【完結】 ─計算の果てに何があるか─   作:ロザミア

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どうも、ロザミアです。

今回は英雄派と戦……いません。
まだちょっとあるんじゃ。



英雄ってあれだよね、面倒だよね。

英雄派、中々に優れた戦闘力を有する集団であり、一人一人が英雄の生まれ変わりとリーダーである曹操は自信満々に語っていた。

 

我は、だからどうしたと鼻で笑おうかと思ったが、馬鹿にした結果数人が激昂して襲い掛かってくるのは目に見えていたので面倒なのでやめた。

 

というより、どうしてリーダーが曹操なのか。

 

ヘラクレス、ジャンヌ・ダルク、ゲオルグ、ジークフリート等の面子で曹操では微妙なネームだ。

 

曹操という英雄を馬鹿にしてるのではない。

曹操は確かに英雄として語られるべき存在の一人だ。

 

だが、何だか見劣りするというか…ヘラクレスという名前が大きすぎる。

今その名前を継いでいる男は馬鹿の一言に尽きるが。

 

そんな連中が京都で何か事を起こすと聞き、結果だけでも見ようかなという建前と我を倒せる可能性を持つものを所持していると言うので、その真偽を確かめるべく来たというのが本心だ。

 

そんな中、ズェピアとカオスに会った。

偶然にしては出来すぎているので、恐らく何らかの方法で知ったというのが当たりか。

 

しかし、ズェピアの顔…いや、雰囲気が少し焦っているように感じる。

何というか、何かを保とうとしているような。

 

「……ズェピア。」

 

「何かね?」

 

「何か、あった?」

 

「何も。突然そう聞いてくるとは、どうしたのかな。」

 

「……何でもない。

ただ、無理はしないで。

ズェピアが頼むことなら、何でもやるから。」

 

「娘にそう言われては、無理はできないな。」

 

「…それより、オーフィス。

英雄派は何故京都に来たのだ。

ここに妖怪等の古来より日本で生きてきた人外の集まりではあるが……」

 

カオスが、そう聞いてくる。

実は我も、詳しくは分かってはいない。

妖怪を倒しても何の意味もないし、日本勢力に戦いを挑むという事はしないだろうし。

 

「……我も分からない。

でも、英雄派が京都に来るという事は、ここに何かあるってこと。」

 

「それは確実、か。

……私の予想ではあるが、英雄派が『絶霧』を持っているんだろう?」

 

「ん、当たり。」

 

「やはりか。そうなると……面倒だ。」

 

『絶霧』。

神滅具の一つであり、結界系の神器。

霧で包んだ対象を防御、または転移させることが可能であり、使い手次第で国一つの人全てを異空間に閉じ込めるなんて事も出来る厄介極まりない神器。

 

面倒だというのには我とカオスも同意する。

 

「ズェピア、『絶霧』欲しい?」

 

「む?アレをかね?…………いや、どうだろうか…。」

 

「……そう。我、どうあれやる気出す。」

 

「ほう、貴様がそうするのなら、私もそうするか…。」

 

ズェピアが欲しいなら、それが出来る段階まで少し力を出してもいいかもしれない。

 

カオスもいるし、何より我の隣にはズェピアがいる。

失敗する道理はない。

 

意気込む我達にズェピアは苦笑する。

何だか懐かしむように。

 

「ありがとう。では、そろそろ行動に移すとしよう。

どのような劇になるかは不明ではあるが、まあ旧魔王よりかは楽しい舞台にはなるだろう。」

 

そう言って、ズェピアと我達は転移する。

 

……結局、ズェピアは我に言ってはくれない。

フリージアと我の違いは、何なんだろうか。

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

さて、会話しながら特定した場所へと転移したが、ビンゴかな?

