【完結】 ─計算の果てに何があるか─   作:ロザミア

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番外編 純粋な死徒 5花

あの人と話して、自分が変わって、周りも変わって。

その後、俺は強くなりたいとより一層思った。

 

我欲ではある。

だが、俺という男は何処までいっても端的に言って糞野郎の部類に入る。

何せ、報酬がないとやる気を出せない。

 

やれ胸だ、やれ女だ。

我ながら、利用するならこれ以上の馬鹿はいないと笑う。

だが、だからだ。

 

だから、俺のこの思いは自分から見ても異常だった。

それは俺に見返りなんてない。

来るのは自己満足だけ。

 

報酬がその場での嬉しさなんて、馬鹿馬鹿しい。

 

……でも、仕方がなかった。

 

『イッセー君は、強くなれるよ。』

 

あの笑顔を見たら、こうなるのも仕方なかった。

あんな無垢な笑顔を向けられて、優しさを受けて、少しの厳しさを貰って。

 

落ちない男なんて居ないだろう。

いや、もしかしたら、自分だけなのかもしれない。

 

それなら胸を張って叫んでやる。

俺はこの人に惚れて強くなれた、と。

 

だけど、その叫びは、まだしてはいけない。

まだ俺は弱いから。

 

それでも強くなって、いつか伝える。

その後が怖いけど、負ける気がしない。

寧ろ、勝ててしまうような気がする。

 

……なのに。

 

あの笑顔の人は連れ浚われて。

助けるのは、俺やその仲間達で。

 

俺に出来るのか、と聞かれれば難しいと答える。

誰だって、俺だってそう思う。

 

それでも惚れた人だから。

守ると約束をしたから。

遅くなってでも、俺はあの人を助けなきゃならない。

 

『お前のそれは、恋ではなくて呪いだ。』

 

堕天使の総督は俺にそう言ってきた。

だが、俺には大差なかった。

恋が呪いなら、その呪いを喜んで受けとる。

それで俺が強くなれて守れるのなら。

甘んじてその呪いの苦しみを貰おう。

 

『行きすぎるとそれは破滅だ。』

 

主の兄の魔王はそう言った。

破滅なんて、怖くはない。

だってそうだろ、俺は守るために強くなりたいんだ。

その破滅を砕くために強くなるんだ。

敵が来ただけだろう。

 

『相棒は変わったな。』

 

俺を宿主として俺の内にいる龍が穏やかに言った。

そうだな、と笑って返した。

俺でも意外で、でも誇らしい。

 

ヒーローには程遠い、騎士とも言えないド三流。

それでもやれることはある。

俺には、やるべき役がある。

 

俺という男は、早いか遅いか分からないが…男として、意地を通すステージへと上がったようだった。

 

あの人の父親が、俺にあるものを渡してきた。

とても俺に馴染んで、とても強力な物だった。

俺なんかにいいですかと聞くと。

 

『君の救出劇のサポート位は出来なくては、監督失格だろう?強引に舞台に上がった愚か者を、倒してくれ。』

 

任せてください、直ぐ様そう言えた。

敵がどんなに強くても、仲間がいる。

俺には、頼れる仲間がいる。

 

だから負けられない。

この守るための力を。

ようやく使えるんだ!

俺は、迷わない。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

冥界にまで移動した俺達はさっそく黒幕、リゼヴィムのいる場所にまで移動を始めていた。

 

「準備は?」

 

「出来てます!」

 

「こっちも万端よ。…でも、私達で勝てるのかしら。」

 

当然ながら、俺の主である部長、リアス・グレモリーと俺と同じ眷属の仲間達がいる。

頼もしく感じる。

それに、部長の不安も分かる。

相手はくそったれだとしても超越者だ。

普通に考えて、勝てる相手じゃない。

 

どうしたって差はある。

 

何かを言った方がいいと思ったその時、同じくついてきてくれたネロ・カオスさんが言葉を発する。

 

「何、不安を感じるのは当然のことだ。

私はともかく、貴様らはまだ強いとは言い切れない。

だが…それでも己より強い相手と戦い、勝ってきたのだ、少しは自信を持て。」

 

「先生…」

 

「確かにリゼヴィムは強い。

負ける可能性は十分にある。

もしそうなったら、主として、間違いのない判断をしろ。」

 

「…はい。」

 

「待ってください、誰か来ます!」

 

「誰だ、こんな時に……!」

 

もし敵なら、消耗させるのが狙いか?

