【完結】 ─計算の果てに何があるか─   作:ロザミア

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どうも、ロザミアです。

剣式さんとふじのん同時に当たってホクホクですわ。
ところで、青王の強化は?

ではどうぞ。


仮面

やあ、皆の衆。

俺だ、ワラキーだ。

 

この挨拶も定着してきたな。

固定の挨拶が出来るのは心が平常な証拠だ。

さて、現在俺はいつも通り家にいる。

 

まあ、通信が来て話してるというのを除けば概ねいつも通りかな。

 

「それで、どうなった?」

 

通信の相手─サーゼクスは多少疲れたような顔付きで話し出す。

 

『最後のチャンスと通告したらかなり不満そうだったけど手は出さないって約束してくれたよ。』

 

「滅ぼされるか退くかと問われれば間違いなく後者を選ぶだろうさ。

君、半ば脅しをかけてないか?」

 

『強気な態度を維持しておかないとあちらが付け上がる。

ならば脅しを掛ける勢いで事の解決をするまでだよ。

君が行ったら皆殺しにしてただろう?』

 

「ハハハ、いずれ子を持てば分かる。

我が子が害されるのがどれ程の苦痛であり耐え難い屈辱か、ね。」

 

『子供って…君、やっぱり親馬鹿だろう?』

 

「かもしれないな。」

 

君もいずれこうなるんやでと思いながら言葉を返す。

これで旧魔王一派が俺達を襲おうとしないということが

確約されたので安心安心。

 

さて、ずっと前から頼んでいたもう一つの方も聞くか。

 

「サーゼクス、例のアレは見つかったかね?」

 

『アレは見付けるのは比較的簡単な方だけどまだ見付かってないかな。

見つかるとしたらそれこそ何か起こそうとするだろうし。』

 

「ふむ……」

 

『そもそも君は何故アレを探してるんだい?』

 

「アレが手に入ればこの家の守りもより堅く出来ると思ってね。

今回の旧魔王の件でよりそれを実感した。」

 

『……それは神器を抜き出すってことかい?』

 

「その通りだ。

だが安心したまえ、魂と結合しているそれのみを抜き出す。」

 

『…もうその技術が君にはあると?』

 

「ああ、錬金術というのは便利なものだよ。

見極めが楽になる。どこをどのように錬成すればいいかとかね。」

 

『その内ホムンクルスを大量に作りそうだね。』

 

「何なら作ってあげようか?」

 

『頼むからやめてくれ。僕の胃が持たない。』

 

まるで俺が毎回何かをやらかしているかのような発言。

おいおい、俺はなにもしてないだろ。

今までやったのだって金作ったり白龍皇殺したりドライグ沈めたり旧魔王一派ぶちのめした位しか……

 

あれ?俺って結構やらかしてない?

力見せつけてるような気がする……。

 

ま、まあ、しばらくはそういうのとは無縁になれるし?

モーマンタイモーマンタイ。

 

「胃薬を処方してもいいが?」

 

『君、医者だったのか?』

 

「体の構造を把握するのは得意でね。」

 

『人体錬成でもする気か君はっ。』

 

「そんな事しても私に得はないからしないよ。」

 

つまり得があればやってたのか…と呆れたような声を出すサーゼクス。

おいおい、利益を求めるのは普通だろ?

 

「さて、そろそろ通信を切らせてもらおう。

君の時間を取りすぎるのも失礼だろうしね。」

 

『ああ、じゃあ、また「待ちたまえ」…?』

 

「今聞くべき事があるのを思い出した。

 

月桂樹の花は好きかね?」

 

『月桂樹?いや、僕は赤色の薔薇が好きだな。』

 

「そうかね。…すまない、意味のないことを聞いた。」

 

『構わないさ。じゃあね。』

 

そう言って彼は通信を切る。

 

たまにこのような遠回しなヒントを出しているのだが気付く様子はない。

 

友よ、我が友よ。

その日が来るまで楽しませてくれよ。

俺はお前とのやり取りが結構好きなんだ。

俺はお前を裏切る。

だからこそ、この一時が楽しいんだよ。

 

いつか、お前と未来の主人公達が俺に向かってくる。

まるで本当の悪役のようじゃないか?

これを楽しまないで何を楽しむんだ。

 

「時間は廻る。世界は廻る。

関係は逆しまに。感情も逆しまに。」

 

廻れ廻れ、滑稽なまでに廻れ。

我々は既に敵になる運命だ。

 

その日まで、待つがいい。

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

「地上を散歩したい?」

 

「ええ、駄目?」

 

夕食を食べ終わり読書をしていたら突然フリージアが私に今の話を持ち掛けてきた。

一体何故だろうか。

もしや、この生活に不満が?

ナンテコッタイ、訳を聞かなければ……!

 

「ふむ、それは元々生まれ育った大地ゆえかね?」

 

「それもあるけど、何より、ズェピアとオーフィスと私の三人で歩きたいなって。」

 

「……。」

 

純粋な願いに近いものだった。

ただ、美しい大地を家族で歩きたい。

どこにでもある平凡な願い。

 

この子は、世界に純粋であれと願われたのだろうか?