何やら奇妙な感じだ。

 

ていうより……

 

 

「─まさか、来るのがそちらとは。

やはりやってみるものだな。」

 

「ふむ、私は予想外のキャストだったかな?」

 

「全くもってその通りだ、ズェピア・エルトナム。

そして、オーフィスと不可思議な男。」

 

話し掛けてきたのは、20に届かない程度の、制服の上に漢服を纏った出で立ちの男。

 

恐らくは、こいつがリーダーか。

周りにも人間はいるが、いやはや、警戒心たっぷりなご様子。

 

「まさか、オーフィスが貴方と繋がっていたとは驚きだ。」

 

「我、最初からズェピアと家族。」

 

「それは見抜けなかった俺達の未熟ってことか……

自己紹介が遅れたな、俺は曹操。

そして、周りにいるのは英雄派の幹部、ジャンヌ、ジークフリート、ヘラクレス、ゲオルグだ。」

 

「全員が英雄の名を継ぐ者達かね。

なるほど、英雄派、という名前は伊達ではない。」

 

ゲオルグって英雄でいいのかな?

俺はあまり知らないけど。

 

そも、こいつら英雄派って言っても名前だけだしなぁ……

 

「君達のここに来た目的は何かな。」

 

「……まあ、言っても言わなくても差違は無いか。

俺達は、英雄になりたいんだ。

だからこそ、俺達は人外を倒し、高みを目指さなくてはならない。

それこそが英雄になる条件の一つだ。」

 

「……ふむ。その為にサマエルも?」

 

「そこまで知り得ているとは。

そうだ、どうやったかは言えないが、龍殺しとしては、あれに勝るものはない。」

 

…そのサマエルは、隠してるようだ。

 

にしても、英雄に成りたいねぇ。

 

正直、馬鹿馬鹿しい。

英雄ってのは人外倒せばいいってもんじゃないだろうに。

曹操とジャンヌに至っては人と人の戦いで活躍した奴だし。

 

ヘラクレスとジークフリートもただ人外を倒したわけではないし。

 

ゲオルグは知らん。

 

「…では、君の言葉通りなら私を倒せば君達は英雄になるのかな?」

 

「そうだ、貴方は超越者に近い存在だ。

それを倒せば俺達は英雄として一層名をあげる。」

 

「それは誰に対しての英雄かな。」

 

「……誰に対してだと?」

 

「確かに、人外を殺し英雄になった者はいる。

だが、それも多くの過程あればこそ。

そして何よりも、多くの者に英雄と讃えられなければそれは成り上がり志願者にしかなるまいよ。

……君は、君達は私を倒しただけで、誰に讃えられるのか?」

 

俺の質問に、曹操は詰まる。

まるで、予想外の回答が来たときの顔だ。

分類的には驚愕。

 

答えを待っていると、控えていた筋肉ムキムキマッチョマンの変態…ではなく、大男が前に出る。

 

「おい、言葉で惑わそうったってそうはいかねぇ!

リーダー、聞く必要なんかねぇぜ。

こいつをぶちのめせば俺達は英雄としての第一歩を踏める!

まずはこのヘラクレスが相手してやるぜぇ!」

 

意気揚々と馬鹿らしい言葉を並べ、俺へと突っ込んでくるヘラクレスを名乗る男。

……こんなのが?

ギリシャの大英雄の子孫?

 

…そもそも、ヘラクレスに子供は居たか?

ギリシャ神話も詳しくはない。

でもなんか、子供殺したんじゃなかったっけ?

 

まあ、いいか。

曹操の方を見ると、仲間の言葉で我に返りヘラクレスの戦いを見ている。

……所詮こんなもんだよな。

 

オーフィスと教授が出ようとするのを腕で制してから俺が前に出る。

 

「ヘラクレス、か。

かの大英雄の名を継ぐのなら、それ相応の実力はあるのだろうな。

それに、先程不愉快な言葉を聞いた。

……私が、第一歩?」

 

「ああそうだ、アンタを踏み台にして俺達は更に強くなる!」

 

…黙って聞いてりゃ調子に乗りやがってこのデカブツが。

 

殴りかかるヘラクレスの後ろに七夜志貴を出してナイフで背を切るように命じる。

 

