行き倒れ侍従者になる 作:妖怪(侍)
玄関で童の準備を待つ。手伝おうかと思い部屋に行くと「この位一人で出来る!」と拒否されて、結果玄関で待ちぼうけている次第である。少し過保護なのか? 俺は。
だが妖忌ほどでは無い……決して、初めて見た時は何というか……これは酷いと口に漏らしてしまったほどだ。
技は見て盗め、教えを乞うものなら一喝する。来た当初童が良く木に隠れて泣いている姿を良く見つけたものだ。
だがそのかいあってか童は幼いながらにメキメキと成長していた。元々才能はあったのだろう、妖忌はそれを知っていて恐らく厳しく当たっていたのだと今になって理解した。
良く腐らずに真っ直ぐ育ったものだ……本当に、そこも童の良い所でもあるが。
「随分と掛かったな……やはり手伝った方が良かったのではないか?」
「うるさい。女は男を待たせるものだと幽々子様が仰っていたのだ」
軽口を携えてやって来た童。それは幽々子殿がやったら仕方ないと思えるが、童がやっても余り効果は無いと思うぞ。
「まあ何は共あれ行くするか」
二人で白玉楼を出て行く。途中にも無かったので安全に人里へ着くことが出来た。いつもなら獣ぐらいは出ると言うのに。
「……人が一杯」
「なんだ人里に来るのは初めてか?」
頷く童を見て。
やはり妖忌は少し厳しく育てすぎたのではないか? と変に考え込んでしまう。俺が甘すぎると言う考えが無くはないが。
「何にせよ一にも二にも買い物だ。晩飯と修行……後がつかえている」
顔馴染みとなった八百屋や魚屋それと肉屋を回って行く。
それなりに大きくなった風呂敷を抱えて人里歩くと、既に日が傾きはじめていた。
これだから人里での買い物は好きではない。俺が気安いのか分からないが、とにかく主人達が俺を捕まえては話すのだ。
律儀に受け答えする俺が悪いのであろうが、それも致し方無し。
妖忌には人里の住民とは好意的に、と厳命を受けていた。そんな事は一々言われなくても分かってはいるが、俺の立場上もとい白玉楼の住民としてでの言い方であろうな。
「童重くはないか?」
「お祖父様の修行に比べたらまだまだ」
「頼もしいではないか」
少し息が上がって来てはいるが、まだまだ平気そうだな。まあいざとなれば俺が持てばいいだけの話だ。
そう言えば幽々子殿達は今晩遅くに帰ってくる言っていたな……何か土産でも買っておくか。
そう思い今しがた話し終えた肉屋の主人に、甘味処の場所を聞く。
今いる場所からはそう遠くない場所なので、礼を言い甘味処まで童とと共に歩いて行く。
「さて最後だ。もう遅いので少し急ぐぞ」
「お前の話が長いからだぞ」
軽口を叩く童を無視して甘味処に入って行く。
「適当に包めるか? そうだな……金額はこれくらいで」
俺の給金の分から少し出して店主の顔を見るすると、驚いた様な顔を
して店主はこちらを見てくる。
「すまない。足りなかったか?」
「すいません。この金額じゃあ店の今並べてある物をお出ししなければなりません……」
後ろで童がプッと吹き出すのが聞こえた。ぐぅ……金額までは見ていない俺が悪いのか……計算出来ない俺が悪いな。
「なら……ここにある団子を五本ずつくれ……すまん迷惑をかけた」
「五百年生きて計算出来ないのか……」
ここぞとばかりに調子に乗る童が凄まじく鬱陶しい。だが今回ばかりは俺が全て悪いので、童を少し睨み店主には再び謝罪を述べた。
ちょっとした出来事もそこそこに無事買い物も終了した。道中「算術はお祖父様にしっかりと習おう」と、宣う小生意気な童の額を小突く。
「くぅ……! 毎度毎度私の額を何だと思っている……!」
「しつこいからだ。これ以上言うと全力で置いていくぞ」
「ふんっ命拾いしたな」
どっちがだ阿呆め。俺は周りを見てもう既に大分暗くなっている空を見て何の気無しに呟いた。
「もう暗いからなぁ……幽霊が起きてくる時間では無いのか?」
ビクッと体を震わせ此方を見てくる。なんだその目は。
「どうした、急に俺を見て……何も出てこないぞ」
「全くお前はおとめごころをわかっていないな」
「お前の様な汗臭い乙女はごめんだな」
んなっ! と非常に憤慨した様子で睨んでくる。だが全然凄みを感じないし少し涙目なのだから余りにチグハグで笑ってしまう。
そんな事を話していると白玉楼に続く長い階段へとたどり着いた。
「童大丈夫か? 荷物は持ってやろうか」