だけど、まだ敵とは……

 

そして、こちらへと飛来してきた奴を見て、俺は構える。

今までのコイツからして、敵だろ!そう思った。

 

だが、飛来してきた白い奴は好戦的な意思を示してない。

 

「何しに来やがった、ヴァーリ!」

 

「リゼヴィムと戦うと小耳に挟んだ。

……俺も同行させろ。」

 

「何だと?」

 

「……一応聞いておく。

俺達はフリージアさんを助けに来た。

お前はリゼヴィムと戦うのが目的なのか?また戦いたいって欲か。」

 

「違う……が戦うのが目的なのは当たっているよ、赤龍帝。」

 

いつもとは違う、強い否定の意思。

これには俺たちも戸惑うが……

 

「詳しくは聞かないぜ。」

 

「いいのか?」

 

「ちょっと、イッセー!」

 

「部長、ヴァーリが味方なら心強いです。

それに、リゼヴィムを相手してる間にフリージアさんを助けられるかもしれない。」

 

「……分かったけど、せめて私に許可をとってからにしなさい。

いいわ、確かに白龍皇が味方なら心強いわ。

皆もいいわね?」

 

「ええ、構いませんわ。」

 

「裏切るというのが無ければそれで。」

 

「今回はそういうことはしないさ。」

 

ヴァーリ・ルシファー。

リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

 

……つまり、そういうことなんだろう。

俺たちが口出ししていい事じゃない。

ヴァーリが決着をつけるってんなら任せる。

元々は敵だしな。

 

だけど、今回は昨日の敵は今日の友だ。

 

「よし、行きましょう部長!」

 

「ええ、皆、行くわよ!」

 

部長の声に皆が応じる。

ヴァーリとネロさんは声こそ出さないものの顔って言うか雰囲気が応じてるって感じだ。

 

諸悪の根源が潜む城の扉を開け、突き進む。

奥の部屋に居ると見たが……。

 

「妙だな。」

 

「先生?」

 

「大勢に攻めてこられるのは分かっているはずだ。

だというのに何も仕掛けてこない。

妙だとは思わないか。」

 

「……確かに……刺客とかも居ないのはどう考えても無用心過ぎる。」

 

「遊ばれてる?」

 

「どんな悪魔なのか分からないし、一言で言えないわね。

今のところはイカれてる、だけど。

でも、いくらそんなでも用心の1つや2つはしてるでしょう?」

 

「……イカれてるからこそ、かもしれぬな。」

 

ネロさんがそう結論付けて、俺はならそれでいいと思った。

どんなに頑張っても俺は馬鹿だ。

なら、考えるのは任せるのが一番だ。

 

「扉見えました!」

 

「律儀に開けてやる必要は?」

 

「当然なしよ。」

 

「了解!」

 

奥に見えた扉に、蹴りを入れて吹っ飛ばす。

あわよくば黒幕に当たればなぁと思ったが……

 

どうやら、無駄だったらしい。

 

魔力の小さな弾丸が扉にぶつかり、爆発する。

あんな小さな魔力でこれだけの威力……やっぱ地力が違う。

 

全員が部屋に入ると、そこはあまりにも広いホールだった。

 

「ちょっとちょっと、そこはしっかり開けてくんなきゃおっさんの頭割れちゃうところでしょうよぉ!

それか人質とかいるのわかってんの?

軽率すぎなぁい!?」

 

部屋の真ん中には少し、いや、大分チャラい口調のおっさんが立っていた。

 

あれがリゼヴィム……!

リゼヴィムの台詞に、ネロさんは鼻で笑う。

 

「人質?実験体でなくか?」

 

「あれまバレてーら!

そーそー、実験体ね実験体……。

その事について大変に申し訳ねぇ事態になりござんますよ!」

 

「……。」

 

「いやぁ、実験体のあの娘さぁ

 

死んじゃったぁ!」

 

「テメェ───ッ!!!」

 

その台詞を聞いて、俺は体が勝手にリゼヴィムへと駆け、殴りかかった。

 

籠手で倍加しまくった殴り、いくら超越者でも!

 

「なぁんて、ウッソ♪」

 

「んなっ……」

 

「イッセー!」

 

「赤龍帝!」

 

俺の渾身の拳は指1つで止められた。

しかも、体の調子が元に戻ったような感覚……

 

「もー突っ走っちゃ駄目じゃーん?

赤龍帝だからってぇ、僕ちんに勝てるとでも思ったかぁ!残念残念はい残~念ッ!

そんなんじゃ勝てないんだなぁ!

無いよ、力ないよぉ!?ハーハハハハハ!」

 

「ガァッ!?」

 

軽く蹴りを鳩尾に入れられて部長達の所へと戻される。

 

くっ、そ……どういうことだ、なんで倍加が!

 

「貴方、よくも!」

 

「よくも、なぁによ?敵を攻撃するのは普通じゃね?

僕ちんは常識に計って蹴っただけだぜ?

