今回は前編なのでそれほど派手な戦闘ではないです。
彼の黒のコートが風に靡く。
夜の街道には彼以外に人が居らず、彼も佇むのみ。
…先程までは。
「……私を止める作戦は思い付いたようだな。
シオン・エルトナム。」
彼の発言に答えるように何人もの人が対峙するようにして現れる。
先頭に立つ銃を構える少女は静かに答える。
「ええ。
貴方の不死性は滅びの魔力を使っても殺しきれない程のもの。
それに、私は貴方を殺すのではなく止めると決めました。」
その言葉を聞き、目の前の相手の数と相対しても彼は不敵な笑みを崩さない。
「ふっ、数も揃えたか。
なるほど、私一人では骨が折れる。
特に……魔王三人も相手となれば敗北の色は濃いな。」
「ならば、戦わずに敗けを認めて欲しい。」
「それは出来ぬ相談だな。
私はタタリの同盟者としてここにいる。
タタリを倒したくば、私を越えてからにするがいい。」
「……一つ聞かせてください。」
「オーフィスの事か。
─が心配にでもなったか?」
「…っ。」
彼、ネロ・カオスの言葉にシオンは考えが読まれているのが悔しそうに下唇を噛む。
「あれはもう我等の知る無限の龍神ではない。
あれはズェピア・エルトナムという存在に酔った化物だ。」
「な……それはどういう……」
「これ以上知りたいのならば、私を捕らえるなりするのだな。
私は、貴様らが相手にしてきたような者達より多少手強いぞ?」
戦いは避けられない。
彼は彼なりの覚悟でこの戦いに臨んでいる。
「……ええ、分かってます。
皆さん、準備はよろしいですか。」
「ええ、シオン。
私も、私の眷属達も全力でやらせて貰うわ。」
「魔王様達も居るんだ、負ける要素があるかよ!」
「そう言ってくれると嬉しいんだけどね。
うん、こちらもいけるよ。」
「……では、いきます!
ネロ・カオス、貴方を越えて、ズェピアと会わせて貰うためにも!」
こうして戦いは、始まった。
シオン達は、数名を除いてネロ・カオスの元へと走り、近づいていく。
だが、ネロ・カオスは瞬時に100は優に越える獣を自らの因子から生成し、向かわせる。
地上と空から獣の波が押し寄せる。
あれに呑まれれば一堪りもないだろう。
体が喰い尽くされ骨すら残るまい。
「ここは僕達に」
「任せてもらいますわ!」
「獣の処理は任せてもらおう!」
しかし、リアスの眷属である木場、朱乃、ゼノヴィアが獣を切り裂き、焼き焦がし、道を切り開く。
獣の波は勢いが弱まる。
しかし、こと数においては彼を上回るのは至難の技。
『666』である以上は彼はほぼ無限に獣を出せる。
獣を倒しても彼を倒さねばならない。
「数が多い…イッセー君達から話を聞いていたが、まさかこれ程とは!」
「長期戦は不利ですわね。」
「ああ、なら短期戦に出来るように更に殺せばいい!」
「脳筋極まってるなぁ……!同感だけどね。」
ならばこちらも更に多く殺すまでと進みながら獣を殺す。
当然、彼らも無傷ではない。
爪により浅く切られた傷や、一部噛まれたような痕が進むごとに増えていく。
それを見て、イッセーは自分も彼らと共に斬り込み役をしようとする……が。
「駄目だ、イッセー君!」
木場は獣を切り殺しながらもそれを声を荒げることで止める。
「な、どうしてだよ!俺もやった方が……」
「そうしたら駄目なんだ、作戦の通りにするんだ!」
「っ……シオンさん!」
「いけません。
私達はなるべく温存した形でネロ・カオスの本体と対峙せねばなりません。
あの三人が自らあの役を担うと申し出た勇気を忘れたのですか!」
「……くそっ!」
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時間は彼らがネロ・カオスに挑む前まで遡る。
シオンが作戦の内容を説明し終えたところだ
「斬り込み役?」
「ええ。
ネロ・カオスは厄介なことに獣を大量に出すことができます。
しかも一体一体が魔獣クラス……。
全員でやろうとすればこちらがジリ貧で負けるのは目に見えています。
ですので、斬り込み役です。」
「負担を減らし、余裕を作って後続に繋げるためか。
何人だ?」
「……三人です。」
「なっ……!三人だって!?
だって、ネロ・カオスは100体なんて余裕で魔獣クラスの獣を出せるんだろ!?
そんなのをずっと殺し続けて道を開けるなんて……」
イッセーの言葉に何人かは同調する。
しかし、サーゼクス達魔王やそれ以外の者はシオンのそれが最適解だと分かっている為、否定できずに居た。
そんな中、極めて冷静に手を挙げる者が三人。
イッセーはその三人を見て、動揺した。
「木場、朱乃さん、ゼノヴィア……?」
「そう言うことなら僕たちの出番だ。」
「ええ、殲滅は得意ですし、私達は本体との戦いに着いていけるのかと問われれば正直キツいでしょうし。
ならば、こういう形で支えるしかないでしょう?」
「二人の言うとおりだ。
どの道、こういう役はいないといけない。
それなら私達が適役ということさ。」
「だ、だけど……死ぬかもしれないんだぞ!?
