あべこべ世界で生きてます~剣と拳と男と女~   作:風神莉亜

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男女あべこべ系読んでたら書きたくなった。勢いで書いてます。


プロローグ~斎藤始はトラックに散った~

「……はっ!」

 

 唐突に目が覚める。ここはどこだ。知らない――ようで知っている。けど知らない、見慣れない天井が目に入る。その不可思議な感覚に何度か目を瞬かせた。

 場所はわかる。ここはとある保護施設の一室だ。()が物心ついた時から、何度も目覚める度に見てきた天井だ。

 しかし、見覚えがない。少なくとも()にはない。俺の部屋の天井は木張りであったはずだ。古き良き日本家屋の畳部屋、その匂いまでもが鮮明に思い出せる。少なくとも、こんな病室じみた部屋ではなかった。

 同時に、これが()の暮らしてきた部屋であるとも認識出来る。安心して眠りにつくことが出来る安住の地。ここには自分のトラウマを刺激する存在は近寄れず、心穏やかに過ごせる理想郷であるのだと。

 

「……あー、もしかして」

 

 後頭部への鈍痛を感じながら、非現実とは思いつつも、この違和感の正体にピッタリの答えがある。

 ()でありながら()の記憶があり、そして()の人格でありながら()の人生を把握しているこの状況。

 

 それはまさに――

 

「俺は――生まれ変わったというのか――!」

 

 誰もいない部屋の中で、俺の声が虚しく轟いた――。

 

 

 

 

 

「なんか、真面目にそうとしか思えなくなってきた」

 

 痛む後頭部を擦りながら呟く。

 あれから少し冷静になり、馬鹿なことと思いつつも生まれ変わり説を検証していく内に、全く馬鹿なこととは言えなくなってしまっていた。

 先ず、この身体。

 真っ先に確認出来たのは自分の手。細く長い指先に、綺麗に切り揃えられた爪。柔らかな手のひらには硬い皮膚など存在せず、まるで女の子のような手である。痛むようなことなどこの施設ではしていないのである意味当然ではある。

 次に、顔。見慣れた顔だが、誰だこいつは。なんて中性的な美人さんなのでしょう。やだお化粧映えしそうでドキドキしちゃう。俺とは対照的な顔付き――いや俺の顔なんだけど。

 そして身体。無駄な脂肪は見当たらないスレンダーな身体つき。脂肪だけじゃなく筋肉も見当たらない。ぶっちゃけモデルみたいな体つきである。つくものついてなきゃ性別詐称出来そう。しないけど。

 

「色々と真逆を走ってるな、俺」

 

 俺の記憶にある身体といえば、手は剣の振り過ぎで手のひらガッチガチであったし、顔は彫りの深いザ・男、といった風情であったし、身体は鍛えに鍛えてバッキバキであった。身長もそこそこに、体重は数字だけ見れば重たく感じるくらいだった。

 しかしこの身体は先程確認した通り。身長も低く体重も軽い――あぁいや、この世界では割りと平均値ではあるが――色々と物足りなさを感じるレベルである。ビジュアルはこっちの方が抜群だが。羨ましい。俺なんだけどな。

 

 とまぁ、恐らく前世であろう記憶は気のせいでは済ませられない程に鮮明に記憶出来ている。なんなら恐らく死んだのであろう原因も思い出せる。享年は二十二才、名は斎藤(さいとう)(はじめ)。早すぎた死であった。死合いでの斬殺ではなく、トラックに轢かれての即死……だったんだろう、多分。心残りがあるとしたら、結局最後まであの妖怪爺に一太刀入れることが出来なかったことだろうか。斎藤剣術道場師範の座は結局奪い取れなかった。

 これで今の名前が藤田五郎だったら洒落が聞いていて笑えたのだが、残念ながら藤田五郎でも山口次郎でもない。

 

 今生での俺の名は、水瀬(みなせ)夏波(かなみ)

 

 その数の少なさから、男性保護法なんてものが存在し、尚且つ男女の価値観が色々とあべこべになってしまったこの世界に男として生まれた人間。

 そして、その見た目から過去に女性からの被害を数多く受け、無事強いトラウマを抱え施設送りになった容姿端麗な精神患者――それが、この俺である。

 

「……まぁ、まずは退院しなきゃ」

 

 前世の記憶を取り戻す切っ掛けになったらしい大きなコブを擦りながら、俺は病室のベッドから立ち上がるのだった。

 

 

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