今回は短めです。
日記を書くのは楽しいが、もし見られているのならば恥ずかしいものだ。
何せ、黒歴史を晒しているようなものだ。
まあ、これを見ているということは見つかるような場所に置いた俺が悪い。
俺本人に会ったなら、その時は存分にネタにして笑ってやるといい。
まあ、下手したらその時が来ないで終わるかもしれないが……。
ああ、すまない。
これを見ているかもと思うとこうやって前書きを書くのも悪くないと思ってしまった。
『これは私が居たという記録である。』
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◆月@日
今日はオーフィスから話があるらしいので俺の部屋で話すことに。
何でも、計画を始める少し前に自分で少しやらせてほしいそうな。
俺が動きやすくするためでもあるとの事。
なるほど、舞台は仕上げておいてくれるって事か。
俺がやるんじゃなくていいのかと聞いたら逆に俺がいるとやりにくくなるらしい。
うーん……利用相手が分かったような……。
あまり無理はしないでくれと頼むと、心配してくれてありがとうと言われた。
まだやるわけでも無いのだが、そんな話出たらもう心配で心配で。
家族が危ない橋……いや、オーフィスは俺より強いし危なくはないか。
まあ、変な所に行くのを心配するのは何もおかしくはない。
そんな一面を見せたせいか、教授がまた笑っていた。
そんなに笑えるかぁ!?
その後、四人でトランプで大富豪をした。
珍しくオーフィスが一位だった。
そして、教授とフリージアの最下位を決める戦いではフリージアの勝利だった。
その時の教授の発言が『お前が─私の死か……』という原作でも有名な方の台詞を出したときは吹いた。
おっかしいなぁ……他の譲治キャラの性格でも入ってんのかな……?
夕食はシチューにした。
オーフィスと教授がよく食うので食費がゴミのように消えていく。
稼ぐのは俺なんやで……
∀月∵日
教授が冥界の獣……幻想種を見たいと言うので連れていったら味見してしまった。
この時、俺はオーフィスとフリージアを連れてこなくてよかったと割とガチめに思った。
ネロ・カオスは666という獣の因子の集合体だ。
当然、それを保つのにかなりの燃費がいる。
故に暴食としての彼が成り立っている。
というのが原作での彼の設定。
俺の造り上げたネロ・カオスは燃費というのはそこまで悪くはない。
魔獣を使った結果なのかもしれない。
本質は変えられなかったので彼の『食事』の風景は凄まじいものだったけど。
その後、『食事』を終えた教授は意外にもつまらなそうな顔をして『粗悪な味だ。これでは貴様の手料理を喰らう方がまだマシというものだな。』と言っていた。
ドラゴンは幻想種だが、この世界では神秘が薄れているのか……?
あり得るな、神話がごった煮のこの世界なら。
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ゞ月◇日
……時間ってのは随分と経つのが早いもので、けれど俺は死徒の体のお陰か老けることはない。
もう、ずっと幸せを味わってきた。
これからやることを考えると俺には勿体無い事だらけだった。
オーフィスも、教授も、何も変わらない。
ただ一人を除いて、何も変わらない家の風景。
しかしその一人が変わってしまって。
どうしようもないのだ。
これは、俺達と彼女の約束だから。
あの子の今までで一番決意を込めての願いだったから。
だから、だから。
フリージアは、もう幾つだったか。
40になったんだったかな。
家事とかも、前よりずっと上手くなった。
……だが、その分、ある未来が見えた。
その間世界で何が起こったかとかはよく覚えてない。
こうもあっという間だなんて、思いもしなかった。
辛い、怖い、苦しい。
だが、それを言うわけにはいかない。
だって、俺達は約束したんだ。
彼女の終わりまで、俺達はただ少し異常でいて素晴らしい日常を過ごす。
そして、彼女は人のままに死ぬ。
それでいい、いいんだ。
どんなに歳を取っても、どんなに何かを忘れても。
何よりも、美しいと。
そう言える自信が、俺にはある。
だからこそ、最後まで、その名前のとおり、純潔でいなさい。
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☆月△日
……。
この日記も長く書いたなぁ。
フリージアは…もう長くはない。
彼女が寝ているときに少しだけ魂を見てみた。
もう、輝きが薄くなってきている。
これは生命の終わりが近づいている証拠でもある。
その事をオーフィスと教授に伝えた。
オーフィスは無言で俺に抱き付いてきた。
俺にはかける言葉なんて分からなかった。
大丈夫だとかそういう言葉を送るなんて出来なかった。
ただ、俺はずっとオーフィスの必死に抑えた泣き声を聞きながら背中を優しく叩くしか、出来なかった。
教授はいつものように紅茶を飲んでいた。
だが、その表情はいくらか暗かった。
君にも思うことがあるのかと聞くと、『特にはない』と言われた。
ただ、その後に『喪失というのは、苦しいものだな。』とだけ言って黙り混んでしまった。
そして、フリージアはというと……
元気と言えば、元気だ。
車椅子に乗ってることを除けば、だが。
もう、足がいつものように動かないらしい。
その歳でなるのは意外ではあったが、体が元々良いとは言い切れなかったし、仕方無いと思った。
60代の彼女は、そこまで老けてるようではないが、体は別らしい。
もう、何かを悟ったような顔をして。
よく俺に話しかけてくる。
オーフィスにも、教授にも。
その度に、何かが胸を締め付ける。
その度に、俺の決意が揺らぎそうになる。
だが、駄目だ、駄目なんだ。
俺は、人間ではない。
俺はもう、人の姿をした化け物だ。
だからこそ、俺は彼女を見届ける。
変えようだなんて何度も思った。
だけど、その度に抑え込んできた。
俺も、頑固なんだ。
彼女と同じように頑固なんだよ。
うん、大丈夫。
俺達は、もう大丈夫だから。
もういっぱい貰った。
十分だ。
だから、その日まで笑ってくれると嬉しい。
それが俺達の宝だから。