島村さんならどんな捻くれ者も浄化できる。   作:バナハロ

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プラモ屋は一度入ると中々抜け出せない底無し沼。

 島村さんのおかげなのかどうなのか分からないが熱は下がった。いや、お陰ではないかな。なんか目を覚ました後、テンパってたのか水ぶっかけられるし、コーヒーに塩入れられるし、身体拭いてくれる時にタワシで拭かれるしで、決して楽ではなかったわ。

 まぁ、でも治ったんだからそれで良いよね。

 で、現在は島村さんにお礼の品を買うために買い物に来ている。そう、プラモ屋に。

 島村さん、確かSEED系が好きだって言ってたよな。そうなると、その辺りのモビルスーツから選んだ方が良い。

 

「ふーむ……」

「あれ?古川?」

 

 聞き覚えのある声が聞こえ、顔を上げると神谷奈緒が立っていた。

 

「あ、どうも」

「何してんだこんなとこで……って、聞くまでもないか」

「島村さんのプレゼント買いに」

「おい待てお前今なんつった?」

「えっ?島村さんのプレゼント……」

 

 あれ、なんか怒ってる……?

 

「……一応聞くけど、それ何のプレゼントだ?」

「や、最近さ、俺風邪引いてたんだよね。それで看病してもらったからそのお礼」

「お前……お礼の品にガンプラを選ぶ気か……?」

「え?だって、島村さん……ガンプラ、好き……」

「単語だけで話すな!外国人か!」

 

 えっ…ダメなの?島村さん、喜ぶと思うんだけど……。

 

「あのなぁ、そういうお礼にプラモは無いだろ。もっと、こう……食べ物とか小物とかな……」

「……え、そういうもん?」

「プレゼントとかあげたことないのか?」

「ないなぁ。あげる相手いなかったし」

「……すまん」

「家族には、親父には戦車、お袋にはバイク、弟にはフレームアームズガールのプラモ買ってたし……」

「弟……」

 

 うちの家族ロクでもないな……。弟に限らないけど、神谷さんが呆れるのも分かる気がする。

 

「とにかく、そういう時のプレゼントならプラモはダメだろ」

「えっ、な、なんで……?」

「いや普通に考えてダメでしょ。もっと、こう……分かりやすいものをだな……」

「分かりやすいってなんだよ」

「だからなぁ、こう……食べ物とか小物とかそういうのをだな」

 

 ふむ、食べ物とか、かぁ……。そういえば、島村さんに俺って何か買ってあげたことないなぁ。

 

「ふーむ……小物かぁ……」

「例えばだけどな。もし必要ならあたしも手伝うけど……」

「あーそれなら頼む。ガンプラ選びなら負けないけど小物とかそういうのは無理だ」

「待て」

「んっ?」

 

 なんだ?急に口調が強くなったぞ。

 

「ガンプラ選びならあたしだって負けないぞ」

 

 は?俺にガンダムのことで勝つつもりか?

 

「は?俺にガンダムのことで勝つつもりか?」

 

 思った事と全く同じことを言うと、神谷さんは好戦的に微笑んだ。

 

「この世のガノタなんて大抵はSEEDとOOとビルドファイターズと鉄血だけ見てブイブイ言わせてるだけじゃん。古川だってどうせそんなもんだろ?」

「は?初代からGレコまで全部見てるわ。鉄血はちょっと最後まで見る気力なかったんでネタバレで満足しちゃいました」

「……Gレコも見たのか?」

「いや戦闘シーン良いじゃん。あとモビルスーツカッコよくね?」

「え、そ、そう?趣味悪いな」

「いやいや、むしろあのゲテモノ感が良いだろ。ダハックとかカバカーリーとか見たことある?」

 

 直後、お互いにニヤリと微笑んだ。幸い、ここはプラモ屋だ。決着をつけるにはうってつけと言えるだろう。

 

「上等、テーマは?」

「まずは基本だろ。ザク系MSで一番カッコ良い奴」

「おk」

 

 二人してモビルスーツの好みを争い合った。我ながら不毛な争いだなこれ。

 

 ×××

 

「いやー、確かにダハックの両手ビームシールドとか良いな」

「だべ?ストーリーよりモビルスーツの格好良さで見れば面白いからあれ」

 

 ガンダムカッコ良いMS7番勝負なんてアホなことして、ついうっかりプラモ屋に長居してしまった。最終的に「基本的に全部カッコ良い」で収まっちゃったし。

 その後も二人でプラモ屋をじっくり見回って、モビルスーツの格好良さを語り合ってた。神谷さんとは仲良くなれそうだ。

 

