【完結】 ─計算の果てに何があるか─   作:ロザミア

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どうも、ロザミアです。

今回はワラキー頑張ります。


魔獣摘出

突然だが、話をしよう。

 

皆は怪物が来たらどうする?

 

何を言ってるんだ、そんな事あるわけ無いって?

そりゃ、そっちじゃないだろうな。

ここと違って、元からがノンフィクションなんだから。

 

だが、ここはフィクションの世界がそのままになったと思って聞いてくれ。

どうする?

 

俺は逃げる。

何故なら、そんなのに会ったら十中八九勝てはしない。

殺されるがオチだからだ。

 

だが、ここで俺に力があるとする。

 

そしたらどうなるか?

 

「■■■■■■!!」

 

「ふんっ!」

 

「■■■!?」

 

「「えぇ……。」」

 

殴ります、全力で。

 

はい、という訳で!

やあ、皆の衆。

俺だ、ワラキーだ。

 

何かキメラみたいなのが来たけどごめん、俺フォーリナーなんだ(嘘)。

昼食食べ終わった途端に来るのやめろよ!

 

俺がワラキーの力がなくて精神耐性無かったら……

別にやばくはないな。

オーフィスが居るし。

 

まあ、そんなオーフィスも引いてるんだが。

そりゃそうですよね。

キメラ来る→殴る→沈黙

こんな4コマ漫画より早く終わったらそりゃ反応しづらいよ。

俺だってしづらいもん。

 

そんな事よりもこのキメラについておかしい点が三つある。

 

一つ、この生物を造り上げる技術はまだ地上にはないという点。

これに関しては実際に見てきた俺が確かな証拠となっている。

生物実験なんてそれこそまだ先の話だろう。

 

二つ、キメラにしては弱すぎるという点。

必ずしも強いという訳ではないのだろうが複合生物ならばそれこそ強い部分のみを合わせて造られたモノの筈だ。俺ならばわざわざ弱い部分を残さない。

 

三つ、そもそも魔獣は冥界の、それもタンニーンクラスの強者が管理している場所にのみ生息している点。

これは前にサーゼクスに聞いたので間違いないだろう。

 

この三つの事柄から見て分かることは一つ。

 

『魔獣創造』を持つ人間がいる可能性が高い。

 

ならば、あのキメラは尖兵かもしれない。

 

「オーフィス、フリージアを頼む。」

 

「ん、任せて。」

 

「ズェピア、さっき殴った生き物って……」

 

「キメラという個体だ。だが、この個体は繋ぎ合わせた跡も無い、遺伝子を組み換えて造る技術は作られてはいない。

こうなるように創られたと考えるのが妥当だろう。」

 

「神器?」

 

「恐らくは。それも神滅具だね。」

 

「私と、同じ……。」

 

同じく神滅具を持ってるフリージアは思うところがあるようだ。

しかし、どうしたものか。

魔獣創造によって創られる魔獣はどこまで応用が利くか未知数だ。

 

それに、創造に制限があるのかも不明ときた。

 

やはり、一番得策なのは術者を倒すことか。

 

「オーフィス、フリージアを守ってくれ。

私が神器使いを倒そう。」

 

「ん、気を付けて。」

 

「……ズェピア、そのっ…」

 

「分かっているよ。

まずは話し合いで解決しに行く。

それでダメならば最悪…分かるね?」

 

「うん…気を付けてね。」

 

「任せたまえ。」

 

俺よりもオーフィスの方がこの場での護衛は適していると判断して俺はキメラが来た方へと進んでいく。

 

それに、交渉なら俺の方が舌が回る。

オーフィスはまだそういったものを覚えてないからな。

適材適所という奴だ。

 

『■■■■──ッ!!』

 

「またキメラか。」

 

同じ個体…いや、先程のより力を感じるから強化個体だろうか。

それが俺に襲い掛かって来るが死徒の俺からすればそれほど速い攻撃でもなく、マントを伸ばして顔面を突き刺し、断末魔を上げる事もなくキメラは絶命する。

 

「ふむ……カット!」

 

「「「■ァァっ……」」」

 

空から鋭い嘴で俺の脳天を突きに来る鴉に似たナニカを爪で切り裂く。

チッ、これ以上物量で攻められると面倒だ。

さっさと無力化しないと。

 

空を見ると何体かオーフィス達の方へと向かっていくのが見える。

今から落とそうにも取り逃すだろう。

 

落とすより創造者の方へと向かう方が得策だ。

 