そっちも殴ってきた、じゃーん?」

 

「だとしても、私の可愛い眷属を馬鹿にするのは許さない。

いえ…私の友人を傷つけた時点で許す理由はないわ!」

 

「部長、気を付けてください、イッセー君の籠手の力が発揮されて無かったようにも感じました。」

 

「裕斗……それはつまり……」

 

「その可能性もあります。僕やギャスパー君のような神器使いは不利かもしれません。」

 

「……となると、私もか。」

 

「先生も元は『魔獣創造』の魔獣細胞を持ってる故の不死性……」

 

最初からそれがあるから余裕だったのか。

だとすると……くそっ。

 

ネロさんも無言で目を細める。

 

「なるほど……そういうことか。

最初から手のひらとは気に食わないな。

元より屑だとは分かっていたが、アルビオンの力まで対処できると言うことか。」

 

「気に食ってよぉ。

僕ちんもリンチされる訳にもいかないんですわぁ。

……って、そこにいるのは!」

 

「リゼヴィム…ルシファー……!」

 

リゼヴィムの視線の先に居たのはヴァーリだった。

ヴァーリは怒りを込めた声でリゼヴィムの名とルシファーの名を呼ぶ。

それに対し、リゼヴィムはえー、と落胆したような顔で応える。

 

「やぁく立たずぅ?何で居るのさ?

塵は塵らしく箱の中に入ってなきゃ駄目でしょうよ。

あ、堕天使の所が箱か!メンゴメンゴ、でもでも烏に居候の半分悪魔って何か結構笑えるなぁ!

ヒャハッ!」

 

「黙れっ!」

 

「黙れとか言われて黙る悪役居る?ナイナイナイナイ!nothingぅ!……ま、どうでもいいや。

役者は揃ったわけだし?パパッとやろうや。

ま、実験体の娘は僕ちんの計画に適合できなかった。

つまり要らないから返す!」

 

「なっ……無事なのか!?」

 

「無事無事。

別に異常なしであります!

僕ちん嘘つかな~い。

証拠に返しますってんだから気前いいよねぇラスボス僕ちん!」

 

リゼヴィムは指を鳴らす。

すると、俺達の近くに魔法陣が浮かび上がり、そこから人が現れる。

 

間違いない、フリージアさんだ。

 

俺は慌ててフリージアさんを抱き起こす。

 

「フリージアさん!」

 

「……ぅ……い、イッセー君……?」

 

「はい!俺です!助けに来ました!」

 

「そう…なんだ……ごめんね、私が弱いばっかりに…。」

 

「何言ってんですか。

そんな事、俺や部長たちは気にしてませんよ。

立てますか?仲間と避難を……」

 

「そうよ、貴女は悪くない。」

 

「リアスちゃん……イッセー君。」

 

「はい?」

 

フリージアさんが俺の名前を呼ぶ。

とても、とても状況に見合わない程に冷静な声だ。

怖がるとかじゃない。

悔しがるとかでもない。

 

怖いほどに、冷静だ。

 

「私が、弱いからこうなったの。」

 

「それは違─」

 

「違う?ううん、それこそ違うよ。私が弱いからこうなった。

強くないと、虐げられる……。」

 

「フリージア、さん?」

 

「フリージア……どうしたの?」

 

「イッセー君には私と同じ力がある。

リアスちゃんにも生まれもった滅びの魔力……他にも、色々。

力って、大事なんだね……

今思うと……何で手放せたんだろ……」

 

何かをぶつぶつと喋るフリージアさんに皆が違和感を覚える。

おかしい。ここまで力に固執する人ではなかった筈だ。

 

嫌な予感がする。

 

「イッセー君はさ…強いよね。」

 

「俺は、強くなんかないですよ。」

 

「強いよ。私とは違って、挫けてない……だからこそ、私は気付いたんだ。」

 

『(相棒、気を付けろ。)』

 

「(ドライグ?)」

 

ドライグの唐突な忠告に俺は驚くが、相棒の言葉だ、信じて警戒しておこう。

 

フリージアさんはふらりと立ち上がり、少し離れる。

それは何だか、俺とフリージアさんの心の距離に思えて仕方がなかった。

 

「私には、そんな心の強さはない。

信念も、理想も、そんなものはない。

皆が強くて、守ってくれる。

でも、守られていて、思ったの。

私がどんどん惨めになっていくだけなんじゃないかなって。」

 

「そんなこと!」

 

「あるでしょ。

だって、吸血鬼なのに戦う力もない、戦おうとする心すら持てないのに、それを惨めじゃないなんて誰が言えるの?

