【完結】 ─計算の果てに何があるか─   作:ロザミア

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番外編 純粋な死徒 8花

出番をとってしまったかと内心苦笑する。

だが、許してほしい。

こればっかりは譲れないのだ。

リゼヴィム・リヴァン・ルシファーを倒す……いや、殺す事は、俺がやらねばならない。

 

「同胞よ、無事……ではなさそうだ。」

 

「これを無事に見えるのなら、一度眼科に行くことを勧めてやる。

……私との相性は最悪だった。」

 

「そのようだ。

まさしく、神器キラーな能力だ。

君や、グレモリー眷属では相性が悪すぎる。」

 

「貴様は神器が無いものな。」

 

「そんなものなくとも錬金術で造り出せるからね。」

 

「ふん、ならば、さっさと終わらせてこい。」

 

「ああ。それまで、気長に待っていてくれ……とはいえない。」

 

「何?」

 

訝しげに俺を見る教授に説明をしておかないとと思い、周りの皆を見る。

 

……倒れても、それでも抵抗してくれた皆が、俺を見ている。

一部は勝利を確信している。

 

そんな大それた奴ではないんだがなぁ……

ま、いいか……。

 

「『冥界の砂(ヘルメス)』を使う。」

 

「……何?貴様、まさか。」

 

「無論、全人類……いや、全生命を賢者の石に変える訳ではない。

そうならないようにしているとも。」

 

「…タタリ、それを使えば警戒されるぞ。」

 

「今更かね?前にギリシャ、北欧、インドから勧誘を受けているのに?」

 

「それどころでは済まなくなると言うのだ。」

 

「ハッハッハ、望むところだとも。

その程度で砕ける家庭かな?」

 

「今まさにそうなりかけたが?」

 

「痛いところを突くな、同胞よ。

まあそこは……話し合うさ。

では、皆の衆!」

 

俺が皆に声をかける。

すると、皆は俺に何事かと見てくる。

 

「これより、舞台装置を出す。

だが、すまないね。これから先は私と踊る者しか見れない。避難したまえ。

そうしないと、余波で吹き飛ぶ。」

 

「……なら、そうせざるを得ないか。」

 

「ズェピアさん……!」

 

イッセー君が俺の渡したスーツを解除し、俺を悔しげに見てくる。

分かるよ、確かに、君にやらせるのが一番盛り上がりもあって、スッキリする終わりなのかもしれない。

 

だけど、俺はその終わりを許容しない。

その終わりをして、君にもしもがあれば、俺は自分を許せなくなる。

 

「イッセー君。……よく頑張った。

だが、君ではリゼヴィムにはまだ届かない。」

 

「それでも、それでも俺は!

…フリージアさんをこうしたリゼヴィムが許せない。」

 

「僕ちゃん人気者ぉ!ハリウッドスター並の人気者じゃね?完全にスターだぜぇ!」

 

「……ああふざけてはいるが、実力は君達の倍以上はある存在だ。

ここは、私に譲ってくれ。

何より、目が覚めたときに自分を助けたナイトが居ないと、姫が困ってしまう。頼めるね?」

 

「……っ、分かりました。

皆、立てるか!?」

 

「え、ええ……おじさま、どうかご無事で。」

 

「ハハハ、リアス君は自分の心配をしなさい。

ほら、眷属の皆も早く。……私の娘のために傷付いてくれて、感謝してもしきれない。

終わり次第、華やかなパーティをしよう。

サーゼクスの家で。」

 

「おじさま!?」

 

「い、いいんですか?」

 

「あらあら……」

 

「魔王の食事……じゅるり。」

 

「うわわ……ぼ、僕緊張のしすぎで死んじゃいます!」

 

「魔王様に悪いんじゃ……?」

 

「いやいや、魔王の友人が言うんだ。

魔王も準備してるに違いない。」

 

「そ、そんなことよりズェピアさん!

やっつけてやってくれよ!」

 

戸惑いながらもイッセー君は無理矢理話を締めて皆で出ていった。

出ていく途中、白龍皇に声をかける。

 

「ヴァーリ君。」

 

「……なんだ。」

 

「私が殺してもいいのかね?」

 

「…ズェピア・エルトナム。お前がいつか俺と全力で戦うと約束するなら、殺せ。」

 

「ふむ。構わないが……それでいいのかね?」

 

「……何時までもあんなイカれ男に力を向けるのも馬鹿馬鹿しく思えてきたからな。」

 

「違いない。では、そうしよう。

いつかの挑戦に期待しよう、ヴァーリ・ルシファー。」

 

「ああ。」

 

短い返事と共にヴァーリは出ていった。

……教授には、戻るまで頼むぞと目で伝え、それで終わり。それだけでいいのが家族ってもんよ。

 

そうして、向き直り、俺の前方の馬鹿に話しかける。

 

「待たせてしまったかな?」

 

「いやいや、おじさん感動しちゃって涙出ちゃうよーって感じで見てたから平気だぜぇ。」

 

「そうか。」

 

「何よぉ、何時もの調子の良い劇場口調はどこ行ったんだってのー!?ズェピアちゃんの口調がおかしいじゃんよぉ?」

 

「何時もの、か。

別段、ああした方が楽だったからという理由なのだが。

何せ、姿に似合う口調(ロールプレイ)でなければ劇は始まらない。

その点、君は口調も安定しない、キャラも安定しない。目的もはっきりしないと……何のためにこの世界の役を得ているのか。」

 

残念でならないのだ。

どうして、こうもおかしな道化を演じるしかないのかと。もう少し、何か他のロールは無いのか?