「俺はほら、機能的なモビルスーツが好きだからさ。Wのガンダム五機で一番カッコ良いのヘビーアームズだし」

「あーあたしはやっぱ主人公だけどなー」

「神谷さんはロマン派かー。まぁ、ゼロカスの羽も一応は大気圏突入に使えるから、別に実用的じゃないわけじゃないけど……でも好きかどうかで言われたら……。俺はゼロのが好きかな」

「ゼロも良いよな。てかあれに出て来る機体は全部イケメンだろ」

「それな」

 

 そう、結局全部カッコ良いんだよな。俺が本当にダメなガンダムのモビルスーツって言ったら……いや、本当に無理なのは無いか。

 そんな事を話しながら、ようやくプレゼントを選び始めた。まぁ、プレゼントなんて大袈裟なものじゃないが。

 

「で、例えば?」

「そうだな……。夏休み抜けたら徐々に寒くなるんだし、手袋とかマフラーとか……」

「じゃあそのどっちかで」

「お前少しは考えて生きろよ……。逆にそれで良いのか?」

「いやでも、こういうのはあんま何買えば良いのかわからないし……」

「だからって丸々採用しようとするな。同じ系統のものから、お前が卯月に買ってやりたいものを考えろ」

 

 ……なるほど、同じ系統か……。それは確かに良いかもしれない。

 同じ系統……マフラーや手袋……いや、流石に季節巡りすぎか?神谷さんは例えで言ってただけだし。

 ふーむ……ようは実用的なものってことだろ……?それもオシャレにも応用できる奴。なんだろうか……。

 

「あっ、アレは?なんだっけほら……リストバンドとか!」

「なんでそうなったのか知らないけど良いんじゃないか?」

「確か、ジオンのマークがついてる良い奴があったはず……」

「おーい待て待て。なんでガンダムのなんだよ」

「え?なんで?」

「だから……や、もういい。リストバンドはやめとけ」

 

 なんだ……?なんか、説明を諦められたような……。いや、気にせず話を進めようか。

 他に実用的かつデザインが重要なもの……。

 

「じゃあアレだ。時計とか」

「えぇ〜……大丈夫なのか?値段とか」

「確かシャア専用腕時計ってのがあったと思」

「おい、いい加減にしろよ!ガンダムから頭離せ!」

「ダメなのガンプラだけじゃないの?」

「普通のJKが着けそうなものにしろよ!」

 

 ふーむ……それは一番難しいかもしれないな……。何せ、普通のJKが着けそうなものなんて俺の興味の対象に一番遠い所にあるものだからな。

 

「別にJK限定じゃなくても卯月が喜びそうなものでも良いんだぞ?」

「そう言われてもな……」

「例えば、卯月が毎日欠かさずに身体に着けてるものとか浮かべてなよ」

 

 ……ブラかパンツ?なんて言ったら通報されそうなのでやめよう。

 

「……下着以外か……」

「下着って!お前何考えてんだよ⁉︎」

 

 あっ、やばっ。口に出てた。

 

「ま、待て待て違うんだって!だって人が身に付けてるものって言ったら服だろ⁉︎私服には種類が色々とあるし、俺に分かるのは下着くらいで……!だから頭の中で速攻打ち消したのが口から漏れたんだって!」

「……い、言い訳がましい……。まさか、本当に……?」

「違うからスマホから手を離せ!」

 

 は、早く次の案を出さないとマジで通報される……!島村さんが毎日着けてるものか……。

 

「分かった、ヘアゴムか!」

「んっ……おお、よく気付いたな」

 

 感心した様子になる神谷さん。よし、何とかなったか……?

 

「ヘアゴムなら秋どころか年中無休春夏秋冬一事が万事使えるよな」

「最後のは少し違くないか……?や、まぁその通りなんだが」

「よし、じゃあ早速だけど、見に行くか」

「お、おう。さっきの発言は忘れてないからな」

「………謝るので誰にも言わないで下さい」

 

 とにかく謝った。

 で、神谷さんがいつもヘアゴムを買ってる店に向かった。まぁ、基本的には安い束売りのものを買ってるらしいのだが、それでも気に入ってるヘアゴムが売ってる店はちゃんと抑えてあるあたり、やはりアイドルもJKと同じなんだなと思う。

 

「なんかあるかなー」

 