だからこそ、力がいる。

絶対に自分を救って、自分を守れる力が。」

 

「それは……」

 

それは、いけない力じゃないのか。

独りを助け、独りのために他人を容赦なく排除するなんてのは……そんなの、間違ってる。

 

「それは、孤独ですよ。」

 

「孤独?……うん、そうだね。」

 

 

 

「でも、いいじゃん孤独で。」

 

「……。」

 

「だって、孤独になれば、自分が惨めに感じることなんて無いんだよ?一人で生きて、一人で掴み取る。

守られるだけの私なんて、嫌。

守るなんて、自信がない。

私は結局、自分が大好きなんだよ。

自分がよければそれでいい。そんな女なんだ。」

 

「それは違う!

フリージアさんが居なかったら、俺は絶対に馬鹿な奴のままだった!他の皆も、フリージアさんのお陰で変われたんだ!」

 

「私が弱さを生み出したの間違いでしょ。

私と言う弱味が、貴方達の強みを消している。

なら、私は要らない。私が違う強みになって、居なくなることで……解決でしょう?

 

だからこそ、手に入れたの。

皆を、楽にさせる為の力を。」

 

「……リゼヴィムが、渡したんですか。」

 

必死に説得してもはね除けられる。

心が軋み、辛くなる。

 

─『イッセー君は、絶対に強くなれるよ。』

 

そう言ってくれたのを、覚えている。

その言葉に無性に応えたくて必死に頑張った。

強さは力だけじゃないのは、皆との助け合いで知った。

それもフリージアさんのお陰なのかもしれない。

 

……だから、力に固執するしかないフリージアさんを見て、俺は追い詰められてしまったんだな、と何となくわかった。

 

「そうだよ。でも、元は私の。」

 

「……そうですか。」

 

だけど、だからこそ、許せない。

 

俺に力だけじゃないと言っておいて自分がそれに固執したことにではない。

相談もしてくれなかったことでもない。

 

悪魔としてはそれは普通なのかもしれない。

だけど、それは『やり過ぎ』だ。

 

「部長。皆も、1ついいか。」

 

「……いいわ。」

 

「まだ何も言ってないですよ。」

 

「一人でやるって、そう言うんでしょう?

本当なら貴方だけに重荷は背負わせたくはないけど……お願いね。助けてあげて。」

 

それは部長達全員の言葉だ。

リゼヴィムはしばらくこっちで何とかすると、そう言ってくれた。

 

「……はい!」

 

感謝してもしきれない。

俺は力強く返事をする。部長は微笑んで、すぐに王としての顔で無言で事を見ていたネロさんと仲間と共にリゼヴィムと対峙する。

 

「麗しい友情って奴かぁ……」

 

「黙れ。貴様は骨まで喰らい尽くす。」

 

「出来るのかなぁ?その体で、僕ちんの能力を突破出来るのかなぁ?」

 

「なに、根性論も悪くはない。」

 

「リゼヴィム、貴方は私達が倒すわ。」

 

「……観戦していたかったけど、おっさんモテモテだからやる気出さなきゃなぁ!」

 

リゼヴィムが膨大な魔力を解き放つ。

超越者は伊達じゃねぇってことか……

皆、頑張ってくれよ!

 

…そして、リゼヴィム、人の弱味につけこんでこんなことをして許されると思うなよ。

 

そんな怒りが、込み上げる。

リゼヴィムに怒りの視線を送ってから視線を戻す。

 

目の前の優しかった人は歪んだ笑みで、濁った瞳で俺を見る。

 

「ねぇ、イッセー君。」

 

「はい。」

 

「好きだよ。」

 

「……俺もですよ。」

 

「好きだから…弱い私が好きだったからこそ…

ここで、越えさせてもらうね。弱い私を、殺すために。」

 

フリージアさんの腕から、見慣れたものが現れる。

 

それは、『赤龍帝の籠手』だ。

当然かと思う。

フリージアさんも元は赤龍帝。

力を振るわなくても、あの神器はあったんだから。

 

そうか、それを出せるくらい、僅かしかなかった力が増幅されたのか。

 

『相棒、救ってやってくれ。

俺や、混沌や無限、ズェピアにもこれは出来ない。

相棒しかやれない事だ。』

 

「分かってるよ。…力を貸してくれ、相棒!」

 

『当たり前だ!』

 

籠手が使えることを確認して、構える。

倍加は初期化されてしまった。

吸血鬼の地力に追い付けるか分からないが……

 

やるしかない。

約束のため、魂を燃やす!

 

「俺は、助けて見せる。」

 

「そんな事、しなくていいよ。

今の私は、もう……弱くない!

助けられる必要も、ない!」

 

「そんな強さ、俺が否定してやる!!」

 

 

『『Boost!!』』

 

赤と赤が、ぶつかり合う。

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