 

……まあいいか。

殺すと決めた奴の役を憂うのは、俺の役ではない。

 

それよりも、奴を倒すのに、黒い銃身(これ)では足りない。

より巨大で、絶望を与えるものでなくてはならない。

 

ともすれば、グレートレッドクラスの奴でなければ。

いやまあ、俺なら奴を無力化出来るけど、他の奴じゃね?

俺の絶望は1つしかないけど……うぅむ。

 

あんまり出したくない切り札なんだけどなぁ。

 

「そんな役柄とか、気にしてたら悪魔は務まらんしょ。

悪魔なんてのは、皆道化なんだぜズェピアちゃん。

俺ちゃんも、サーゼクスも、皆な。

だから演じてるんじゃないの、愚かな道化。

だって、そうなるべく生まれたのが悪魔なんだぜ。」

 

しれっとその役でいいと肯定するリゼヴィムに意外だと思った。

もっと、大層な法螺吹きをすると思ったからではない。

その役が自分の至高だと言える奴だと思わなかったからだ。

 

ならば、コイツにはそこだけは敬意を払える。

娘が浚われ、操られたとしても、だ。

それとは別の感情だ。

 

「…別の形であれば君と私はいい劇場を築けたやもしれぬな。」

 

「それはないぜ?まず、中身の反りが合わねぇからな。」

 

「それもそうか。

……うむ、では出すか。」

 

「ほほう、舞台装置であるな?どんな物かな?」

 

「さて、見てもらってからでも感想は構わない。

出し物が見たいのだ、それがそちらにとってもいいと思うが?」

 

俺は指を鳴らす。

ただ、それだけで館の風景は変わっていく。

いや……

 

塗り替えられる(呑まれる)が正解か。

 

赤い空、いくつもの石柱、そして床は砂へと変わる。

 

ああ、そうだ。

これは、地獄に違いない。

決して我々(アトラシア)は逃れられない。

 

この地獄から、この未来の運営という宿業から。

 

『ちゃんと計算すれば、君も見つける。

あの、暗い絶望の底を。』

 

そうだとも。

これは俺の、ではない。

ズェピア(アトラス)にとっての終着点。

 

「空間転移、じゃないな。

場所ごと塗り替える魔法……と見たが。」

 

「星の終わり。」

 

「あん?」

 

「君は見たことがあるかね?

この星、地球の終わりを。」

 

「んなもん見たことも聞いたこともないにゃー。

どこぞの空前絶後の馬鹿者(ノストラダモス)でもあるまいし。」

 

「私はある。

何度も、何度も見た。」

 

「ふーん……?

そりゃまた、お得意の錬金術で?」

 

「いいや。」

 

赤い空を眺める。

作り出した空間にしては上出来だ。

当たり前か、同じ風景を俺は未来の1つとして見たのだから。

 

「誰しもが滅ぼす。誰もが滅ぼせてしまうのだよ。

この、命ある星はね。それが、石ころ1つの偶然か、植物1つの必然かまでは分からないが。

だが確かにこの星は滅ぶ。それは決定事項だ。」

 

「無数の可能性の最終地点。

人類も悪魔も堕天使も天使も神も妖怪も何もかも関係無い、と?」

 

「その通りだ、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

我々はいずれ、この星を食い潰すだろう。

その時、地球の意思が何を決定するかは定かではないがね。そして……もしかすれば……」

 

地球という庭から抜け出し、宇宙という外へと赴くかもしれない。

 

あり得ない話ではない。

現に、科学だけで宇宙に行き、月へと到達し、証拠を持ち帰った。

それがどれだけの進歩か、なんて人間には分からない。

自分達の進歩の大きさが分かっても、地球の意思にとってそれがどれほどの意味か。

分かるはずもない。

 

「けどよぉ、ズェピアちゃん。

結局、ズェピアちゃんはどうやって結末を覗いちゃったわけよ。そも、それを見てどう思ったのかを、悪魔的に聞きたいもんだねぇ。」

 

「どう思ったのか……か。」

 

ズェピア・エルトナム。

死徒となる前の彼は終焉を見て狂った。

何度も、何度も方法を試し、打開した。

だというのに……結果は酷くなる。

より残酷な未来へと変わる。

未来を運営するアトラス院が運営しきれないほどの未来にまでなっていく。

 

誰もがこの暗い底へと落ち、計算し、シュミレートしようと。

最後は皆が狂った。

 

だが、俺は。

俺はどうだろうか。

 

 

 

「─とても、淡白だった。」

 

「最後を見て?」

 

「そうだとも。

ああ滅ぶんだな、とそう思った。

その次に、自分ならば変えられるかと考えた。

結論は、無駄な足掻きだと分かった。」

 