そんなことになったら─」
「─イッセー君。
君は、王の為に死ねないのかい?」
「は……?」
木場の唐突な問いに、イッセーは答えられなかった。
いや、答えられはしたのだろう。
だが、イッセーは木場達の目を見たら、答えられなかった。
それは、覚悟を決めた者の目だ。
「僕は死ねる。
元より、騎士とはそういう者。
王に仕え、王を守り、王の為に死ぬ。」
「女王もまた、同じですわ。」
「死ぬつもりは勿論無いが、そうなるかもしれないという覚悟は済ませてるんだ。」
「……僕達は君にずっと頼ってばかりだった。
強くなっても、君もまた強くなって。
だから、これは王である部長だけじゃなくて、君に恩を返す為でもあるんだ。」
「…木場……」
「いいんですね?」
「うん、斬り込み役は任せて。
その代わり、ネロ・カオス本体は任せるよ。」
「ええ、任せてください。」
・
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・
「中々どうして根性のある。
我が獣の波を押し返すか。
だが、限界のようだな?」
「っぐ、くっ……!」
「まだ、やれますわっ…!」
「貴様の無限に獣を出せるそれはズルいと思うのだがな……!」
「何をいう。
私よりも化け物な奴など数多に居よう。
……だが、見事なものだな。
ならば、手向けとして受けとるがいい!」
ネロの影より、何かの腕が生えてくる。
その腕は今までの獣には該当しないほどの巨大さであり、腕が地面を支えに影より全体が出てくる。
「─グォオォオオオ─!!」
「──」
それは、外見は獣ではなく龍だった。
暴威を撒き散らし、恐怖を振り撒き、悪虐を成す邪龍。
「予め言っておくが、これは正確には龍ではない。
あくまで獣だ。」
「これが……獣!?」
「そうだ。
だが、これは龍と寸分違わぬ力を持ち、貴様らを容赦なく喰らうだろう。
気を付けろよ、ソイツは大喰らいで暴れ馬だ。
早々に倒さねば喰われるぞ。」
獣龍は木場達を捉え、ニタリと笑った。
活きのいい餌だ、と言うような笑みだった。
「シオンさん、消耗とか言ってられねぇ!」
「ええ…っ、まさか、このような手を残しているとは!」
「獣にしても冗談が過ぎるぞ………ん?」
アジュカは周りを見てあることに気付き、ネロ・カオスに挑発的な笑みを浮かべる。
「貴様、もしやこの龍擬きが出ている間は獣が出せんのではないか?」
「…年中ゲームをやっていたわけではないか。
如何にも、こいつが出ている間は私は獣を出せん。
私以外を餌としか認識しないのでな。
……では、前哨戦といこう。
さあ、喰らい尽くせ。」
「─グォオオオオオォ!!」
ネロの声を合図に獣龍は思わず耳を塞ぎそうなほど大きな声を挙げ、その巨体を動かし始める。
対するは、獣龍に比べればあまりにも小さい存在達。
だが、その目には未だ諦めの色は見えない。
「…サーゼクスちゃんはあまり力を使わないで。」
「同意見だ。
魔王二人に任せておけ。」
「二人とも…?
いや、僕も魔王だ。
全力で臨まないと……」
「そうじゃない。
お前はこのメンバーの最大戦力。
なら、それは出来るだけ温存するに限る。」
「いざとなれば、流石に頼むけど、まだ力を温存しててね。」
「……分かった。」
本当はもう一つ理由があるのだが、それは言わない二人。
後方から攻める事になったサーゼクスに不安そうな様子はない。
「シオンさん、こいつ相手にしてどれくらいだ?」
「……あの巨体ですから、生半可な攻撃は効かないでしょう。
ならば、一気に叩き込むしかない。
瞬間火力なら…イッセー、貴方の出番だ。」
「なるほどな、ドラゴンショットか!
ドライグ、どうだ?」
『……まだ足りんな。
もう少し時間を寄越せ、そうすれば何とかなる。』
「そう、じゃあ時間を稼げばいいのね。
皆、聞いたわね!
裕人達がここまでやってくれたのだから、それに応えなくてはならないわ。
イッセーとお兄様には近付けさせないよう、戦うわよ!」
『はいっ!』
気合いの籠った声。
そして、魔王二人もまた前に出る。
「リアスちゃん達が頑張るなら年長者も頑張らなきゃね☆」
「うわっ、戻った……
まあ、そうだな。面倒だが、やるしかない。」
─消耗戦が始まる。
始まりましたネロ・カオス戦。
まずは従える獣龍との戦いです。
ゲームでいうなら、獣龍を出来るだけ早く倒せ!とかですかね。
余談ですが、セラフォルーとかで氷漬けにする方法は獣を瞬時に盾にされるので無理です
獣龍の見た目はお竜さんの宝具としての姿に近いです