島村さんならどんな捻くれ者も浄化できる。   作:バナハロ

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話好きの女の子は男を勘違いさせる。

 翌日、学校が終わり、今日はバイトの無い俺はまっすぐ帰宅していた。

 昨日は色々あったなぁ、と今でも思う。何よりデカイのは俺の携帯に入ってる連絡先に家族と店長以外の名前が入った事だ。これはかなり大きい。歴史的事件とも呼べるだろう。

 まぁ、連絡先をもらっただけで、まだやり取りとかしてないし、するとも思ってないが。だってほら、学生ってとりあえず使いもしないのに連絡先欲しがるでしょ?島村さんだって俺と同い年だから学生だし、そういう連絡先欲しがるタイプである可能性もゼロではない。

 だから、あまり期待しちゃダメだ。さて、帰ってギターの練習でもしよう。中学の頃からたまに弾いてるんだよな。まぁ、披露する相手がいないんだけど。

 そんな事を考えながら帰宅してる時だ。スマホが震えた。

 

「………あっ」

 

 島村さんからだ。しかも「今時間ありますか?」との事だ。いや、まぁ暇だけど。

 これはどういう意図なんだ?これから遊びに行こうって事?仕事は?なんか思う所はたくさんあるが、とりあえず今は返事を送らないと。

 

 古川皐月『暇ですけど』

 

 そう返した直後だ。電話がかかって来た。あー、なんだこれ。出ても平気なのか?いや、でも暇って答えちゃったしな………。出るしかないか。

 

「もしもし?」

『あ、古川くん?卯月です』

「そうですけど……仕事は無いんですか?」

『もう、同い年なんだからタメ口はいいのに』

「そのセリフ、そっくりそのままブーメランしますよ」

『ブーメラン?』

「あれ自分の元に帰ってくるでしょ」

『ああ、なるほど!面白い例えですね!』

 

 いや、割とみんな使ってると思うんだけど………。ちょっと古いし。

 

『じゃあ、私もタメ口で良いですか?』

「好きにしてください」

『分かりました。じゃあ、古川くんもタメ口ですね』

 

 いや「じゃあ」の意味がわからないんですが。まぁ、たかだか口調くらいで議論するつもりはない。

 

「わかった。で、何か用?」

『いえ、暇だったら何かお話ししたいなと思って』

「えっ、お話?」

『はい』

 

 ………いや、まぁ良いけど。そんな事でわざわざ電話してくるなんてな。

 

「何を話すの?」

『実は私、今日学校だったんですけど、お弁当忘れちゃって』

「あら」

『それで、友達から少しずつおかずをもらって回ったんだ』

 

 なるほど、友達がいるとそんな事も可能なのか。

 

「美味しかったの?」

『はい!特にあのカニクリームコロッケが美味しくて……!』

「弁当に入ってるカニクリームコロッケって普通冷食じゃね?」

『………え、そうなんですか?』

「朝からコロッケ揚げてる時間なんかないでしょ」

 

 一人暮らしだからよく分かる。

 

『………だから、微妙な顔してたんだ……』

「そんなに冷食コロッケを褒めちぎったんだ………」

『うぅ……申し訳ない事しちゃいました………』

 

 そりゃ喧嘩売ってるだろ………。悪意がない分、向こうも怒るに怒れないんだよなぁ。もしかしたら島村さんは割と天然なのかもしれない。

 心の中でその島村さんの友達に合掌しつつ、自分のアパートに到着した。

 

『今帰って来たの?』

 

 玄関を開ける音が聞こえたのか、そんな質問が飛んで来た。

 

「そうだよ。これからダラける」

『帰って来たら「ただいまー」って言わないとダメだよ?』

「いやいや、俺一人暮らしだし」

『えっ、そうなの?』

「ああ」

 

 そういや言ってなかったな。まぁ、言うタイミング無かったってだけなんだが。

 

『すごいね、高校生で一人暮らしなんて』

「いやいや、そんな大した事じゃないから」

 

 実際、去年は料理とか全く出来ないで、家庭科の授業で調理実習が始まるまではカップ麺とコンビニの廃棄弁当で過ごしてたからな。

 流石に掃除とか洗濯は出来なきゃマズいから最初から頑張ってたけど。

 

『じゃあ、古川くんも料理できるんですか?』

「いや、今は少しなら出来るよ」

 

 作れるのはカレー、チャーハン、うどん、そばくらいだが。基本は抑えてあるから、ちゃんとレシピとか調べりゃ他にも出来ると思う。

 

『へぇーなんだか意外だね』

「そんなにガサツそうに見えたって事ですかね……」

『そ、そういう事じゃないよ』

 

 しかし、割と話せてるな俺。もう少しテンパるものだと思っていたが………。

 まぁ、電話越しだし相手の顔色が見たくても見れない分、あまり考える必要がないから好き勝手言えるのだろう。メールでは饒舌になるやつと同じだ。つまり、顔を合わせたら絶対会話出来ない。

 スマホにイヤホンを挿してポケットにしまい、コードについてるマイクに声をかけた。

 

「島村さんは料理とかしないの?」

『私?私は……まぁ、お弁当はあまり作らないかな。簡単なものしか作れないから………』

 

 まぁ、なんとなく想像ついてた。

 

「料理とか出来ると良いよ」

『やっぱり、男の子って家庭的な子が好きなの?』

「いや、晩飯を自分の好きなものに決められるから。飯の準備時間と引き換えに」

『あ、あはは………』

 

 あれ?軽く引かれた?

