのか?」

 

「ああ、そうだが。何だ、今すぐやりあいたいのかね?」

 

そんなに戦闘狂なのか……どこぞの白い蜥蜴を思い出すから止めてほしいんだが。

 

男はんな訳あるかと言う。

 

「やりにくいんだよ、アンタ。

殺しに来てるのにこうやって呑気に会話しだすし、悪魔の事は擁護する気全く無さそうだしよ。

結局どっちなんだよ……からかってるのか?」

 

「対話で済むなら、それに越したことはない。

……だが、そうだな。君は投降を拒否したからね。

 

残念ではあるが……ここで、死にたまえ。」

 

ひとえに、俺が話したかっただけなのかもしれない。

はぐれ悪魔の訴えを、どうにかしてくれという懇願を。

 

被害者は彼だ。

加害者は俺らだ。

だが、それでも、世界というのは汚いもので、どうにもならない事はある。

今回はそれがはぐれ悪魔だったというだけ。

 

俺は少しでも危険分子を排除しなければならない。

自分のために、家族のために。

 

 

「結局、アンタも俺達を救っちゃくれないって事かよ……」

 

「そうなるな。運がなかったと、諦めたまえよ。」

 

だから、死んでくれ。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

当然のように、俺は勝った。

 

男は腕は千切れ、腹を鋭い爪で抉られたようになっており、そこから血が止まることなく流れている。

もう、助かることはないだろう。

 

「が、ぐぅ……」

 

「異形故か、意外と耐えたな。……苦しいだろう、安心したまえ、すぐに楽にする。何か言い残すことは?」

 

男はただ、俺を睨むのではなく、少し笑みを浮かべている。

なぜ、笑っているんだろう。

殺されるのに笑えるのは何故なんだろう。

 

「へっ……アンタ、お人好しだな……」

 

「お人好しは殺しに来ないと思うが。」

 

「ただ殺しに来たなら、ダラダラと喋らねぇよ。」

 

「…言い残すことは。」

 

男はこうして何ともないように喋ってはいるが口からも血は大量に垂れているし、もう長くはない。

 

「……悪魔なんざ、滅びちまえ。」

 

「…ああ、そうなるといいな。さようなら、抗おうとした者よ。」

 

俺はその後、構えていた『銃』を発砲する。

 

弾は一直線に男の眉間へと当たり、男はまるでそこに居なかったかのように消えた。

 

「安らかに眠りたまえ。その魂が救われるかは分からないが、次はもう少し後の時代に生まれることだ、君。」

 

俺は通信を入れる。

相手は勿論、魔王様だ。

 

『やあ、ズェピア。

はぐれ悪魔の討伐は終わったかい?』

 

「今終わったところだよ。正直、我々こそが討伐されるべきだと思ってしまったがね。」

 

『それに関しては、否定しきれない。

いや、加害者たる僕達が事の発端だ。』

 

「理解しているようで、結構だ。

これが続くといつか必ず鉄槌が下る。

それこそ、三勢力ではない、誰かから。

そうなる前に、何とかしなければならないよ。

魔王の君ならば分かってるだろう、サーゼクス。」

 

『…ああ、分かってる。』

 

ああ全く、儘ならないもんだな。

俺達は常に何かを犠牲にしなければ進めない。

人間と何ら変わらない。

いや、人に根深い存在だからこそ、似てるのかもな。

 

さて、帰って体洗って家族団欒と洒落混むか──

 

 

「─何?」

 

 

その時、脳に警報が鳴り響く。

 

結界に何者かが侵入した事を知らせる警報が。

 




はい、次回から少しだけシリアスに突入します。

後、無事に邪ンヌお迎えしたんですけど、QP無くてスキルが悲しいです……

アビーも育てなきゃなのになぁ

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