この時俺はそう思った。

 

「構わないが、君は大丈夫なのかね?

白龍皇の件、忘れたわけではないだろう?」

 

「それは、まあ…。

確かに怖かったけど、また何かあっても助けてくれるって信じてるから。」

 

「素直で結構だが中々他力本願だね?」

 

「ええ、悪い?」

 

「悪くはないとも。

君は自分の力を弁えているとすらいえる。

それに、頼るというのは、そう簡単に出来ないことだ。

ふむ、たまには太陽の下を歩くのも悪くはないか。」

 

「吸血鬼なのに面白いことを言うのね。」

 

「逆だよ。吸血鬼だからこそだ。

それも普通を知る吸血鬼だからだよ。

普段は我々吸血鬼は太陽という不愉快極まりないものを睨んでいるが、時折あの太陽の下で歩くことができればどれ程良いことかと思うのだよ。

私は幸い、弱点となるものへの耐性が粗方付いているから問題はない。」

 

「ズェピアって、割りと何でもありだよね。」

 

「何でもはできない。出来ることだけだよ。

オーフィスには?」

 

「オーフィスはズェピア次第って言ってた。」

 

そういうのは俺に判断を投げてくるから困る。

いつか選択するときが来るかもしれないんだからそこらへんもやれるようになってほしいんだがなぁ……。

ま、信頼されてると思っておくかな。

 

「では、明日にでも行くとしようか。

滅多にない君からの誘いだからね、しっかり準備したい。」

 

「そんなに誘ったことないかな……?」

 

「主にしたとしてもトランプじゃないか。

それに、地上を散歩だなんてまるでピクニックだ。

柄にもなく楽しみにしているよ。」

 

俺の発言が意外だったのか、彼女はキョトンとした後に

可愛らしく笑う。

まあ、大人が子供のように楽しみで待ちきれないと言ったらそりゃ笑うか。

 

「ふふ、結構子供なところあるのね。」

 

「知らないのかね?男はいつまで経っても子供だよ。」

 

「初めて知ったわ。

ねぇ知ってる?女はいつまで経っても大人になろうと必死なのよ。」

 

「それは知らなかったな。しっかり覚えておくとしよう。」

 

「うん、そうしてね。

いつまで経っても覚えておいて、私の事。」

 

急に、儚げにそんな事を言う彼女に俺は一瞬どう反応すべきか迷った。

やはり、無理してるんじゃないだろうか。

覚えておいてなんてまるで最期の思い出作りみたいで。

 

「ああ、永遠に忘れないよ、家族なんだからね。」

 

俺は内心、人外と人の寿命の差を嘆いた。

彼女は人間、俺は吸血鬼、オーフィスは龍。

 

どうしてだろうか、急に何かが怖くなった。

こわい、怖い、恐い。

 

何に恐怖しているんだ?

 

「…ズェピア?」

 

「─どうか、したかね?」

 

「何だか疲れたような顔をしてるから、私の話、無理して聞いてない?

疲れてるなら寝た方がいいわ。」

 

「疲れてる?私は今日は特に疲れるような仕事をしていないよ。

何、少し明日の事を考えていただけだよ。」

 

「…そう、ならいいんだけど……。」

 

心配させてしまったようだ。

いかんいかん、俺がこんな様でどうする。

明日、何もないとは限らないんだぞ。

 

「何も心配はいらないよ。

それより、そろそろ寝た方がいい。

明日は目一杯楽しむのだから、眠くていけないなんて事はつまらないオチは無しにしたいからね。」

 

「…うん、そうね。お風呂入って寝るね。

おやすみなさい。」

 

「ああ、おやすみ。」

 

パタンと、彼女は扉を閉めて風呂場へと行った。

私は栞を挟み、本を閉じてから紅茶を飲む。

 

よく飲む茶葉を、いつものように淹れた筈なのに。

 

「……分かっている、分かっているとも。」

 

先程感じた恐怖の事を考えていた。

悟られないように考えながら、彼女の出ていく後ろ姿を見ていた。

 

その時、また恐怖が大きくなった。

止まっていた筈の爆弾が急に爆発するように。

 

決意を固めた彼女に言えるわけがなかった。

言ってしまえば彼女は揺らいでしまう。

 

それはダメなのだ。

それは俺の望む形ではない。

彼女は自分の望む最期を迎えるべきだから。

 

「だが、それでも──」

 

彼女の願いを聞いた身で、挙げ句それを良しと言った分際で。

世界の残酷さを理解した癖に。

悲しみを置いていこうと決意した筈なのに──

 

 

─君を失うのが恐いだなんて

 

言えるわけがないんだ。

君を邪魔したくないから、我が儘だと分かっているから。

 

 

「─最後まで、偽り続けるとも。」

 

だから、無駄にカッコつけて気取るんだ。

 

ワラキアの夜という仮面を被って、真実の自分を隠すように。

俺は自分を騙すんだ。




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