 しかし、真面目な話すると料理も悪くないかもしれないな。通話が終わったら練習するか。

 

『あ、料理といえば私………』

 

 と、島村さんがまた何か話題を見つけたようで語り始め、俺はそれを聞きながら相槌を返してると、その日はいつのまにか夜の8時くらいまで長電話していた。

 

 ×××

 

 さらに翌日、不思議な気分で目が覚めた。接客を除いて、あんなにたくさん人と話したのは久し振りだった。

 ついうっかり、俺もなんか色々と話しちまってたなぁ。普段話さない反動でたくさん話してしまったのかもしれない。まぁ、たまにはこんな日があっても良いさ。

 で、今日は学校が休み。昨日バイトが無かったので、今日は午前中だけバイトだ。

 一人で暇そうにレジに立っていた。小さく欠伸をしながら、ボンヤリしてると、お客様が来店された。

 

「しゃいませー」

 

 挨拶すると、お客様は会釈して商品を見に行く。俺が思うに、来店時の挨拶ってのは先制攻撃だと思うんだよね。万引き犯とかに対して「店員はお前らのご来店をちゃんと見ているぞ」と知らせる為のものだ。それによって、万引き犯は割とひよる。ニ○チェ先生で読んだ。あの漫画ほんとに素晴らしいよね。コンビニで働く上で必要な事が全部揃ってる。

 とりあえず、品出しに行く事にした。暇なんですよね。土日のコンビニのバイト。特に今日は雨降ってるし。

 

「はぁ………」

 

 にしても、少し疲れてるな。退屈だとため息も出る。まぁ、でも暇してる時間を過ごすだけで金がもらえると思えばそれも悪くない。

 そんな事を考えながら、とりあえず品出しに向かった。弁当を並べてると、ぐぅーっと間抜けな音が鳴った。

 

「…………」

 

 そういや朝飯食ってねぇや。ていうか、学校がない日は食費削減のために朝飯を抜いている。

 まぁ、あと5分で休憩だし我慢しよう。そう決めて、時間の早い弁当を前の方に陳列した。すると、お客さんがレジに向かってるのが見えたのでレジに戻った。

 

「ありがとうございます」

 

 お礼を言いながら、商品のバーコードを読み込んで行く。

 

「358円でございます」

 

 袋に商品を詰めた。袋詰めの早さはこのコンビニで一番早いんだよね俺。まぁ、なんの役にも立たないんだが。

 お会計を済ませてお客様を帰すと、再び作業に戻った。今度はおにぎりの陳列を整えてると、後ろから肩を突かれた。ふと振り向くと、ふにっと頬に人差し指が当たった。

 

「?」

「こんにちは、古川くん」

「っ⁉︎しっ、島村さん⁉︎」

 

 な、なんでこんな所に⁉︎思わず狼狽えて手に持ってるおにぎりを落としてしまった。

 

「あっ、ご、ごめんね。そんなに驚いた?」

「い、いや……何でもない、ですけど………」

「また敬語に戻ってるよ?古川くんが敬語が良いならそれで良いけど」

「あ、いえ、そういうわけではないのですが………」

 

 だ、ダメだ………。やはり電話越しじゃないと会話は難しい。

 とりあえず、向こうに話し続けてもらおう。

 

「お仕事?」

「はい。ニュージェネレーションの写真集です」

 

 それをこの辺で撮ってるのか?後で見に行ってみようかな。

 

「中央公園分かる?あの噴水のある。あそこで撮影してるから、午後とか暇だったら見においでよ」

「………あ、ああ。わかった」

 

 へぇ、あそこか。近くにクッソ安い売店あるよな。あそこジャンプ早売りなんだよ。

 ………あれ?ならそこの売店で買えば良いのに。なんでわざわざここのコンビニまで来たんだろ。

 

「………あの、あそこ売店ある、よね……?なんでここまで……?」

「お昼を買うついでに、古川くんいるかなーと思って見に来たんだ」

「そ、そうですか………」

 

 なんでわざわざ俺の所に………。勘違いしそうになるからやめて欲しい反面、ちょっと嬉しい。

 

「凛ちゃんと未央ちゃんの分のお昼も買ってあげなきゃいけないんですけど……何かオススメはないですか?」

 

 コンビニのオススメとか言われてもな………。

 

「………俺の個人的な好みなら、あの蕎麦にしちゃうけど……」

「あー確かにああいうお蕎麦美味しいよね」

 

 ふむ、と島村さんは顎に手を当てて考え始めた。友達とはいえ、他人の昼飯のためにそこまで考えてあげる島村さん本当に良い人だなぁ。

 

「じゃあ、お蕎麦とこの二つのお弁当にしようかな」

 

 島村さんは弁当を三つ重ねた。まさか俺の意見が採用されるとは………。俺が選んだから気を使って買って行ってくれてるのか?そう考えると、もう少しまともな奴を選べば良かったとも思うが、ぶっちゃけ蕎麦以外の弁当は季節限定のものしか買わないから分からんのよな。

 

「あと飲み物買って行かないと」

 

 そう言うと、島村さんはドリンクの所に向かった。その間にレジに戻った。

 しばらく待ってると、島村さんがお茶を三本持ってやってきた。会計を済ませて袋に詰めて商品を島村さんに手渡すと、感心した目で俺を見ていた。

 

「…………」

「な、なんでしょう………?」

「いや、手際良いんだなって思って。考えたら私、古川くんが接客してるところ見るの初めてだから」

 

 そういや確かにそうだったな。あの時は島村さんのカバーしかしてなかったから。

 

「古川くん、今日の夜は大丈夫?」

「えっ?だ、大丈夫だけど………」

「じゃあ、また電話しようね」

 

 そう言うと、可愛らしく胸前で手を振ってコンビニを出て行った。あの子、アレで自然体なのかな………。だとしたら、今まで何人もの男を勘違いさせて来たのでは………?いや、まだ出会って三日なのに下手な詮索は止そう。

 とりあえず、後で撮影見に行こう。

 

 

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