島村さんならどんな捻くれ者も浄化できる。   作:バナハロ

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出待ちは卑怯でしょ。

 翌日、学校が終わって家に帰宅していた。昨日は随分と長くガンダム見ていたなぁ。4話分だからザックリ2時間弱か。今になって変な虚無感があるわ。

 まぁ、面白いからいいんだけどさ。それよりも、これから踏みつけたバクゥにゼロ距離射撃したりするし、島村さんが楽しめるか心配だ。あとは、その、何?フレイとアレコレとか……。まぁ、その時は何となくフォローするか。

 それよりも、これから古本屋寄って行かないといけないんだよね。

 

「皐月くーん!」

「えっ」

 

 聞き覚えのある声が聞こえ、振り返ると島村さんが手を振って駆け寄ってきていた。

 

「島村さん………?」

「えへへ、我慢出来なくて来ちゃった♪」

 

 えへっとはにかむ島村さん。そういう仕草とセリフ、スイカバー突き刺さって心臓ブチ抜かれた気分になるから辞めてほしい。死んじゃうから本当に。

 右手には黒い布の袋が下げられているため、多分TU○AYAでもう借りてあるんだろう。可愛すぎかよ。

 

「はぁ……。まぁ、良いけど。それより、俺帰りに古本屋寄ってくけど」

「分かった、じゃあ古本屋に行ってからだね!」

 

 ………さっさと用を済ませよう。やっぱ2人で出掛けるのは苦手だ。

 駅前の古本屋に向かってると、ふと気になったので島村さんに聞いてみた。

 

「島村さんさぁ、そういえば仕事は?」

「今日はオフだよ。だから、皐月くんの所に遊びに来たんです」

 

 落ち着けよ、俺。別に暇があれば俺の所に来たいって意味じゃないから。暇があればSEEDが見たいって意味だから。勘違いするなよ。

 

「そういえば、もうすぐ期末試験だねー」

「グッ……嫌な事を思い出させてくれるぜ………」

「へ?皐月くん、勉強苦手なの?」

「いや、苦手っつーか超嫌いなだけだから………」

「苦手なんですね………」

 

 いや本当に。数学生物化学現代文古典日本史世界史は平気だ。ただ、英語が圧倒的にダメ。死ねる。てか死ね。

 

「少し意外かな、皐月くんって勉強苦手なんだ」

「勉強っていうか英語が無理」

「英語が?」

 

 大体、俺は日本からは絶対に出ないから英語学ぶ理由なんかないんだよ。グッドラックだけ覚えときゃなんとかなるだろ。

 

「うーん、じゃあガンダムなんて見てる場合じゃない?」

「問題ないよ。別に他の教科は普通にできるし、英語は覚えないで教科書を丸暗記すればなんとかなる」

「丸暗記⁉︎」

「まぁ、毎回テスト前は死ぬけどね。今年も栄養ドリンクの本数も増えそうだなぁ」

 

 遠い目をしてそんな事を呟くと、島村さんが俺の肩に手を置いた。

 

「さ、皐月くん。それは体に悪いよ」

「えっ、そ、そう?」

「うん。プロデューサーさんもこの前『スタミナドリンク』っていうの飲み過ぎて倒れちゃったんだから」

 

 そんな栄養ドリンクあったっけ?見た事ないわ。しかし、倒れるなんて大変だなプロデューサーさんも。それの影響で島村さんはオフになったのかもしれない。

 

「よし、決めた!」

「何を?」

 

 てか、突然何?

 

「私、しばらくオフなので皐月くんの英語の面倒を見てあげるね!」

「えっ」

「島村卯月、頑張ります!」

 

 なんでそうなるんだよ。

 

「いや、いいよ別に」

「ダメだよ、倒れてからじゃ遅いもん」

「いやそんな1日2日で倒れるわけないてしょ。ていうか、島村さんだって勉強しなきゃいけないわけだし……」

「とにかく、私が面倒見てあげるので、一緒に勉強しましょう!」

 

 な、なんでこんなに強引に………?と、思ったけどすぐに合点がいった。何の根拠もないけど聞いてみるか。

 

「なんの教科を教えて欲しいの?」

「………バレましたか?」

「そりゃあれだけ食い下がられたらな………」

「数学をお願いします………」

「任せろ」

 

 まぁ、数学なら大丈夫だろ。60点は固いからな。

 

「じゃあ、早速今日から頑張ろう!」

「いや、SEEDはどうすんだよ」

「あ、明日から頑張ろう!」

 

 はいはい、明日からね。

 小さくため息をついてると、古本屋が見えて来た。

 

「着いた」

「何を買うの?」

「ん、カード」

「か、カード?」

「そ」

 

 言いながら、中古カードコーナーに来た。トライエイジのカード買いに来た。おー、あるある。今回の弾のOOのカード。えーっと、とりあえずアリオス、オーライザー、M刹那と……いや、高いからオーライザーはいいや。こんなもんかな?スタゲとソルセレーネは当てちゃったし、他のOOのPはいらん。鉄血?何それ?あ、あとアニバ買って行こう。

 

「へぇ〜……ガンダムってカードゲームもあるんだぁ………」

 

 感動したように島村さんが呟いた。

 

「カードゲームっていうか、データカードダスっていうのかな。100円入れてカードが一枚出るタイプの奴」

「ああ、ムシ○ングみたいな奴ね!」

 

 うーん……まぁそれで良いやもう。そう自分で呟いた直後、島村さんは流石に少し引いたように呟いた。

 

「………えっ、皐月くんムシ○ングやってるの?」

「うるせ、面白いんだから良いだろ。それと、ムシ○ングじゃねぇから」

「ま、まぁ趣味は人それぞれですからね!」

「おい、なんで敬語になった」

 