「ヘラクレス、後ろだ!」

 

「っ、なんだこいつ!」

 

もう一人の男…多分、ジークフリートの言葉でいち早く気付けたヘラクレスは七夜のナイフが当たる瞬間、爆発を起こす事で事なきを得る。

 

ああ……七夜君、消えちゃった……

そして、俺の中の怒りは一気に冷めてしまった。

 

まあでも、程度は知れた。

忠告しておこう。

 

「神器か…?」

 

「…爆発する神器か。

私の敵に成り得ないな。」

 

「何だと……?」

 

「私を倒したいのならばもう一芸位は欲しいものだよ。

先程の奇襲に自ら気付けない君では私の相手は務まらない。」

 

「テメェ、俺を馬鹿にしてるってのか!?」

 

「正当な判断だよ。

君だけではなく、君達が束になっても私に勝てはしない。

私は、君達には殺されない。」

 

「……!」

 

「何が正当な判断だ、俺がそんなもの覆して「ヘラクレス、やめろ。」リーダー!?何で止めるんだよ!」

 

周りの者も曹操が止めたことに不満そうであったが、曹操が前に出た事により、ソレは消えた。

 

「……俺がやる。」

 

先程まで黙っていた曹操が槍を出し、俺と対峙する。

……あの、槍は。

 

神滅具……それも最強の神滅具である『黄昏の聖槍』か。

 

「ほう、君一人でかね?」

 

「ああ。…それと、答えを知りたい。」

 

「答え?」

 

「俺の心の中の英雄の成り方はこうなんだと、ずっと思っていた。

俺は、一人で決めつけていた。

けれど、違うのかもしれないと思う俺がいる。

……俺の心に、答えが欲しい。

だから戦ってくれ。」

 

「……。」

 

「ズェピア、付き合う必要ない。

さっさと終わりにする。」

 

「……すまない、オーフィス。

私も、馬鹿なようだ。

こう誘われると断れない質のようだ。」

 

「……むぅ。」

 

いじけてしまった。

後で何か奢ろう。

 

静かに俺達のやり取りをオーフィスと見ていた教授がオーフィスの頭を撫でた後に俺に聞く。

 

「…ズェピア、何故そのような事に付き合う?」

 

「彼が人間だからだよ。」

 

「……人か。」

 

人間。

そう、人間だ。

かつて俺もそうだった種族。

あの子も、人間だった。

 

そして、目の前のやつらもまた人間だ。

 

その中で、今の曹操の目はいい。

悩みを抱えながらも戦う意思を捨てはしない。

それを拒むのは、俺にはとても無理だ。

大分こちらの世界に毒されてきたな、俺。

 

「…貴様の好きにするといい。」

 

「やる気を出してくれたというのに、二人ともすまない。」

 

「「高いヤツ奢りで許す。」」

 

「いやぁ容赦ないなぁ!」

 

つっら……つっら……。

こいつら、絶対に俺を高いレストランにぶちこむぞ……未来が、見える……!

 

「……戦ってくれるようで感謝する。それと、御愁傷様。」

 

「やめろ、敵に言われるのが一番辛い台詞を監督たる私にぶつけるな。

……さて、気を取り直して始めよう。」

 

「どうあっても財布は飛ぶようだが。」

 

「君はあれかね?煽りで私を殺そうというのかね?

財布は飛ぶが君に首を飛ばされる事はあり得ないぞ。」

 

「俺は、相手が超越者に近い者であり、今後の食事がカップ麺になるであろう吸血鬼にこれより挑む!」

 

「ネタに走るなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

こいつ、絶対にぶちのめす。

ていうか、先程までの少し暗い顔はどこ行きやがった英雄もどき!




シリアスに成りきれないのは確実にこの家族が悪い。

それと、曹操も目の前のやり取りを見て俺も深く考えなくてもいいのではとなったからああなった。
尚仲間は白目である。

え?他の英雄派喋ってないって?
……次回待ってね。

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