 神谷さんが楽しそうにヘアゴムゾーンを眺める横で、俺も同じようにその辺りを見ていた。

 しかし、髪をまとめるだけのゴムなのに色々と種類があるもんだ。色がついてるだけのものや、ゴムになんかりんごとかついてる奴、あとこれはなんだっけ……シュシュ?とかいうの。

 まぁ、ここからは俺が選んだ方が良いんだろうな。しかし、島村さんに似合いそうなものか……。

 やはり明るい色?いや、そんなの島村さんだって持ってるはずだし、むしろ別の色を選んだ方が良いかもしれない。しかし、だからといって似合わないものを買っても仕方ないか……。

 

「……神谷さん、ヒント」

「いつからクイズ番組になったんだよ……。別に、ゴチャゴチャ考える必要ないんじゃないか?ただ、古川が卯月に使って欲しいものを買えば良いんだから」

「使って欲しいもの……やすり」

「次、ガンプラ関係のこと言ったら帰るからな」

 

 すみませんでした……。でもね、彼女ニッパーしか使わないもんだから、そろそろヤスリとか使って欲しいんですよね。

 

「……ふーむ、シュシュとか?」

「ああ、良いんじゃないか?」

 

 よし、シュシュだな。しかし一口にシュシュと言っても色々と種類があるものだ。

 さて、どうしようか。俺がつけて欲しいもの……。正直、シュシュ一つくらいで女の子の印象が変わるとは思えないし、どれでも良い気がするんだよな。

 だが、せっかく渡すものだし、ちゃんと選びたい。……もう直感で良いか。俺が見た感じ可愛いと思った奴を買おう。

 

「……よし、これにしよう」

「ん、良いんじゃないか?」

 

 手に取ったのは薄い紫基調のシュシュだ。

 

「でも、なんでこれ選んだんだよ」

「ん、何となく。あんま女の子に何が似合うかとか分かんないし、俺の好きな奴を選ぼうと思って」

「……なるほどなぁ。まぁ、それで良いかもな。てか紫好きなんだ?」

「俺が鉄血で数少ない、というか3機だけ好きなモビルスーツがキマリスとキマリストルーパーとキマリスヴィダールなんだよね」

「そんなに紫が好きなのか?」

「紫っていうか……いや紫も好きだけど、あの作品に関しては余り好きなモビルスーツ多くないんだよね」

 

 そもそもどう見てもガエリオが主人公だし。機動戦士ガンダムGO(ガリレオー)だろ。いや、名前もう少し考えろよ。

 

「まぁ、でも古川が選んだものなら卯月も喜ぶと思うぞ」

「そっか。じゃ、買って来るわ」

 

 よし、喜んでもらえるなら良いぞ。まぁ、お礼に渡すわけだから、それはそれで良いんだけど。

 購入を終えて神谷さんと合流して声をかけた。

 

「悪いな、手伝ってもらっちゃって」

「いいって。……最近、同じような依頼受けたばかりだし」

「そうなん?」

「や、なんでもない」

 

 俺以外にもアイドルに恋愛してる奴がいるってことか?いや、神谷さんの学校の友達かもしれないし、それは分からないか。

 まぁ、他人のリア充化に興味はないし首を突っ込む気もない。ただ、別のことに興味あるな。

 

「ちなみに、そいつの選んだプレゼントと俺のプレゼントはどっちがマシだった?」

「ある意味ではお前の方がまともだった」

 

 そ、そっか……。シュシュという選択肢は間違ってなかったのか。何となくホッとしてると、神谷さんが何かを思い出したように言った。

 

「そういえば古川、お前こんなとこにいても良いのか?」

「え?なんで?」

「知らないのか?」

 

 え、何?なんかあんの?もしかして緊急避難警報とか出てる?ザクが三機攻めて来たりとか?

 

「卯月、今風邪引いてるんだぞ」

「………はっ?」

「今日、仕事だったのに自宅療養中」

 

 それってさ……完全に俺の熱移したよな……。なんかそう思った直後、反射的に口から質問が飛び出していた。

 

「神谷さん、島村さんの家ってどこ?」

「は?え、えっと……確かうちの事務所の近くだけど……」

「詳細に!」

「お、おう」

 

 住所を教えてもらうと、走って駅に向かっていた。

 

「お、おい!行くのかよ⁉︎」

「ああ、今日はありがと。今度飯奢るわ」

 

 それだけ言って走って島村さんの家に向かった。

 

 

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