そう思い俺はさらに奥へと跳んだ。

無論、邪魔する魔獣共は殺した。

面倒だからタタリを使ったが、こういう時の教授は本当に頼りになる。

相手が多ければ多いほど彼の混沌がどれ程絶望的か分かる。

単純な物量ならば彼はこの世界でも上位に位置するだろうな。

しかも殺すのも困難と来たら誰でも匙を投げる。

 

あの眼鏡やっぱおかしいわ(褒め言葉)。

直死の魔眼はチートだなぁ。

この男を殺すことができるんだから。

七夜の血と体術にこの魔眼という鬼に金棒、アーサー王にエクスカリバーみたいな感じで相手からしたらやってられねぇ状態だよ、うん。

俺なら間違いなく逃げるね。

 

両儀?あれも嫌だね。

というかあの手の人間に勝てると思えん。

 

……ん?この世界にはそれがない。

 

教授を再現→殺すのが一握り程度→冥界の生命のピンチ→やったぜネロカオス

この流れ……完璧だ。

 

まあ、それはともかく。

 

かなりの数を殺してる筈だが未だに術者の姿が見えやしない。

気配はするんだがな……。

 

「些か飽きたな。あまりしたくはないのだが……

本番中にアクシデントはよくあることだ。

そう、例えば竜巻とかね。」

 

俺を中心に巨大な竜巻を発生させて森を吹き飛ばす。

森在住の動物達には悪いが、弱肉強食の一部と思ってくれ。

 

竜巻が消える頃には見晴らしがよくなってるだろう。

 

「さて、術者は……そこかね。」

 

「ひっ……」

 

思ったより小さいな。

男の子とも女の子とも取れる中性的な顔立ち。

声も子供だからあまり宛にならない。

布のようなものを着ていて顔しかわからん。

 

困った。

実に困ったぞこれは。

……交渉しづらいなぁ。

 

「君かね、先程から私達に獣を差し向けてくるのは。」

 

「うっ、ぅん。」

 

「……ふむ、私は敵ではない。

君が攻撃をやめてくれればだがね。

そちらが何もしなければ危害を加えることはしないと誓おう。」

 

会話の姿勢を取ってくれるように出来るだけ優しく話し掛ける。

忠告も含めてだけどな。

 

子供は警戒しながらも話しかけてくる。

 

「僕を、捕まえない?」

 

「捕まえないよ。何故、そう思ったのかな?」

 

「黒い羽の人達が、僕の村を襲ってきて…それでっ」

 

「堕天使か……」

 

チッ、アイツら面倒なことを。

 

確か堕天使のトップはアザゼルだった筈だ。

サーゼクスから人とナリは聞いている。

 

神器を研究する事が生き甲斐、とかなんとか。

 

成る程、確かに魔獣創造は神滅具で研究しがいはあるだろう。

だが、子供一人を拐うのに村を襲うのはどうかと思う。

 

「……こんな力が、あるからっ。」

 

「要らないと?」

 

「いらない!

パパも、ママも、皆あいつらに殺された!

こんなのがあるからこうなったんだ!

だから、こんな力いらない!欲しくなかった!!」

 

いつかのはぐれ悪魔と重なって見えた。

悲痛な叫びだ。

異常な力より、平凡な日々を求める声だ。

 

聖書の神。

お前は確かに人間の為と作ったのかもしれない。

だが、現状がコレだ。

力を喜ぶ者よりも、力を嘆く者が多い。

これからの世界にこのような物がいるのか。

 

否、断じて否である。

 

神が人間を守る時代はもうありはしないのだ。

 

「…私なら、その力を奪い取れると言えばどうする?」

 

だから、こんな提案をした。

こうせざるを得なかったと涙を流す者が目の前に居て。

それをどうにか出来る力があって。

 

どうして助けないという選択が出来ようか?

俺には出来ない。

 

家族という宝を求めた俺には出来っこないんだ。

 

目の前のこの子を助けたい。

 

いつか覚悟を決めるためにも。

 

「出来る、の?」

 

「可能だ。だが、失敗して死ぬ可能性もある。

……どうする?」

 

死ぬかもしれない。

その可能性を幼いながらも子供は必死に考える。

力を持って、異常に生きるか。

力を無くし、平凡へ生きるか。

 

5分だろうか、それぐらい時間が経った後に子供は俺を真っ直ぐと見た。

 

「お願いします。」

 

「─ふふ、いい目だ。

了解した、必ずや私が君を助けよう。

死徒二十七祖十三位タタリとして誓おうではないか。」

 

「死徒二十七……え?」

 