「絶望したかい?」

 

「何も。

そもそも、その未来がいつ訪れ、いつ終焉をもたらすのか……分からないのだからね。

故にこそ、思考を止める事はなかった。

そも、考える必要はないと分かったのだ、気楽になれた。」

 

「最後がわかってるのに、気楽なのかい?」

 

「気楽だとも。

何せ、最後が何時か分からないなら、好きに生きられる。

毎日が余生へと変わったに過ぎない。

私にとって、気楽以外の何者でもない。」

 

「んじゃあ人類の守護者にも、世界の救世主にもならないと。」

 

「そんな大層なものを背負って何になろうか。

私にとって、それよりも価値があるものがあるのだ。

そんなものになって、それらを手放すのなら私はそれになるわけにはいかない。」

 

「家族大好き吸血鬼は言うことが違うぜ。

俺ちゃんには出来ねぇわ。」

 

「ならば、君は未来を変えるのかね?」

 

「嫌に決まってんジャーン。」

 

とても面倒くさそうに手で掬って溢れていく砂を見ながら言う。

それは、世界が終わろうが関係はないという顔だ。

 

「俺ちゃんが世界を変えるとか、馬鹿馬鹿しいわ!

悪魔が?全ての種族の救世主ぅ?

皆ヒーローの可能性があるぅ?

馬鹿言っちゃぁいけませんぜ。俺ちゃんは更なる真理に到達してんのYO。」

 

「ほう、聞かせてくれないかな?」

 

「死ぬまでどれだけ楽しめるか、これに尽きるねん。」

 

「ふむ?」

 

「だってさぁ、死ぬときゃ死ぬんだぜ?

あの強くて、完璧で、気持ち悪い四文字君もくっだらねぇ大戦で~死んじゃうし~?

なら俺ちゃんにも、ズェピアちゃんにも、等しく終わりが来るわけよ。

だったら話は簡単だろう?」

 

 

「死ぬまでに楽しめたと、ああこれなら別に死んでも悔いなしと、そう思えるのなら!

俺ちゃんは死んでもいいし、世界は滅んでもらって結構!そもそもそういうキャラじゃねえでしょ?」

 

 

「……ハハハ!違いない!

そうに違いないな。君は何処まで行こうと最後に来るのは今までのツケだ。破滅しかない。

なればこそ、その終着点か。」

 

「賢くね?もう完璧だろー!」

 

「賢いとも。ならば問おう───」

 

 

 

「─君はもう、楽しんだかね?」

 

「人の娘操って救い出すシーン見ながら他の悪魔ボコして役立たずをもっとボコって楽しかったわぁ!

もうやりたいことやり尽くした感あるわぁ!」

 

こりゃ、試合に勝って勝負に負けたか……。

 

自滅思考が凄すぎてこれじゃ怒りも吹き飛ぶ。

 

一思いに殺してやった方がいいな、うん。

…ああうん、楽しい会話をしたと思う。

 

だからこそ、最後のシーンはあっさりと。

 

 

『再演算、開始。』

 

「ハ、ハハ、ハハハハハ!これが俺の終わりか!」

 

「そうだとも。これが、君の未来だ。」

 

「ああ、いい!これがいい!

俺ちゃんの……俺の最期はこれがいい!

 

竜も、悪魔も、あらゆる化け物よりも、これがいい!

これに殺されるなら俺は、どれ程幸せかぁ!

ヒャ、ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

地面より現れる冥界の砂。

かつて、全人類を賢者の石へと変える事で人類の歴史を記録しようとした間違った演算機。

 

この狂った悪魔を殺す為だけに生み出した。

 

あらゆる未来が、リゼヴィムという一人の悪魔を滅ぼす。

 

『対象を抹消し、その存在を記録する。』

 

「見せろ、見せてくれよ!

俺にその未来を!死ぬ未来を死ぬほど見せて殺してくれよぉ!」

 

「去らばだリゼヴィム───」

 

ヘルメスがこの巨体からレーザーを放つ。

レーザーは地面へとぶつかり……

 

「アッハハハハハハハハハハハァ────!!」

 

破滅を起こす。

その場にいるものは皆灰塵に帰す程の爆発。

 

しばらくして、砂煙が晴れた頃には。

 

もう、元凶の悪魔の姿はどこにも存在しなかった。

俺は、リゼヴィムが居たであろう位置にまで移動し、砂を掬う。

さらさらと、砂は落ちていく。

呆気ない終わり。

狂人の果ては、狂気の死。

 

「─君はもう、何処にも存在はしない。」

 

それがあの悪魔の、この世界の彼にとっての終わりだった。

 

俺は、消えていくヘルメスと赤い空を眺めつつ、一人の役者の最後を記憶に刻んだ。




ちなみに、このヘルメスはゲージが常にMAXで攻撃力と防御力が原作の三倍になっております。
AI?ビームブッパかな。

後、何故リゼヴィムが抵抗もしなかったのか。
これはリゼヴィムが自滅思考であり、ここでなら死んでいいと判断したからです。え?都合がいい?
二次創作だからね、仕方ないね……

次回、番外編最終話。

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