「いらぬせわだ! 武人ならこの様な事で投げ出したりはしない!」
途端に元気になり階段を駆け上がっていく。案外ちょろいな……次からはこの手で行くか。
駆け上がって行く様をいつまで見るわけには行かないので、俺も階段を上っていく。
さて何処で休んでいるだろうか? 予想では半分より少し上……と言った所か。
「案外やるではないか」
予想は大きく外れ門の前で荒い息をしている童がいた。随分と無理をしたのであろう、蒼白を通り越して顔色が土気色になっていた。
「立てるか?」
首を横に振り立てないと表す童。全力を出したのだ、当然ではある。
二分のゆとりを残せない様ではまだまだだな。
「全く世話のかかる……」
首に掛けていた風呂敷を一度起き童をおぶってやる。もう一度引き返す事の無いように、風呂敷を全て持ち縮地を使って玄関まで向かった。
「少し休んでいろ。水を持ってくる」
童を玄関に座らせ。水を持ってきてやる。水を持ってきた瞬間奪い取るなり、ものすごい速さで飲み干していく。
「……しばらく休んでいろ。無理に動こうとするな」
これだったら一人で行った方が良かったのかもしれない。だがこの家に童一人は流石に不安だ。
取り敢えず食料を蔵に収めて……後はどうするか。
「……風呂でも沸かすか」
童が使い物にならない今、屋敷を一人動き回るのは少々面倒だ。だがそれも致し方ない。
旅をしていた時には考えられないな……本当に。他の人間をこうも気遣うとはな、甘くなったものだ。
昔なら黙って出て行ったはず、何処か心の底で今の安息を望んでいたとでも言うのだろうか。いや、違う断じてそれは無い……直に体も癒える。
ならばここを直ぐに出て、この甘えを切り捨てたいと思う。
「童風呂が湧いたぞさっさと入れ」
状態はいいのか頷くと自分の部屋へと向かっていく。
あれが入っている間に今のうちに夕餉を作るとするか。
●
「まだまだ修行が足りてないのでは無いか? 俺を直ぐに追い越すと言っていたのは何処のだれだったかな」
ギリッと歯を食い縛り再び向かってくる。怒りに任せて剣を振るようでは、武人とは言えないな。
なんだったか……確か、明鏡止水? とか言う感じでいけば良いものを。
まあ俺はそんな物使えないがな。そんな事を考えていると目の前にいた童が消えたていた。これはひょっとすると――――
「縮地を覚えたか……だがまだまだ粗が目立つなぁ」
後ろから切りかかってくる童の木刀を掴み、そのまま背負い投げる。
そのまま壁にぶつかり、悶えている。ぶつかった衝撃で吐き出されたのだろう。正直あれだけ勢いがついていたら痛いどころの騒ぎではない。
俺はあえて何も言わず童が回復するのを待つ。辛いなら辞めればいい明日もあるしな。
だが俺ならこの状況で簡単に逃げ出したりしない。
「クソッ! もう一度だ」
拙い縮地を使おうとするが、疲労と痛みで床に倒れこんだ童を見て思わずため息をついた。
どうせまた気絶しているのだろう、面倒な事きわまりない。
「……部屋まで運んでおくか」
童を背負い部屋まで運ぶ。全く今日何回背負えばいいのか……世話の焼ける童を見てまたため息。
だが俺の技を二年かそこらである程度見せれるぐらいまで昇華したのは驚いた。
全然気配も足音も消せれていなかったが、それは時間が解決するであろう。
技は磨かなければ光る事はない。これからも弛まぬ努力をして欲しいモノだな。
童には無用か……それが出来る技能と実直さがある。
俺としてはもう少し肩の力を抜いて欲しいが、あの爺が師の時点でそれはもう無理だと確信した。
クソ真面目も大概にせよとこの師弟に言いたいが、それも通らぬ話だな。
「……おとめのやわはだ……を……ゆるさん」
「寝言か? 全く……」
寝言でも文句を垂れる童にまたため息を吐き。童の部屋に入っていき、そのまま布団をかぶせた。風邪をひかないように肩までしっかりけてただ。
空を見ると月が珍しく煌めいている。そしてそれを浴びている庭もなんだか幻想的な雰囲気になっていた。
「……酒でも飲んでみるか」
こう言う日は何だか飲みたい気分だ。普段飲まない酒がきっと美味くなるからな。
今日は一日よく動いた、なればこそこれぐらいの許して欲しいモノだな。
サブタイトルはあんま関係ないです。これからもそんな感じでやっていきます。
後これ忘れてました。メリークルシミマス
では良きクリスマスを!