「気にしなくていい。……他人()の肩書きだ。」

 

そう、俺は彼じゃない。

彼という皮を被った元人間だ。

そうだとも、俺は彼のような大層なことは何一つしちゃいない。

けれど、それでも俺は。

 

「さあ、座りたまえ。少し、いやかなり苦痛を伴うやもしれんが、意識を失わないように。」

 

これは魂に干渉する。

つまり、その魂を宿す者には異物感がするだろう。

俺というその身にないナニカが侵入するわけだからな。

 

そして、その魂に強く結び付いている神器のみを取り除くのは決して簡単ではない。

 

だが、今まで俺は何もしなかった訳ではない。

俺は神器を取り除く方法を模索した。

何度も、何度もだ。

 

そしてついに見付けたのだ。

 

アトラス院院長であり、才能あるこの身だから出来ることだ。

 

「では、手術の時間だ。」

 

エーテライトを首筋へと刺す。

この子の情報というより、魔獣創造の情報を得ることによりコンタクトを楽にする。

 

……うん、思ったより早く見つけた。

相手が子供でよかったといえる。

大人だったらもう少しかかってた事だろう。

 

だが、休んでる暇はない。

この間にもこの子は消耗している。

このまま魂の方へと接続する。

 

『─中々、凶暴なモノを飼ってるな。』

 

意識が魂に着くと、多くの怪物がそこにはいた。

 

『『『■■■■■■■■■!!!』』』

 

本当にいるわけではない。

魔獣創造という神器が俺を拒むために無意識的に造り出した悪性データだろう。

 

これを切り分けながらさらに深層へと進む。

 

「うっ、ぐぅ……!」

 

子供が激痛に悶える。

だが、暴れないところを見るに耐えているのだろう。

この子の頑張りにも応えねば。

 

少し急いで進む。

 

『……見えたぞ、暴れ馬よ。』

 

データの海の底に、光る物体を見付ける。

酷く歪ながらも輝くこれこそが魔獣創造だろう。

 

他のデータよりもより濃いからな。

 

さて、ここからが本番だ。

手早く済ませないと子供が死ぬ。

 

するのはデータの分解、そして取り込みだ。

分解しただけでは取り除けない。

分解したソレがまたくっついてしまう可能性があるからだ。

 

周りの悪性データに比べ大人しいコレを繊細かつ素早い動きで分解していく。

 

何故だろうか。

もう少し何かあると思ったが……。

 

無事に分解し終え、俺の中へと取り込む。

 

…これが、神器か。

なるほど、白龍皇の男の気持ちも分かるかもしれない。

これは強大な力だ。

こんなのを突如手に入れればああもなる。

まあ、俺には起こらないが。

 

力に酔えば家族が危ない。

それこそが俺の抑止力となっているからな。

 

さて、終わったな。

 

「……終わったぞ。」

 

「ぅ……」

 

「っと、よく耐えたと言うべきだなこれは。

終わるまでずっと激痛を耐えていたのか。」

 

子供は俺に倒れかかり、俺はそれを受け止める。

 

……うん、よく頑張ったな。

 

「ともあれ、さっさと家族の元へ戻らねば。」

 

子供を抱えて戻る。

軽いな、ちゃんと食べて……る訳ないか。

 

 

 

 

 

 

「あ、お帰りなさいズェピア。」

 

「ん、おかえり。モグモグ」

 

「……何を焼いているのか、聞いても?」

 

「「魔獣。」」

 

「ずいぶん野性的になってお父さん悲しいよ。」

 

【悲報】戻ったら娘達が魔獣殺して焼いて食ってました

 

おい、おいおい、待ってくれ。

ソレさっきの飛んでった奴だよね?

食えるの?

いやその前によく食べようって思ったね。

 

「ズェピア、その子が神滅具の?」

 

「神滅具ならもうないがね。」

 

「えっ?まさか、殺したの!?」

 

「違う違う。取り除いた…は違うか。

移植した。」

 

「移植って…もしかして」

 

「予想は当たってると言っておこう。」

 

「…そっか。よかったぁ…その子殺しちゃったのかなって思っちゃった。」

 

「我、信じてたから平気。」

 

「まあ、それは後々でいいとして。

この子の目が覚めるまでしばらくここで休むとしよう。」

 

二人とも頷く。

さて……この魔獣のこんがり肉どうしよう。

上手に焼けちゃってて困ったんだけど。

 

美味しくなさそうなんだけど?ハァ……。

 

 

その後、魔獣の肉を一口食べたが案外美味くてさらに困惑してしまった。

 

 


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