 島村さんとの距離が少し遠くなった気がした。

 

「はぁ……もう良いよ、買ってくるから」

「だ、大丈夫だよ!全然……いや全然ってことはないけど引いてないから!」

 

 それは少なからず引いてるって事じゃないですかね………。いや、もうなんでも良いや。

 ショウケースのカードを買って、さっさと店を出た。さて、これからSEEDだ。正直、SEEDなんてどうでも良いが、島村さんという可愛いJKアイドルとガンダムを見ることが出来るというだけで嬉しい。

 

「よし、島村さん。SEED見ようかーあれ島村さん?」

 

 島村さんの姿がなくなっていた。あれ、なんだろ。帰られた?もしかして待ちきれなくて家帰ってDVD見てるのか?そんなにSEED楽しみだったのか?

 ………いや、それとも俺の部屋に来るのが嫌だったとか……。や、それはないだろ。向こうから来たいって言ったんだし。

 そう自分で否定しながらもドキドキしてると、島村さんがレジに並んだのが見えた。中古のプラモの箱を持って。

 

「………何してんの?」

 

 聞いてみると、島村さんははにかむように微笑んで言った。

 

「我慢できなくて。あそこに置いてあったよ」

 

 手に持ってるのはストライクルージュだ。そう言うの好きそうだもんなぁ。

 

「ちなみに、この子は出て来ますか?」

「来るよ」

 

 大した活躍しないし、Destinyでキラに壊されるけど。まぁ、それはネタバレになるし、島村さん悲しみそうだからそれは黙ってるべきだな。

 

「じゃ、それ買ったらSEED見ようかな」

「うん」

 

 レジの脇で待機した。

 

 ×××

 

 うちに到着し、SEEDの鑑賞が始まった。俺の持って来たポテチと飲み物を摘みながら、ぼんやりとSEEDを眺めた。

 しばらく眺めてると、キラがガンダム4機に袋叩きにされ始め、フェイズシフト装甲はいよいよダウンしてしまう。島村さんのハラハラ顔可愛い。

 その直後、隠密作戦中のムウの襲撃が成功し、ザフトの戦艦を2隻撤退に追い込んだ。

 

「おおおおおおお⁉︎」

 

 島村さん大はしゃぎ。楽しそうで何よりです、ほんとに。で、ようやくアルテミスに逃げ込み、そこで武装兵に囲まれたところで終わった。

 

「皐月くん!次、次!」

「分かったから落ち着け」

 

 次の話に回し、島村さんは食い入るようにテレビの画面を見始めた。しかし、なんつーか……改めて思うのは、アイドルも普通の女の子なんだなぁ。

 こうして影響され、アニメを見て、楽しみ、続きが気になる。やはり、芸能人だからってあまり変な先入観は抱かない方が良いかもしれないな。まぁ、これから先に芸能人と知り合うことなんて無いだろうけど。

 そんな事を考えながらジロジロ見ていた所為か、島村さんがいつのまにかこっちを見ていた。

 

「あの、私の顔に何か付いてる?」

「へっ?あ、いや、なんでもないです」

「なんかジッと見てたから」

「なんでもないって。ただ、やっぱアイドルも普通の人と変わらないって思っただけだから」

「あー……確かにそうかもね」

「え、島村さんもそう思う節があるの?」

 

 それはちょっと意外だ。アイドルってのはアイドルである自覚が必要なものだと思ってたから、特別な存在だと自分に言い聞かせなけりゃダメなもんだと思ってたわ。

 俺の問いに、島村さんは「うん」と頷いた。

 

「結構、みんな事務所ではやりたい放題やってるからね。机の下にいたり、きのこ育ててたり、野球観戦してたり………」

「じ、自由だな………。学童保育?」

「他にもよく分からない難しい言葉をノートにまとめてたりしてる子もいるなぁ。あとはネイルとかお化粧とか実験とか………」

 

 最初のは俺の傷口も開きそうなのでスルーで。ネイルとお化粧も俺には無縁なのでパス。で、実験ってなんなんですかね。とても気になるが、島村さんは思い付くのを言い始めてしまっていた。

 

「あとは空手とか忍者とかサンタクロースとか……とにかくいろいろ」

「おい、それほんとにアイドル事務所か。役者事務所じゃないの?」

「アイドルだよ?」

「………なんか俺の知ってるアイドルと違う」

 

 聞かなきゃ良かった………。いや、別にアイドルに興味あるわけじゃねぇし、アイドルの実態なんてどうでも良いんだけどね。

 

「でも、みんな可愛いよ?」

「そりゃアイドルだからな………。てか、その奇人変人達はどうやってアイドルになったんだ?」

「うーん……人それぞれだからね。オーディション受ける子もいれば、スカウトされる子もいるよ」

「島村さんはオーディションでしょ」

「えっ………ど、どうして?」

「随分と頑張ってたから。コンビニとかメイド喫茶では。多分、たくさん努力したんだろうなって思っただけ」

「………私、頑張ってるように見えた?」

「え、頑張ってなかったの?」

 

 何それ恥ずかしい。柄にもない事言ったのに。死のう。

 が、島村さんは慌てた様子で首を横に振った。

 

「う、ううん!頑張ってたよ!けど、そういう風にアイドルじゃない友達に言われたのは初めてだったから、少し嬉しかったんだ」

 

 そう微笑みながら言われ、また俺の心臓に的確にダメージが刻まれた。ホント、照れもせずにこういうセリフを………。

 こっちが照れたのを必死に隠してると、6話が始まったため、とりあえずそっちを見て誤魔化した。

 

 

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